12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります 作:ないしのかみ
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「シェリー様。ミード・ルナ・トディを発見しました」
開口一番、筆頭メイドからの報告に私は飛び上がったわ。ロンデルの天才セイレーンが本当に存在していたのね。
「既に招聘の人員を手配しております。それとアガベ・エル・マデイラが参っています」
悪役伯爵幼女のシェリーです。色々と次の手を打ってる最中で、今は領地から人を呼んだ所です。私は「ここへお通しして」と告げると立ち上がったの。
アガベは領地にいる職人で、がっしりした体躯を持ったドワーフよ。挨拶もそこそこに本題に入るわ。
「試作品の出来具合は悪くないわ。白さが足りないのが物足りないけど、これはおいおい解決するとして量産化の目処は付いたのかしら?」
「そこは抜かりありやせん。まぁ、イタリカから流れてくるブツにゃ敵いませんが、うちは価格で勝負って所ですな。今の所、材料は供給にも問題なく、費用も只同然」
良い傾向ね。試供も兼ねて商店に卸した分も好評だったし。
「吹き流しの方は?」
「お嬢様の指定通りに作りやした。そちらも問題ありやせん。しかし、竜騎士の方が扱いに手間取ってますぜ」
「まぁ、慣れて貰うしか無いわね。数は揃えられて?」と会話を交わした後、親方は退出し、私は菅原様とカーゼル様へ文字通り『手紙』を書く。
そう、紙よ。戦争には資金が要る。だから製材から出る大鋸屑をチップに再利用して製紙をやってみたの。ざら紙で日本製に比べれば品質は今ひとつだけど、羊皮紙と比べれば段違いよ。
菅原様宛には恋文。カーゼル様宛にはゾルザル殿下の私兵が動き出す前に、議会で特別法潰しを画策して欲しい旨を書き記したわ。
「でも『GATE(げて) 自衛隊、彼の地にてかくハーレムを築き上げり3 ~今度は導士様~』まで反映されるなんて…」
ミードはゲーム続編の登場人物なのよ。
もしかしたら私以外の転生者だって居るかも知れないと思って各地に密偵を放ったのだけど、はぁ…大当たりね。
<ここで解説>
転生悪役令嬢が領内の内政に動き出しました。
特産品として森林資源を活用して『紙』を売り出します。わら半紙よりもやや上等の代物ですが、羊皮紙しか無かった特地では驚異の発明商品かも。
元老院を利用して掃除夫の設立を阻止しようともしていますが、シェリー自体が議員では無く、父とカーゼル侯爵頼りの間接関与しか出来ないのがネック。こちらは苦戦する気配です。
オリジナルキャラが出始めてますが、原作キャラと違ってどの様に動かしても問題ないので楽です。仮に死んでも文句来ませんからね。
一応、キャラ名はお酒の法則(ミード=蜂蜜酒。アガベ=竜舌蘭酒。トゥデイ=椰子酒)に従って命名してます。
「『GATE』(げて)ワールドは広大よ」とか、草薙風に呟く悪役幼女(笑)。