ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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今回はちょっとした閑話っぽい感じです。
主人公が直接関与しない話は久しぶりな気も……。

ってか、原作もアニメもエライことになってる!


第147話〝謝罪〟

 翌日。

 アオハルはテゾーロからのさらなる命令を受け、ある勢力と交渉していた。

「この国の英雄が黒幕だと……!? にわかに信じがたい話だ……!!」

「相手が相手だからな」

 アオハルから真実を告げられ、驚愕する男。

 その名は、コーザ。反乱軍のリーダーで、同国王女ネフェルタリ・ビビの幼馴染みである。

「この壮大な自作自演(マッチポンプ)において、クロコダイルが恐れてるのはビビ王女との再会だ。あんたとビビ王女の関係は、〝向こう〟もおれ達も把握している。だからこそクロコダイルは、あんた達が再会できないように手を打っている」

「……」

 アオハルの言葉に、コーザ達反乱軍の中枢は動揺する。

 少なくとも幼馴染み(ビビ)はこの内乱の黒幕の正体に辿り着いており、国王側も必死に追っている。そして自分達はそんなことなど知らずに掌で踊らされ、被害を拡大させる一因となってしまっている。

 このままでは、自滅という形でアラバスタ王国が崩壊し、その全てをクロコダイルに乗っ取られてしまう。

「……おれ達は、どうすればいい」

「そうだな、まずは――」

 アオハルが反乱軍に提案しようとした、その時だった。

「コーザさん! 大変だ!」

「どうした」

「国王がこの町に!!」

 反乱軍のメンバーの一人からの報告に、空気が一変する。

 しかも報告によれば、アラバスタの雨を奪ったのは自分だと公言しているというのだ。

「堕ちる所まで堕ちたか、国王っ!!」

「待って、いくら何でもおかしい」

 アオハルは激昂するコーザを制止した。

「そんなことを大っぴらに、それも反乱軍(てき)の拠点で言ったら、下手すりゃ殺されるよ。()()()()()()()()()。それこそコブラ本人かどうかすら怪しい」

「……お前」

「おれも行くよ。こう見えて腕っ節はいい方なんでね、用心棒くらいにはなる」

 

 

「正直に謝罪しているのだ!! この国の雨を奪ったのは私だ!!!」

 ナノハナの街では、国王コブラが兵士達を連れて民衆に公言していた。

 それは、言い出すには遅すぎる、何の解決にもならない謝罪。その上、事件を忘れるために町を消し去るというめちゃくちゃな宣言も告げた。

「不正な町だ、破壊して焼き払え!!」

 コブラは国王軍に命じて、町に火をつけ、人々に銃を向けて発砲し始めた。

 人々はパニックに陥り、逃げ惑う。

 そんな中、国王の前に躍り出る少年が一人。

「おい国王!! お前が雨を奪うから……!! 町はみんな枯れていくんだ!!」

 そう涙ながらに叫ぶのは、このナノハナで靴磨きとして働く少年・カッパだ。

 力の限りで国王に抗議するが、コブラは非情にもカッパを蹴り飛ばそうとした。が、蹴られる寸前に人影が凄まじい速さで通り過ぎ、カッパはその場から姿を消していた。

「……!」

 コブラは目を細める。

 視線の先では、アオハルがカッパを抱きかかえていたのだ。

「フゥ~……大丈夫?」

「あ、ありがと……」

 パンパンと砂を手で払うと、メロヌスは煙草を咥えて火を点ける。

「……誰だ、貴様」

「誰だっていいでしょ? 強いて言えば……ただの臨時雇いの用心棒さ。そこのリーダーさんの」

 その直後、馬に乗ってコーザが駆けつけた。

 反乱軍の指導者が現れたことに、民衆は一斉にどよめく。

「何のマネだ……貴様……」

「謝りに来たのだ」

「フザけるな!! 何て侮辱だ……!!」

 怒りを露にするコーザ。

 ダンスパウダーで三年間の雨を奪った事実をもみ消すために、町を破壊するという国王の暴挙。名君とは程遠い。

 そしてコーザは、ダンスパウダーを使っていたことを怒っていたのではない。国王を信じて死んでいった者を裏切ったことに怒っていたのだ。

 枯れた町に倒れた民衆は、皆最期までコブラを信じて死んだ。その気持ちをコブラが踏み躙ったら、死んでいった者達の気持ちはどうなるのか。

「ウソでもせめて〝無実〟だと言わなきゃ、死んでいった人達の気持ちは報われないよね」

「……」

 アオハルはコブラを睨みつつ、テゾーロとのあるやり取りを思い返した。

 

