12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります 作:ないしのかみ
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最初の一撃は空振りでした。チチは完全に見切っている感じです。
私の悲鳴と共に執務室の扉がばんと開き、黒い影を持った誰かがレミーに体当たりするのが目に映ります。
「シェリーっ」
菅原様でした。突き飛ばされたレミーはたたらを踏んで振り返ると、ファルカタを胸の位置に構えて、そのまま突進してきます。
「危ないっ」
その叫びは通じませんでした。レミーは菅原様に激突して凶刃がその身体を貫きます。ゆっくり崩れる大きな身体。私は半狂乱になって呆然と立ち尽くすレミーの顔面へ、ストレートパンチをお見舞いしました。
シェリーです。
菅原様は一命を取り留めましたが、当分、絶対安静です。
レミー・マルタンは習志野三尉に取り押さえられ、その後、牢獄の住人となっています。
本当は菅原様の持ってた拳銃で、彼女を撃ち殺したい殺人衝動すら湧き上がったのですが、菅原様が止めてくれました。
息も絶え絶えなのに「手を血で汚してはならない」と伝えた後、それからずっと昏睡状態が続いています。
私は彼の傍らで不眠不休の看病をしましたが、遂にダウンしてしまいました。
その間にも状況は動いています。
私達の都合なんかお構いなく。
アルヌスではデュシー候とカーゼル候が中心となり新政権が樹立されました。
表向きはモルト皇帝を頂く臨時政府ですが、肝心な皇帝や皇族が囚われの身で在る為に正当性が足りません。
そして自衛隊の帝都包囲は続いています。
「帝都は悲惨な状況らしいね」
そう述べるのは、あたしの寝台の脇に立つセイレーンです。鉱山計画とか、発明品の進展具合などを報告に来たのでした。
「流石に降伏した難民を撃つ事はないでしょう?」
自衛隊は帝都を包囲するだけで進撃を一切取っていません。時々、砲撃するだけです。仮に攻勢に出た際の人的被害と物資消耗を計算して、侵攻は不経済だと割り出した結果でしょう。
でも、帝都への物流は完全に止めているから餓死者が出ているのです。元々、外からの支援がなければ帝都の食料供給は成り立ちません。飢えに耐えかねた市民達は続々と帝都を捨て自衛隊に降伏しています。
「んー、これまでの自衛隊はね」
ミードはため息をついて天を仰いだ。
「問題なのはゾルザルの馬鹿が、怪異ダーを難民に紛れさせたんだよ」
言葉を失います。紛れ込んだ怪異との区別が付かないならば、身を守る為に無差別に発砲するのは目に見えていました。しかし、それを誰が責められましょうか?
「でも明るい話題もある。ようやくピニャ殿下を保護したらしいとの話も入ってる」
「えっ?」
「伊丹隊の活躍らしいよ」
これで臨時政府は旗印が揃い、今後は彼女を盟主として反ゾルザルに動く事になるのでしょうか。一刻も早く、日本側の交渉窓口として機能してくれる事を望むだけです。
「ま、政治の事は良く分からないし、君らの言う『ゲーム』の事もあたしは完全に理解しているとは言い難いんだけどさ。
あんまり思い詰めずに、まず目の前の事を片付けない?」
「それは…」
ミードはじっとあたしの顔を注視します。
「転生しようが何だろうが、あんたは現在(いま)、生きているからさ」
<ここで解説>
習志野三尉は無事に原隊に復帰してます。
ミードさん久々に登場。
忘れ去られてはおるまいな?
…されてるかもなぁ(笑)
『エロエロンナ物語』無事、本日投稿しました。