縦横の時間軸の奇跡   作:八幡主義

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前もって言っておくと、この物語の八幡にはトリコの三虎の能力が入ってます。そしてトリオンについて無知です。
誤字・脱字や感想、アドバイスなど楽しみに待ってます。


比企谷真弓①

五月上旬━━━━ボーダー隊員正式入隊日

 

ネイバーが数多来た事件から数週間が経ち、俺はボーダー入隊に踏み込んでいた。

理由は暇つぶしと姉妹の余計なお世話にならないためだ。このまま俺が何もせずに高校を通っていたとしても姉貴や小町は文句は言わないだろう。だが俺の精神がいかれてしまいそうだ。

 

「しかし、まだこんなに人が入隊してくるのか・・・甘く見てたな」

 

俺が思っていたのは十人くらいだと思っていたが、結構いるな。ボーダーに憧れているやつは何年経っても少なくならないのか・・・四年しか経ってないけど。

 

「・・・・・・・なんか・・・この光景・・・見たことあるような・・・ないような・・・?」

 

やべぇ、思春期をまともに過ごしていなかったから今になって厨二病が発病したか?それとも既に・・・?

悶々と思考を巡らせていると、集合の合図が掛かった。俺は少し慌ててそこに向かう。

 

「ボーダー本部長 忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎する」

 

あの人とはあの事件の時に会ったな。

しかし・・・なんかこの人が話す言葉を聞いていると、やる気が出そうだな。前線で戦う仲間を鼓舞する戦士みたいな?・・・適当に言ったけど。

忍田本部長の話が終わると、今度は先の侵攻でお世話になった、というか俺自身のせいでほとんどのボーダーの人にお世話になってんだけど、特に手を煩わしてしまった嵐山さんたちが登場した。木虎とかいう少女にも今度お礼を言っとかないとな。

それにしても嵐山さんが入ってきたとたん、場が騒がしくなった。俺はそんなに見たことはないが、テレビの影響とかイケメンとかの効果は絶大だな。

 

「さて、これから入隊指導を始めるが、まずはポジションごとに分かれてもらう。攻撃手と銃手を志望する者はここに残り、狙撃手を志望する者はうちの佐鳥について訓練場に移動してくれ」

 

嵐山さんの言葉で狙撃手組が、顔は知っていたが名前まで知らなかった佐鳥とかいう人に付いていった。これが、最初にありがちな「二人組になってくれ」とかだったら俺はボーダーを辞めるまである。

ちなみに俺の選択したポジションは攻撃手だ。そしてスコーピオン。理由は、単に他のポジションでは仲間との連携が重要になってくるだろうと予測しての判断だ。

 

「改めて、攻撃手組と銃手組を担当する嵐山隊の嵐山准だ。ますは入隊おめでとう」

 

俺はそんなに苦労をせずに入ったから、おめでとうとか言われてもピンと来ない。苦労したのはどちらかというとボーダーの人たちだから。

 

「忍田本部長がさっき言っていたが、君たちは訓練生だ。B級に昇格して正隊員にならなければ防衛任務に就けない」

 

そこまでしないと、要はネイバーを倒せないし、無給というわけか。

 

「じゃあどうすれば正隊員になれるのか。最初にそれを説明する」

 

ここから嵐山さんの説明が始まった。左手の甲にある数字、俺は1000だから一番低いってことか。これを4000にしなければ正隊員になれないわけね。

しかし・・・仮入隊の間に素質が認められたやつがそこに三人組でいるけど・・・どう考えても弱そうなんだけど。それにさっき嵐山さんのことを馬鹿にしていたから噛ませ感が半端ない。

 

「ポイントを上げる方法は二つある」

 

おっと、これは重要だな。さっさと訓練生とか脱却したいし。

 

「週2回の合同訓練でいい結果を残すか、ランク戦でポイントを奪い合う。まずは訓練のほうから体験してもらう。ついて来てくれ」

 

・・・どれくらいポイントがもらえるのかでめんどくさ度が変わってくるな。雀の涙だったら途中で投げ出しそう。・・・ボーダーとしても戦力になるやつを主力としたいと思うから、そこは面倒を覚悟しておいた方が良いな。

嵐山さんに続いて、他の訓練生が続々と部屋を出て行ってる。俺も遅れずについていく。

後をチラリと見ると、世話になった木虎が、訓練生と訓練生じゃないボーダーのやつと話していた。二人は俺より年齢が低いであろうメガネと白であった。

別に今じゃなくても良いだろ。それに俺はあそこに割り込んで行けるほどの度胸はない。

大人しく別の部屋についていった。

 

____________________________________

 

 

「さあ到着だ。まず最初の訓練は・・・」

 

目的地に到着すると、そこにはいろんな部屋があった。ボーダーって、技術が発達してるなと思ってしまうレベルだ。

 

「対近界民戦闘訓練だ。仮想戦闘モードの部屋の中で、ボーダーの集積データから再現された近界民と戦ってもらう」

 

