今回は(笑)らしくいければ良いなと思います。
そういうわけで少しリクが壊れます。
いずれは戻すつもりなので生暖かい目で見て下さい。
お願いします。
連立する石柱と家屋の間を縦横無尽に駆ける影が1つ。
ミカサだ。
ミカサは立体機動装置を巧みに操りオレを幻惑しようと飛び回る。
そして…。
「ふっ!!!」
裂帛の気合を刀身に乗せてオレの頭部へ振り下ろす。
「甘い」
「くっ!!?」
気を感じ取って相手の動きを読むオレには通じない。
オレはミカサの斬撃を紙一重で躱すと同時に腕を捕り、遥か上空へと投げ飛ばした。
ミカサは直ぐに体制を立て直しワイヤーを射出、石柱へと降り立つ。
ミカサは悔しそうにオレを見下ろす。
「どうした?来ないのか?」
攻めあぐねているミカサに声をかける。
策など考えるだけ無駄だろう。
何しろ今の人類の戦術は立体機動術に沿った白兵戦が主流だ。
高速機動で敵を牽制、一気に距離を詰めて攻撃、即時退避のヒット&アウェイ。
強力な巨人の攻撃に被弾することは許されない。
そしてこの戦術こそ現時点の最高の戦術といえるのだ。
ミカサは思考しているのだろう。そして無理だと判断したはずだ。
しかし無駄だからといって退く訳にもいかない。
「くっ……、えっ!?」
ミカサはもう一度と足を踏み出そうとして、直ぐに足を止めた。
パキンッ、という音と共に剣が砕け刀身がミカサの足元に突き刺さったのだ。
「…、さっき投げられた時に?」
「正解」
なんの事はない。
オレは先程ミカサを投げ飛ばすと同時に刀身を根本からポッキリやっておいたのだ。
ミカサは直ぐに刃を交換する。
「やってるようだな…」
やって来たのはリヴァイ兵士長。
ミカサと同じく完全武装だ。
「混ぜてもらうぞ」
リヴァイはそう言うなりオレに向かってワイヤーを射出。
ワイヤーはオレの真横を通りすぎて背後の壁に突き刺さった。
「行くぞっ」
次の瞬間、リヴァイの剣が眼前に迫る。
ミカサも時間差で背後から襲い掛かってくる。
「はっ!」
「さぁ来い」
こうして二人がオレに戦いを挑んでいるのは理由があった。
エレンの査問会の後、ミカサがオレに相談してきたのだった。
「強くなりたい?」
「ああ」
エレンの調査兵団入りが決定し、解散となった後オレはミカサに声を掛けられた。
それはミカサの切実な願いだった。
ミカサの戦闘技術は対巨人戦においては完成に近い。後は実践を積むだけで良いだろう。
しかしミカサの望みはエレンを守る事にあった。エレンと生きる事にあるのだ。
今回の事件で、今の自分にはそれは不可能だと痛感したからだ。
そんな時に目にした圧倒的な力、つまりオレの武道家としての力だ。
「貴方は何故かエレンに協力的…、理由はわからないけど…」
ミカサの探る様な疑惑の目。
なんか怖いんですけど。その黒い瞳に吸い込まれそうなんですけど…。
流石に正直に「主人公だから」なんて言えるわけがない。
ミカサの心情としては信用は出来ないが、エレンの為にオレを利用したいのだろう。
でもその気持は理解したい。家族は大事だよな。
「要するに修行をつけて欲しいのか?」
オレの問いかけにミカサは強く頷いた。
「ほう、面白そうだ」
やって来たのはリヴァイ兵士長だ。
リヴァイの顔を見た瞬間、ミカサから凄まじい殺気が放たれる。
怒りの形相を隠そうともしない。
「なんだ?帰ったんじゃないのか?」
「ふん、貴様は得体が知れん」
「つまり監視か?エレンは良いのか?」
「どちらかと言うと貴様のほうが危険だろう?」
「だからオレからはやらないって」
「それよりも…、その修業とやらだが、オレも参加させてもらうぞ」
リヴァイはミカサの殺気を涼しい顔で受け流しながら言った。
今回の査問会、そしてこれまでの経験からか。リヴァイにも思う所があったのだろう。
「それは…、別に構わないが、けどこの際ハッキリ言っとくけど…」
オレの同意の言葉にミカサの顔が更に険しくなった。
そんなに怒ることないのに。
どんだけリヴァイの事が嫌いなんだよこの娘は…。
「オレも貴様の様な化け物じみた力が一朝一夕で手に入るなどと都合の良い考えは無い。しかし常に最悪の相手を想定した訓練は悪く無いだろう?」
