ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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緑牛の声、諏訪部さんだった!
めっちゃカッコいいですね。


第173話〝異様な平穏〟

 世界情勢の注目の的となったドレスローザ。

 ついに四皇に匹敵する影響力を持つテゾーロが来訪し、国賓の電撃訪問として歓迎ムードとなった。

「テゾーロ様ーー!!」

「本物のギルド・テゾーロだ!!」

「ようこそドレスローザへ~~!!」

 国民の歓迎を受けるテゾーロ。

 しかしその顔はどこか険しく、ボディーガードとして来たサイ達も顔をしかめている。

 というのも、ドレスローザはドフラミンゴの七武海脱退の報道で危ういはずなのだ。王が突然辞めたのに、異様なまでに街が平穏なのだ。普通の国ならデモや反乱レベルの事態に陥るというのに。

「テゾーロさん、これは……」

「予想通りの結果だ、狼狽える程じゃない」

 そんなやり取りをしながら、王宮へと案内される。

 王宮はドンキホーテファミリーの居住区であり、幹部達が集う場所。全面衝突すれば双方の被害は計り知れないし、この国の住民達も無事では済まない。

「よく来たな、テゾーロ」

 不敵に笑いながら迎えるのは、フラミンゴの羽を思わせるようなピンク色のファーコートを着用した、3メートル超えの長身の男。

 世界政府公認海賊の王下七武海の一角――ドンキホーテ・ドフラミンゴだ。

(いきなり本人か)

「電撃訪問は驚いたぞ。それなりに心配してたのか」

「ああ。突然王位を放棄した国は内乱どころじゃないはずだからな」

 あくまでも友好的な姿勢のテゾーロ。

 無論、ここで国際問題を起こすのは厄介なのもあるが、一番は彼を倒す者達の為である。

「……朝刊の件、アレはどうなっている?」

「ああ……アレか。〝誤報〟だ、先程政府の役人共が直々に伝えた。全く困ったもんだぜ」

(白を切るか……)

 ドフラミンゴは余裕綽々な様子であり、テゾーロは政府とのコネで凌いだと確信した。

「フフフフフフ……!! せっかく来たんだ、ワインでもどうだ?」

(……幹部達の中に、()()()はいないようだな)

 ちらりと辺りを見回す。

 この国で一番警戒しなければならないのは、シュガーという女の子。彼女は「ホビホビの実」の能力者で、触れた生物をオモチャに変えることができる能力を使う。だが、何より恐ろしいのはオモチャに変えられた生物はその者の記憶が全世界から消滅する効果があることだ。

 もしテゾーロに使えば、グラン・テゾーロは崩壊し、多くの者を失う上、あの「国宝」を敵から護る術がなくなる。奪われたら各国が時代の覇権を狙って世界大戦状態に突入するだろう。それだけは何としても阻止せねばならない。

 だが、テゾーロでは少し目立ちすぎる。そう考えると、海賊同盟を組んだ()()とサカズキ元帥の命令を受けた藤虎に任せるのが利口だろう。

「いいだろう。私のボディーガード達にも振舞ってくれ」

「フフフフフフ! そう来なくちゃな」

 ドフラミンゴは愉快そうに笑いながら、部下達に会食の準備を進めるよう命令したのだった。

 

 

           *

 

 

 その頃、ルフィとフランキーはレストランのルーレットで盲目の壮年男性――実は藤虎――から金を巻き上げていた連中の頭を、人気のない路地裏に連行して必要な情報を聞き出していた。

 そこでルフィは、ドフラミンゴの下に亡きエースの〝メラメラの実〟があることを知った。

「〝悪魔の実〟は同時期に同じものが二つ存在することはねェそうだ……! ──だが〝実〟の能力者が死ぬと、また世界のどっかにその能力を秘めた″悪魔の実″が復活するらしい。〝火拳のエース〟の死後、人知れずこの世に再生してた〝メラメラの実〟を若様は手に入れてたのさ……!! 自然系(ロギア)の〝悪魔の実〟を興業の景品にしちまうとは、若様も水くせェ……!!」

 あんなスゲェ能力手に入れたら俺も人生変わるだろうな、と男は笑う。

 ルフィとしては、亡き兄の形見と言える代物。ドフラミンゴは、十中八九ルフィを自分の手の届く範囲に誘い込む罠として利用するつもりだろう。

 だが、工場の在処を知らない二人は、確実に知っているであろうファミリーの幹部達が集まっているコリーダコロシアムに用がある。

「これだけは言える。チャンスなら逃すな!! 後悔してもつまらねェ、コロシアムにはどの道用があるんだ。とにかく行こうぜ!!」

「おう!!」

(………!! バカ共……欲しいからって手に入りゃ、()()()()()()()()()……!! コロシアムのレベルを見くびるな…!!)

