ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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大変お待たせ致しました。
本作が月一のペースで申し訳ありません。


第174話〝新旧海軍大将〟

 さて、ここはドレスローザ沖。

 島に上陸せず、サニー号で待機することになったナミ達は、モモの助の「将軍ゴッコ」という時代劇コントに付き合っていた。

「トノ。ご気分は如何ですか?」

「うむ、くるしうない。余はマンゾクに思うぞ♡」

「そう……それはようございました♡」

「余も満足でーす♡」

 そうブルックが寄った瞬間、ガン!! という音と共に鉄拳制裁が下された。

「ドベハラバンヌ!!! チョ……チョット痛いナミさん!! え!? ひざ枕パーリーじゃないんですか!?」

「どんなパーリーよ!!!」

 大きなタンコブができて悶絶するブルックに、チョッパーが説明する。

 曰く、モモの助を見ていると、一人で放っておくと思いつめた様に塞ぎ込むことがあるという。その理由については話してくれないが、彼はまだ8歳だ。そんな幼子が塞ぎ込むということは、心に深い傷を持ってる可能性もある。

 ブルックもかつてのルンバ―海賊団崩壊後、50年も孤独だった。事情は違うだろうが、心の傷というモノがいかに難しいのかよくわかっている。

「そうか……そうだったんですか……」

「おい、「ホネ吉」! よきょうで座をもり上げよ!」

「イヤです。私、ルフィさんの命令しか聞きたくありません」

「やれよ!!!」

 チョッパーのハリセンツッコミにより、ブルックは()()空気を読み、ギターを弾きながら歌うのだが──

「やだよ♪ ヤダーヨ♪ 埋んめ~てーも♪ 埋んめ~てーも♪ 帰っーってくるーよ♪ バイタリティ~~~~死体(ゴースト)!!! カモン!!」

 

 ガシャン! バサバサ……トントン!!

 

『……え?』

 四人しか居ないはずのサニー号から、居ないはずの五人目の声と物音が響き渡った。

 しかも男子部屋からだ。

「やだよー……全く……やだやだ……」

「誰かいる~~~~!?」

 

 

 時同じくして。

 テゾーロはドフラミンゴ達と会食を終え、会談していた。

「私の部下にまで振舞ってもらい、申し訳ない」

「フフフフフフ! そう気にすんな。お前は国賓だ」

 相変わらず不敵な笑みを浮かべるドフラミンゴに、テゾーロは目を細める。

 ドンキホーテファミリーを倒せば、世界会議(レヴェリー)でも優位に事を進められるが、焦りは禁物だ。ここで悟られるわけにはいかない。

(ルフィ達は上陸し、藤虎も来てるはず。だが変にこちらから行動して、予想外の事態を引き起こすのは避けなければ)

「……そろそろだな」

「?」

 ふと、ドフラミンゴが立ち上がり、宙に浮いた。

 イトイトの実の能力で空中の雲に糸を引っかけたのだ。

「少し離れる。なァに、すぐ終わるさ」

「所用なら構わないが……」

「フッフッフ! おれが留守の間は頼むぞ」

 ドフラミンゴはファミリーの幹部達に、テゾーロ達を見張るよう暗に示し、王宮を後にした。

「……さてと」

「待て、ギルド・テゾーロ」

 徐に席を立った途端、黒ずくめのコートとゴーグル、マスクに覆われた顔が特徴の男が近寄った。

 元3100万ベリーの賞金首であるドンキホーテ海賊団の幹部・グラディウスだ。

「何の用だ。トイレに行きたいだけなんだが」

「ここは若の王宮! 客とてお前は政府中枢に近い、油断できん」

「成程、理由はわかるが……()()()()()()()政権を樹立した君達に言われる筋合いはない」

「っ……!」

 その言葉に、グラディウスだけでなくその場にいた全員が顔を強張らせた。

 テゾーロは、ドフラミンゴが国王になった経緯の()()を知っているのだ。

「貴様……!」

「慌てることはない。私はドレスローザを滅ぼす気はない。そんなことよりトイレはどこだ?」

 暢気にトイレを尋ねる〝新世界の怪物〟に、緊張が走るファミリーの幹部達だった。

 

 

           *

 

 

