ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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今回は短めです。
頂上戦争、どうしようかな……個人的にはドレスローザをしっかりやりたいからなぁ。


第166話〝監視〟

 シャンクスと白ひげの会談が決裂し、しばらく経った頃。

 テゾーロは世経の新聞を見て頭を抱えた。

「……もはや止められないか……」

 困惑と驚愕を混ぜた、複雑な表情を浮かべる。

 その新聞の一面の見出しには、こう載っていた。

 

 ――白ひげ海賊団〝火拳のエース〟、インペルダウンに収監!!

 

「ついに現実となってしまったか……」

 額から汗を流すテゾーロ。

 全海賊中最大最強と謳われる白ひげ海賊団は、「仲間の死を許さない」ことで世界的に知られる。エース奪還のため、自身の海賊団と傘下の海賊達を引き連れて動くのは明白だ。こういう事態になった以上、衝突は避けられない。

 だが、戦争はまだ避けられる。

 そもそも世界政府にとって、白ひげとの戦争はかなりの博打だったはずだ。いくら老齢のために体調が悪化しているとはいえ、それでもカイドウやビッグ・マムをも上回る実力と影響力を持ち、正史においてマリンフォードは壊滅的被害を被ったのは言うまでもない。

 ロジャーの血を絶やすために、冗談抜きで世界秩序を根底から覆し得るチカラを持つ白ひげ海賊団と戦う必要性はない。裏取引でエースを引き渡し、隠蔽体質の世界政府がお得意のもみ消し・印象操作で「エースがインペルダウンから脱走し、その責任を負って署長が辞任」みたいにしても世間は長期間騒ぐことはないだろう。

「……クリューソス聖亡き今、動かせるのは誰だ……?」

 天竜人との結びつきがない今、五老星との謁見も許されてるとはいえ、そう簡単に承諾してくれるとも思えない。何らかの形で脅すしかない。

 最悪、一時的にシャンクスを動かしたり、バレットにインペルダウンを襲撃してもらうしかない。世界政府側の人間として限りなくアウトであるが。

「ひとまず、五老星に直通で――」

「それは困るな」

「!」

 電伝虫に手を伸ばそうとしたところで、殺気を感じて振り返った。

 視線の先には、奇妙な男達がいた。

 

 口元以外を覆い隠す白マスクを着用し、口元も白塗りした男。

 ムスッとした強面な赤仮面を装着した男。

 ひょっとこのようなデザインの仮面を装着している男。

 

 全員が白いスーツとコートを着用しており、只者ではない雰囲気を醸し出している。

 テゾーロは彼らのことを知っていた。

「何の用だ……〝CP-0〟」

 テゾーロは睨みつけた。

 世界最強の諜報機関が、グラン・テゾーロにいる。それはつまり、五老星か他の天竜人の命令で動いているということだ。

「五老星から任務を命ぜられている」

「ギルド・テゾーロ氏の警備をせよ、とな」

「警備? 監視だろうこれは。私一人にしては戦力が過ぎる」

 テゾーロの言葉に、何も言い返さないCP-0。

 だが、彼らの実力は〝仮面の殺し屋〟と称される程に凄まじい。六式を駆使した体術の練度は桁外れで、長らく不敗神話を誇っていたCP9の構成員の上位互換に等しく、特級のエージェントは七武海クラスに比肩する実力者とされている。

 テゾーロは覇気もそれなりに鍛えてるし、ゴルゴルの能力も覚醒に至っているが……CP-0のエージェントを同時に三人相手取るのは至難の業だ。そのことも想定した上で、彼らも来たのだろう。

「……おれが動くと不都合かね」

「影響力だけで言えば、貴様は四皇と比肩する。むやみやたらに動いて、世界政府の未来を脅かすマネをされては困るのだ」

(……)

 テゾーロは冷静を装うが、内心では焦っていた。

 世界政府の尻拭いを散々してきたため、五老星からは一定の信頼を寄せてはいるが、天竜人や一部の政府高官からは煙たがられている――政府とのパイプ役であるサイからはそう聞いていた。

