ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

180 / 183
新年初です、今年もよろしくお願いします。

ワンピースでSWORDのメンバーの声優がわかりましたね。
プリンス・グルスが煉獄さんだったので、孔雀は甘露寺さんであってほしいです。(笑)


第176話〝大大人間(だいだいにんげん)

 テゾーロが王宮から出れる状態ではない頃。

「出て来たと思ったら……お前何で泣いてんだよ!!」

「うおえ~~~~~ん!!!」

 コロシアムにいたはずのルフィは、ある人物の手引きによって脱出。

 ゾロと錦えもんと合流し、錦えもんチョイスの動物の着ぐるみで行動をしていた。ちなみに着ぐるみは皆チョンマゲ付きで錦えもんがカエル、ゾロは猫、ルフィは鯉の着ぐるみである。

「しかし……海軍もすっかり拙者達を町のオモチャと勘違いしてござる!」

「ギリギリだぞお前……!! この着ぐるみの動物チョイスおかしいからな!!」

「ん? 〝ポピラー〟でござろう……特にコイなど」

 ゾロの言う通り、チョイスが魚類なのは少しおかしい。

 それでもバレないということは、魚類のオモチャが存在するということなのだろう。

「──で うるせェよお前っ!! トラ男を救う気あんのか!?」

「トラ男は助げる……!! ミンゴもブッ飛ばす!! 〝メラメラの実〟も……もう大丈夫だ!!」

「大丈夫!?」

「生ぎてると思わながっだんだ……あ……あのとぎ死んだと…!!! 死んだど思っでだんだ!!!」

 ルフィが泣きながらコロシアムで起きた出来事を説明していると、思わぬ人物が眼前に現れた。

「あららら……コロシアム抜け出して、とうとうここまで。そろそろってトコか?」

「ぬっ!! 何奴でござる!?」

「だ、(だい)(だい)(だい)(げん)……!?」

 サングラスをかけ、暗いコートに袖を通した3メートル近い長身の男が不意に現れ、錦えもんは居合の構えを取り、小人族のウィッカは震えあがる。

 ルフィとゾロも何者かわからない様子だが、相当な強者と判断してか覇気を纏い始める。

 しかし男は両手を上げ、戦闘する気はないと弁明しながらサングラスを上げた。

「まァ……お前らとは()()()()、麦わらの方はマリンフォードん時以来だからな。嫌でも覚えてるだろ?」

「「――〝青キジ〟!?」」

 ルフィとゾロは冷や汗を流し、男の異名を呼んだ。

 男の正体は、クザンだった。

「盲目のおっさん以外の大将が何でここにいやがる……!!」

「な、何と!?」

 男の素性を知った錦えもんは、言葉を失う。

 先程、新海軍大将の藤虎の実力を目の当たりにした分、それに匹敵する猛者がもう一人来ているのだから無理もない。

 一方のクザンは「そういきり立つなよ」と三人を宥めた。

「おれは大将辞めて、海軍の機密特殊部隊の司令部やってんだ。今お前らを捕らえるのは()()()()()()()都合が(わり)ィんだよ」

「都合が悪い……?」

「要するに、お前達と事を構える気はねェってこった。考えてもみろ、本気で捕らえるんだったらイッショウと対峙してた現場におれも駆け付けた方が確実だろ?」

「そ、それはもっともでござる……」

 世界を騒がす〝麦わらの一味〟を捕らえる絶好の機会を、わざわざ見逃すのは確かに不自然だ。

 ということは、クザンがルフィ達の前に姿を現したのは、別の理由があってのことだ。

「じゃあ、何しに来たんだよ?」

「そうだな……ひとまずお前ら、ドフラミンゴをぶっ飛ばすんだろ? でも奴の部下のことはどこまで知ってんだ?」

「知らね」

「だと思ったよ……じゃあ、ドンキホーテファミリーの中で厄介な二人だけ教えてやる」

 クザンは、ルフィ達の目的達成に向けて必要な情報を語り始めた。

 ドフラミンゴファミリーの闇を少しでも知るため、ルフィ達は耳を傾ける。

「一人は、スペードの席に座る最高幹部・ピーカ。イシイシの実の岩石同化人間で、石や岩で構成されている物ならば島の地形を大きく変えることができる。ドレスローザは岩石が多い上、戦闘になれば仲間や民衆の巻き添えは確定だな」