「確かに、今までは対巨人戦のみを想定した訓練だったみたいだしな」
オレは短い訓練兵団時代の事を反芻しながら同意した。
確かに格闘訓練はあったが得点にはならないアレは皆適当に流していた。
「ミカサも何時までも睨むなよ。エレンが痛みつけられたのは、唯のデモンストレーションだ。仕方ないだろ?」
「……ちっ」
舌打ちしたよこの娘さん。
どんだけエレンが大好きで、それに反比例してリヴァイが大嫌いなんだよ…。
「……前途多難だな」
この面子で修行するのか…。
ミカサさん、ドサクサに紛れてリヴァイを殺そうとしなきゃいいけど。
実際は亀仙流の修行を独りでした方が修行になるかもしれない。
しかしミカサとリヴァイは人類でも最高クラスの実力者だ。
二人が共に修行することで得られる何かが有るかもしれない。
主にオレの精神安定剤的な物になってほしい。
オレが守る必要の無い腕の立つ二人が更に強くなれば巨人を相手にした時、かなり楽になりそうだ。
マジで巨人は未だに怖いし…。
「…はぁ」
オレは睨み合う二人を眺めながら深い溜息をついた。
そんなこんなでオレたちの修行が決定したのだった。
「…っ、はっ、はっ、はっ…っ」
「……っ」
修行開始から約3時間。
ミカサとリヴァイは地面に倒れこみぐったりしていた。
新鮮な酸素を取り入れようと呼吸を繰り返す。
結局二人はオレの身体に攻撃を掠らせる事も出来ずに全ての体力を消耗していた。
「おいおい、もう終いか?だらしねえぞ」
「くそっ…、化け物め…」
リヴァイが恨めしそうにオレの顔を見上げる。
「そんなになるまでアホか…、仕事しろ兵士長」
因みにこんな状態になるまで3回以上言った。
しかしリヴァイは思った以上に負けず嫌いだった様だ。
兵士長としての責務がある筈なのにコレだ。
「…くっ、ここまでなの…」
ミカサはリヴァイよりも少し早くダウンした。
よく喰らいついていたが、やはり経験の差だろう。
「……仕方ないな」
オレは自分の『元気』を気弾に乗せて二人に分けてやった。
「……っ、これは?」
「身体が…?今のが気というものなの?」
「こんなことも出来るのか…」
体力を限界まで使い動けない筈の二人が何事もなかったかのように起き上がった。
「今日はもう良いだろう?リヴァイ、アンタは兵士長だろう?早く帰れ」
「…ちっ、続きは明日だ」
仕事しろよ兵士長。
オレの言葉を無視してリヴァイは乗ってきた馬に跨った。
さっさと引き上げていく。
「ほら、ミカサも……、おいミカサ?」
ミカサは自分の掌を眺めながら固まっていた。
一体何事だ?何かぶつぶつと呟いている。
「リク、もう一度だけ私に気を送り込んでもらえないだろうか?」
「はぁ?何で?もう体力は回復しているだろ?」
「頼む…、今度は私に見えるように」
しょうがないな…。
オレは気弾を掌の上に作り出すと、そっとミカサに向かって放ってやった。
破壊力ではない『元気』を乗せた光弾はゆっくりとミカサに吸い込まれていった。
「……、これが『気』か…。『気』の力、コレが私にもあれば…」
「…っ、おいおい嘘だろう?」
次の瞬間、オレは開いた口が塞がらなかった。
なんとミカサはオレの目の前で気弾を生み出して見せたのだ。
そういえばコイツ、自分自身を完全にコントロール出来るチート娘だったな。
まさか気を分けただけで自分の気を認識してしまうとは…。
オレの様な下地がないから、その力は弱々しい物だが、正直オレはミカサの才能に嫉妬してしまう。
「……ふぅ」
ミカサは気の発動を止めると満足そうに微笑んだ。
やばい。めちゃくちゃ可愛い…。
恐らく心の中ではエレンの事でいっぱいなんだろう。
これでエレンを…、とか呟いてるし。
ご馳走様でした。
「貴方には礼を言っておく…。また明日お願いします」
ミカサはオレに一礼すると背を向けて行ってしまった。
そして独り取り残されるオレ。
リヴァイは今頃、信頼する多くの兵士達に囲まれているだろう。
そしてミカサにはエレンとアルミンがいる。
「……」
冷たい風が吹き抜ける。
もしかしてオレだけ独り?ボッチってやつ?
