12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります 作:ないしのかみ
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目の前に現れた黒髪の気が強そうな女の子。
レミー・マルタン。
確か従姉妹です。ええと…そう、昔、帝都で行われたピニャ殿下主催の園遊会で、私にこれ見よがしに真珠のネックレスを自慢していた。
確か、あの時はまだ、私があたしになる前のシェリー・テュエリだった筈です。「貴女の家の方が格下よ」や「田舎者」とか、散々酷い言葉を並べて、このレミー嬢を当時のシェリーは苛めていたんでしたっけ?
他人を見下す、本当に嫌な我が儘娘でしたからね。
だから、あの園遊会で真珠のネックレスを自慢されて、物凄く悔しかったんですよね。自分より格下の女が、これ見よがしに自慢していると。
そこへ、突然、あたしが降臨してしまった。
「ちょっと、聞いてるの!」
その怒声に、はっとなって意識を戻します。
済みません。貴女が何を言ってたのか、全然耳に入っていませんでした。
こんにちはシェリーです。
執務室に突然現れた闖入者は私の従姉妹でした。
今までに掴んだ情報から、現在、マルタン家の一家はバスーン刑務所送りになってた筈ですね。原作、つまり『GATE』(げて)では、かの一族は描写は園遊会のそれだけで、その場限り、名前すらないモブでした。
ゲーム版。つまりゲーム化された作者公認の二次創作で、シェリー主役ルートにてレミー・マルタンなる名が付けられ、シェリーに苛められる被害者その1に昇格したのです。
ちなみにシェリーが悪役令嬢プレイをひた走れば、このレミーの他、カミュやコアントローなんかの今まで苛めてきた女の子達に復讐され、悪所で死ぬのがバッドエンド。
ゲームではマルタン家の両親らもバスーン刑務所送りになりますが、自衛隊の解放作戦で無事に脱出を果たしていますね。
しかし…。
「何であんたが死んでないのよ」
「良く分からないけど、何か逆恨みをしている様な…。ねぇ、お嬢ちゃん」
困惑気味の習志野三尉は取りなそうとしています。
でも、レミーはそれを無視して叫びまくります。
「なんであたしの両親が解放されないのよ。変だわ、おかしいわ。どうなってるのよ!」
ええと、反応が変じゃないですか。レミーさん。
「自衛隊がバスーン監獄を、攻略してないせいだろ」
と声を掛けたのは、いつの間に執務室に入ったのかチチです。
「そんなの変よ。変よ。あたしはフラグ通りの行動をしたのに、何でこいつがのうのうと生きて、しかもテュエリ夫妻まで無事なのよっ!」
ついに「こいつ」呼ばわりですか。しかし、自分は確信しました。私はチチに『もしかして』と視線で問います。チチも視線で『是』と返してきます。
ああ、このレミーも転生者なんだ。
<ここで解説>
レミー・マルタンの名もお酒から。
カミュとかコアントローも同様。
レミーが黒髪の女の子って設定は、アニメ版『ゲート』の園遊会描写からです。
全話PVが2,5000を超え、UAが7,800に達しました。
読んで下さった皆様、ありがとうございます。
オリジナルファンタジー『エロエロンナ物語』の方も、どうぞ宜しく。