ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
ドレスローザ編は基本的に原作に準じてるので、省くところは省きます。
その頃、広大なひまわり畑の地下にある反ドフラミンゴ体制「リク王軍」決起本部にて。
「それにしてもドフラミンゴの弟が、まさか海兵だとはなァ……」
「それも、あの〝仏のセンゴク〟の直属の部下……!!」
「本当なら、おれはもっと早く死んでた。だが〝剣星〟アオハルのおかげで命拾いして、この地で10年も潜伏捜査している」
トンタッタ王国の小人族と行動を共にするウソップ達は、一人の海兵と邂逅していた。
その名は、ドンキホーテ・ロシナンテ。ドフラミンゴの実の弟だ。
「ドレスローザが前々から狙われてたという情報は得ていたが……たった一夜で全てがドフィの手中に収まるのは予想外だった……! 悔しくて仕方がねェ……」
「我々も同時…リク王の乱心を鵜呑みにして新王ドフラミンゴに接触し、このあり様なのれす。リク王を信じ抜けず恥ずかしい……!!」
ロシナンテに続き、トンタッタ族の王であるガンチョも嘆いた。
「──そうか、やりきれねェな……そこまでみんなが慕ってた国王を無実の罪のまま死なせちまったのか……!!」
「いや、リク王はまだ生きている」
『!?』
ロシナンテの言葉に、一同は目を見開いた。
それに続き、リク王軍の隊長であるオモチャ・片足の兵隊が語った。
「その通り!! ドフラミンゴは当時の王女・ヴィオラ王女の持つ〝能力〟に惚れ込んでいた……そして、ドフラミンゴは王女を意のままに動かすため、「リク王を殺さぬ代わりにドンキホーテファミリーに入り、新王たる俺に尽くし働け」という条件を出した!!」
「ヴィオラ王女は現在も兄の部下として生きている……ファミリーの幹部〝ヴァイオレット〟と名を変えてな」
二人の言葉に、ウソップ達は言葉を失う。
10年に及ぶリク王の苦しみやヴィオラ王女の心中……それはあまりにも計り知れない。
あの夜にリク王と同じ様に操られ、不本意に国民を傷つけてしまった兵士達も、ある者達は殺されたが、ある者達はその場でドフラミンゴにひれ伏し、護衛兵として生き延びている。しかしそれも苦渋の決断で、どれ程の屈辱なのかも計り知れない。
だが、ここ数日で情勢は大きく揺らいだとロシナンテは告げる。
「ひとまず……ドフラミンゴは反乱の意志を闇へと葬り去るが、それはオモチャとして奴隷にしており、全員が全員抹殺されてる訳じゃない。裏を返せば国の闇には反乱の意志が蠢いているということだ」
『!!』
「そう! そしてオモチャにされた我々は人間だった頃の事を全て憶えているが……周りの人々は例え家族であれ我々の存在をすっかり忘れてしまう。大切な者を忘れたことにも気づかず、町を歩くオモチャ達の中にも自分自身を忘れてしまった仲間もいる。この〝悲劇の数〟こそが今回の我々の作戦の大きな〝鍵〟を握っている!!!」
二人の言葉にフランキーはピンと来たのか、涙を拭いながら声を強めた。
「成程、そうか!! お前らの言う〝勝機〟ってのはそういうことか!! 確かに「七武海」の一団を相手にするにはこれだけじゃ心許ねェが、この国のオモチャ全員が反乱分子とすりゃ相当な勢力だ!!」
「ああ……今日は来るべくして来た決戦の日!! 今までの落とし前をつける最後のチャンスだ!! 今朝の事件もこの前兆と言える……!!」
「そう!! 今日この日にウソランド率いるノーランド一族が現れたのも決して偶然じゃない!! 戦えと天が言っているのれす!!」
トンタッタ族戦士のリーダー的存在であるレオの言葉に、ウソップは首を傾げた。
「…今朝の事件って?」
「ドフラミンゴが一度王をやめた事件だ! それを聞いた我らの喜びが……想像できるか? 〝奇跡〟が起きたと思った……!! ――そして〝誤報〟という知らせ…!! 天国から地獄の淵へ叩き落とされた我らが…
…絶望と共に今日を決戦の日に選ぶのは、ごく自然なことじゃないか?」
(なんかすみませ──ん!!!)
