ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第15話〝次の狙い〟

 ウォーターセブンの市役所の市長室で、テゾーロは市長と会談していた。

「君達がこの廃れ始めたウォーターセブンに救いの手を差し伸べてくれたことには、深く感謝する」

「いえいえ、礼には及びませんよ市長さん。私達はただ、船大工のトムとの約束を果たしたまでです」

テゾーロは紳士的に接しながらも、早速本題を切り出す。

「市長殿、私にお話を持ち掛けてるのでしょう? その話、是非お聞かせ願いたい」

「うむ……」

 市長が口にしたのは、海賊被害の事だった。

 市長曰く、ここ数年海賊による貨物船襲撃の事件が相次いでおり、その影響もあって中々問題を解決できてないとのこと。

 当初は海軍に通報したが、いかんせん有効な対策は無いらしく、市長は常に頭を悩ませていたらしい。

「それは私が、「賞金稼ぎ」を近い内にやめることを想定してのお話で?」

「そうだ……君がまだ賞金稼ぎをやっている内に話をして海賊討伐を任せたい。」

「出現条件や拠点の目星は付いていますか?」

「わからぬ……だが心当たりがあると言えばある」

 市長は、ジャヤという春島にあるモックタウンという町について語り始めた。モックタウンは「嘲りの町」とも呼ばれ、連日殺しやケンカが絶えず、海賊達の落とす金によって成り立つ無法地帯だ。

 つい最近、その町を大物ルーキーが取り仕切って私腹を肥やしているという噂が流れ、市長は一連の事件はその海賊の仕業だと確信したのだ。

(モックタウンか…)

「無理強いはしないが……やってくれるかね?」

「……いいでしょう。ただし、それなりの報酬も求めますがね」

「報酬?」

「そうですね……この島の全ての造船会社に我がテゾーロ財団の傘下企業となってもらいましょうかね」

 テゾーロの爆弾発言ともいえる一言に、市長や部屋にいた職員達はおろかステラですら驚愕する。

 要は、テゾーロはウォーターセブンの造船業を独占したいと言っているようなもの。それはつまり、ウォーターセブンの経済を牛耳るも同然だ。

「勿論すぐにとは言いませんし、これはあくまでもできればの話(・・・・・・)です。我々テゾーロ財団が世界中に知れ渡る程の力を持った時に、是非」

「……!」

 テゾーロの微笑みに、言葉が出ない市長。

「ジャヤへの海賊討伐は我々にお任せあれ。今日の会談はここまでです」

 

 

           *

 

 

 〝赤い土の大陸(レッドライン)〟、「聖地マリージョア」。

 世界を統括している世界政府の中心地であり、世界貴族〝天竜人〟が住んでいるこのマリージョアにある「パンゲア城」の一室に、海軍大将のセンゴクはいた。

「ギルド・テゾーロ……? 聞かぬ名だな」

「ええ……ですがその能力は強大そのもの。黄金を生み出し自在に操る〝ゴルゴルの実〟の能力者で、現在は「賞金稼ぎ兼商人」という立場です」

「フム、〝ゴルゴルの実〟か……」

 センゴクと話しているのは、世界政府の最高権力者である五人の老人達――通称〝五老星〟。この世界の支配と秩序の為に危険因子を徹底的に排除している、世界政府の頂点と言っても過言ではない老人達だ。

「武力だけでなく財力や権力にも使役できるな…野放しにするのは放ってはおけん」

 頭に痣のある白い口ひげを蓄えた老人がそう呟き、脚を組んで座っていた金髪の老人も頷く。

「だがセンゴクの話では怪しい動きをするつもりは無いようだ。一人の民間人を憶測の域で抹殺するわけにもいかん」

「それに金ともなれば我々に対する利益は大きい。生かした方が得策と言えよう」

 長い白髪と白いひげの老人と、坊主頭で眼鏡を掛け刀を持った白い着流し姿の老人がそう言う。

 どうやら、五老星も黄金を操る能力者(テゾーロ)は生かした方が政府への利益が大きいと認識しているようだ。

「……私としましては、テゾーロ財団がある程度の力を蓄え名が知れるようになったら交渉し、手中に収めるべきかと」

「うむ、確かにその通りだな……」

 黒い帽子を被った左目付近に傷のある巻き髪の老人が、センゴクの提言に賛同する。

「財団となれば、多くの社員を求めよう。その中にサイファーポールの諜報員を潜入させて監視させるのも視野に入れるべきだ」

「――そうだな、テゾーロがどういう輩かを詳しく調査する必要がありそうだ」

 サイファーポールとは、世界政府が凶悪犯や危険組織の調査を行うための諜報機関であり、組織名の頭文字から〝CP〟と略称されている。

 政府の指令によりあらゆる情報を探り出す諜報員達は民間人を容易に欺き、世界に害を及ぼす人物達の潜伏先や情報を収集する事も容易い。諜報員の中には、人体を武器に匹敵させる六つの超人的体術〝六式〟や全身あらゆる所に意識を張り巡らせ自らの体を操る技〝生命帰還〟を会得しており、並外れた身体能力を持ち合わせているのだ。

「……よかろう。テゾーロ財団の一件はその名が世間に広く知られるまでしばし待ち、それから交渉に持ち込むとしよう」

「センゴクよ……その一件は、コングも知っているのか?」

「ええ、私が直接伝えました」

「そうか……センゴクよ、コングにはテゾーロ財団の動きに常に気を配っておくよう伝えよ」

「万が一海賊行為を始めたとしても、必ず生け捕りだ」

「テゾーロが死んでしまっては、その能力が誰の手に渡るのかわからんからな……」

「手の届く範囲内の今だからこそ手を打つのだ」

「はっ……」

 センゴクは五老星の部屋から退室する。

 その後、五老星は再び協議を始めた。

「……どう思う?」

「本当に一端の商人で終えるとは思えんな。もしかしたら我々の想像を超える目論見があるかもしれん……」

「黄金を操るとなると、その気になれば世界経済に影響を与える。財力次第では国家樹立も可能性が無いとは言い切れんな…」

 世界政府の公約上、原則として海賊の国家樹立は禁止だが王族・貴族以外による国家樹立に関しては禁止だとはされていない。それは誰も成し遂げていないだけである。

「だからと言って、政府に牙を向けるかまでは憶測の域……早まるのはいかがなものか」

「いずれにしろ、海軍にはテゾーロに会って直接見極めさせねばならんな……」

「そうだな……焦らず奴の動向に気を配って対処するだけで良かろう」

 五老星は、今日も世界の平和と秩序の為に議論し合う。


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