まさかこんな駄文を読んでくれる方がこんなにいるとは思いませんでした。
ありがとうございます。
巨人エレンを誘導しながら遂に本部に到着したオレ達。
ミカサ達が次々と窓を蹴破り建物内部に飛び込んでいく。
取り敢えずオレは。
「ミーナ、オレは外の巨人共を引きつけとく。その間にさっさと補給を済ませてしまえ」
「わかった」
オレの前を飛んでいたミーナに声をかけると反転、巨人の前に立ちふさがった。
「あと、生き残った奴に説明よろしく!」
同時に一番近くにいた7メートル級の頭部に踵を落とす。
勿論キッチリ止めを刺す。
「やっぱり怖い…。オレも中に行けばよかったかも」
格好つけた後、速攻で後悔するオレだった。
ミカサ達よりも一足先に本部内に到着していた訓練兵達は身体を硬直させて外を眺めている。それは誰の声だったのだろう。
「な、なんだよ…、俺は夢でも見てるのか…」
ジャン・キルシュタイン。皆をまとめながら命懸けで本部に到着した少年だ。
ジャンは目の前の光景が夢か何かだと思った。
それも仕方なきことだ。巨人が巨人を殺しているのだ。
そしてそれ以上に理解が追いつかないのは…。
「キモい顔でっ!よるんじゃねぇっ!!」
兵士ではない、おそらく一般人の少年が巨人を殴り飛ばしている光景だった。
リクを取り囲んで押し潰そうとした小型の巨人達の身体が周囲にはじけ飛ぶ。
15メートル級の巨人はリクに顎を打ち上げられて仰け反る。
瞬間、リクの姿が掻き消え巨人は止めを刺される。
7メートル級が投げ飛ばされる。
そしてリクの姿も掻き消える。同時に地面が、屋根が音を立てて崩れる。
この時理解した。リクは消えているのではなく自分達の動体視力では捉えきれない程のスピードで動いているのだ。
立体機動装置は見当たらない。驚愕するしか無い。
そして直ぐ側でリクには目もくれず巨人を殺す巨人エレン。
他の巨人とは異なり格闘術で巨人に対抗し、弱点であるうなじを理解して止めを刺している。
「ジャン!」
そこでミカサ達が飛び込んできた。
「お、お前ら!!生きてるじゃねぇかっ!!」
「やった!作戦成功だ!!」
生き残った兵たちは喜びの声を上げる。
コニーが外にいる巨人を利用した作戦を説明する。
夢みたいな作戦だが、現状ではガスも剣の刃も尽きかけている状況では、これしか取れる道がない。
「けどよ、アイツは?なんか見覚え有るけど…」
「昔いただろ?訓練兵団に…。脱落して追い出されたリクだよ」
「な、なんだと?」
「よく分からんが。追い出された後もアイツ独自に訓練して馬鹿みたいに強くなったんだってよ」
「はぁ!?そんな訳ねぇだろ!あの訓練を乗り越えられなかった野郎がそんなこと出来るわけがっ!!」
「けど彼は自分の意志で出て行ったわけじゃない。追い出されただけ。それに立体起動以外の成績は私と並んでた」
納得がいかないと声を上げるジャンをミカサが制する。
今は言い争いをしているヒマはない。
「…ちっ!」
ミカサの言う通りだ。
このチャンスを逃す手はない。
誰だってこの場で留まって死にたくはない。
この可能性にかけるしか無いのだ。
「おい、お前ら!何時まで戯れてんだ!」
そとからリクの声が響く。
「くそ!テメエ!後でぜってえ話を聞かせてもらうからな!逃げんじゃねぇぞ!」
「さっさと行け!お前らが補給を終わらせるまでにはこっちも終わってる!」
皆は互いの顔を見合うと巨人たちから背を向けて一斉に走りだした。
「漸く行ったか…」
オレは襲い掛かってくる巨人の攻撃を躱しながらミカサ達を見送った。
屋内には間違いなく巨人達が入り込んでいる。
しかしアイツらなら大丈夫だろうという確信がある。
「にしても巨人どんだけいるんだよ。怖すぎっ!」
それに気持ち悪すぎる。
原作でこんなに沸いてきたか?
