ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

172 / 183
もう少ししたら新世界編かな?


第168話〝ハートの海賊団〟

 グラン・テゾーロで書類仕事をしていたテゾーロは、サイの報告に目を見開いた。

「元帥候補で対立?」

「ええ。普段はやる気を見せない青キジが、赤犬が元帥になることに猛反対してるそうで」

 その報告に、テゾーロは「ああ、ついにか……」とボヤいた。

 良くも悪くも「海軍」という一つの組織では型破りといえるクザンは、ダラけきっているが様々な正義を許容する慎重居士であり、サボっている様子が目立つが義理堅い一面を持つ。海軍関係者の中では穏健派の常識人であることもあり、部下からの信頼は軍の中でもトップクラスに厚い。

 対するサカズキは、苛烈かつ過激に正義を貫く硬骨漢だが、意外にもその思想に賛同する者や慕う者は結構多い。過激派の割には世界のバランスや秩序を重んじる慎重な一面を持ち、視野も海軍の中では広い方だったりする。

 ちなみに職を辞するセンゴクは青キジを推し、政府上層部は赤犬を推している。

「政府からもどちらを推すかを問われてます。テゾーロさんは、どちらを?」

(海軍元帥は中間管理職だからな……)

 テゾーロは考える。

 軍部のトップという立場は、胃に穴が開きやすいだけでなく、もどかしさを覚えることも多い。ましてや海軍本部の上司は世界政府であり、政府中枢から見れば海軍は「表の顔」に過ぎず、その威厳を一蹴される命令を下されることも多い。

 新元帥が自分の正義を貫けるかは、かなり怪しい。そういう意味では、一番自由に動けるのはガープのような中将の立場なのかもしれない。

「……おれはサカズキを推す」

「!」

 テゾーロがサカズキを推薦することに、サイは驚いた。

 クザンの方が馬が合うのではと考えていたのだろう。

「……なぜ?」

「軍の立て直しじゃなく、軍の強化ならサカズキの方が向いている。それにクザンの信念は、オハラの件で迷った末に辿り着いたんだ……組織のトップに長い迷いは禁物だ」

「成程……では、その旨をマリージョアに」

「ああ、なるべく早く伝えろ。それとクザンにこちらに来るよう伝えてくれ」

 その言葉に、きょとんとしながらもサイは承諾した。

 

 テゾーロは、知っているのだ。

 サカズキとクザン――海軍大将同士の対立が、決闘にまで発展し、敗れたクザンが〝黒ひげ〟に加担するようになることを。

 海軍大将という巨大な戦力が海賊に堕ちれば、それが世界にとってどれほどの損失か、計り知れない。

 

(クザンを手放すのは痛い。なるべく穏便に事を進めねば)

 ――海賊クザンは、本当にマズい。

 そう思いながら、テゾーロは書類の処理を再開したら、電伝虫が鳴り響いた。テゾーロ直通だ。

 テゾーロは目を細めながら受話器を取ると、バカラが慌てた声を発した。

《テゾーロ様! 緊急の来客です!》

「誰だ? シャンクスか?」

《いえ……それが……超新星のトラファルガー・ローです!》

「!? 何だと!?」

 それは、思わぬ再会だった。

 

 

           *

 

 

