ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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テゾーロの覚醒は本作オリジナルです。
まあ、原作でも頑張ればやれそうな気も……。


第177話〝虎視眈々〟

 王宮地下1階。

 ここでは、ルフィ・ゾロ・ヴィオラの三人が王宮には入ったものの、ピーカのイシイシの能力で狭まる壁の打開策がなく、防戦一方の苦戦を強いられていた。

「うわああああ!! おい、どういうことだー!! 色んな所が行き止まりだぞ!!」

「ピーカの意志で壁も移動するのよ!! それより〝麦わら〟、彼……本当に大丈夫!?」

「ん!? ゾロか!? あいつなら心配すんな!! 何があっても大丈夫!!」

 ニシシ、とルフィが笑っている頃、ゾロはピーカと一騎打ちを繰り広げていた。

 しかし、斬っても斬っても次々と現れる壁という名の攻撃にゾロの体力は奪われる一方となっていた。

「ハァ……ハァ……キリがねェ……!! どこをどうすりゃ攻撃したことになるんだ、こいつ!?」

 あまりにも巨大な敵の、厄介な特性に苦しめられる。

 しかしそれは、ピーカがゾロの強さを警戒している証でもある。

「……!!」

 死角からゾロの動向を伺う。ピーカとしても、麦わらの一味の主戦力たる剣豪〝海賊狩りのゾロ〟を、どうにか倒しておきたいところだった。

 だが、遠くから聞こえた靴音と、それに伴う強い気配に、ピーカは戦慄した。

「っ……!?」

「……ん?」

 不意に、ゾロは気配が消えたことに気づいた。

 ピーカがその場から撤退したのだろう。自分をあれほど倒すことに執着していた相手の行動を不審に思うと……。

「あららら、さすがに逃げちまったか」

「……てめェ、何でこっちに!!」

 現れたのは、別れたはずのクザンだった。

「いや、ね……ちょいと厄介なことになっちまったらしくてよ」

「厄介?」

「先代国王のリク・ドルド3世が、ドフラミンゴに捕まってるって情報を()()から聞いてよ。……元でもおれァ海軍の「大将」はってた男だ、海賊の人質になった人間を放置すんのはよくねェだろ?」

 

 

 一方、片足の兵隊と小人族たちは、ドンキホーテファミリーの幹部・グラディウスと戦っていた。

「まともにやっても勝ち目はない! 私とランポーで一瞬のスキを作ります!! どうか先へ!!」

「おい、やめろ!! またそんなことを!!」

左右から行こう! カブさん!!」

 槍を携えた副長のランポーと、「ムシムシの実 モデル〝カブトムシ〟」の能力者のカブが片足の兵隊と走りながら策略を立てる中、グラディウスは「なぜおれがあんなネズミ共の相手を」と愚痴を溢しながら構えた。

 すると、グラディウスの両腕が膨らみ、グラディウスは左手でカブを、右手でランポーを見事に捕らえた。かと思えば、グラディウスの両腕は爆発し、爆発に巻き込まれたカブとランポーは焦げた状態で気絶してしまい、その隙に片足の兵隊はグラディウスを横切って前に進んだ。

「オモチャの速度など知れている──おれは〝バムバムの実〟の「破裂人間」!!! パンクさせられるものはおれ自身の体……そしておれが触れた〝無機物〟!!!」

 グラディウスは片足の兵隊に一瞬で追いつき、その胴体を鷲掴みすると、片足の兵隊の頭部全体がまるで風船の様に膨らんでいった……!

「プリキなどは跡形もなく消し飛ぶ……粉々に消えてなくなれ!!!」

「は……放せ!! 私には使命が……!!」

 片足の兵隊を破裂させようとするグラディウスだったが、そこへルフィが乱入し、〝ゴムゴムのJETスタンプ〟で跳ね飛ばした。

 グラディウスの腕から放れた片足の兵隊は、まるで風船の空気が抜けるかのようにみるみる小さくなり、元の大きさに戻った所をルフィがキャッチした。

「兵隊!! フランキー達は!? 一緒じゃねェのか!?」

「…………キミは」

「麦わら!! 話してるヒマはないわ!!!」

「〝麦わらのルフィ〟……!! ヴァイオレット!! 貴様よくも若様を裏切ったな!!!」

 裏切者を許さないグラディウスは頭部を膨らませ、爆発によって生じる破片でヴィオラを始末しようとする。

 が、その時予想だにしない出来事が起こった。

 

 ズズズズ……!

 

『!?』

 何と、天井の一部が黄金となったのだ。

 突然の現象に、一同は立ち止まって驚きを隠せない。

「黄金!?」

「な、なにが……!?」

「何だありゃあ!?」

「これは、まさか……!」

 ルフィたちが戸惑う中、グラディウスは答えを導き出して唖然とした。

 黄金を操る能力など、彼が知る限りでは一人しかいない。

 世界で最も影響力が強い権力者の一人――黄金を操る〝新世界の怪物〟だ。

「ギルド・テゾーロ!!」

 その名を口にした途端。

 黄金になった天井から、直系数メートルはある巨大な黄金の触手が現れ、グラディウスに襲い掛かった。

「や、やめろーーー!!」

 

 ドゴォン!!

