12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります   作:ないしのかみ

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第16話目です


ラジオ

<16>

 

 シェリーです。紆余曲折ありましたけど、何とかテュエリ領に辿り着きました。

 私達は領主館に早速入ると情報収集に努めます。でも…。

 

「最悪な状況ですね。和平はこのままでは水の泡だ」

 菅原様は呻いてます。きっかけは日本製の携帯ラジオ。珍品として行商人が持ち込んできた物を我が家が買い取った物ですが、に流れる情報でした。

 どうやら日本はアルヌスにラジオ局が設置した模様で、ここから日本側の流すニュースがダイレクトに入るのです。

 それによると、日本国内の世論は帝国討つべしの機運が高まって、最早、誰も止められない大きな奔流となってしまっているのです。

 事の起こりは翡翠宮救出戦。

 その中で若干名の犠牲者と捕虜を出してしまった。その結果、特地の常識ではごく当たり前の行為なのですが、見せしめとして帝国側が遺体や捕虜に対して行った行為が決定打だったみたいです。

 槍を突き刺し全身に傷を与えて骸を晒すとか、オーガーに生きたまま捕虜を食わせてしまうとかは衝撃的だったのでしょう。

 自衛隊の撮影したこれらの映像は、何度もニュース番組のトップ飾ったそうです。

 あれほど自衛隊派遣に反対してた野党が、掌を返す様に派兵を強硬に主張し始めます。大衆の声に迎合するポピュリズム。見事な変わり身ですね。

 

「お茶でも如何ですか?」

 とお母様。菅原様を気遣ってお茶をお勧めしています。

「幸い、我が領に帝国軍は侵攻する気配はありません。戦が終わるまで逗留なさると良いでしょう」

 お父様もそう言いつつ、日本の外交官を引き留めます。

 我がテュエリ伯爵領は日本寄りの中立を宣言しました。原作通りなら、ここでピニャ殿下率いる新政権が誕生して、和平派の当家も当然、参加する筈なんですけど、いつまで経ってもアルヌスで樹立したとの情報が入ってこないのです。

 これはアルヌス方面へと脱出したカーゼル侯爵と連絡を取り合ってますから間違いありません。

 和平相手の受け皿がないので、このままだと全面戦争は避けらないでしょう。

「伊丹達が、殿下解放とかに失敗したんだろ」

 やきもきしてる私に、冷水を浴びせたのはチチでした。

「ゲーム通りのフラグが立てられると考えちゃいけないね」

「貴女は…」

 理不尽な怒りですけど、それを翼人の娼婦にぶつけます。

「貴女は、一体何者なんですかっ!」

「チチ・モスコーミュールだよ。河岸を変えようか、ご両親と菅原が変な目で見ている」

 彼女は流し目で私を見つめると、率先して部屋の外へと向かいます。

 私は彼女について行くしかありませんでした。

 

<ここで解説>

 アルヌスからラジオ放送がされているとの設定は、その内、日本の電機メーカーが特地へ携帯ラジオを売りまくる予定があったろうとの想定です。

 電力事情から手回し型やソーラーパネル型中心だろうけど、副次的に乾電池の需要も見込めますから、良い商売になりますよ。

 その前段階として試験放送みたいな事をやってたり。てな感じですね。

 




 エロエロンナ物語、同時に投稿してます。

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