12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります   作:ないしのかみ

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第6回です。


竜の宅急便

<6>

「菅原君」

 菅原様の後ろをちょこちょこ歩く私を見とがめたみたいです。私は優雅に白鳥副大臣へ一礼し、後ろへと控えました。

「議会へ働きかけが露骨すぎて、内政干渉に当たるんじゃないかしらね?」

「私はシェリー嬢を仲介して、有力諸侯へ意向を伝えてるだけです。そこから先は与り知らぬと突っぱねる事も可能ですが?」

 そう。あたしは新しい『紙』の宣伝も兼ねて、帝国元老院議員達へ手紙を送っているの。まぁ、その中に政治に関する文章と「と、菅原様も申しておりました」と言う一文が入ってるだけよ。

 決して菅原様自身が直接、要望を伝えている訳ではありません。差出人はあくまで私ですからね。

「詭弁ね」

「詭弁です。しかし、それが外交ではありませんか?」

 副大臣はため息をついて、菅原様から私へ向き直った。

「まぁ、議会の情報もシェリー様を通じてこちらも掴んでいる訳だし、例の悪法、延期されたのも貴女の功績ね」。

 でも「いえいえ、全ては未来の夫の功績です」と持ち上げておこう。

 オプリーチニナ特別法は廃案にならなかった。ただ、延期されたわ。陛下の回復まで時間を稼げるかが勝負になった。

 王太子は身辺固めを着々と進め、私兵集団は私の知る時よりも質、量共に強大な規模になりつつある。噂では怪異も扱ってるとか。

 こちらも動員を急いではいる。けど、王族と地方領主では基本的にどうにも差が出る。講和派の体制が整う前に、ゾルザル殿下は特別法を通してしまうに違いない。

「そうそう。テュエリ伯は、いいえ、貴女は面白い事を始めたそうね。飛竜の商利用とか、評判になってるわよ。帝国辺境までなら帝都から一日で手紙を届けられるとか」

「菅原様にお聞きした宅急便を参考に致しました。竜は開発維持費が高いのです。後生大事に飼うよりも、転用して稼ごうと思った次第ですわ」

 本当に軍竜は育てるのが大変よ。ただ騎乗して飛ばせるだけでは済まない。弓や槍衾に怯まない胆力を持たせなければ使い物にならないから、十頭の内、軍竜になれるのは一頭程度だと言われているわ。

 残りは伝令用にしかならないけど、伝令竜ばかり増えても財政を圧迫するから普通なら廃竜処分。でも、これを民生に転用すれば?

 空飛ぶ宅急便の出来上がり。無理すれば人だって運べるしね。帝国軍からも戦闘用として失格だから、戦力としても脅威にならないってお墨付きも頂いたし。

 馬鹿よね。直接戦闘に使えなくたって、航空部隊って使い道はあるのよ。

 

<ここで解説>

 多分、『小荷物なら、早くて便利なテュエリ便』とか宣伝してますね。

 軍馬もそうだけど、軍用動物って育てるのは本当に大変みたいです。本来、動物は臆病ですからね。明らかに怪我しそうな矢玉の中を走れる様に調教しなきゃ、軍馬って役に立たない。火器が発明されたらされたで、恐ろしい銃砲声に怯まない様にしつけないと主を放り出して逃げてしまいますからね。




大臣の名は誤植ではありません。

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