ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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本作をどこで終わらせようか迷ってます。


第178話〝キュロス〟

 テゾーロやルフィたちが今か今かと待ち侘びてる頃。

 ついに地下でその時が訪れようとしていた。

「この毒入りグレープも返すね」

 シュガーはトレーボルの粘液に拘束されたウソップに近づく。

 ロビンやトンタッタたちもおもちゃに変身させられてしまい、孤軍となっても腹を括って応戦したが、結果は惨敗。徹底的に叩きのめされてしまい、完全に意識が飛んでしまっている。

 そんな戦闘不能の彼に、シュガーは毒入りグレープなるものを食べさせて殺そうとした。

 しかし……その認識が誤りだった。なぜならグレープの正体は「タタババスコ」という()()()()()()()()()調()()()の塊で、その辛さはトンタッタ族が50人で実験したところ全員気絶し、その内の18人が死にかけたほどである。

 そんな別の意味で悪魔の実である代物を人間が食べるとどうなるか……火を見るよりも明らかだ。

「あんたが食べて死になさい!!」

 シュガーは容赦なくウソップにタタバスコの実を食べさせた。

 その結果――

 

「ぎィやああ~~~!!!」

「きゃあああ~~~!!!」

 

 ウソップはあまりの辛さに、口から火を吹いて目も舌も飛び出して絶叫した。

 その命懸けのリアクション芸を至近距離で見たシュガーもまた、目を飛び出させながら絶叫。

 そのまま意識を失った。

「おい! シュガー!! 気をしっかりもてェ!!」

「あ~~~~っ!!」

「シュガー起きろ! シュガー! んねーんねー!」

 激しく体を揺さぶっても、シュガーは沈黙したまま。

 それは、SOP作戦が成功した何よりの証拠だった。

 

 

 地下で起きた非常事態は、すぐドフラミンゴに伝わった。

《ドフィ~、すまねェ!! シュガーが気絶しちまった!!!》

「――っ!? おい、なんの冗談だ!?」

《ホビホビの実が解けていく……おれたちの10年間がァ~!!!》

「フフ……ハハハハ!! さすがは未来の海賊王の船員(クルー)だ、まさに前代未聞の一味!!」

 トレーボルの報告に動揺するドフラミンゴを嘲笑うように、テゾーロは大爆笑した。

 まさに究極のエンターテイメンツ。我が物顔した支配者が無様を晒すのは、黄金帝でも愉快に見えたようだ。

「彼らには感謝しなければな。私の革命のためには、どうしても目障りな君をどうにかしたかったからね」

「テゾーロ、てめェ……!!」

 ドフラミンゴは悟った。

 テゾーロが電撃訪問したのは、国交のためではなく、麦わら・ローの海賊同盟を利用してドレスローザのドンキホーテ政権を倒すことだったのだ!

「さあ、これで()()()()()()()()()()()というわけだ……!!」

 

 ドロッ!! シュルルルルルッ!!

 

「!?」

 テゾーロが指に嵌めた黄金のリングから火花を散らせた瞬間、それらは液状化したかと思えば、細いロープ上になってドフラミンゴの四肢を拘束した。

「若ァ!!」

「若様!!」

「――おっと、お前らはそこまでだ」

 ガチャリ、と銃を突きつけられる音が響く。

 その声に覚えがあったドフラミンゴたちは、信じられないと言わんばかりに侵入者の名を叫んだ。

「「「コラソン!?」」」

「待たせたな」

 そう、かつてのドンキホーテファミリー最高幹部、コラソンことドンキホーテ・ロシナンテだった。

 いつの間にか現れた人物に、ルフィとヴィオラは目を見開いた。

「何だあいつ!? ミンゴの知り合いか?」

「ロシナンテ()()、やはり来てたのね……!!」

 彼女の言葉に、ルフィは絶句した。

 何と道化師のメイクをした、ドフラミンゴと似た格好の人物が海兵だというのだ。

「前元帥センゴクの直属の部下、それがロシナンテ中佐よ……私たちをドフラミンゴから10年間も守ってくれた。ドジだけど、彼がいなければレベッカもお姉さまも殺されてたわ……!!」