そういえば今気づいた。ていうか修行に夢中で気づかなかった。
オレ、親しい友人が一人もいないじゃねぇか。
リアルで僕は友達が少ないどころか一人も居ないじゃないか?
もしかしてオレの今までの人生……、灰色?
「……悔しくなんか…、ないぞ…」
初めて気づいた事実に流した心の汗は塩味だった。
そして次の日、約束通りミカサとリヴァイがやってきた。
ミカサは嬉しそうに目の前で気弾を生み出しリヴァイは、驚愕している。
しかしオレはイマイチやる気がでない。
そんな鬱なオレの気分を無視してミカサが話しかけてくる。
「それで、今日から本格的に『気』について教えてほしい」
「……オレもだ」
「好きにすればー、オレの事は放っておいて」
「は?」
「あぁ?何言ってやがる」
この二人はオレが不貞寝しているのに突っ込みもしないとは…。
実はオレ、昨日から記憶を掘り起こして考えていたのだ。
オレの親しい友人を。
開拓地で修行している間、確かに近所との交流はあった筈。
しかし記憶を辿れば辿るほど…友人らしき人物の存在は確認できなかった。
それどころかオレに体よく仕事を押し付け利用する者のなんと多い事か。
そして普段はオレを変人扱いしていた。
「なんてこったい…」
「あの、聞いてる?気についてだけど…」
五月蝿いな…。
人が切実な悩みで落ち込んでいる時に…。
今の俺はそれどころじゃないんだよ。
「ミカサ、こいつどうしたの?」
「あぁ、ミーナ…。私にも分からない。でも昨日はこんなじゃなかった」
「本当にいた…、あの、リク?大丈夫?」
聞き覚えのある声に反応して視線を向ける。
そこにいたのはアルミンとミーナだった。
「昨日、気を使って見せたら興味を持って…」
「他の皆も来たがったけど、流石に全員は抜け出せなくて…」
「ガキどもが…」
「ひっ、リヴァイ兵士長っ!?」
そういえば今、兵士達は巨人に殺された人達の埋葬中だったな。
早く遺体を何とかしないと疫病の原因になるだろうし、リヴァイが睨むのも無理はないか。
「ねぇ、もしかして僕らも出来るようになるのっ!?」
アルミンは興奮しながら俺の耳元で聞いてくる。
正直ウザい…、しかし。
「わたしも…、興味あるかな」
ミーナの声によって俺は一つの天啓を得た。
今から何とかすれば良いのではないか?
これから友達作ってぼっち卒業すれば問題無しなのではないだろうか?
出来るなら可愛い子が良い。出来ればミーナみたいな…。
「……、よし!俺に任せとけっ!」
俺は勢い良く立ち上がると拳を振り上げて叫んだ。
ミカサとリヴァイの目が冷たいが気にしない。
大丈夫っ!俺はまだ若いっ!
なにせピチピチの15歳だからな!
修業によって叩き潰してしまった青春時代をこれから取り戻すんじゃいっ!
純粋な目で俺を見つめるミーナとアルミン。
初めての友達は君たちに決定だ。
何時の間にか俺が他人に対して感じていたウザさは吹き飛んでいた。
よしっ!目標は100人友達が出来なくても100人分大切な友人を作ろうっ!
なんか目標がズレてきている気がしないでも無いけど、友達が一人もいない孤独な人生に意味も意義も感じられないしなっ!
「というわけで皆、オレの友達になってくれっ!」
「あぁ?なに気持ちわりぃ事言ってんだ?トチ狂ったか?」
「…いや」
ミカサとリヴァイの言葉はほぼ同時だった。
オレもテンションが上がりすぎていきなり口走ったのは失敗だったが即断るなよ。
「キモい」は無いだろう。リアルに傷つくわっ!
「あ、あの…よくわからないけど…、友達になるくらい別に…」
「わ、私も…」
ミーナとアルミンが躊躇いがちに言ってくれた。
「マジでっ!?」
オレは嬉しさのあまり二人の手を取った。
やった!いきなり友達ゲットっ!
言ってみるもんだ。
これから二人はオレの真の友っ!真友だっ!
絶対に100人分大切にするぞっ!
ミーナとアルミンに群がる巨人は全て最優先で始末してやる。
全ては色ある人生の為にっ!
つづく?
ぼっち卒業やったね!
しかし実はアルミンもミーナも打算で友人を申し出てます。
真友なのはリクの一人よがりです。
しかし舞い上がって気づいていないです。
友達居ない孤独に初めて気づき鬱って舞い上がって少しキャラが壊れてます。
元に戻るんでしょうか?