ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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マズイ、ちょっと迷走気味かも……。
頑張って更新しますので、よろしくお願いいたします。


第150話〝ニコ・ロビン〟

 アラバスタ王国全体が、大きく揺れ動いている中。

 首都アルバーナの王宮で、テゾーロは静かに次の手を考えていた。

(この流れだと、明朝にはアルバーナでの決戦が始まる。バロックワークスの幹部陣も、肝心のクロコダイルも倒せてない。ルフィ達は原作通り進んでるだろうが、メロヌス達もうまく行ってれば……しかしジェルマの軍がいる以上、分散させるのは愚策か)

 次の手が中々決まらず、困り果ててしまう。

 テゾーロの介入によって、アラバスタ王国の内乱は原作以上の規模となった。そもそもテゾーロ自身が強くなりすぎた分あってか、クロコダイルの警戒度を高めてしまい、戦争屋と連携するという事態に陥った。

 やれる限りの根回しをしてはいるが、今後の展開が予想つかない。

「やはり、おれがクロコダイルと一戦交えるしかないか……」

「あら、随分と武闘派なお金持ちね」

「!」

 背後からの声に反応し、バッと振り返る。

 視線の先には、テンガロンハットを被り、ジャケットとパンツの上にロングコートに袖を通した美女がいた。

 彼女は、テゾーロが()()()()()()()()出会った人物だった。

「お前は……ニコ・ロビン……!?」

「こんばんは、ギルド・テゾーロ」

 そう、後に麦わらの一味に加入することになるニコ・ロビンだった。

 この時期はバロックワークス副社長〝ミス・オールサンデー〟として生きていた頃。言わば一応は敵対関係という立場だ。

「クロコダイルの命令か?」

「その様子だと、私と彼の関係も予想ついているのかしら?」

「おれが質問してるんだ」

 圧を強めて尋ねる。

 ロビンは裏社会の組織を転々としてきた分、()()()()()には慣れていたが、相手はかの〝新世界の怪物〟。ワールドクラスの大物を本気で怒らせるわけにはいかないと判断し、素直に返答した。

「クロコダイルの命令じゃないわ。個人的な用事で来たの」

「私の首、というわけじゃないとなれば……何が言いたい?」

「あなたが()()()()()()()()()()、興味があるの」

 口角は上げつつも、真剣な眼差しでテゾーロを見つめるロビン。

 そして、こう切り出した。

「あなた、〝D〟の名についてどこまで知ってるの?」

「……〝D〟だと……?」

 テゾーロは怪訝そうに言葉を繰り返した。

 〝D〟の名を持つ人間は、この世界の歴史の中でしばしば現れる。ルフィは勿論、父のドラゴンや祖父のガープ、海賊王ロジャーとその息子のエース、フレバンス出身のトラファルガー・ロー、さらにはロジャーにとって最初にして最強の敵だった大海賊ロックスもその名を持っている。

 ふと思えば、彼女を救った海軍本部の元中将サウロも、本名がハグワール・()・サウロだった。

(……確かに、おれが〝D〟との接触が多いのは事実だな)

 海軍のガープは政府との関係上そうなるのは必然だが、海賊のルフィや革命家のドラゴンといった面々は、そうそう会えるものではない。

 世界的な大物であるギルド・テゾーロも、その名を持っていなくとも〝D〟について何か知っているのではないかと思われるのも、無理はないだろう。ニコ・ロビンはこの場において、敵としてではなく一端の考古学者として、怪物テゾーロを問い質しているのだ。

「……確かに、私が〝D〟のミドルネームを持つ者と接触があるのは事実だ。だがミドルネームがある人間など、この世界にはごまんといるだろう? それについて深い意味があるとは全く思えないが」

「いいえ。あなたは〝D〟の意味に心当たりがあって動いている……私はそう思ってるわ」

 ロビンがそう断言し、テゾーロは複雑な気持ちになった。

 テゾーロはこの世界を変えようという意志があって活動している。だがそれは武力によるものではないため、政府そのものを倒そうとしているドラゴンとは、目的に共通点はあれど根本的なやり方が違う。

 いや、実はロビンはギルド・テゾーロは偽名で本当は「ギル・D・テゾーロ」と思っているわけはないだろうが……それはさすがに深読みが過ぎる。

「……()()は〝D〟が何なのかなど見当もつかない。とある地方では〝神の天敵〟と呼ばれているという話ぐらいしかない」

「!?」

「残念だがニコ・ロビン、おれはオハラのような英知を持つ学者じゃない。所詮は成り上がりの成金野郎……お前が納得するような答えを持っているような男と思うな」

「あなた……ヒドいウソをつくのね」

 ロビンはどこか忌々しそうにテゾーロを睨んだ。

 テゾーロは知っているのだ。世界貴族に匹敵する富と権力で、オハラで何があったのかも、あの運命の日にどんなやり取りがあったのかも。

 もっとも、それはテゾーロが転生者であり、前世の知識を持っているからなのだが。

「なら今度はおれから質問しよう……歴史の本文(ポーネグリフ)の解読は違法行為だが、なぜそこまでこだわる?」

「真実を知るためよ。〝空白の100年〟を解き明かすため――」

「本当にそうなら、おれと本格的に敵対することになるかもしれないぞ」

 その言葉に、ロビンは眉間にしわを寄せた。

「……どういうこと?」

「〝空白の100年〟に何があったのか、世界政府が秘密にしたがってる真実は何なのか……おれにとってはどうでもいい話だ」

 テゾーロにとっては、世界政府が隠す秘密などに興味は無い。

 なぜなら、テゾーロは〝(まえ)〟を見ているからだ。

 過去を変えることは、天竜人にも四皇にもできない。当然テゾーロ自身もだ。だが未来を変えることと自らが望む未来を作ることは誰でもできるし、その権利も皆平等だ。

 未来を作れるのは、今を生きてる者達。過去の真実を知ったところで、それで未来が変わるのかというと、そうとは言い切れない。たとえ知ったとしても、世界政府に対する印象や評価は変わり不平不満が爆発するだろうが、それで四皇が政府を滅ぼしに向かうなど限りなく低い可能性だ。