 卑しい笑みでルフィとフランキーを嘲るチンピラを他所に、コロシアム周辺の街では海軍大将の藤虎が部下からテゾーロの動向を聞いていた。

「テゾーロの旦那が?」

「ええ……今、ドフラミンゴと会食中とのことで」

(テゾーロの旦那は、あっしと同じ七武海について懐疑的……直接乗り込んで、天夜叉の首を狙うって算段ですかね)

 王下七武海制度の完全撤廃を狙う藤虎にとって、この状況はかなり好ましい。

 今年は世界会議(レヴェリー)を控えており、そこで一昨年起きたアラバスタ王国の内乱を議題とし、本当に七武海が必要かを問うつもりだ。テゾーロの後ろ盾を得れば円滑に進み、もしドフラミンゴがこの地でやらかせば拍車をかける。

 とはいえ、今日はどこかおかしい。王が突然辞めたというのに国民はいたって普通の生活を営んでいる。何か裏があるのは明白だ。

 それに、今回のコロシアムの大会には世界中のアウトローが集結している。彼らが暴れ始めた際、能力や人数を把握しなければ大変なことになる。

「ひとまず、コロシアムに向かいやしょう。名の知れた海賊共も大勢でしょう」

「はっ!」

 

 

 そして、愛刀を盗んだコソ泥を見つけ追いかけたゾロを追跡していたサンジは、情熱的にフラメンコを踊る踊り子・ヴァイオレットと遭遇していた。

 そのまま見惚れゾロを見失ったのでドレスローザに置いてけぼりにする算段を立てつつ、警備兵の捜索を掻い潜る。目をハートにし、鼻から鼻血を滝のように流し、変装用の付け髭を真っ赤に染めながら。

「ごめんなさいっ……頭でもぶつけたかしら……」

「あー、いや、ぶつかってきたのは出会いという名の衝撃だけだ……♡」

「でもこんなに血……」

 その内失血死しそうなくらい血だらけになるサンジに、ヴァイオレットは不安そうな表情を浮かべる。

 全部サンジの下心のせいであるが。

「おわあああああ~~……!! ダメだ……もう恋が止められないっ!!」

 ガクガクと震える乱時に、ヴァイオレットは慌てて「ダメよ!! そんな目で私を見ちゃ!!」と告げた。

「私はもう恋を捨てた女っ……!! 過去、私に関わった男達はみんな……』

「そう♡ みんな幸せだ♡」

 サンジは彼女の話が耳に入っていないようだ。

 が、警備兵に追われるなど、中々深そうな事情があるようだ。

「追われてたな!! あいつら一体誰なんだ!? 俺で力になれることがあれば言ってくれ!!」

「追ってきたのは警官よ。私……男の人を……刺したの!! ……恋が拗れて……」

「えェ!? この国の女は男を刺す程、情熱的って本当なのか!?」

 ドレスローザは愛と情熱とオモチャの国だが、少し恋が拗れすぎてる気がする。

 それでもサンジは美女とならばと、ハートになった目で「OK!!」とサムズアップした。

「OKなの!? ウウ……!! ダメよ!! こんな魔性の女を許さないで……」

「どうしたんだ……?」

「あなたを好きになっちゃう……♡」

「グハッ!!」

 その妖艶な仕草と声色で、サンジは心臓を射抜かれてしまった。

「……私の名はヴァイオレット……よろしければとなり町まで私の護衛して下さらない? そして、そこで……」

 ヴァイオレットはサンジの両手を握ると、涙を流した。

「──殺してほしい男がいる……!!」

「!?」

 

 

           *

 

 

 その頃、シーザー引き渡し組であるローとロビン、ウソップ――それと人質のシーザー――は、変装した状態で北東のカフェにてシーザーを引き取るドフラミンゴの使いを待っていた。

「グリーンビットねェ……あまり薦められねェなァ……研究員か探検家かい? あんた達……命かけて行く程の用がねェんならやめた方がいい……」

 カフェのマスターは、どこか遠い目でグリーンビットについて一行に教えた。

 グリーンビットの周りには〝(とう)(ぎょ)〟ツノのある凶暴な魚の群れが棲みついているという。棲みつくようになったのは約200年前で、現れるまでは人の往来もあったらしい。

 先人達は鉄橋を架け、度々修復と強化を繰り返したようだが、全て徒労に終わったそうだ。

「鉄の橋でもその魚に倒されるってのか!?」

「さァ、橋がどうなってるかは……行った奴しか知らねェし、帰ってきた奴も知らねェし……」

「ハァ!?」

 カフェのマスターは不吉な言葉を言い残し、カウンターへ戻っていった。

「……おい、トラ男!! 今すぐ引き渡し場所を変えろ!!」

「そうだぞ!! 引き渡される身にもなれ!! バカめ!!」

 ウソップとシーザーは身の危険を即座に感じ、ローに場所の変更を要求するが一蹴された。

「変わらねェ。ここまで来てガタガタ騒ぐな……そんなことより俺が心配してんのは国の状態だ! 王が突然辞めたのに、何だこの平穏な町は……!! 早くも完全に予想外だ……!!」

「大丈夫かよ!! ……ん? 何してんだ、ロビ――」

「しー……」

 突然ロビンは、自分達に向かって歩いてくる仮面を付けたスーツ姿の三人組を見かけると、隠れるかの様に帽子を深くかぶり直した。

 その姿を見たシーザーも、素早く顔を隠した。

「CP-0……!! 何しにここへ……?」

 ローは戸惑いを隠せないでいた。

 世界最強の諜報機関であるCP-0が、突如としてドレスローザに姿を現したのだ。

「え…!? CP……!? も……もしかして……「CP9」と関係が……!?」

「──その〝最上級〟の機関よ……彼らが動く時にいいことなんて起こらない……」

 その呟きに、ローも静かに同意した。

 ドレスローザは、早くも大混乱に近い状態であった。


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