 サイはサイファーポールの高官だが、CP-0ではない。彼らの活動は越権行為もあるので、彼も把握できなかったのだろう。

 それよりも問題なのは、()()()()()()()()()()()だ。

「……私の妻や部下に手を出してないだろうな」

「そこまで愚かではない。世界政府としては敵対は避けたい」

「しかも、ここは〝赤髪〟の縄張りでもある。()()四皇と黄金帝を同時に相手取る訳に行かない」

 その言葉に、テゾーロは目を細める。

 シャンクスとの接触は、やはり政府上層部にも知られているようだ。

 ウタとの関係性について知っているのか、カマをかけたいところだが、それをして彼女に危害が及ぶ訳にも行かない。

「っ……」

「しばらくの間、我々は滞在する。君が妙なマネをしなければ、我々も何もしないと誓おう」

「信用できないな。天竜人の繁栄を快く思ってない人間を前によく白を切れるものだな」

「……」

 白マスクのエージェント――ゲルニカは押し黙った。

 テゾーロの読み通り、〝新世界の怪物〟が天竜人の支配と繁栄に否定的な人間だと、彼らは承知しているのだ。

(もどかしい限りだ)

 テゾーロは思わず舌打ちするのだった。

 

 

           *

 

 

 同時刻、マリージョア。

 五老星はテゾーロの動向について話し合っていた。

「……エージェント三名は、無事に辿り着いたか」

「〝赤髪〟との接点もあって、()()()は警戒しているようだ」

 テゾーロは油断できないと、五老星は語る。

 世界政府にとって、ギルド・テゾーロという男はなくてはならない存在だ。財力と権力ではなく、影響力という面では世界政府の都合のいい広告塔だ。

 本人が「腐る程ある」と豪語するくらいの財源を慈善事業にも費やし、天上金の肩代わりや戦争などで疲弊した各国の復興補助など、今の秩序をよりよくするためには欠かせない。だが天竜人の支配や秩序には不快感や反感を示しているのも事実だ。

 一方で、五老星が頭を悩ませる案件もある。テゾーロ自身の民衆からの支持が絶大なのだ。特に非加盟国への資金援助によって貧民からの熱狂的な声が上がっており、革命軍の活動にも影響が出ているのだ。

 その影響が、革命軍を抑えるものであればよかったが、生憎と言うべきかお約束と言うべきか……結果は逆。テゾーロが民衆側であるというイメージを利用し、同志だとして動き始めている。

「テゾーロとドラゴンのやり方は大きく異なるが、野放しにするのは危険だ。革命の灯火は早めに消さねばならん」

「……とはいえ、テゾーロのやり方は世界を大きく混乱させる訳ではない。おそらく、内部から時間をかけて変えていくやり方だろう」

「いきなり全てが変わることによって生じる弊害は、奴自身も想定内のはずだ。我々と敵対せねばならぬ道理も事情も、そうはあるまい」

「とすれば、やはりドラゴンの革命軍をどうにかせねばならんな」

 五老星は意見が合致したのを確認し、今度はある海賊のことを話した。

「今回の〝火拳〟の件、どう思う?」

「奴を捕らえ引き渡した〝黒ひげ〟については、テゾーロも危険視していたな」

「懸賞金をかけるよう要請したのも、テゾーロだな」

 次の話題……いや、一番話し合わねばならないエースと黒ひげ。

 五老星も「七武海の穴を埋めたい」という思惑があったため、一応は身柄を引き受け七武海入りさせたが、白ひげとの衝突以上に警戒してもいた。

「赤髪の左目の傷をつけたのも、黒ひげの仕業と言っていたな」

「会談中に知ったとなれば、疑う余地はない」

「実力的には申し分ないが……」

 五老星が不安視しているのは、黒ひげの素性だ。

 四皇になるずっと前とはいえ、あの〝赤髪のシャンクス〟に一生残る傷を負わせた程の男が、少し前まで懸賞金0ベリーだったというのは不自然すぎる。何らかの目的を達成するために実力を隠し続け、「白ひげ海賊団の無名の古株」という立ち位置のまま過ごしてきたことに他ならない。その忍耐力と覚悟は尋常ではない。

 初頭手配で9600万ベリーという異例の賞金を懸けて以来、彼は違和感を覚える程に大人しくなり、本格的に動いた矢先にエースとの勝負に勝って七武海入りした。

 言葉には表現しがたい、何とも言えない不自然さを、五老星は感じていた。

「……どの道、白ひげとの衝突は避けられん」

「左様。今は戦力を整え、白ひげ海賊団との戦争に備えねば」

「インペルダウンでの戦闘もあり得る。皆に周知させるべきだ」

 運命の一戦は、刻一刻と迫っていた。


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