 

 ただ、世界政府がもみ消した真実が、本当に世界に悪影響を及ぼすという可能性もある。

 世界政府が歴史の本文(ポーネグリフ)の探索および解読を禁止してる理由は、古代兵器の復活を危惧しているという建前だ。しかし原作においてオハラの学者達は、かつて強大な力を誇っていた「ある巨大な王国」の存在を突き止め、オハラの学者達を代表してクローバー博士は「その王国の思想こそ世界政府にとって脅威である」と推測して仮説を打ち立てた。

 その王国の思想を知る者はいないし、テゾーロが知るわけもない。ただ、本当に危険な思想である可能性は否定できない。

 その思想が民主主義や平等主義、男女同権主義ならばともかく、強い反道徳性・反倫理性の一面を持つ思想であれば、世界を乱すことに他ならない。世界政府にとって不都合である歴史なのは間違いないだろうが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のも事実なのだ。

 

 テゾーロは世界政府の尻拭いをしてきた。そして力を付け、暴力による時代への終止符を打つという目的を持って生きている。

 では、もし世界政府が隠したがっている真実が、テゾーロの革命を脅かすものであったらとしたら?

「おれはおれなりに未来を作ろうとしてるんだ。お前の好奇心や探求心が、おれの革命を脅かすという可能性を否定できるか?」

「っ……」

「そういうことさ。たられば言っても仕方ない」

 テゾーロは、基本的には争いは好まない。ただ、明確な敵意を持って接する相手には、相応の態度で対処するのだ。

 それがたとえ、たった一人であっても、根が善良でも、情に絆されないようにしなければならない。

 野望や夢を実現するとは、信念を貫くとは、時には自らの手を汚したり非情な判断をしなければならないのだ。()()()()()()()()

「……あなたは世界政府を変えられるの?」

「変えてみせるさ」

「……そう」

 踵を返すロビン。

 テゾーロは彼女を追おうとはしなかった。テゾーロにも立場はあるし、何より最優先事項はアラバスタの内乱の終結とコブラ王の救出だからだ。

「……そう言えば、ルフィは大丈夫なんだよな……?」

 

 

           *

 

 

 テゾーロがルフィの身を案じていた頃。

 反乱軍と別れたアオハルが、サンドラ河の畔で意外な二人と遭遇していた。

「麦わらのルフィ、何を道草食ってんの? ってか何なのその包帯、どっかで転んだ?」

 そう、クロコダイルと一戦交え敗れたルフィだった。

 彼は流砂に放置されたのだが、その英雄ガープ仕込みの生命力と〝ある女〟の介入で流砂から脱出し、ペルと偶然出会ってアルバーナを目指していたところだ。

 ちなみにルフィは、サンドラ河の巨大魚を倒して焼いて食っている最中である。

「ワニに……やられちまった」

「そりゃそうでしょ。相手はゴールド・ロジャーが君臨した頃の海から海賊やってる実力者。元8100万ベリーの賞金首だけど、実力を考えれば億は超えてるレベルだし」

 その言葉に、ペルは瞠目する。

 億越えの賞金首は、海軍本部の大将クラスもチェックする程の存在。懸賞金の高さと強さが必ずしもイコールの関係とは限らないが、少なからずクロコダイルは王下七武海に恥じぬ実力を持つ()()なのだ。

「……ギル兄が今根回ししてるけどさ、どうすんの? 一応反乱軍の説得には成功したけど、クロコダイルのことだからまだ隠し玉はあると思うよ」

「あやつめ……」

「関係ねェ!!」

「は?」

 ルフィの一言に、アオハルは虚を衝かれた。

「仲間が困ってんだ!! ワニが八武海だからなんだ!! おれはあいつをぶっ飛ばす!!」

「……いや、七武海ね。誰だよあと一人」

 呆れた笑みを溢し、アオハルは立ち上がる。

「――まあ、これで役者が揃ったわけだ」

「「!」」

「こんなところでつまづいてちゃあ、〝新世界の怪物〟のいるステージには上がれないね。ギル兄には申し訳ないけど、おれが奴を仕留めるとするかなー」

 棒読みでルフィを煽るアオハル。

 それは見事に効果を発揮し――

「おい草メガネ! おれがワニをぶっ飛ばすんだから引っ込んでろよ!!」

「……え? 草メガネって何? 草っておれのヘアスタイルのこと!?」

 ルフィが付けたあだ名に半ギレになるアオハルだった。

 

 反乱軍。

 バロックワークス。

 ジェルマ66(ダブルシックス)

 麦わらの一味。

 そして、ギルド・テゾーロ。

 アラバスタの命運を懸けた戦いは、ついに佳境に入っていくのだった。




早く決戦に入って、社長ボコらないと……。
これからまだやることありますから。

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