ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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明けましておめでとうございます。
久しぶりの更新ですね。

今回、例の時限爆弾を自分なりに仕組みを考え、結構強引な形に持ってきました。ご了承ください。

あと、あとがきのところで前回お伝えした「重大発表」を記載してあります。


第155話〝電線〟

 ロビンから答えを聞いたテゾーロは、階段を降りて外へ出た。

 外は戦闘の真っ只中。文字通りの死地に、マゼンタのダブルスーツは不釣り合いにも程がある。

「……アレが本心なのか」

 その脳裏に、ニコ・ロビンとのやり取りが蘇った。

 

 

 数分前。

 テゾーロに「世界をどうするつもりだ」と問われたロビンは、悲しげな笑顔を浮かべ、一言告げた。

「どうするつもりもないわ……なのに……()()()()()()()()()()()

 前世持ちの人間としては、耳に覚えのある言葉。

 コブラに投げかける言葉が、まさか自分に向けられるとは。

(……敵、か。お前から見れば、おれもそうだな)

 テゾーロは背を向ける。

 志というモノは、高ければ高い程に敵が多い。自分の夢を叶えるということは、周囲の人間や環境が邪魔をしてくるのと同然だ。

 テゾーロ自身も、革命を成功させるためにあらゆる場数を踏み、精一杯足掻いて努力を尽くしてきた。その度に多くの邪魔者が障壁として立ちはだかってきた。地下闘技場の一件が最たる例だろう。ゆえに人は――夢を追う者は、全てを蹴散らして進んでいくのだ。

 だからテゾーロは、一言返した。

「……それは、お互い様だ」

 

 

(……ロビンの気配が薄くなってる?)

 建物の壁に凭れていると、ロビンの気配を感じにくくなった。

 おそらく、自力で建物から降りていったのだろう。

 とんだ無茶をするものだと呆れつつも、テゾーロは彼女の武運を祈る。

「まあいい、今はこっちだ」

 その時だった。

「あ、いたいた」

「ったく、為政者のやる行動じゃねェっての……」

「お前達!」

 テゾーロの元に、メロヌス達が駆けつけた。

「ステラさんは?」

「ステラ達は安全な場所に避難するよう言ってある。……それよりもハヤト、顔色が悪いぞ」

「気にするな、掠り傷だ……!」

 一際疲弊しているハヤトの強がりに、テゾーロは「そういうことにしておこう」と告げた。

 おそらく、ハヤトが一番災難に遭ったのだろう。〝海の掃除屋〟と恐れられた男を追い詰めたのだから、相当な猛者達とたった一人で戦い抜いたのが一目でわかる。

 するとさらに、思わぬ加勢が飛び込んだ。

「ああっ! あの時の金持ち野郎!」

「……!」

 テゾーロは再び驚いた。

 何と、麦わらの一味が全員揃っており、そこにはビビもいたのだ。汚れていたり包帯だらけだったり、血まみれだったりしているが、()()()()()()()()に全員集合している。

 どんなに〝改変〟が起こっても、元に戻るのか……テゾーロは感慨深げな様子だ。

「海賊と共闘か……」

「今回は仕方ねェだろ」

 海賊嫌いが根強いハヤトは、やはり落ち込み気味。

 一方のメロヌスは煙草を吹かし、ニヤリと笑った。

「ゴホン! ……時間が無い、手短に済ませるぞ」

『!』

 テゾーロは咳払いをすると、真剣な表情で状況を知らせた。

「午後四時半……今から五分以内に、クロコダイルは砲撃手に直径5キロを吹き飛ばす特製弾を広場に撃ち込むよう命じている」

『直径5キロ!?』

 いきなりの爆弾発言に、一同は驚愕。

 国民も海軍も麦わらの一味も、助からないだろう。

(……だとすればそれなりにデカいはずだ。そしてその分重くなり、飛距離も下がる。しかもこの砂埃……)

 メロヌスは、狙撃手としての視点から考える。

 目標は広場の中心。しかし戦闘の渦中にあるアルバーナは塵旋風が常に舞い、照準も狂いやすい。砲弾も巨大で、それを撃つ大砲も巨大だろう。それを置くとすれば、隠密性を考えれば屋外の線は絶対にあり得ない。

