12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります   作:ないしのかみ

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第10話目です。


空挺隊

<10>

「伊丹よう…じ? 二重橋の英雄なら、伊丹浩司だよ。名が間違ってる」

 第七偵察隊々長の朝霞一尉は不思議そうな顔をして問い返したわ。その言葉に私は頭を殴られた様な衝撃を受けましたの。

 

 こんにちは。翡翠宮のシェリーです。

 ラノベやゲームで主人公を張っている伊丹一尉と言う名の陸尉は存在する。

 でも、名が違う?

「シェリー嬢は名を間違えて覚える事が多いんですよ。初見の時、『白鳥』副大臣を『白百合』様って呼んでた位ですから。日本語の発音がまだまだなんでしょうね」と菅原様。

 え、待って。私(現世)じゃない、あたし(前世)の知る情報と微妙にずれがあるわ。

 呆然とした私を脇に置いて「救援の派遣が延期された」だの、「やっぱり、今の内閣は内閣は弱腰ですね」だのを、一尉と菅原様が話し込んでいますね。

「帝国正規軍が動いてない以上、視察の外国武官やマスコミの目もあるし。このまま籠城しても守り切れると判断した様子ですね」

「思った程、講和派議員が虜囚となってないのも理由ですか。これはカーゼル候やシェリー様のお手柄ですが、かえって強攻策を採りづらくなったのは誤算でしたね」

 そう、今の所、相手は帝国軍ではなくオプリーチニナ。

 これが正規の帝国軍なら戦争状態になっているけど、これは殿下の私兵、つまりただの愚連隊。

 ナチスが政権を取る前の突撃隊が、勝手に暴れ回ってる様な物なの。それを正規軍たる薔薇騎士団が守っているのだから、自衛隊としても内政不干渉の立場を取って軍事行動は取りずらいのよね。

 そして私の勧告に従って、有力な講和派議員達は事前に護衛を揃えて自衛するか、帝都から家族を領地へ待避させている。だから捕まった議員の数は『史実』より遙かに少ないのよ。これが自衛隊が監獄開放作戦を躊躇う理由の一つ。

「食料が足りないのが目下の問題ですね」と一尉が呟く。それを私は「それは問題ありません」と答えたわ。故郷を出た際、あたしは幾つかの指示を下してきたからだ。

「空挺隊に糧秣の輸送を手配してきました。間もなく届くでしょう」

 テラスへ出る。

 良いタイミングで水平線から大きな影が幾つも飛来するのが分かったわ。

 帝都防衛軍の騎竜部隊には手を回してあるので、翡翠宮上空までの針路は確保されている。

 鈍重な空挺隊が騎竜の迎撃を受けたら一溜まりも無いからね。

 計9機の双胴滑空機が低空をパス。そして後部ドアから翡翠宮の中庭へ、梱包された荷物がどさどさと落とされる。

 訓練が行き届いてれば、ここで強行着陸して中から空挺兵がって展開になったんだろうけど、竜に引っ張られた編隊はそのまま一航過すると帝都外へ飛び去って行くわ。

 翼を広げた一つの人影を除いて。

 

<ここで解説>

 滑空機の形式はGo242かク7辺りだと思って下さい。双テイルブーム型は空中投下が楽なんですよ。

 無論、それより規模は小さいですし、羽布張りで外見も不格好です。




 さて、なんだか雲行きが怪しくなってきました。
 朝霞一尉は自衛官駐屯地の命名法則で、朝霞駐屯地から。

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