「かけたまえ」

「……わざわざあんたが出迎えるとはな」

「ここは中立国家だ、世界政府の権力は及ばない。……ところで、おにぎりは好きかな?」

「いただこう」

 テゾーロは自室まで、巷を騒がす「ハートの海賊団」をもてなす。

 グラン・テゾーロの豪華絢爛な街並みや賑わいに圧倒されていたのか、ローの仲間であるベポやペンギン、シャチ達はあんぐりと口を開けたり目を輝かせている。

 一方のローは相変わらずというべきか、いつも通りというべきか、冷めた眼差しをしていた。

「今、料理人を手配した。酒は色々あるが……そうだな、まずは海賊らしくラムかな? ちょうど〝北の海(ノースブルー)〟の美味い一品が手に入ったのでね」

「ちょ、それめっちゃ高いヤツじゃねェか!?」

「一本百万ベリーだ。私は金が腐る程あるから、遠慮せず飲みなさい」

「おー! 太っ腹!」

 テゾーロなりの歓迎に、盛り上がるベポ達。

 彼らにも好きなイスに腰かけるよう言うと、ローと面と向かって会話をした。

「……まさか海賊になってたとは、驚いたよ」

「てっきりそのまま医者になってた、と思ってたか」

「ああ、全くだ」

 テゾーロは喉を鳴らして笑うが、内心は穏やかではなかった。

(フレバンスの件は、おれが解決したはず。コラソンも、センゴクの話では潜入捜査中……なぜだ?)

 故郷のフレバンスは、テゾーロの懸命な努力で滅亡の道は回避した。

 それに付随したのか、ロシナンテもドフラミンゴにスパイ活動がバレたが、紆余曲折あってオペオペの実はローの父の手に渡り、瀕死の重傷を負ったロシナンテは一命をとりとめ、兄を止めるべくスパイ活動を継続している。

 本来なら、ローは海賊にならないはずだが……。

「何で、海賊になった?」

「……とりあえず、見れば早いだろテゾーロ屋」

 ローはそう言うと、スッと手を上げた。

「〝ROOM(ルーム)〟」

「!?」

「〝シャンブルズ〟」

 ローは球状の結界を張り、テーブルの上に乗っていた酒瓶と電伝虫の位置を入れ替えた。

 それは、間違いなくオペオペの実の能力だった。

「それは……オペオペの実の……!」

「ああ」

「待て!! 父親の手に渡っただろう!? まさか……」

「……父親は死んだよ」

 その言葉に、テゾーロは絶句し、頭を抱えた。

 フレバンスは何もなかった分、完全に大丈夫だろうと油断していた。まさかそんな事態になってたとは夢にも思わなかった。

 もし気づいていれば、あるいは一言くらい電伝虫で声をかけてれば――そう思ったテゾーロだが、ローは「あんたのせいじゃねェ」と複雑な表情で擁護した。

「……何があったんだ、一体」

「4年ぐらい前か……ドフラミンゴの刺客が病院を襲った」

「!?」

 テゾーロは目を見開いた。

 ドフラミンゴは、やはりオペオペの実を諦めていなかったのだ。

 だが、それだと()()()()()が生じる。

(話の脈絡だと、父親は殺されたことになるが……それが奴の望みなのか?)

 そう、オペオペの実の真価を知ってるとすれば、ドフラミンゴがやることではないのだ。

 オペオペの実は、自らの命と引き換えに、永遠の命を与える「不老手術」を施すことができる。ゆえに50億ベリーもの高額で取引され、過去にはオペオペの実を口にした者の中には世界的な名医になった者もいたという話もある。

 だが、オペオペの実も所詮は悪魔の実。能力者が死ねば、その人物が食べた悪魔の実は復活する。問題なのは実の復活が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が検討付かないこと。そういう意味では、殺すよりも選択できない脅迫をして従わせる方が賢明だ。

 ということは、ドフラミンゴとしても不本意な形でローの父は死んだ可能性もあるのだ。

「……君の父は、()()()()()?」

「……自決だ」

 その言葉に、テゾーロは察した。

 おそらく、ドフラミンゴに不老手術を施してもしなくても、どの道家族も殺されると判断し、家族を逃がして自決することで、ドフラミンゴに老いを知らない不死の肉体を与えないようにしたのだろう。

 ドフラミンゴもさぞお怒りだろうが。

「……あんたの考えてる通りだ。事実、その刺客とやらは()()()()()