 つまり、広場に近く、それでいて隠密性に優れた高い建物の中。そこが砲台だ。

「……あそこじゃないのか」

『!!』

 メロヌスが指差すのは、広場で一等高い唯一の建物――アラバスタの標準時を司るのであろう時計台だ。

 確かに時計台なら、メロヌスの考える「広場に近く、それでいて隠密性に優れた高い建物の中」の条件が全て揃う。塵旋風の妨害もなく、広場をよく狙える。

「でも、場所はわかってもあんなとこまで登れないわよ!!」

「あそこへ行くには一階の奥にある階段が唯一の到達手段……どうすれば……!」

「それなら妙案がある」

 メロヌスはそう言うと、愛銃に弾丸を装填。

 どうやら起死回生の一手を思いついたようだ。

「ハヤト、扇は持ってるか?」

「……! ああ、そういうことか」

「おい、どういうことだ」

 勝手に話を進めるメロヌスとハヤトを、サンジは質す。

 他の者達も同意で、二人に視線が集中する。

「……今から、こいつが起こす風であそこまで飛ぶ」

 作戦は、こうだ。

 

 ハヤトは大太刀を操る剣士だが、サイドアームとして扇子を持ち、〝武装色〟の覇気を纏わせて強風を引き起こすことができる。その強風を利用し、集結している面々の中でも腕の立つ面子を飛ばす。砲撃時は時計台の盤が開くと思われるので、完全に開いたと同時に飛ばす。

 飛ばしたところで、砲撃手を撃破。そして砲台の導火線をすぐさま切り、爆弾の様子を見てから撤退。安全の為、階段を降りて撤退とする。

 

「……どうだ、テゾーロさん」

「採用。ただし砲撃手はメロヌスが()れ。この距離ならヘッドショットも可能だろう?」

 テゾーロ曰く、飛ばされた面々は空中にいるために受け身が取りにくいため、飛ばしてから砲撃手を撃破するのではなく、先に砲撃手を始末してすかさず導火線を切る方にすべきとのことだ。

 その案に、メロヌスは参った表情を浮かべた。

「部下に対して中々キツい要求(こと)言ってくれるな……角度が急すぎる。……だが、少しでも顔を出せば十分だ」

 ニッと口角を上げ、準備を整える。

 すると、ゴゴゴゴという大きな音が時計台から響いた。

「来たか……ぶっつけ本番だな」

「上に行く面々ってのは決めてんだろうな」

「お前ら二人だ」

 上に飛ばされるのは、ゾロとサンジのようだ。

 だが、そこへビビが自らを推してきた。

「私も行くわ! 仲間だもの!」

「……決まりだな」

 そうこうしている内に時計台の時計が完全に開き、中に巨大な砲台が広場を向いて設置されているのが見えた。

 そして砲台のすぐ傍に、カエル風の珍妙な衣装に身を包んでいる二人組――狙撃手であるMr.7とミス・ファーザーズデーが姿を見せた。

「二人だけか……完全にこっちを見てくれねェと」

 照準を時計台に合わせ、最高のタイミングを狙う。

 その目つきは冷徹なスナイパーで。ジワジワと放つ気迫にウソップ達は息を呑んだ。

「王女様、()()()()()

「――! ええ、わかったわ……」

 メロヌスの意図を察し、ビビは顔見知りの二人に地上から声を掛けた。

「Mr.7!! ミス・ファーザーズデー!!」

「「んん?」」

 聞き覚えのある声に反応し、無防備に下を向いて顔を覗かせる二人。

 次の瞬間!