 その頃、「シーザー引き渡しチーム」はと言うと。

「島まで飛べ」

「ロー!! てめェ本当に覚えてろよ!? 人を3人浮かすのにどれ程のガスエネルギーを要すると思ってやがる!? おれは大切な人質だぞ!!」

 闘魚との戦いで鉄橋ド真ん中に取り残されてしまったため、人質のシーザーのガスガスの実の能力を使い、シーザーを気球代わりに移動していた。

 ちなみにシーザーがここまで麦わらの一味とローに協力的な理由は、ローに心臓を握られているので逆らえないから……である。

「ハァ、ハァ……着いた……ゼェ、ぜェ……」

「海は闘魚にやられた船の残骸だらけ……」

「まだ誰も来てないみたいね……」

 ついに一行は、目的地であるドレスローザより北の無人島「グリーンビット」に到着。

 野生丸出しの異常に成長した森が生い茂っており、まるで自分達が小人になった気分だ。

「あそこが約束の〝南東のビーチ〟。15時にお前を放り出す」

「あ……!! 逆の海岸見てみろ!! あれ海軍の軍艦だろ……!?」

 ふとウソップは、森に突っ込んだ状態の海軍の軍艦を指差す。

 岸に乗り上げたというレベルではなく、文字通り船首から森に突っ込んでいるのだ。しかも植物の傷がまた新しく、船体も思った程の損傷していない。

 ということは、あの闘魚の群れの中を進んでいることであり、海兵達がここへ辿り着くのも時間の問題ということになる。

「まさか取り引きがバレてるのか!? それは聞いてねェぞ!!!」

「し─────っ!!! バカ科学者!! お前声でけェよ!!」

「おい、おれは賞金首だ!! ボスであるジョーカーが〝七武海〟をやめた今、おれを守る法律は何もない!! 海兵のいる島に海楼石の錠つきで放り出されたら……!!」

 慌てふためくシーザーとウソップ。

 ここでの取り引きは不当であり、即刻中止すべきだとシーザーは要求するが、ローは「海軍が敵なのはこっちも同じだ」と一蹴する。

「海軍ならまだいいが……最近発足した「SWORD」ならもっと厄介だぞ」

「ソード? 何だそれ?」

「海兵であって海兵でない……いわば辞表提出済みの海兵で組織された特殊部隊よ」

 ロビンは一同にわかりやすく説明する。

 SWORDは海軍からは半ば独立した遊撃隊であり、四皇などの許可無しで戦ってはいけない勢力とも独自の裁量で戦ったり本部の命令を無視して活動できるという利点がある上、あくまでも()()()()()()()()()()なので昇格できる反面、捕虜や人質になるなどで邪魔になればいつでも処分が可能という一面もあるという。

 構成員は全員が本部の佐官以上の将校達で、能力者や覇気使いも多く顔を並べており、中には伝説の海兵の身内もいるという。

「そして「SWORD」の最高司令官は、元海軍大将〝黒腕のゼファー〟。ナンバーツーに青キジがいるわ」

「あ、青キジィ!?」

「冗談だろォ!?」

「新旧海軍大将が指揮する遊撃隊がもし来ているなら、かなりの大ごとになるわ……」

 ロビンは冷や汗を垂らす。

 しかしローは、別の可能性を考えていた。それは海軍大将が直々に現れることだ。

 そして最悪なのが、海軍大将とSWORDが足並みを揃えてドレスローザに来ている場合だ。

「気を抜くなよ……ここから先は何が起こるかわからねェ。あと15分だ……お前らは〝狙撃〟と〝諜報〟でおれの援護を頼む……!! 森に異常があったらすぐに連絡を」

「ええ、わかったわ……」

「てめェ!! まさかハメやがったんじゃねェだろうなァ!?」

「ちょっと待て!! 海軍がいるなんて予定外だ!!」

 こうしてシーザーとローが南東のビーチに残り、ロビンとウソップは島の森を調査することとなった……。

 

 

 そして、ドレスローザの街中。

 サカズキの命令で派遣された藤虎とその部隊は、意外な人物と顔を合わせていた。

「おや、カジノの旦那の……」

「メロヌスだ。〝上〟から指示を受けて調査中だ」

 テゾーロの側近の一人・メロヌス。

 彼はテゾーロの命令で、独自に動いてドレスローザの調査をしているそうだ。

「……そっちはサカズキ元帥の命令か」

「ええ。サカさんに〝麦わら〟と〝ロー〟に勝手なマネをさせるなと」

「へー、あいつ案外慎重じゃないの」

 第三者の声に、一同は振り向いた。

 その姿に、全員が驚いた。

「マジか……!?」

「お前さんは、確か前任の……」

『青キジさん……!?』

 何と、元海軍大将で現SWORDのナンバーツーとなった〝青キジ〟ことクザンがいたのだ。

 だが、いつものスーツの上に海軍コートを羽織っている姿ではなく、暗い色のコートを着て黒のサングラスを身に付けており、その出で立ちは海兵というよりも放浪者であった。

 まるで、自分が海兵であるのを隠しているかのようだ。

「何でここに?」

「何でって……まァ、アレだ。新体制の山場だからだ」

 クザン曰く。

 ドフラミンゴは九蛇の蛇姫とはまた違った極めて異例づくしの海賊であり、大将達が動かねばならない程の案件。〝王下七武海で最も危険な男〟に相応しい実力と影響力、深いコネクションを有するため、一筋縄ではいかない。

 そこで、ゼファーは今朝の朝刊を機にドレスローザへの派遣を決断し、()()()()()()の備えとしてパンクハザードでスモーカーの部隊を救出したばかりのクザンに任務を命じたのだ。

「今年は世界会議(レヴェリー)だ、テゾーロの力がどうしても必要になる。最悪の事態は阻止しなきゃならねェ。過剰戦力だとしてもな」

「それは同感ですね……あっしも、あの人の協力が必要だ。だが軍隊は市民の被害を最小限に抑えなきゃならねェ」

「ま、その意味も込めておれが来たんだけどな」

 クザンは頭をポリポリと掻く。

 これ程の面子がいれば、非常事態の対処も可能だろう。

「ではお二方、あっしはグリーンビットへ向かいやすので、これにて失礼」

「隕石、間違って味方に落とすなよー」

「へへ……ご心配なく」

 不敵な笑みを浮かべながらその場を後にする藤虎の背中を、クザンとメロヌスは見送ったのだった。




次回、そろそろコラさんに関するネタが……。

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