ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
それと、皆さんのご指摘で矛盾に気づきました。
訂正しましたので、お詫びいたします。
すんませんでした!
「そうか、逃げられたか……」
「すまねェな、センゴク」
「構わん。無茶を言ったのはおれだ」
海軍本部の元帥室にて、軍の教官であるゼファーが同期のセンゴクと話し合っていた。
話題は、アラバスタ王国における〝麦わらのルフィ〟の逮捕劇だった。
「やはり、テゾーロがいると迂闊にやれんな……」
「おい、センゴク! 扱いがおかしいじゃろうが! 甘やかしとらんか!?」
「黙っとれガープ!! お前なら「孫だから」と言うに決まっとろう!!」
センゴクはガープに怒号を飛ばすと、溜め息を吐いて茶を啜った。
今回の逮捕劇は、結論から言うと失敗に終わった。
が、それは情状酌量の余地がある、致し方ない点が多かった。
まずゼファーは、伝説の元海軍大将と称えられるだけあり、今でも現役の大将とも渡り合える技量を有している反面、昨今は心肺機能の低下が著しく、戦闘中でも吸入器を使った薬物投与を行わないと戦いが継続できない程に弱っている。心技体において全て上回っていても、老いに勝つことはできない。あのガープでさえ、最近パワーが落ちてるとボヤいているのだから無理もない。
それに加え、今回はあのギルド・テゾーロが絡み、政治的な要素で海軍が思うように動けなかった。自由な振る舞いもあるが、テゾーロは世界各国の王族はおろか政府中枢からも信任が厚く、実質彼が関与しなければアラバスタは乗っ取られていたかもしれないのだ。今もアラバスタの復興に尽力しており、万が一のことがあれば海軍の面目は丸潰れ。下手をすればテゾーロがその尻拭いをしかねない。
これらの要素があるため、海賊を逃しても仕方がなかった。もっとも、中枢の何名かは「他の七武海が首を取ってくれるだろう」と呑気に変な期待をしていたが。
「これ以上障るのもいかん。休むことを勧める」
「フッ……善処する」
ゼファーはそう言うと、元帥室を後にした。
その場に残されたセンゴクとガープは、別の議題について話し合った。
「おい、ガープ。お前としての意見を聞きたいが、次の七武海はどう思う?」
「〝黒ひげ〟とか言うヒゲブタ小僧か? わしゃ信用ならん」
二人の話題に上がったのは、クロコダイルの後任を突如立候補してきた海賊だ。
その名は、マーシャル・D・ティーチ。自らを〝黒ひげ〟と名乗り、たった四名の仲間と黒ひげ海賊団を結成し、丸太船で
実は先日、彼の使いである
怪しい臭いがプンプンするが、政府中枢はこれを一応は受理しているため、豪快な性格とは裏腹に老獪さや思慮深さをしっかり併せ持つ同期にセンゴクは意見を求めたのだ。
「白ひげの船の古株だった男らしいが、今までノーマークじゃったしなァ」
「やはり黒ひげは未知数、か……」
ガープの意見に、センゴクは懸念を抱いた。
実は以前、センゴクはテゾーロからティーチにイベントの景品であるヤミヤミの実を強奪されたという話を聞いていた。当時のティーチはあの白ひげの一味の船員であり、黄金帝ギルド・テゾーロの面子を潰したために四皇と一触即発になりかけたのだ。
幸い、白ひげもテゾーロも良識ある人物であるため武力衝突にはならずに済んだが、事態を重く受け止めた白ひげは追跡命令を下し、テゾーロは政府中枢や海軍上層部に働きかけた。
だが、今回のクロコダイルの件で七武海に穴が空き、政府中枢は「大した実績がなくとも実力が伴えばよい」という方針に変わりかけている……と、コング総帥から一報を受けた。もしこれで黒ひげが七武海になれば、かなりマズいことになる。
「……
「ああ……厄介なことになりそうだ」
パリッというせんべいをかじる音が、いつになく響いた気がした。
*
同時刻、グラン・テゾーロ。
アラバスタから帰還したテゾーロは、打ち上げパーティーを開いていた。
「私がいない間、この国のイベント主催を代行してくれて感謝しているよ、Mr.フェスタ」
「ハハハハハ! こちとらロジャーがいた頃から興行してんだ、あんたの腐る程あるカネがありゃあどうってことないさ!」
キンッとグラスを軽くあわせ、ワインを飲み干す。
すでに七十代後半に差し掛かったフェスタだが、〝祭り屋〟としての敏腕ぶりは全くと言っていい程の衰え知らず。自らの人脈と
その中でも人気を博したのは、音楽ライブだった。かつてテゾーロマネーを狙った泥棒だったカリーナを歌姫としてデビューさせると、目と耳が肥えた客を魅了させ、莫大な利益を上げることに成功した。これに味を占めたフェスタは、トンガリ島のライブハウス出身の歌姫アンを誘致し、カリーナとデュエットを組ませてライブを開催。興行収入100億ベリーという大成功を収めた。