明らかに倍以上はいるんじゃないかと思う。気の所為と思いたい。
「つーかヤベッ、ションベンして…、っ!!」
これで漏らしたらチビったと思われるじゃねえか。
それだけは嫌だ。
にしても続々と巨人が集まってきている。
「うわっ!?まだ来るのか!さ、最悪だ……」
死ぬ事はないだろうけどオレの気力は間違いなく混乱寸前だ。
敵の攻撃を回避しても攻撃を命中させても気力が磨り減るってどんだけメンタル弱いんだオレ。
この世界、巨人恐怖症なんて珍しくもないのに…。
俺の場合はこの力も宝の持ち腐れだよ…。
「…っ、しまったっ!」
アホかオレッ!?
油断して捕まっちまったっ!!
15メートル級の巨人だ。禿頭で腹が突き出たメタボ巨人だ。
巨人は直ぐにオレを握りつぶそうと手に力を込めた。
そしてオレを口に運ぶ。
「っ、うぎゃあああああああ!?やめやめやめっ!!?キモい!キモイキモイッ!!!」
メキメキと更に力を込めてくるが全く痛くない。
しかしオレの心はマジで痛すぎる。
カパリと巨人が大口を開ける。口臭がオレの吐き気を促す。
そして。
「うげええええええええ」
オレは巨人の口内にゲロを吐き出した。
あ、同時に漏らしちまった…。
瞬間、オレを掴んでいた巨人の指が弾け飛んだ。
オレが気を開放して巨人の手首ごと吹き飛ばしたのだ。
「よ、よくも…、よくも、よくも…う、うげぇ…っ」
完全に頭にきたぞ…。
凄まじい程の怒りが感情を支配するのを感じる。
オレの日常を、両親を…。そして何よりも…。
「テメエのせいでゲロ吐いた上に漏らしちまったじゃねえかあああっ!!!」
醜態だ。前世でさえここまえの醜態を晒した事は無かった。
男ってものは見栄を張ってナンボの生き物だ。
もしも周りに人間がいてこの醜態を見られていれば間違い無く自殺モンだったぞ。
目の前の巨人は嬉しそうにオレの履いたゲロを飲み込み涎を垂らしている。
「ひっ!?オレのゲロを美味そうに飲んでんじゃあねええええっ!!!」
やっちまった。
気づいた時には既に遅し。
オレは体力の温存も忘れて気功波をぶっ放していた。
極太の光線が巨人の顔をうなじごと吹き飛ばした。
そして後ろの巨人も巻き込んで爆発した。
撃ってしまったものは仕方がない。オレは手早く他の巨人に止めを刺す。
横を見ると巨人エレンが他の巨人に群がられていた。
「仕方がないな」
オレはエレンに群がる巨人を引き剥がすべく飛びかかった。
気がつけば吐き気は収まっていた。胃の中のもの全てを出したお陰か。
そういえば何だが頭も冴えている?脳内がクリアになっていくのを感じる。
もしかして巨人恐怖症が治ったのか?いや多分、これ以上の醜態はないから開き直ったんだろう。
自分の事をここまで客観的に分析できているのは初めての事だった。
「こうなったらアイツらが補給を終えるまでにマジで全滅させてやる。いやマジで」
そんでもって速攻で着替えに家に帰ってやる。
気を開放した時に濡れた股ぐらが熱によって乾いたからバレないだろうけど…。
出来れば着替えたい。漏らした事実を隠蔽したい。
しかしゲロ吐いて漏らすほど巨人恐怖症が進行していたとは思わなかった。
しかも自覚したら余計に…。
戦いが終わって冷静になった時が怖い。つーか戻りたくねぇ…。
そんな事を考えながらオレは自分が巨人を機械的に殺していく光景をぼんやりと眺めていた。
「あ、これって自動操作モード?」
アンテナ刺さってないけど…。
そして、なんやかやで巨人を皆殺しにしたオレは周囲を警戒する。
遠くに巨人の気配は未だ感じるが、取り敢えずは危機は去った。
「っと、エレンは…あ!」
巨人エレンを見ると、その巨体は既に崩れ始めていた。
度重なる戦いで肉体を酷使したから、ではない。
そもそもオレが殆どの巨人を殺しているのだ。
エレンは殆どダメージを受けていない。
恐らく巨人に変身した時のエレンの精神、つまり目的に沿った変身だったのだ。
巨人を殺し周囲に巨人の脅威が去った為、巨人の肉体は役目を終えたのだろう。