「ドフラミンゴから見れば大失態だろうしな」

 永遠の命まであと一歩というところで、してやられた。

 元天竜人である彼からしてみれば、見下される立場の医者に出し抜かれるハメになるのは誇張抜きに筆舌に尽くしがたい屈辱だ。しばらくはファミリー内の空気もギクシャクしそうである。

「……妹と母親は?」

「離れ離れだが……何かの縁でここに来る可能性もあるしな。その時はテゾーロ屋には匿ってほしい」

「今になってドフラミンゴが殺しに来るとは考えづらいが……わかった」

 テゾーロはローの依頼をひとまず承諾する。

 残忍という世間の評判とは裏腹に、結構家族想いなのだろう。

「……おれは七武海になって、奴に近づいて討つつもりだ。あんたはどうする」

「まあ、潰そうと考えていることについては同意だ」

「なら、おれと手を組めテゾーロ屋! あんたとならやれるかもしれねェ……」

 ローはテゾーロを鋭い眼差しで見つめた。

 超新星の彼にとって、七武海は大きな壁だ。しかし天竜人に匹敵する権力と富を有する〝新世界の怪物〟を味方(バック)につければ、大きなチカラになるのは明白だ。ドフラミンゴへの敵討ちもしやすくなる。

 しかしテゾーロは、意外な回答をした。

「組むのなら、おれではなく〝麦わらのルフィ〟と手を組むのを勧める」

「麦わら屋と?」

 テゾーロは、自分ではなく同じ超新星の「麦わらの一味」と同盟を組むべきと主張した。

「ルフィはこの海で最も恐ろしいチカラを持っている。彼と手を組んだ方がうまくいく」

「麦わら屋か……」

「何か縁でも?」

「まァな」

 ローの言葉に、テゾーロは二人の関係が原作に沿っていると知り、安堵した。

 ルフィとローの同盟は、大きな求心力があるからだ。

(まあ、ローがどうやってオペオペの実を手に入れたかは聞かないでおくか)

 テゾーロ自身としては、どうやってオペオペの実をローが手に入れたのかが気になったが、それは今となっては些事だ。

 頂上戦争が避けられなかったように、転生した影響なのか修正力という概念が存在するようで、後々大きな影響を与える物事には見えないチカラが干渉することが示唆されている。

 ローはルフィ同様、新時代を担う海賊。しかも〝D〟の名を持つ者だ。()()()()では〝神の天敵〟として忌み嫌われてるのだから、運命づけられているのかもしれない。

「……君達はドフラミンゴを倒すと?」

「止めろと言っても聞かねェぞ」

「いや、奴の素性をちゃんと把握してほしいと思ってね……彼は元天竜人だぞ」

『えええええええええっ!?』

 テゾーロの言葉に、一同は絶句。

 ドフラミンゴが天竜人の血筋だということは、やはり知らなかったようだ。あのクールな態度のローですら目に見える程に動揺した。

「……ちょ、ま、ええっ!?」

「あ、あのドフラミンゴが元天竜人ォ!?」

「ちゃんと裏取りはしてある。ウソじゃない。……じゃあ、君達には知ってもらおうか。堕ちた天竜人――ドンキホーテ・ドフラミンゴとその一味を」

 テゾーロは笑みを浮かべながら、ドンキホーテファミリーに関する話を始めるのだった。




トラ男のローのモデルであるエドワード・ローは、残してきた娘を思っては度々感傷的になっていたという話があるそうです。
もし家族が生きていたら、海賊をしながら家族のことを懐かしむローも見れたのかもしれませんね。


そして今回、ローはやっぱり能力者になりました。
なぜオペオペの実を得られたのかというと、父親が自決した後、偶然近くに置いてあった果実が……ということです。
果実自体は「依り代」であるということを踏まえると……要はそういうことです。
ローの父が自決した原因は、刺客がファミリー幹部でも雑魚の構成員でもなく、足がつかないようにドフィが手配した某機関の人間だからです。どこの誰なんでしょうね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。