「へー、あいつドジなのか」

「そこ拾わないでちょうだい!! 本人にとってもデリケートなのよ!?」

「まァ、味方ならいいや!! おい兵隊……って、あれ?」

 ルフィは殴り込もうと片足の兵隊に呼びかけるが、彼は姿を消していた。

 その代わり、ドフラミンゴに斬りかかろうとする片足の戦士が見えた。

「誰だあいつ!」

「キュロス兄様……! 私……彼の記憶も失ってたんだ!」

「何言ってんだ!? どういうことだ!?」

 ヴィオラ曰く。

 オモチャたちは元々人間であり、シュガーによって自分たちの記憶から消されてしまっていたとのこと。その能力者シュガーが倒れたことで、記憶を取り戻したという理屈だ。

「彼は元リク王軍軍隊長キュロス! コロシアム史上最強の剣闘士で、レベッカの実の父親よ!!」

「銅像のおっさんか!!」

 正体と真実を知って驚くルフィを他所に、コロシアムの伝説は一直線にドフラミンゴに向かう。

 テゾーロが拘束したおかげで、とても狙いやすい位置にいる。

「感謝する、ギルド・テゾーロ!」

 その姿を見たリク王は、涙ながらに呼んだ。

「キュロスか!?」

「はい! 10年間お待たせして申し訳ありませんっ! 今! 助けに来ました!」

 キュロスは渾身の一太刀で、ドフラミンゴの首を刎ねた。

 その光景に、ルフィですら唖然とした。

「真のドレスローザを取り戻しに来た!!」

「若~~~! おのれ~~!」

「10年! 10年! 我々は耐えて来た! これより、全ての偽りを断ち切らせてもらう!」

 高らかに宣言するキュロス。

 その隙にルフィはイスに拘束されているローに近寄る。

「何してやがる!! 〝同盟〟は終わった!! 失せろ!!」

「そんなもん、自分が決める!! 動くなよ、海楼石に触れねェからカギ外すの難しいんだ」

「しっかり!!」

「おれの言うことを聞いてねェだろ、お前ら!!」

 ルフィは海楼石の錠を震えながらも何とか外そうとするが、下から石が槍のように出て吹っ飛んだ。

 先程までゾロと交戦していたピーカだ。

「……あ!! 石の奴!!」

「フッフッフ……想像以上にしてやられたな……」

 突然首を切られたはずのドフラミンゴが喋り出し、テゾーロとコラソンを除いた一同は驚愕する。

「フフフフ……!! コラソン、久しぶりだなァ……やはりお前も絡んでたか……!!」

「……」

「これはマズい事態だ……!! 〝鳥カゴ〟を使わざるを得ない……!!」

(……ここからが本番だな……!)

 テゾーロはいつになく鋭い眼差しで、ドフラミンゴを睨んだ。

 

 

           *

 

 

「おのれ麦わらの一味! トンタッタ! よくもシュガーを気絶させてくれたな! お前ら絶対ここから出さねェぞ!」

 そして、シュガーが気絶した現場では。

 トレーボルが怒りを露わにしながら、ロビンたちに攻撃を仕掛けようとしていた。

「みんな! ウソップをお願い!」

「了解れす!」

「逃がすかァ!!

 トンタッタに運ばれるウソップを殺さんと、粘液を飛ばそうとするトレーボル。

 だが、そこへ想定外の人物が現れた。

「〝アイスBALL(ボール)〟」

 

 ガキィィン!!

 

『!?』

 突如、トレーボルが球状の氷塊に閉じ込められた。

 人一人を丸ごと封じ込める冷気を操る人間など、この世界ではただ一人しかいない。

「青キジ!?」

『ええ~~~~!?』

「よう、ニコ・ロビン。二年ぶりだな」

 まさかの助太刀に、ロビンは戸惑いを隠せない。

 一方のドンキホーテファミリーと〝呪い〟から解放された海賊たちは、超大物の登場に後退った。

「あなた、なぜここに……」

「なぜって、任務だよ任務。おれァ大将辞めても社畜なんだよ」

『嘘つけェ!!』

 社畜という言葉から最も程遠い男が何を言うか。

「……ま、お前の知り合いはおれだけじゃなさそうだが」

「――うわ! ビビった! 急に燃えやがった! 難しいなコントロール」

 クザンがそう言いながら目を配ると、ゴーグル付のシルクハットや首に巻いたスカーフ、黒いコートと青色を主体とした服装をした金髪の青年が、腕から発する炎に苦慮している光景が。

 彼の隣には黄色いゴーグルをつけた赤いキャスケットを被ったオレンジ色のショートヘアが目立つ女性と、柔道着を着たエビスダイの魚人が立っていおり、他にもビキニアーマーの少女に巷を騒がすルーキーまでいる。

「……海軍の特殊部隊に〝新世界の怪物〟、それにあいつらまで……人気者だねェ、あの王様は」

 含み笑いを浮かべながら、クザンはロビンを連れて近寄る。

「この港から出る武器が世界中の戦争を助長してる。おれたちはそいつを止めに来た」

「成程、革命軍は幾度も兵士を送り込んでいるが、全員ここでオモチャにされていたからマーケットをずっと暴けなかったってか」

「っ!? 青キジ!!」

「まーまー落ち着けって、おれらも似たような理由で来てんだ。お前さんらと揉める気はねェよ、革命軍」

 両手を上げて交戦の意思はないとアピールする青キジ。

 その言葉に噓はないと察したのか、金髪の青年――参謀総長のサボは向けていた鉄パイプの先端を下ろす。

「コアラにハックまで揃えて……そっちのチンピラはバルトロメオか? で、そこのボインの嬢ちゃんは確か……」

「おい、失礼だろうが!!」

「レ、レベッカよ! あなたは?」

「おれか? おれはクザンってんだ。青キジって呼ばれる方が多いかな」

 青キジは相変わらずの態度で自己紹介すると、キャスケットを被った少女――コアラがロビンの姿を見て抱き着いた。

「ロビンさん!」

「コアラ、元気だった? サボとハックも変わりないようね」

「よう。まさか「SWORD」の最高幹部とお出ましとはな」

 クザンを一瞥しつつ、サボはロビンに笑いかける。

 その様子を陰からドンキホーテファミリーの三下たちが恐る恐る覗いていた。

「革命軍のNo.2が何でここにいるんだよ!?」

「しかもあのデケェの、元大将の青キジだぜ!!」

「早く若に報告をし――」

 

 ドドドドッ

 

「……させませんよ」

「久しぶりに見たな、お前の動くところ」

「これでも現役の諜報員も兼務してますので」

 人差し指で次々と急所を貫かれ、三下たちは全滅した。

 下手人は、テゾーロの重要な部下の一人であるサイだ。その隣には愛用のライフルを抱えたメロヌスがいる。

「……どうすんだ」

「ドフラミンゴのことです、きっとドレスローザの人々を皆殺しにする。海賊たちと手を組んでドフラミンゴを倒すのが最初でしょう」

「……全く、とんだ貧乏くじを引いちまったぜ」

 メロヌスは煙草の紫煙を燻らせ、天を仰ぐ。

 あらゆる勢力が、打倒ドフラミンゴに傾こうとしていた。

 

 


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