巨体が地に伏し、高温と蒸気を上げながら肉体が崩壊していく。
そしてうなじの部分からエレンの顔が現れた。
オレは巨人の身体に駆け上がると、エレンに手を伸ばした。
それと同時にミカサが割り込みエレンを抱きしめた。
ミカサはオレには目もくれずエレンを強く抱きしめ、そして。
「うわああああああああああんっ!!!」
声を上げて泣きだした。
普段は無表情で感情を表に出さないミカサが子供の様に泣きわめく。
それは歓喜の声だ。
続いてやってきたアルミンもエレンの手を取り涙を流す。
他の人間が訳も分からずに戸惑う中、ミカサは周囲も気にせずに唯なみだを流した。
オレは既に乾いた、いや少し後が残っている股間がバレないように皆から背を向けた。
もうすぐ乾きそうだ。
どうかそれまでバレませんように。
もしも脱糞してたら誤魔化す事は出来なかっただろうから不幸中の幸いだ。
「もしバレたら涙って事にしよう…」
オレはミカサとアルミンの涙を見ながらどうでも良い決意を固めた。
これは末代までの恥だ。
「…ちっ」
そして事態は非常に不味い状況に。
多くの兵士が見ていたのだ。エレンが巨人の中から現れるのを。
「おい、エレンを連れて移動するぞ」
人が集まってくる。
このままでは間違いなく碌な未来は待っていない。
ミカサもその結論に思い至ったようだ。
直ぐにエレンを抱えると立体起動装置からワイヤーを射出。
凄まじい速さで壁をよじ登っていく。アルミンも続いた。
人垣が更に集まりざわつく。そして。
「巨人が逃げたぞ!アイツは巨人だ!追えっ!追えええええっ!!」
「結局こうなるのか」
オレは頭痛を抑えながらミカサ達の後を追った。
巨人の次は人類が相手か…。まぁ、巨人よりは遥かにマシか…。
オレが欲しいのはオレの戦闘力に理解を示して受け入れてくれる理解者であって流されるだけの有象無象ではないからな。
例え打算を持ってオレの力を利用してやろうという気でもオレに向ける感情が憎しみの様な負の感情でなければ歓迎する。
エレンら第104訓練兵団達は、間違いなくオレの味方になってくれそうだ。
「そんな考えのオレも打算で保身…。うん、持ちつ持たれつで人間らしいな」
自分の大嫌いな感情。
嫌いなことは変わらないが、どうにか受け入れることが出来そうだ。
オレは城壁の直ぐ下に追い詰められているエレン達を見つける。
上からは巨人をも殺傷しうる榴弾を詰めた砲台がエレンを狙っていた。
指揮官の男キッツ・ヴェールマンが掲げた手を振り下ろして叫ぶ。
「撃てぇっ!!!」
「させっか!!
オレは双方の間に割り込むと迫り来る榴弾に向かって衝撃波を放ち相殺する。
まさか実際に使用する日が来るとは思わなかった。
攻撃力が殆ど無いので技覧に入れることすら憚れる通常攻撃と変わらない扱いの技だ。
オレ達の眼前の空間が爆ぜる。
「よう、盛り上がってるな?」
凄まじい轟音の中で皆の顔がぎょっとする。
有り得ない。巨人をも後退させる榴弾を正面から破壊した。
しかもあの男は一体どこから現れたというのか?
目撃者の目にはリクがいきなり現れたかの様に映った。
「おまえ…リクか?」
「お?気がついたか?エレン」
「な、何者だっ!!貴様っ!!!」
キッツが怯えた声で叫ぶ。
「唯の武道家だ」
オレは簡潔に普通に答えた。
オレの答えに辺りが静まり返った。
「あれ?外した?」
皆の視線にオレは消えてしまいたくなった。
一瞬だけ。いやマジで。
続く?
新技紹介
衝撃波:対人用の技。殺傷能力が低く牽制と相手の攻撃の相殺に使用出来る。消費も殆ど無い。
キャラ紹介
キッツ・ヴェールマン。
駐屯兵団の隊長?
住民の避難が完了するなり軍規を言い訳にして補給兵を見捨てて逃げた臆病者。
大柄で厳つい髭面だが、内面は反比例して繊細で小心者。
リクは嫌っているが、内心では共感できると思っている。
次回はキッツさんがアンチされそう?
いやアンチにならないように頑張りたいです。
最後に人間相手に無双はないのでご了承下さい。