 

 黄金の触手はグラディウスを横薙ぎし、思いっきり石壁に叩きつけた。

 触手が離れると、彼は大の字で減り込んでおり、そのまま気絶してしまった……。

「あ、あのグラディウスが一捻り……!!」

「でも、一体どうやって!?」

「まァ、どっちでもいいさ!! とにかく2階に行きゃいいんだろ?」

「!? ちょっと、階段はそっちじゃ……!!」

 ルフィはヴィオラを抱えると、彼女の助言も聞かずに猪突猛進し、ガラスをぶち破った。

 そして宙で身を捻り、二階に手を伸ばして一気にスートの間まで迫った。

「な……何と一気に目的の部屋の前に……!!」

「おい!! 何で隠れるんだよ!! ミンゴいたぞ!!」

「静かに! 彼らの作戦を台無しにしないで!!」

「作戦……!?」

 

 

           *

 

 

(どうにかバレずに仕留められたな)

 窓の外でルフィたち三人がこれといった傷を負わずに来たのを察知し、ホッと安堵する。

 グラディウスを仕留めたのは、テゾーロなのだ。

 彼は政治や外交に尽力する傍ら、暇さえあれば能力を鍛え続けてきた。それが実を結び、ついに覚醒の領域に至った。

 ゴルゴルの実の覚醒は、一度触れた黄金に起きた出来事を感知できることだが、それに加えて触れたものを黄金にするという領域にまで鍛えた。その技術に見聞色の覇気を併せることで、誰にも悟られずに遠くの敵を攻撃するという荒業を成し遂げたのである。

 ただし、床にどうしても触れなければならないので、今回はドフラミンゴの目を盗むのに苦労したが。

(それに、順調にここまで()()()()だ。あとは彼らを信じるしかない)

 あくまでも「機」を待つテゾーロ。

 そんなことを考えているなど知るはずもないドフラミンゴは、ローを尋問していた。

「――お前らの狙いはSMILE工場……それだけのはずだ! 今日の思いつきでできることじゃねェ……!! なぜ〝麦わら〟たちとグリーンビットの小人たちがつながっている!? どうやって地下へ侵入した……!?」

 ドフラミンゴの呟きに、ローは怪訝な表情を浮かべた。

 無理もない。ローもリク王軍の案件はノータッチで、そもそも反乱分子がいること自体知らないのだから。

「なぜ〝シュガー〟を狙う……!? 偶然でなけりゃあ……奴らはこの国の闇の「根幹」を知ってることになる……!!!」

 そう、問題はそこだ。

 このドレスローザは、支配体制がホビホビの実に頼っているどころか依存しているという欠点がある。ホビホビの能力は「オモチャにされた生物の記憶が全世界から消滅する」「能力者と契約を結べば絶対に逆らえなくなる」という凶悪極まりない性質なのだが、シュガーが気絶すればオモチャは全て元の姿に戻り人々の記憶も元に戻ることになり、あっという間にドフラミンゴの支配が崩壊する。

 シュガーはドレスローザの闇であると同時に、ドレスローザの弱点とも言えるのだ。

「……言ったはずだ……あいつらとおれとはもう関係ねェ……同盟は終わっている!! お前の言ってることは、おれにはほぼ理解できねェ……」

「フン……!! こんな尋問、千里眼を持つヴァイオレットがいりゃあ瞬時に真実を見抜けるんだが……それともお前の差し金ってこともねェよなァ、リク王……? トンタッタはかつてお前にも仕えていたんだ」

 拘束されたリク王を見やるドフラミンゴだが、それも一瞬のこと。

 まだ可能性が残っていることに気づき、サングラス越しに睨みつけた。

「それとも、お前の仕業か? テゾーロ」

「――私はこの国の政治は不干渉だ。藤虎がこの国を守るとお前に言った手前、私がこの国を滅ぼさねばならん理由がどこにある?」

「……ちっ」

 それなりに筋の通った返答に、ドフラミンゴは舌打ちした。

 テゾーロは相応の権力と軍事力を持ってるが、あくまでも経済力――カネの力で物事を動かす。加盟国一つを失うのは、テゾーロの損失にもつながるのだ。事実、ドフラミンゴはテゾーロを警戒してなるべく穏便に済ましてきたのだから。

「カジノのおっさん……! トラ男もちゃんと息あるな!」

「お父様!! なぜ王宮に……!?」

「リク王……!! 10年間……よくぞご無事で……必ずお助けします!!」

 ルフィたちは窓から様子を伺うが、ヴィオラの言う作戦が成功するまでは待つべきだろう。

 すると、三人の傍に一人の人物が近づいた。

「よくぞここまで来ましたね」

「「「!?」」」

 思わず振り返る三人。

 視線の先には、口元に人差し指を当てる黒スーツの男。

「あなた、確かテゾーロの部下のサイ……!!」

「ヴィオラ王女、ご無事で何より」

 テゾーロの部下と知り、警戒を解く一同。

「テゾーロが動いていたのは知ってたわ。でもドフラミンゴには海軍大将が……」

「問題ありません。そもそもイッショウさんは王下七武海制度の完全撤廃を目標とし、テゾーロさんと協力関係にあります。というか、イッショウさんは隙あらばドフラミンゴの首を取りに行くタイプです」

「海軍大将として問題児じゃない……?」

「サカズキ元帥だけでなく、新大将のアラマキさんにとっても頭痛の種と聞いてます。()()()()()()()()()()()()()()()()()ですからね、彼は」

 新海軍大将の思惑を知り、三人は笑みを浮かべた。

 藤虎は形としてドフラミンゴの味方を取るだけに過ぎず、事が終わり次第始末しようという魂胆なのだ。

「で、どうすんだ? 乗り込むか?」

「まだです。ホビホビの呪いが解けてから一気に制圧します。ルフィさん、それまでは耐えてください、ドフラミンゴは必ず隙を見せる!」

「おう!」

 息を殺し、天夜叉の完全な隙を伺うことに集中する。

 

 ――シュガー気絶まで、残り数分。


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