「えげつねェ能力だな」

「もう一人はシュガー。ホビホビの実の能力者で、触った奴をオモチャに変える。触れた相手なら能力者だろうが関係ねェし、何より世界中のあらゆる人間の記憶から、オモチャになった人間の存在が消されるのが厄介だな」

「じ、実在する人間を全てオモチャにしてしまうのでござるか!?」

 錦えもんが戦慄させる。

 そんな恐ろしい能力を持つ者の手にかかれば、間違いなく計画は破綻する。

「当然、ドフラミンゴのイトイトも面倒だが……まァ、お前らのことだ。力押しでどうにかするだろ」

「おう!」

「まァ、あんまり肩入れすると後でドヤされちまうから、ヒントはここまでだ。……それと言っとくが、シュガーは幼い少女の見た目をしている。油断すんなよ?」

 クザンはそう忠告してその場を去った。

 まさか〝ホビホビの実〟の能力者が、幼い女の子の見た目をしているとは――三人は驚きを隠せなかった。

 しかしクザンが自分達にウソをつくために接触を図ったわけではないのは明らかなので、情報を得た以上いくらでも対策ができると前向きに考えることにした。

 

 

           *

 

 

 同時刻、サイは路地裏である人物と相対していた。

「まさかというべきか、やはりと言うべきか……革命軍も動いてましたか」

「グラン・テゾーロの外交官のあなたがいるということは、()()()()()()なのね」

 サイの前でドンキホーテファミリーの三下達を伸し、その伸びた三下達の上に座る一人の少女。

 彼女の名はコアラ――革命軍幹部で、魚人空手師範代を務める革命家だ。

「大方の見当はつきます。ドレスローザから流れる武器や兵器の流通の調査でしょう?」

「さすがにあなた達も、この国の裏事情は知っているのね」

 サイがドレスローザの闇取引の事情を一目で見抜いたため、コアラも自分達革命軍が情報を欲していることを見抜く。

 そもそもサイは、サイファーポールの人間。諜報員なので情報収集はお手の物だ。

「〝天夜叉〟に海賊同盟、〝新世界の怪物〟に新海軍大将・藤虎、そして「SWORD(ソード)」に続いて革命軍か……この国も大ごとに見舞われそうですね」

「!? あの噂に聞く、〝黒腕のゼファー〟が司令官の機密特殊部隊まで……!?」

 極秘任務の詳細まで海軍に伝わっていることを知り、コアラは目を大きく見開く。

 これから起こるドレスローザの混乱を思い描いているサイに、コアラはさらに話しかけてくる。

「あの人は……ギルド・テゾーロはどうしてるの?」

「最高幹部を始めとしたドフラミンゴの部下達の監視の目が厳しく、王宮から身動きが取れないそうです」

 こちらも概ね当たっていたのか、コアラは眉を顰める。

「実はある伝手から、麦わらの一味がドレスローザで大きな動きを見せるとのことで。我々もそれに乗じて、ドフラミンゴを倒すつもりです」

「!? 本気なの!? 海軍が黙ってないんじゃ――」

「海軍の目的は「海賊同盟に勝手なマネをさせないこと」と「ドフラミンゴの()を守る」こと。ドンキホーテファミリーを守るつもりは最初(ハナ)からないんです」

 サイはコアラが二の句を告げる前に、言葉を紡ぎ続ける。

 このままドフラミンゴが失脚すれば、今度の〝世界会議(レヴェリー)〟で王下七武海制度の完全撤廃が現実味を帯びる。今の王下七武海はミホークのような四皇級の猛者も在籍しているが、一部の面子の処遇はテゾーロが権力と財力にものを言わせて丸く収めるという。