ウソップ達はまさかそのドフラミンゴ王位辞退誤報は自分達が招いたことだとは言えなくなり、冷や汗とムンクに近い顔で心の中で謝罪するのだった。
「だが、その誤報事件で我々は強大な力を得られるチャンスが来た!!」
「強大な力?」
「〝新世界の怪物〟と呼ばれるカジノ王――〝黄金帝〟ギルド・テゾーロが動いたのだ!!」
ギルド・テゾーロの名を聞き、ロビンはまさかと思いつつも尋ねた。
「まさか、兵隊さん……テゾーロと手を結ぶつもり……!?」
「その通り!! 彼はこの世界の台風の目になる男!! 以前よりドフラミンゴとは対立しており、世界政府側の人間でも
つまり、ギルド・テゾーロは満を持してドフラミンゴを潰しに来たというのだ。
確かに、これに便乗すれば、作戦はスムーズに遂行されるだろう。
「おれ達はドフラミンゴを失脚させた場合、世界情勢が大荒れになると読んでた。だがその大荒れの情勢を丸く収められるのがテゾーロだ! あいつがいれば、世界の均衡は著しく不安定になってもどうにでもなる。それぐらいの影響力があるからな」
「でも、今は動けないんじゃないかしら? ファミリーもそこまでバカじゃないはずよ」
「ああ。あの狡猾なドフラミンゴのことだ、最高幹部を寄こしてでも動向を監視するだろう。だがテゾーロは自身の有能な側近を何人も連れてきている。彼らとコンタクトを取れれば、必ず力を貸してくれる!!」
片足の兵隊の力強い言葉に、リク王軍の士気は高まる。
「おそらく、テゾーロが本格的に動けるのはシュガーを気絶させた後。おれ達はその前にある程度ファミリーの兵力を抑え、シュガーを気絶させなきゃならねェ」
「工場の破壊なら、スーパー任せとけ!!」
「それはありがたい。工場はドフィにとっても急所となり得る。幹部達が相当集まるだろうが……」
「お、おい! 勝手に話を進めないでくれ!」
ウソップの嘆きに耳を傾けず、兵隊とロシナンテはフランキーとロビンと作戦を煮詰めていくのだった。
*
「マズいな……」
ドレスローザの王宮で、テゾーロはボヤいた。
現状、彼は身動きが取れないのである。別に牢屋にいるわけではないが、ドンキホーテファミリーの幹部や下っ端達の監視が思ったより厳しく、時々石の壁から視線を感じるのだ。
(最高幹部にも見張られるか……嬉しいのか嬉しくないのか)
テゾーロの言う最高幹部とは、ピーカのことである。
彼は〝イシイシの実〟を食べた「岩石同化人間」――自身の肉体を周囲の岩石と一体化することができ、地面を隆起させたり岩石を身にまとって巨人化するなど攻撃面の応用が利き、岩石の中に潜り込めば追跡や監視も可能となる。
王宮は石で構成されている部分が非常に多いため、四六時中テゾーロを見張ることができる。というか、見聞色の覇気でテゾーロは監視されているのを薄々察知している。
「メロヌス達に任せるしかないとは、中々難儀な立場だ……」
そうボヤいた時だった。
扉の向こうからグラディウスが現れた。
「テゾーロ。若がお呼びだ、すぐに来い」
「全く、国賓に対する扱いが雑すぎるぞ……」
幹部の人間に案内されて廊下を歩き、最高幹部が座るイスがある「スートの間」へと辿り着く。
そこには、藤虎と対峙するドフラミンゴと、扉の隣で拘束されている老人、そして椅子に拘束されている満身創痍のローがいた。
「お、お前は……ギルド・テゾーロか!?」
「……もしや、あなたはリク・ドルド3世……?」
リク・ドルド3世もといリク王は、テゾーロの姿を見て驚き、助けを求めようとする。
しかしドフラミンゴが不敵に笑いながら睨んできたため、それ以上のことは言えなかった。
テゾーロもまた、下手な介入をすればややこしくなると判断し、あえて黙り込むことにした。
「海軍が動いた。よく決断してくれたな……〝藤虎〟」
「…………何もあんたの味方をしようってんじゃありやせん……」
イッショウは杖を突きながらドフラミンゴに近寄り、持論を展開した。
〝麦わらの一味〟に加え、さらに不審な者達の動きがあるというのなら、海軍が動いて事態の鎮圧に出るのは当然の筋。〝麦わら〟の目的がドフラミンゴを討ち取ることだとするなら大きな破壊も厭わないはずなので、それを止めるのが市民の被害を最小限に抑えるために戦う軍隊のあるべき姿だ。
「あんたは…………
「何だと……?」
イッショウの声色が変わり、ドフラミンゴも警戒心を露わにする。
「あたくしァ世界徴兵の新参者ですが、大将という立場を受けたからにゃあ、やりてェ事がある」
「――何だ?」
「それは……〝王下七武海〟制度の、
その言葉に、ドフラミンゴは耳を疑った。
確かに、二年前のクロコダイルによるアラバスタ王国の乗っ取り未遂事件があり、制度に懐疑的な者も少なくはない。それどころか存在意義すら疑問視する状況が増えてきている。
とはいえ、四皇達の勢力を牽制し、他の海賊に対する抑止力として存在する集団である。そう易々と潰しては行けない組織であるはずだ。
「三大勢力の均衡ってやつはどうなる?」
「さァ、崩してみなきゃわからねェ。だから……」
「だから?」
「あんまり悪ィ事重ねると――」
ガギィン!
イッショウが続きを言おうとした途端、ドフラミンゴが覇気を纏った蹴りを見舞った。
当然、イッショウは仕込み杖を抜いて容易く受け止めた。
「……首の値が上がりやすぜ? 天夜叉の旦那」
「フフフッ……「消すなら今の内に」と言われた気がしたよ!!」
「慌てなさんな、今は仲良くやりやしょう」
イッショウは「あんたの国を守ろうってんだ」と言いながら納刀する。
もっとも、ドフラミンゴを守る気はゼロで、ドレスローザの国民のことを守るという意味だろうが。
(さて、リク王とローの安否は確認できたとはいえ、迂闊に動くのもよくない。どうするべきか……)
「──今年は〝
「!?」
話を振られてギョッとするテゾーロに、イッショウは朗らかに笑いかけた。
「へへ……あんたみてェなのがいてくれると、あっしとしちゃあ心強い。何卒、〝王下七武海〟制度の完全撤廃の件はよろしくお願いしやす」
「それ、ここで言っちゃあマズいんじゃないか!?」
「……こらいけねェや」
「ハァ~……」
とぼけたフリをしてるのか、本当にとぼけてるのか、不安に駆られるテゾーロだった……。
来年はバトルシーンを増やします。