12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります 作:ないしのかみ
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「で、あたしぃ、何でこんな所に居るのかな?」
目の前で桃色頭から生える白い一本羽根をかりかり掻きながら、半ば強引にロンデルから連れて来られたセクシーなセイレーン少女がぼやく。
亜人嫌いの貴族がもし居合わせたとしたら、不敬罪で確実に死刑になりそうね。
「テュエリ伯令嬢、シェリー様の前である。ミード・ルナ・トディ。言葉を慎め」との筆頭侍女の言葉も意に介さず、「あー、早く済ませくれないかなぁ。論文書かなきゃ拙いんだよね」としれっと言ってのける彼女は、ロンデルの天才少女と称される導師。
でも現時点では博士だけどね。魔法都市ロンデルに住む学究の徒らしく、やっぱり変人の類よ。
アルケミストを自称して今は薬学で名を上げてるけど、本来は冶金やら機械の方に興味があるって言うんだから怪しいわ。特に稲妻に関する再現装置の考察とか、特地の人に理解出来るのかしらね。
「テュエリ家が貴女を丸抱えしたいって話なんだけど、興味ないですか?」
と告げると「あるよ。あるある。んー、でも研究以外で拘束されるのは嫌かも。むぅ」とミードの葛藤が始まったわ。
けど乗ってくるでしょう。貴女は研究で多額の借金があるのは調査済みだからね。
「でも領地が山地だろ。あたしはいつか、風の精霊魔法で自由に動く帆船を作りたいんだよねぇ。『オール要らずで、すいすい移動君』って名も考えてあるんだからぁ」
その名付けセンス。貴女は『ああっ、時を巡る三姉妹』の末っ子か、『ご奉仕、ご奉仕なスペシャリスト、某メイド隊』のマッドサイエンティストですか。
「幾つか論文を読ませて貰いました。電…もとい、特に新しい化粧水は実に素晴らしかった。是非とも製品化したいわ。そうね。製造権の買取費の他、利益の1%は貴女の取り分で…」
そこまで言った途端「やるっ!」と即断。
話が早くて助かるわ。
「でも、お嬢様は伯爵では無くて伯爵令嬢だろ。君が雇用費を本当に払えるのぉ?」と続ける所はシビアね。
ごもっとも。でもあたしは少し前まで我が儘放題の悪役令嬢。両親はお金に関しては結構甘々だし、今は製紙を元手に自分で稼いでるからね。軍資金にぬかりないわよ。
手付けとして金貨を一枚出すと、彼女は口に頬張って本物か否かを確かめたわ。
「バレンタインデーのコインチョコレートだとでも?」
歯形の付いたコインを取り出し「ああ、失礼。って、あれ、今二月だっけ?」と謝るセイレーン。
私は心中で転生者発見の賭に勝ったのを確信したわ。
その後、彼女が化学方面に応用が利くのを確かめた後、無事に雇用に成功する。こんな危険な逸材、他人に渡してたまるもんですか。
<ここで解説>
ミードのモデルは女平賀源内です。イメージは桃色の小桜インコ系セイレーン。錬金術師を自称しています。
外見イメージ的には、頭の良いミューティ(アニメ版)かな?