12歳の悪役幼女に転生しましたが、菅原様を籠絡して助かります   作:ないしのかみ

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第11話です。


空から来た娼婦

<11>

 滑空機から飛び降りた人影は庭にふわりと降り立つと、狙撃を警戒して腰をかがめてこちらへと走る。

 私は「あの方は怪しい者ではありません」とフォローして、薔薇騎士団の警戒を解かせるが、それでも誰何されて取り調べを受けている模様ね。

「テュエリ空挺隊のチチだ」

 妖艶さを醸し出す雰囲気な翼人の女性だ。

 前世で言うなら到底服とは思えない、ピンク色したセパレーツの水着みたいな衣装を身に付けた、煽情的(せんじょうてき)な姿をしているわ。おへそなんか丸見えよ。

「シェリーは居るかい?」

「ここです。良く来て下さいました」

 私は階下へ降りると手を振る。

「はん、あたいもミードからの話を聞かないと来やしなかったよ」

 鼻を鳴らす美女は、民間から雇用した人材の一人、翼人のチチ・モスコーミュール。

 この格好からも判るけど、元々は娼婦よ。でも出自に似合わぬ、読み書き計算が出来る高い能力を持っているのよ。

「荷の目録は?」

 彼女は畳まれて、しわくちゃになった目録を取り出す。

「ここさ。乱雑に書いてあるけど読めるだろう」

 目録を確認すると殆どが干し肉や小麦粉。

 お酒は嵩張るし、投下時に樽が割れそうだから省いたらしいわね。代わりに茶がある。軽い物優先だ。

「ああ、目録にはないが、柑橘類も少しだけ持って来たから『壊血病』対策は大丈夫だろ」と話し合いながら翡翠宮を案内し、与えられた一室へ入る。

「『壊血病』ですか。やはり…貴女も」

 これは特地には存在しない現代知識だ。ビタミンCの欠如による健康障害。

「ああ、亜人嫌いのあんたがどう言う風の吹き回しか、次々に亜人を雇用し始めたのを探る為に潜り込んだが、あんたも転生者なんだね」

 周囲に他者が居ないのを確認して確かめると、彼女もあっさりと転生者であるのを肯定したわ。

 変な文字を使うとの噂で目星は付けていたけど、やっぱりか。

「ええ。でも、チチと言う名のキャラに心当たりがありません」

 チチは煙管を取り出すと、近くの燭台で点火する。

「はん。そうか…そーいや」

 は? 指折り数えだした翼人に私は目が点になる。

 そんな私を無視してチチは続ける。

「あんた、まだ初めてなんだ」

「え、ちょっと待って下さい。話が…」

 私は彼女の発言を止め、詳しく尋ねる。

「じゃ、詳しく話すのは止めておくか。自分でそこまで到達しないと意味は無いからね」

 そのまま煙草を一服。紫煙の香りが部屋中に漂ったわ。

 

<ここで解説>

 チチはお酒命名法に従ってカクテル名です。

 でも、文字通り乳もあります(笑)。

 ついでに、モスコーミュールもカクテル名。




 チチ登場。
 別にアイスラッガー飛ばして敵を輪切りにする、教育ママではありません(笑)。

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