 

           *

 

 

「……〝マネマネの実〟?」

「ああ」

 アラバスタ上陸前。

 テゾーロはアオハルに、悪魔の実図鑑のあるページを見せていた。

「外見のみならず、声や体までをも忠実にコピーできる能力だ。戦闘には向かないが情報戦では凶悪なまでの効果を発揮する。たとえば……時の権力者に化けて国盗りを仕掛けたりとかな」

「まさか、このアラバスタの一件も……!」

「察しがいいな。そういうことだ」

 その極めて搦め手に長けた能力で政治工作をすれば、政権を容易く交代させ、土台作りもしやすい。その能力を持つ者がバロックワークスにいたとしたら?

 そう考え、アオハルは背筋が凍るような思いだった。

「……だが弱点もある。右手で自らの顔に触れることで変身できるが、逆に左手で顔に触れると元の顔に戻るという特徴がある。うまくハメれば、その場でネタバレなんてこともできるかもしれない」

「工作に向いてる能力か……スパイなら喉から手が出る程欲しい代物だ」

「もしそれらしき人間と会ったなら、「左の頬にゴミついてるぞ」とでも言ってハメればいいさ。ただ、なるべく公の場でやるようにな。その方が都合がいい」

 

 

           *

 

 

(……賭けてみるか)

 アオハルは怒りに震えるコーザよりも前に出て、コブラに声を掛けた。

「コブラ王。左の頬に何かついてるけど」

「え? ホントぅ?」

 

 カシャッ

 

『!?』

 その衝撃の光景に、民衆と反乱軍は息を呑んだ。

 国王がいきなりオカマに変わったのだ。声も体格も口調も、何もかも全てが。

「あ……」

「思った以上にバカでしょ、あんた」

 愛刀を抜き、その切っ先をオカマの眉間に突きつける。

「さてと……オカマさん、ちょっとゲロってもらうよ」

「っ……!! ハメやがったわねい!!」

「あんたの前にいるのは〝新世界の怪物〟の子分だよ? 抜かりはねェと言って――」

 

 ドコォン!!

 

 刹那、轟音と共に地響きが発生した。

 振り向けば、巨大な船が港に激突して横転していた。港付近の建物は崩壊し始め、混乱が拡大する。

「くっ!!」

 衝突の影響で宙を舞い、降り注いでくる瓦礫を、アオハルは愛刀に覇気を纏わせ次々と斬り払っていく。

 瓦礫は剣閃に沿って砕け散り、小石程度の大きさにまで砕かれながら飛散する。

(ちょっと待って、どういうこと!? 周辺海域にいる全ての船の監視取締りは要請したし、昨日の夜に停泊していた武器商船は沈めたはず!!)

 裏工作済みでありながら、さらなる一手を打たれたことに動揺を隠せないアオハル。

 それは、新たな勢力の介入を意味していた。

 

 

           *

 

 

 その頃、メロヌスはサンドラ川付近の武器庫で「66」の文字が刻まれた軍服を着る兵士達と激闘を繰り広げていた。

 そう、かの有名な戦争屋〝ジェルマ66(ダブルシックス)〟である。

「くっ……こんな所で加盟国同士の紛争なんてな!」

 次弾装填しつつ、苦い顔を浮かべる。

 というのも、ジェルマ66(ダブルシックス)を保有するジェルマ王国は、戦争屋として犯罪同然の非合法活動で軍事的支援を行い利益を得る〝裏稼業〟をしてるが、れっきとした政府加盟国なのだ。中立国であり強力な軍隊と世界トップクラスの資金力を有するグラン・テゾーロも同然であり、アラバスタ王国で揉めれば国際問題なんて言葉では済まない事態に発展しかねない。

