ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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タイトル通りです。(笑)
今回は短めですが、内容は案外濃いかも。


第170話〝藤虎と緑牛〟

「……以上が、報告となります」

「ひとまず安心というところか……」

 サイの報告に、テゾーロはホッと息をついた。

 というのも、先日元帥に就任したサカズキが世界徴兵を実施し、あらゆる外様の実力者を揃えることに成功したのだ。これにより、新しい海軍大将が任命され、より強力な正義の軍隊となった。

 同時に元海軍大将ゼファーがクザンを誘い、海軍からは半ば独立した遊撃隊「SWORD(ソード)」を設立。最高司令官をゼファーが、参謀総長をクザンが担い、上層部の命令を聞かずに自由に動きたいと願う海兵達の受け皿として動き、海賊だけでなく革命軍の動向の探りを始めた。

 白ひげの死で、世界の均衡は大きく崩れた。海軍も変わらざるを得なかったが、どうにかうまい具合に事が運んだようだ。

「じゃあ、これで予定通りグラン・テゾーロにおける世界会議(レヴェリー)開催に動けそうだな」

「……お言葉ですが……実は、()()()()()()()が発生しまして……」

「何?」

「〝神の騎士団〟って、ご存じですか?」

 サイが険しい表情で、聖地マリージョアにて水面下で発生した面倒事を話した。

 

 神の騎士団とは、海軍とも政府とも独立した組織で、サイファーポールの高官であるサイも詳しくは知らない。

 なぜなら、神の騎士団は天竜人と密接な関係にある組織で、その最高司令官はフィガーランド・ガーリング聖という天竜人。事実上、天竜人が組織した騎士団と言え、関わらない方がいい連中とも解釈できる。

 

「……その神の騎士団とやらが、私の計画に文句を言ってると?」

「神に等しいとふんぞり返る彼らからすれば、世界政府を内側から変えようとするテゾーロさんは目障りなんでしょう」

「お前も言うようになったな」

 政府高官が言っていいセリフではない言葉を平然と吐くサイ。

 彼も大分仕上がっているようだ。

「人間の価値観をそこまで忌避するのか?」

「天竜人は人間を虐げねばならない……その掟に反する者は天竜人でも処罰する。自浄作用と言えば聞こえはいいですが……」

 内部変革を目指した者は、無残な目に遭う。

 そんな残酷な事実を暗に告げているような内容に、テゾーロは顔をしかめた。

「テゾーロさん……」

「言いたいことはわかってる。おれを消したがってるんだろう」

 おそらくどころか確定だろうな、と付け加えるテゾーロ。

 聞いた感じでは、神の騎士団はマリージョアの治安組織のようだが、天竜人が最高司令官を務めるだけあり、政治への干渉も可能なのだろう。

 五老星は政治を担うだけあり、テゾーロの広告塔としての価値の高さを政府内で最も理解しているだろうし、何より天竜人の最高位だ。彼らの言葉を無視するかどうかは別として、耳を傾けることぐらいはするはず。ただ、フィガーランド・ガーリング聖とやらが「そんなこと知るか」と一蹴すれば話は別。テゾーロと天竜人の「軍事衝突」という笑えない事態になりかねない。

(とはいえ、シャンクスとの関係については五老星も把握しているはず。神の騎士団がいかに強大でも、さすがに四皇にも喧嘩を売るとは思えないが……)

 テゾーロは、顎に手を当て考える。

 シャンクスは政府上層部からも一定の信頼を得ている。政治やマリージョアの内部に何らかの関与をしていてもおかしくはない。

 今度会った時に酒でも飲みながら聞くか、と判断し、サイに命令を下した。

「サイ。五老星に伝えてくれ。神の騎士団があまりにもうるさかったら、世界会議(レヴェリー)開催は例年通りでいいと」

「よろしいので?」

「〝新世界の怪物〟と〝神の騎士団〟が軍事衝突なんて、百害どころじゃ済まないからな……」

 天竜人の繁栄の為に、世界政府の広告塔を消して民衆の反感を買うか。

 神の騎士団との抗争で、政府内部をガタガタにしてしまうか。

 選択肢が絶望的である以上、テゾーロが引くしかない。神の騎士団がどれ程の軍事力を持ってるかわからない以上、下手に拗れたら取り返しがつかなくなり穏便な落とし所も失う。

 そんな最悪な事態は、絶対に回避せねばならない。

「……それと、恩義あるクリューソス聖が()()()()()()()()()()も調べてほしい」

「……テゾーロさん、まさか!」

 一筋の汗を流すサイに、テゾーロは無言で頷いた。

 神の騎士団が天竜人の自浄作用を担うのであれば、自分に協力的だったクリューソス聖は病死ではなく処刑されたのではないか――そんな疑念を抱いたのだ。

 親交のあるミョスガルド聖から直々に電話を頂いたが、あの閉鎖的空間で何が起こるのかは見当がつかない。表向きは病死扱いで、実際は異端者として始末されたとなれば、ミョスガルド聖の身も危険に晒される。

