ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
ドレスローザ編が終われば、大波乱の世界会議編を予定してます。
王宮内で起きたショッキングな出来事が、事態を混沌に誘う。
「早急な対応が必要だ」
「気味が悪い! なぜまだ生きてる!」
生首のまま語るドフラミンゴに、キュロスは大剣で再び斬りかかる。
が、その後ろにもう一人のドフラミンゴが現れ、蹴りを放ってきた。よく見ると足先に光る細く白い糸が付いている。
「仕留め方を教えてやろうか?」
「兵隊!」
「キュロスお兄様!」
ガギィン!
イトイトの能力を駆使してキュロスの首を刎ねようとするドフラミンゴだったが、そこへ黄金の壁が現れて防がれてしまう。
「テゾーロ!」
「
「〝
頭部を失った分身体と共にテゾーロを攻撃する。
が、すかさず黄金の壁を融かし、今度は格子のように変形してテゾーロを囲い、斬撃を全て防いだ。
「フフフフフ!! まるで鳥カゴ……!! おれへの皮肉か?」
「ぬかせ」
黄金の格子の変形させ、先端を尖らせ武装硬化させた触手でドフラミンゴを穿つ。
ドフラミンゴはコートに覇気を込めてガードすると、首のない偽物のドフラミンゴが背後から〝
しかし、見聞色の覇気で捉えたテゾーロは真横にステップして躱し、振り向きざまに黄金で覆った拳を振るい、思いっきり殴り飛ばした。
「……糸でできたマリオネットか。だがゴルゴルの防御の前では無意味だ」
「フフフフ! そのようだな」
「あんな技初めて見た……!」
一国の王同士が対峙する中、ヴィオラは今まで見せなかったドフラミンゴの技に驚く。
不意に、悪意に満ちた笑みでドフラミンゴはリク王を見やった。
「リク王、10年前のあの夜の気分を憶えているか? 愛する国民を斬り、平穏な町を焼いた日を」
「未だ夜な夜なうなされるわ! 憶えていたら何だと言うんだ!」
「これから起きる
その言葉の直後、地鳴りが轟き出して巨大な石の手が一同を掴んで放り投げた。
「おっと、危ない!」
テゾーロは嵌めていた黄金の指輪を融かして液状化、さらに応用して量を爆発的に増やして巨大なマットにした。
普通に考えれば叩きつけられて痛いじゃ済まない結果になるが、エアクッションのように柔らかく変形し、衝撃を最小限に抑えた。覚醒に至るまで能力を鍛え、研ぎ澄ました結果と言えよう。
「黄金が、まさかクッションに……」
「信じ難いが、おかげで助かった……!!」
「黄金を自在に操れるのでね。これぐらいは造作もない。海水に触れるとダメだがな」
ヴィオラとリク王がテゾーロに感謝する中、ルフィは王宮を見上げる。
「ハァ……ハァ……外壁塔の庭まで落とされた……」
「そうらしいな」
テゾーロはイスに拘束されたままのローに近づくと、手錠の鍵穴に融かした黄金を流し込んだ。
そしてすぐさま固めて離し、軽くひねるとガチャリという音が鳴って外れた。
「スゲー! 外れた!」
「お前……そんなマネもできるのか」
「能力は使い方次第では救うことも殺すこともできる。……それだけだ」
ローを解放したテゾーロは、マゼンタのダブルスーツを整える。
その直後、王宮から一筋の白い何かが飛び、四方八方に展開していくのが見えた。よく見ると無数の糸でできており、まるでこの島を覆うかのように伸びていく。
テゾーロは「始まったか……」と忌々しそうに呟くと、状況を説明し始めた。
「ドフラミンゴはこの国の真実が漏れる前に、今この島にいる人々を皆殺しにするつもりだ」
『!!』
「この島には海軍大将の藤虎と特殊部隊に移籍した青キジがいる。海軍の中でも良識がある方とはいえ、下手に戦闘となるとドフラミンゴを討ち取れなくなるぞ」
「……〝SWORD〟か」
ローは目を細めて呟く。
海軍の特殊部隊も動いているということは、ドフラミンゴをそろそろ潰しに行くということだろう。
「藤虎たちにはおれから口を利いておこう。有象無象も部下たちが始末してくれる。とにかくまっすぐ倒してくれ!」