 加盟国同士の紛争は、中立国としても避けるのが筋。しかしジェルマの暗躍を知った以上、放置するわけにもいかない。

(……ひとまずこの修羅場をくぐり抜けるのが先決だな)

 その時だった。

「はっ!」

「うおっ!」

 突如として、空中からの襲撃。

 電光石火の攻撃を、ギリギリで躱す。

「頭上の攻撃を躱したか……噂以上にできるようだな」

「こいつは……隊長格か……」

 メロヌスを急襲したのは、アシンメトリーな赤髪の男。

 赤色に大きく「1」と描かれているマントを着用しており、軍隊の幹部級かそれ以上の実力者のようだ。

 この男の名は、ヴィンスモーク・イチジ。ジェルマ66(ダブルシックス)の幹部〝スパーキングレッド〟であり、大昔に武力で北の海(ノースブルー)を制圧した人殺しの一族「ヴィンスモーク家」の現長男である。

「〝ボルトアクション・ハンター〟だな?」

「…………()()()で呼ばれるのは久しぶりだな」

 裏社会での通り名で呼ばれ、メロヌスは目を細める。

 するとイチジは、意外な一言を発した。

「我々とて、お前達と争うのは避けたい」

「何だと?」

 戦争屋としては珍しい、衝突を避けたいという主張。メロヌスは懐疑的だが、納得もしていた。

 ギルド・テゾーロという名前は、全世界で通用する程にまで成長・強大化している。その莫大な富と天竜人に匹敵する権力、そして保有する強力な軍隊は、新世界の大物達も直接的な争いを避けている。ヴィンスモーク一族も同様であるようで、いくら科学力に秀でた軍事国家と言えど、全世界の五分の一の金融資産を持つ男を相手取るのは面倒だと判断しているのだろう。

 もっとも、当初は利用して使い潰そうと企んだのかもしれないが。

「……そこまでわかってるんなら、手を引いてもらいたい」

「そう言われて従うとでも?」

「……だよな」

 交渉は決裂。

 メロヌスは溜め息を吐き、銃口を向ける。

狙撃銃一丁(そんなもの)で我々に敵うとは思えないが」

「オツムの出来はてめェらよりはいい方だからな。戦闘力と勝敗は別物ってよく言うだろ? ………それと弾薬庫の傍に突っ立ってるのはよくねェぞ」

「!?」

 引き金を引き、メロヌスは迷うことなく弾薬庫に発砲。

 その真意を悟ったイチジは、マントで自らを覆った。

 

 ドゴォォォン!!

 

 弾薬庫に弾丸が着弾した瞬間、とてつもない大爆発を起こした。

 その余波で次々と誘爆を引き起こし、ジェルマの軍隊をも巻き込んでいった。

 

 

 しばらくすると、黒煙の中からイチジが姿を現す。

 あの爆発をマントと服装だけで耐え切ったのだ。

「っ……これはしてやられたな」

 イチジはどこか愉快そうに笑った。

 彼に課せられた任務は「テゾーロ達の牽制」で、引かなければ実力行使で止めろとジェルマ66(ダブルシックス)の総帥である実父(ジャッジ)から命ぜられた。

 今回の任務は、テゾーロ達の妨害という点では成功だが、イチジはメロヌスを仕留めるつもりでかかっていた。だがメロヌスは弾薬庫に発砲するという奇策に打って出て、あの爆発の際にギリギリで川に飛び込んで逃走した。

 ――かなりの切れ者だと聞いていたが、ここまでとは……!

「……いい収穫だった」

 悪名高きジェルマ66(ダブルシックス)を出し抜いた、凄腕の元賞金稼ぎ。

 その技量・度量に感心しつつ、イチジは撤収を始めるのだった。




今思ったんですけど、おでんとバレットって、どっちが強いんでしょうね。
個人的にはバレット派です。

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