 そして、ドレスローザでの海軍の動向に関しては、藤虎が一任するというのだ。

「ところで、あなたがいるということは、()も来ていると?」

「……彼? 誰のこと?」

「こんな時にシラを切ってどうします? ドフラミンゴ相手なら動くでしょう、革命軍の参謀総長が」

 サイはコアラの腹を探ろうとする。

 〝反逆竜〟と称される革命家・ドラゴンの右腕的存在が、これ程の案件に指をくわえて静観を決めるはずがない。必ず革命軍の中でも大幹部クラスの面子を動かすはずだ。

「……一応〝敵〟よ?」

「諜報員なもので。昔からのクセですよ」

 不敵に笑うコアラに釣られ、サイも冷徹な笑みを浮かべた。

 

 

           *

 

 

 クザンから重要な情報を得たルフィ達は、密かにドフラミンゴを裏切ったヴァイオレットことヴィオラの手引きにより、王宮の外壁あたりまで侵入に成功していた。

「よし、着いた!」

「アレが王宮の入り口か!?」

「まだ王宮の下段外壁塔の入口よ!! 門番に見つからないで……!! 外壁塔にも秘密の入り口があるわ、そっちへ!! 騒いで幹部達に連絡が回れば、とたんに動けなくなる!! 特にピーカという男に見つかったらドフラミンゴには到達できない!!」

「ピーカ……青キジがさっき言ってたな」

 ヴィオラが口にした名前に、ゾロはクザンが注意するべき相手として明かした敵幹部の名前を思い出す。

「ん? ルフィ殿は……?」

「あの……アレ」

 ふと、いつの間にかルフィがいないことに錦えもんは気づいた。

 迷ってしまったのかと思うと、ウィッカが正面を指差した。

「〝ゴムゴムの〟ォ~~~~!! 〝ギガント(ピストル)〟~~~!!!」

『ギャーーーッ!!』

「「何やっとんじゃァ~~~~!!!」」

 ルフィは何と、正面玄関の警備兵を吹っ飛ばした。

 全く話を聞いてなかった。正面からの方が早いかもしれないが、心から空気を読んでほしいところである。

「開いたぞ!!」

「開いた、じゃねェよ!!」

 ルフィの破天荒ぶりに、ゾロも思わずツッコんだ。

「し……仕方ない行きましょう!! こうなったら正面からの方が早い!!」

「脱いでいいよな? もうコレ!!」

「勝手にしなさい!!」

 物凄くヤバいことをしたルフィの呑気さにカンカンのヴィオラ。

 それを宥める錦えもん。

 その時、辛うじて意識が残っていた正面入り口護衛兵により、麦わらのルフィが城中に伝えられたのだが……。

「……? あァ!? 何を言ってやがる……!?」

 その報告はドフラミンゴの下にも届いていたが、彼はその報告に困惑していた。

 それもそのはず……侵入者である〝麦わらのルフィ〟は、現在進行形でコリーダコロシアムにて選手・ルーシーとして各ブロックで勝者となった強者達と鉄パイプを片手に戦っているのだから……!!

《──こちらB-2!! 外壁塔大食堂前!! 間違いありません!! 侵入者は〝麦わらのルフィ〟!! 〝海賊狩りのゾロ〟!! ──そして、ヴァ……ヴァイオレット様……ギャー!!!》

「………………!! …じゃあ今!! コロシアムにいるあいつは誰なんだ!? 一体何が起こっている!!」

 ドフラミンゴは、電伝虫越しに怒鳴り声を上げた。

 ドン・キホーテ政権崩壊が、少しずつ迫ろうとしていた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。