「おうっ! 最初からそのつもりだぞ、カジノのおっさん!」
「……なるべく名前で呼んでくれ、教えたはずなんだが」
*
その頃、サイとメロヌスはイッショウの部隊と合流していた。
「バスティーユ中将! 本部と通信が取れませんっ!」
「同じくこちらも基地への通信不能です! まだ何も伝えてないのに!」
「一体何だらァ……!?」
バスティーユたちが状況把握に努める中、二人は藤虎と共に各々木箱に腰かけていた。
「妨害電波か……?」
「それと同じ状態ではあるようですね」
「これは困りやしたね」
どっしり構えて会話する三人、
その時、頭上から糸が降り注ぎ……。
パシッ
三人は見聞色で捉え、片手で掴んだ。
「……!」
「こいつァ……」
「糸、ですね」
その時。
ドカァン! という爆発音が響いた。
「おい何やってる民家に!」
「違う! 体が勝手に!」
まるで何かに操られているかのような、それこそマリオネットのようにぎこちない動きをする人形のように、各地で無差別に人を傷つける者たちが現れる。
海兵の中にも突然暴れ出す者がおり、このままでは多くの市民が犠牲になる。
バスティーユが右往左往し、イッショウが立ち上がってズシズシの能力で押さえようと仕込み杖を構えると、どこからともなく冷気が漂った。
「あららら……ちと冷たいだろうが、我慢してくれよ」
「その声は……!」
「〝
ガキィン!
辺り一帯が一瞬で凍り付く。
操り人形と化した海兵たちは下半身を氷で固められ、移動することができなくなる。凍傷の可能性は残るだろうが、罪のない人間をこれ以上傷つけずに済む措置としてはやむを得ないだろう。
「クザンさん!! 来てたんだらァか!?」
「まァな。おれもゼファー先生に頼まれたんでね」
ゼファーの名を聞き、海兵たちは驚く。
全ての海兵を育てた男でもある、伝説の元海軍大将。今は海軍の機密特殊部隊「SWORD」の最高司令官として指揮を執り、新時代の正義を陰で支えている。
そして彼の教え子であるクザンは、海軍大将を辞する代わりに特殊部隊に移籍した。天下りと言えば天下りだが、海軍からは半ば独立した遊撃隊という立ち位置は彼の「ダラけきった正義」を貫けるため、適材適所でもあった。
「それにしても、エライことになったな」
「〝天夜叉〟の旦那、とうとう化けの皮が剝がれたようで……」
すると、今度は地震が発生。
花畑の台地が町をのみ込み、王宮が高く聳える島のようにせり上がる。
そして地震が鎮まると、空中に映像電伝虫を介したドフラミンゴの映像が流れた。
《ドレスローザの国民たち、及び客人たち……別に初めからお前らを恐怖で支配してもよかったんだ》
「ドフラミンゴ……!」
「ようやくお出ましだな」
サイが呟くと、メロヌスが煙草を咥えながら睨む。
《真実を知り、おれを殺してェと思う奴もさぞ多かろう。だからゲームを用意した。このおれを殺すゲームだ》
ドフラミンゴは、自分は逃げも隠れもせず王宮にいるので、この命を取れれば生き残ると語ると同時に、もう一つ生き延びる方法を教えた。
それは、ドフラミンゴが挙げたリストに乗る人物を全員仕留めた場合。その人物には多額の懸賞金を懸けるので、全員討ち取れば生き延びる上に金も支払うというのだ。
「普通に考えれば、どの道始末されるっていう思考に至るはずなんですがね」
「極限状態でその人の本性が出るっつうしな……」
サイとクザンがボヤく中、メロヌスは状況を整理する。
外への通信は不可能。逃げても隠れてもこの鳥カゴの中に安全な場所などない。全員死に絶えるか、ドフラミンゴ及びドンキホーテファミリーを撃破するかのどちらかしかない。
全く、とんだクソゲーだ。
「……どうする? 藤虎、青キジ。おれたちは上司の命令次第で動くが、当面はドフラミンゴを倒す方向だ」
メロヌスの言葉に、イッショウは熟慮してから返答する。
「あっしは暴れ出した者たちを極力抑え込み、標的は麦わら・ローの海賊同盟としやす」
「!」
「イッショウさん、ドフラミンゴを捕らえないんで!?」
イッショウの判断に、誰もが目を見開いた。