「次のライブじゃあ、本格的に二人組としてデビューさせたいモンだ」
「その件は一任するよ。おれは少し世界政府に構わなきゃならなくなりそうだ」
ケラケラと笑っていると、テゾーロの傍に愛妻ステラが座り、彼の身体に凭れかかった。
「……ステラ?」
「私、少し疲れたの……先に寝ていていいかしら?」
「構わないとも。もう少ししたら、私も行く」
疲れた様子のステラに、テゾーロは優しく頭を撫でた。
今回のアラバスタの件で、心労が溜まったのだろう。
先に休むよう伝えると、ステラは自室へと戻っていった。
「……いい旦那ぶりだな」
「ステラ一筋なんでね」
ニコリと笑い、今度はシャンパンを飲み干す。
「そういやあ、今日は重大発表すると言ったな」
「ああ、幹部は大体集まったから、そろそろバンドマンとスタッフ下げようか」
テゾーロの一声に、動いたのはマリージョアから戻ったサイだった。
彼は手を叩きながら解散を促し、幹部衆だけをその場に残した。
今回は、久しぶりにグラン・テゾーロの上層部が集っている。ただ客将であるバレットは相変わらず海で暴れているが。
「――なあ、皆」
テゾーロは声をかけた。
そして一呼吸置いて、爆弾を投下した。
「もう少ししたら、潰そうか。七武海制度」
『!!!』
テゾーロの言葉に、幹部達は息を呑んだ。
王下七武海制度を撤廃する。それはすなわち、三大勢力の一角を担う王下七武海を倒し、世界の勢力図を塗り替えようということに他ならない。
ついに〝新世界の怪物〟が、己の野望である「革命」に動くのだ。
「今回のクロコダイルの件で、おそらく七武海に対する不信感は加盟国の王達も疑念を抱くはず。その間に手を回して、そうだな……二年後までには潰そう」
「そんなことして、七武海の海賊達は黙ってるとは思えませんが……」
元海軍であるシードの指摘に、幹部達は頷く。
何せ七武海は世界政府によって選ばれた海賊達で、海軍大将と引けを取らぬ猛者も多く、なおかつ政府の要請や命令に応じるわけがない。その特権を失うのを嫌がるのは目に見えている。
だが、テゾーロはその程度なら予測済みだとして、言葉を紡いだ。
「おれとしては、アマゾン・リリーを我が国と同様の中立国とするよう働きかけ、ドフラミンゴはこっちで倒す形に持ち込み、他の面々は
「確かに、九蛇は敵に回すと面倒だな」
「あそこ全員覇気使いだからね」
テゾーロ曰く。
制度を撤廃すれば各々のメンバーは海軍の精鋭部隊から攻撃を受けることになるが、戦力分散は海軍にとってもかなり困る事案。しかし相応の関係を結んでいるハンコックのアマゾン・リリーを政府公認の中立国にすれば、海軍との武力衝突は回避できる。ドフラミンゴはかねてより標的であったため、それ以外の面子はバレット一人で事足りる。
ただミホークは例外で、テゾーロは彼を雇う形で後ろ盾になろうと考えているらしい。世界最強の剣士は、やはり敵に回したくないようだ。
「ジンベエはどうするんで」
「彼はリュウグウ王国側の男だ、ネプチューン王とその辺りはうまくやるさ」
「じゃあ、その分の戦力は? 政府が納得してくれるとは……」
「それについてのビジョンもある。徴兵制で、海賊じゃない凄腕を海兵として雇う制度を作ればいい」
海賊ではないが、そこらの大物を容易く蹴散らせる実力者を海兵として取り入れる。
センゴクの胃に穴が空きそうだが、確かに海軍の徴兵は前例がなく、やってみる価値はありそうだ。
「……だが二年だろ? そう簡単に潰せるか?」
「これはおれの推測だが……おそらく、世界の勢力図は変わり始めている。今はまだ水面下での変化だが、時が経てば〝表〟にも出始める。変化に敏感でなければビジネスはできない」
そう言った時だった。
バンッ!
「テ、テゾーロ様!!」
「!? 何事だ!」
非常に慌てた様子で、電伝虫を携えスタッフの一人が乗りこんできた。
どうも電話相手がとんでもない人物の様子で、スタッフでは手に負えない相手のようだ。
天竜人かと思い、電伝虫を受け取る。
「こちらギルド・テゾーロ。こんな夜中に何の用かね?」
《おれだ、テゾーロ》
「……シャンクス!?」
『――ええェーーーーーーッ!?』
目を見開くテゾーロに、一同も思わず叫び声を上げた。
何と、四皇〝赤髪〟が直接テゾーロに電話をかけてきたのだ。
《いきなりですまん。テゾーロ、お前さんに頼みがある。明後日いいか?》
「構わないが……何の件だ?」
《〝黒ひげ〟ティーチだ》
「ティーチ……!?」
赤髪と黄金帝、二度目の会談が始まろうとしていた。
ちょっと思ったんですけど、最近のワンピの映画、歌姫多いですよね。
「GOLD」ではカリーナが、「STAMPEDE」ではアン、そして「RED」ではウタが歌姫を務めてる。しかも中の人も歌姫。
カリーナ、アン、ウタで三人組の女性音楽ユニットとかありですよね。そうなると中の人スゴイ豪華ですけど。(笑)