 天竜人をも裁く存在……それが神の騎士団ではないか。

「できればでいい。お前も深追いしない範囲でやれ」

「…………了解」

 サイはテゾーロの命令を承諾し、任務を全うすべくマリージョアへ向かうのだった。

 

 

           *

 

 

「何やってるんですか、あなた方……」

 数日後、たまには様子でも見ようかとテゾーロはVIPルームの丁半賭博の場に姿を見せたのだが、思いもよらない二人と遭遇した。

「だあーーっ! チキショー、また外れかよォ! おいイッショウ! 〝重力〟でサイコロ動かしちゃいねェだろうなァ!?」

「いやはや、まぐれが続いてるようで……へへ」

「クッソ、スゲェ怪しい……!!」

 ゴザ敷の上で胡坐を掻いて、賭け事に興じるのは二人の海兵だ。

 

 一人は、短く刈った黒髪と無精ひげ、両目を塞ぐ大きな十字傷が特徴的な逞しい壮年男性。藤色の着流しの着物の上から海軍のコートを羽織っており、紫色の合羽や手甲を身に着け、傍には仕込み杖を置いている。

 もう一人は、左肩から腰にかけて入っている「死川心中(しながわしんじゅう)」の刺青が目立つ、細身で筋肉質な身体の男性。上半身裸に海軍のコートを羽織り、花柄があしらわれているダメージの入ったレザーパンツを着用しており、煙草の紫煙を燻らせている。

 

 彼らこそ、先の世界徴兵でその圧倒的実力から海軍大将に特任された〝(ふじ)(トラ)〟イッショウと〝(りょく)(ギュウ)〟アラマキだ。

 

「これはこれは、新しく最高戦力に迎えられた新海軍大将のご一行ですかな」

「あーん?」

「……こいつァどうも、ギルド・テゾーロさんですかい」

「いかにもそうだ」

 階段を降り、反対側のゴザ敷に座る。

 その隣には、グラン・テゾーロを守護する軍隊「ガルツフォース」の長であるシードが。

「……お前、何でここに?」

「非番なんで街を散策してたら、あっちの刺青の人に絡まれて……」

「緑牛に? どういった感じで」

「それが……」

 

 ――おいチビ助! 元海兵だって? おめェがペーペーだった頃のサカズキさんどんな感じよ?

 

「って……」

「上司が異様に大好きな部下か……」

 スタッフに「美味い酒くれよ!」と注文するアラマキに、テゾーロはジト目で見つめた。

 サカズキに強い尊敬を向けているようだが、それが度が過ぎて大変な事態になりそうな気がする。

 今は機密特殊部隊のナンバーツーに就任したクザンも軽いフットワークだったが、アラマキはそれ以上に軽そうだ。

「それで、何で二人がここに?」

「あ、それなんだけど国王、遊びに来たんだって」

「隠す気ゼロか!!」

 書類を読み漁るアオハルの言葉に、テゾーロは頭を抱えた。

「ハァ……新しく海軍大将に特任された二人が、揃いも揃ってギャンブルに来たんですか」

「へへ……ここは本部に近いですからね、あっしの気分転換にゃ丁度いいんで」

「おれも気分転換」

「サカズキ元帥、大丈夫かな……」

 センゴク元元帥同様、胃痛に悩まされる日々を送るようになるのではと不安になるシード。

 もっとも、サカズキの場合は瞬間湯沸かし器みたいになり、胃痛より高血圧で体調を崩しそうな気がしなくもないが。

「あァん!? チビ助、てめェサカズキさんに喧嘩売ってんのか!?」

「少なくとも「サカズキさんにチクんなよ」って無線連絡入れた人に言われたくないと思うよ」

「は!? おい〝剣星〟アオハル!! 何で知ってやがる!?」

「黙秘権を行使しまーす」

 思わず立ち上がる緑牛に、アオハルはガン無視。

 防音や防犯を徹底するVIPルームでなければ、大問題になっていただろう……。

「権力濫用ですよ、アラマキさん……」

「呆れてものも言えないな……」

 ――サカズキも胃薬が相棒になる日も近いのだろうか。

 軍はより強力になっただろうが、命令を聞けるかどうかは別問題であるとしみじみ思う一同だった。




オリキャラのアオハル、昔はテゾーロを「ギル兄」って呼んでたけど、今は「国王」って呼んでます。
成長したなー……。(笑)

ワンピの連載もあともう少しで再開。
尾田先生の目からビームが出るようになれたことを祈って待ちましょう。

もう少ししたら、本作もドレスローザ編でのドンキホーテファミリーとの抗争に入るので、お楽しみに。

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