普通に考えれば、悪事が露見した七武海を捕らえるのが海軍の仕事。しかし、イッショウは海軍の「正義」とは異なる判断を下した。
その理由は不明だが、海軍で長く戦ってきたクザンは察しがついたのか、ニヤリと笑った。
「おれの知ってる海軍の正義とは、少し違うみてェだな」
「へへ……褒め言葉と受け取りやす」
新参者の新大将の思惑に、旧大将は乗っかることにした。
イッショウは閉じた目の裏で何を描いているのか。それは知る由もないが、今は信じるべき時だろう。
そう考えたメロヌスとサイは、
*
その頃、テゾーロたちはというと。
「そうか……やはりイッショウは
メロヌスたちから事情を把握し、テゾーロはドフラミンゴの映像を見やった。
《考えろ。おれを仕留めに来るか、我々ドンキホーテファミリーと共におれに盾突く12名の愚か者たちに裁きを与えるか。選択を間違えればゲームは終わらねェ。星一つにつき1億ベリー! こいつらこそがドレスローザの受刑者たちだ!》
ドフラミンゴは受刑者リストを見せる。
一ツ星はレベッカ、ヴィオラ、フランキー、ロビン、〝狐火の錦えもん〟の五名。
二ツ星はキュロスとゾロの二名。
各組織の主犯格である三ツ星はルフィ、ロー、リク王、サボの四名。
《さらに! 今日おれをもっとも怒らせた奴がいる! お前らをこんな残酷なゲームに追い込んだ全ての元凶! こいつを仕留めた奴には5億ベリーだ!》
――五ツ星、〝ゴッド〟ウソップ。
「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!」
「ハハハハハハハ!! あのドフラミンゴを以てして〝ゴッド〟と呼ばせるとは!! イッツ・ア・エンターテインメンツ!!」
まさかの事態にルフィは涙を流して爆笑。テゾーロも既知であったとはいえ腹を抱えて大笑い。
ゾロは「やるじゃねェか」と不敵に笑い、ローも表情を緩ませている。
リク王たちは驚き半分、哀れみ半分と言ったところだ。
(とはいえ、おれはさすがに殺すのは戸惑うか?)
リストにテゾーロ一行は載っていなかった。
おそらく、世界情勢や政治的事情から今すぐ消すわけに行かないのだろう。もっとも、一筋縄じゃないが生かしていいことはないと考えているだろうが。
すると、どこからともなく電伝虫が鳴った。どうやらゾロが携帯している電伝虫のようだ。
「おれだ」
《ゾロ、今どこ?》
「ロビンか…今ルフィたちとカジノ王と一緒にいる」
電話の相手は、ロビンだった。
彼女は原作通り、サボたちと行動を共にしているようだ。
「王の台地って所らしいが、面倒なことになってきたな」
「ロビンか! 見たか今の! ムカツくなァ、ミンゴ! ウソップなんか大爆笑だしよ」
《何だとルフィ!》
傍で聞いていたのか、一番話題となっている〝ゴッド〟の怒鳴り声が響く。
そんな中、ルフィはレベッカの安否を気にした。
「レベッカは?」
《私はロビンさんたちと一緒だよ、ルーシー!》
「おお! ちょうどよかった! 今兵隊がここに……あれ? 兵隊どこ行った?」
ふと、気づけばキュロスは姿を消していた。
心当たりがあるリク王は「……あいつめ」と呆れたように呟いた。
「兵隊さんも人間に戻ったんでしょ!? ねェ、ルーシーどんな人!?」
「どんな人ってお前……何言ってんだ!? あの片足の兵隊がお前の父ちゃんだったんだよ」
その言葉に、電伝虫越しにレベッカがむせび泣くのが聞こえた。
オモチャとなっていた父と共に過ごしていたのだ、色々とこみ上げてくるものがあるのだろう。
そんな彼女を想い、ルフィは声高に告げた。
「いいかレベッカ! まだ泣くなよ! 兵隊は死なせねェ! お前も無事でいろ! お前が食いたかってた〝メラメラの実〟はやれなくて悪かったけど、そのかわり! おれが必ずドフラミンゴブッ飛ばしてやるから! おれの仲間から離れんな! こんなゲームすぐ終わらせるから! 生き残れ! いいな!」
《……ゔん!!》
打倒ドフラミンゴを宣言し、ルフィは新たな戦場に身を投じるのだった。