 

 ドドォン! ドサッ……

 

 声の主に気づく間も与えず、メロヌスは狙撃。

 彼が放った二発の弾丸は、二人の砲撃手の眉間を正確に撃ち抜き、確かな死をもたらした。

 あまりの精密さに、狙撃を得意とするウソップは心底震え上がった。

「じょ、冗談だろ……!? こ、こんな急角度と塵旋風の中……しかもあんなに離れてんのに……!!」

「元を正せば新世界の強豪達も知る凄腕の銃使いだ。これぐらいなら造作もない。今だ!」

「わかってる!」

 次の瞬間、ハヤトが扇子を振るい、台風並みの突風を誘発。

 ゾロ・サンジ・ビビを時計台まで吹っ飛ばした。

「きゃあっ!」

「ぐっ!」

「何ちゅー威力だ……!」

 相当の強風なのか、先の戦闘で負った傷にも堪える。

 が、そこは気合で耐える。

「っ……おい、ステキ眉毛!!」

「わかってらァ!!」

 ゾロは刀の峰を、サンジは右足をビビの両足の裏に添える。

「押し出すぞ!」

「行け、ビビちゃん!」

 渾身の力で、砲台まで押し出す。

 二人はそのまま急降下するが、テゾーロがあらかじめ能力で展開していた黄金の触手にうまくキャッチされ、無傷で地上に降り立った。

「〝孔雀(クジャッキー)スラッシャー〟!!」

 ビビはバロックワークスに潜入していた頃から扱っていた武器を振るい、見事導火線を切ってみせた。そのまま砲台のすぐ隣まで転がるが、その程度の痛みなど意にも介さない。

 

 そして、時計は予告時間の午後四時半を指した。

 

「……」

 ……爆撃は起こらなかった。危機を知らない広場では、戦闘の雄叫びと怒号と悲鳴が飛び交い続けている。

 だが、ビビは喜べなかった。大砲の中から時計の音が聞こえるのだ。

 まさかと思って砲台の中を覗くと、中には時計が仕組まれている砲弾がカチカチと音を鳴らしていたのだ!

「大変みんな!! 砲弾が時限式なの!! このままだと爆発しちゃう!!!」

『!?』

「やはり時限爆弾か……!」

 悪い予感が当たったと、テゾーロは苛立った。

 これが用意周到なクロコダイルのやり方だ。狙撃手の身に万が一のことが起こっても、必ず砲弾が爆発するようにしている。

「爆弾である以上、()()()()()()()()最悪の事態は避けれるが……」

 不発弾であれば鉄板で強固な防御壁を構築し、周囲を土嚢や土で覆った上で撤去作業を行い、最悪の場合は爆破処理もできるが、今回はそうではない。

 どうすればいいか悩んでいると、思わぬ人物が現れた。

 

 ドンッ!

 

『!?』

「ハァ……ハァ……おま、たせ……しました……」

「……シード!? なぜここにいる!?」

 何と、本来この場にいないはずの部下(シード)が。

 呼んだ覚えのないテゾーロは、目を大きく見開き驚きを隠せない。

「ステラさんが……ハァ……救援要請を、したんです」

「ステラが?」

 シード曰く。

 彼はちょうど二日前、かつて世話になった海軍の教官に「演習に付き合ってほしい」という話を持ち掛けられており、それに応じてアラバスタ近海まで来ていたという。

 そこで緊急信号を受信し、内容がアラバスタの内乱でテゾーロがピンチに陥っているというステラの声が響き、すかさずアルバーナまで駆けこんだという。

「最寄りの港からは結構距離あったぞ……」

「ぜ、全力の〝(ソル)〟と〝月歩(ゲッポウ)〟で……死ぬかと思いました……」

 全ての体力を最速の移動に使ったため、かなり消耗しきっているようだ。

 大丈夫かと思いつつも、テゾーロは状況を説明した。

「時間が無いから手短に話す。時計台の上に時限爆弾がある。信管を抜くか、遥か遠くに持って行って爆破するしか道がない」

「信管を抜けばいいんですね? 海兵時代に爆弾撤去の経験を積んでるので、俺に任せて下さい」

「そんなことやってたのか!? 初耳だぞ」

「別に訊かれなかったので……では!」

 ダンッ! とシードは時計台までひとっ飛び。

 一瞬で砲台に着地すると、両手に武装色の覇気を纏って砲台の解体を始めた。

「ちょ、ちょっと!」

「大丈夫、元海兵です」

「……海軍の?」

 安心させるように穏やかに笑うと、あっという間に砲台の解体が完了。

 カチカチと音を鳴らす時限爆弾が全貌を露にする。

「……これか」

 時限爆弾を一目見て、シードは顔を歪める。

 この爆弾は、時計の針に起爆装置の回路から引いた電線を接着し、ある時刻――今回の場合は午後四時半――がきたら針が重なって通電し、爆発させる代物だ。言い方を変えれば、時計の針と起爆装置を繋ぐ電線を遮断できればいいのだ。