へぇ、実践的で良いじゃん。と思うのは少数派らしく、他の多数派は驚いていた。

 

「・・・」

 

説明を受けているが、相手は俺を大多数で狙ってきた動きのとろい奴だった。こいつの行動パターンはインプット済みだ。だが、小さめにして、攻撃力がないと来たら実践というにはほど遠いものだった。

俺は少しだけ表情に不満をあらわにした。

 

「そんな顔をしても実践にほど遠いものは変わらんぞ?」

 

「!・・・なんで・・・いや、ここは姉貴の職場だったな」

 

突然、俺に声をかけてきたのは、唯一無二の姉貴こと比企谷真弓だった。姉貴には事前にボーダーに入ることは知らせている、というか姉貴と小町は俺の事件に関わっていないから、小町は俺がボーダーに入ったことを知らない。てか、これまでろくに顔を合わせてなかったし、同じ場所にいるんだからいつか会うだろうという判断だ。

 

「そういうことだ。ハチはいつも自分を痛めつけようとするドМだからな」

 

「そんな不本意な言い方はやめてくれ。俺は早めにレベルアップを済ませておきたいだけだ」

 

「そうだな。本当だったら私が調教したところだ」

 

「・・・・・そうかよ」

 

「そうだ。それより早く行かなくていいのか?全員終わってしまうぞ?」

 

「いや、それでいい」

 

「?」

 

姉貴は不思議な顔をしているが、これは俺の特性を最大限生かした行動だ。俺は姉貴と話しながらも他の訓練生の動きを把握していた。正確にはスコーピオンの使い手を観察している。

 

『・・・れ・・・0.6秒・・・!?』

 

5号室での様子をを見た瞬間、俺は口角を少し上げ、狙いを定めた。

 

「見つけた」

 

「・・・まさかとは思うが、あれを真似するつもりか?ならいくらなんでも素人じゃ無理だぞ」

 

「さあな、やってみないとわからないだろ?」

 

「・・・ならやってみればいいさ」

 

姉貴に言われたが、普通じゃ人の真似を100パーセント実行するのは無理がある。そう、普通ならば。

白い頭の俺の獲物が噛ませなやつにいちゃもんをつけられてもう一回やろうとしている。俺としては好都合。

 

『記録。0.4秒』

 

縮んでいても俺には関係ない。もう既に観察しきった。

俺は開いていた3号室に入る。周りのやつらがあいつに注目しているが、人が群れないからまた好都合。

 

『3号室用意』

 

ネイバーが俺の前に出現する。やっぱり恐怖とかそんなもの感じない。もし本物と戦うとしても恐怖は感じないだろう。もう慣れてしまったのだから。

 

「・・・俺は何にでも成れる」

 

『始め』

 

さっきの白頭を想像で自分に置き換え、リアルで敵を倒す。

ネイバーの前に瞬時に移動し、スコーピオンを腕から生やし、弱点である目を斬りつける。

 

「・・・っ」

 

『記録。0.8秒』

 

俺がこのトリオン体に慣れていないから、少しだけ動きがいびつになってしまった。それで記録がやつより長くなった。

 

「・・・くそっ」

 

俺は悔しさのあまり、舌打ちをしてしまった。

訓練室から出ると、周りが騒然としていた。しかし俺は別にそのことは気にせずに姉貴のところへ向かう。

 

「・・・」

 

「すごい記録を出したのに不満そうな顔だな」

 

「・・・そこに不満はない。だけどこの体に慣れていないことに少しいらだちを感じただけだ」

 

「それはそうだろ。今日トリオン体に換装したばかりだろ?当たり前のことだ。むしろその状態で一秒をきれる事自体可笑しい」

 

「そうかよ。・・・・・だがこれでこの訓練は満点だろ」

 

「それで満点でなければ、誰も満点は取れないよ」

 

俺と姉貴が話していると、誰かが近づいてくる気配がした。

 

「素人とは思えない動きね、狛枝先輩。それに比企谷さんはどうしてここに?」

 

俺が礼を言いたかった相手である木虎藍である。

 

「あーちゃんか。ちょっと弟の様子を見に来たんだが・・・狛枝?ハチ、お前の苗字はいつから母方になったんだ?」

 

「お、弟!?狛枝先輩が!?」

 

あー、苗字の事は伝え忘れていたな。つい狛枝と名乗ってしまったから、結局狛枝で通してしまっている。

 

「・・・あれだ。狛枝という名前の方がカッコいいと思ったからだ」

 

「見え据えた冗談は好きじゃないぞ。ハチは私や小町の事を思って、考えなしに言ってしまったのだろう?」

 

・・・姉貴に隠し事できないのはなぜだ?なにか特殊な力が加わっているのは確かそうだけど。

 

「まぁ考えなしに、のところは合ってるけど・・・改めて、比企谷八幡だ。よろしく木虎」

 