 問題なのは、衝撃に耐えられるかどうかだ。それも最後にシードが爆弾の解除をしたのは、グラン・テゾーロの国防軍であるガルツフォースを結成して以来それっきり。かなりのブランクがある。

「……一発勝負だ」

 起爆阻止(せいこう)か、起爆(ぜんめつ)か。

 シードは〝見聞色〟を限界まで解放し、全ての感覚を研ぎ澄まして電線の位置を把握する。

 時計の針と起爆装置につながっているところは……。

(見つけた!)

 電線を見つけたシードは、一瞬の躊躇いも無く武装色の手刀で時計の針を貫いた。

 それを見たビビは、目を瞑ったが……何も起きない。

「……まさか……」

「……成功だ!」

 ゆっくりと手を抜くシード。

 かなり荒っぽい手口だが、見事電線を断ち切ることに成功した。

 火花が火薬に引火しなかったのは……運がよかったのだろう。

「みんな! 小さい男の人が起爆の解除に成功した!!」

『……よっしゃあァァァァァァァァ!!!』

 

 

           *

 

 

 ()()は、王宮で激闘を続ける二人にも届いていた。

「何だ? 何だったんだ?」

「……あの小僧!」

 きょとんとするルフィに対し、クロコダイルは激しい怒りを露にしていた。

 作戦とはあらゆるアクシデントを想定し、実行に移すのが最適解だ。だからこそ、特製の砲弾をわざわざ時限爆弾にしたのだ。広場のド真ん中に撃ち込めずとも、これといった支障はきたさないと判断したからである。

 だが、まさか時限爆弾の仕組みを理解し、強引に時計と起爆装置を繋ぐ電線を破壊して爆破を阻止するとは……!! これはさすがのクロコダイルも想定外だった。

 策士策に溺れるとはよく言ったものだ。

「っ……やってくれたな」

 クロコダイルの計画は、大幅に狂うことになった。

 この距離でなら能力でどうにでもできるが、広場付近には新世界で腕を磨いたテゾーロの屈強な部下達がいる。遠距離攻撃も移動してからの強制爆破も阻止される。たとえ目の前の邪魔者(ルフィ)を排除できても、国盗りは失敗だろう。

「また一からか……!!」

 

 バキィッ!

 

「っ!!」

 怒りのあまり、柄にもなく隙を見せたクロコダイル。

 それを見逃さず、ルフィは拳を叩き込んだ。

「うおおおおおおおっ!!!」

「麦わらァ……!!」

 体勢を立て直そうにも、ルフィの猛攻はそれを許さない。

 何度も何でも殴り、それこそ命を削るつもりで戦う。

 そして渾身の一撃で腹を穿ち、吹き飛ばした。

「……ハァ、ハァ……どうだ!!」

「……いい気になるなよ……!!」

 猛攻を耐え、立ち上がるクロコダイル。

 すると鉤爪のフックを外し、中に隠された毒針を見せつけ、睨みつける。

「てめェのしぶとさには呆れたモンだぜ……これで終わりとしよう」

「毒か?」

「何だ、文句あるか」

「いや、別に」

 毒を使うのが何だとでも言いたげに、素っ気なく返事をするルフィ。

 クロコダイルは、不敵に笑った。

「そうさ、海賊の決闘は常に生き残りを懸けてる。〝卑怯〟なんて言葉は存在しねェ……!! 目障りなてめェとの戦いもこれで最後だ、決着(ケリ)を付けようじゃねェか!!!」

「おう!!」

 

 砂の王国の動乱は、終結へと向かい始めていた。




【重大発表】
前回お伝えした重大発表です。

前の感想では「打ち切りでは?」という指摘がありましたが、全く違いますのでご安心を。(笑)

実は……。

















新しくワンピの小説を投稿することにしました!!

主人公はオリジナルの女性キャラで、女性の大海賊の物語としています。海賊王の一団や同世代の伝説達との絡みが多く、作者の趣味が臨界点に達すると思うので、乞うご期待。

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