「よろしくお願いします・・・それにしても似ていませんね」

 

「ああ、よく言われる。だが正真正銘の同じ母親から生まれた姉弟だ」

 

「そうですか。それよりあのタイムは素人とは思えないのですが・・・」

 

「あれは俺の力じゃない。あの白いのを真似しただけだ」

 

「真似って・・・」

 

「ん?」

 

会話しているところに、急にあっちの集団が騒がしくなった。そこを見ると先日俺を直接助けてくれていた小さい人がいた。

 

「あれは・・・風間さんか」

 

「姉貴知ってんの?」

 

「ハチこそ風間さんを見たことがあるのか?」

 

「先の件でちょっと見た」

 

「あの人はA級三位の風間隊の隊長で風間蒼也さんだ」

 

・・・ん?なんかさっきから違和感があると思ったら、敬語だから違和感があるのか。敬語ってことは・・・

 

「あの人って、もしかして姉貴より年上?」

 

「ああ、容姿で初対面で勘違いされがちだが、私より一つ年は上だ」

 

まじかよ、あれで大学三回生かよ。世界には色んな人がいるな。

 

「・・・」

 

「どうした?急に黙り込んで」

 

「いや、そういえば小町と姉貴のボーダーの順位とか知らないなと思って」

 

「あー、ボーダーに入っているとだけ言っていないから、他を教えてなかったな」

 

「それに嵐山隊の順位も知らない」

 

「・・・テレビは見てますか?」

 

嵐山隊である木虎は不満そうな顔をして俺を見てくる。それに失礼な事を聞いてくる。俺をどの世代の人だと思ってんだよ。

 

「テレビは見てる。だがボーダーに関しては見る気がなかったから、初めて会った時もうっすらとしか覚えてなかった」

 

「ハチは基本ニュースとかしか興味がないから何を言っても無駄だぞ」

 

「・・・はぁ、じゃあ今教えるので覚えておいてくださいね」

 

「ぜひ頼む」

 

俺がそういうと、木虎は咳払いを一つして、俺に向かって喋り始めた。

 

「嵐山隊はA級10チーム中の5位です。そして小町ちゃんが所属する雪ノ下隊は8位です。正直小町ちゃんのチームは出来たのが最近だからA級に上がってきたのが早すぎるのよね」

 

「へえ、さすが我が妹。・・・それで姉貴は何なんだ?」

 

「私はソロのB級だ。時々他のチームのヘルプをしている」

 

「B級ねー。ポジションはどこなんだ?」

 

「戦闘ではオールラウンダーだ」

 

「戦闘では?他の事でもしてるのかよ」

 

「私はオペレーターもできるボーダー隊員だ」

 

戦闘もできるオペレーターとかどこに需要があるんだよ。せいぜい基地に敵が入ってきた時くらいだろ。

俺が姉貴の事でもやもやしていると、思いついたかのように俺に話を振ってきた。

 

「それよりハチはなんで攻撃手になった?」

 

「え・・・それは攻撃手の方が一人で敵を倒せると思ったからだけど。銃手とか狙撃手は仲間の援護が必要なんだろ?」

 

そう答えると、姉貴も木虎もため息をついた。

 

「ハチ。それは普通ならばの話だ。聞いた話じゃ、お前は普通じゃないだろ?」

 

「貴方のは測っていないけど、トリオン量が普通じゃなければ射手でも攻撃手と渡り合える人はいますよ」

 

「ハチの性格上、十分に距離を取って戦うものだと思っていたのだが・・・」

 

「・・・・・」

 

・・・・・・・・は?

 

「「「・・・・・」」」

 

あぁ、周りにボーダー関係者がいるのに、何でそういうことを聞かなかったんだろう。

 

「・・・そうなのか」

 

「ショックを受けているところ悪いが、ハチにはもう一つ言っておきたいことがある」

 

「え、これ以上俺の心をえぐる要素があるのか?」

 

「そうじゃない。ハチにはサイドエフェクトがあるかもしれない」

 

「?サイドエフェクトってなんだよ」

 

頭が真っ白になっていた俺は、切り替えて姉貴に聞く。

 

「高いトリオン能力を持つ人間は、トリオンが脳や感覚器官に影響を及ぼし、稀に超感覚を発現する場合があります。それらの超感覚を総称して『サイドエフェクト』と言います。これを発現する人は稀ですが・・・さっきの真似するという部分はサイドエフェクトかもしれません」

 

「あーちゃんの言う通り、その類稀なるトリオンを持っているのだ。発現していても何ら可笑しくない」

 

「ふーん、それは調べて分かるものなのか?」

 

「迅くんの様な、Sランクの超感覚は本人が自覚していないとほぼ分からないと言ってもいいが、検査してもらうに越したことはないだろ」

 

「・・・分かった。解散の号令が掛かったら連れて行ってくれ」

 

「よろしい」

 

話が終わったのと同時に、いつの間にかしていた向うの試合も終わっていた。


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