真剣でサスケ(偽)に恋しなさい。 作:体は大人!!心は中二!!
「サスケぇ…勝負しようよー。美少女がこんだけ頼んでるんだぞー。」
寄生虫の様に張り付かれる事になれてしまった俺は、小4もなった今も百代を背中に装備していた。
「うちはの奴は猛獣使いのクラスを手に入れたようだ。
俺も、魔獣を探さねばならないか?」
「椎名のヤツよく、あんな奴といられるよな……俺様ちょっと見直したぜ」
「いやー、あれは肝が据わっているというよりもうちは君に惚れているだけだと思うよ?」
「それよりも今度カラオケ大会があってよー」
「キャップはブレないわねー」
ヘルプを求めようにも京はトイレ。
居るのはカラオケのメンバーを探す風間ファミリーとその他の生徒たち。
ボッチの俺を助ける者は誰も居ない。
「この間、戦ったばかりだろ……断る」
「いやー、この間も楽しかったよなぁー。影分身の術だっけ?あれ、教えてくれよ」
俺の文句など気にする事無く、術を教えろと言ってくる。
チートの天才様に教えても面白くないんだよ!!
おしえるなら落ちこぼれがいいんだよ!!
自来也に憧れるんだよ!!
「断る。京たちにでも頼め」
「いいじゃんかー。暁にも入ったんだし、お前が教えてくれよぉ。
あれを覚えれば学校サボりまくりの夢の生活が待ってるんだからさぁ」
「そんなことをしたら、教えた俺がお前の爺さんに襲われる」
「お前ならジジイに勝てるから大丈夫だ。
なー依頼も少ないし、刺激が欲しんだよー」
爺さんのお陰で俺達暁は万事屋みたいに依頼をこなしては、報酬をもらっている。
迷子の猫を探してほしい。
迷子の犬を探してほしい。
庭の雑草を処理してほしい。
いじめっ子から助けてほしい。
最近だとコンビニで集会みたいな事をしている暴走族を懲らしめて欲しいなどとレベルの高い依頼が舞い込んでくることもある。
それを知った百代は暁の活動に興味を持ち始めた様で、一週間前に見事俺達のグループ入りを果たしたのだが……。
「…じゃあ借金を返せ。
話はそれからだ」
「ZZZ」
依頼料を手にした百代はハマっていた野球カードに投資。
さらに、食べたいお菓子に漫画と使いまくった。
そして、そんな生活を送っていればすぐにお金は尽きる。
故にコイツは、俺と京に借金をする。
ちなみに小雪は、再婚したお母さんにお土産を買ったり、自分の好きなマシュマロを買い占めているので持ち金は少ないので借りることはないのだ。
つまり、こいつの金のサイクルはこんな感じになっている。
報酬→カード・漫画・菓子→借金→報酬で返す→漫画・カード・菓子→借金
パチンコにハマり家庭を崩壊させる駄目親父のような悪循環に陥っている。
正直、おれはこいつの将来に大きな不安を抱いている。
だから、早くこいつに良い旦那さんのところに嫁ぐか、性格が丸くなることを切に願わずにはいられない。
「刺激のある依頼があるか爺さんに聞いてやるから、教室に帰れ」
「へーへー」
背中に戦えお化けがくっついて来るも平凡な日々を過ごしていた俺達だった。
それと、これは完全に余談であるが。
京が虐められる原因を作った椎名母と浮気相手のチャラ男は椎名父が起こした離婚裁判で精神的苦痛の入った多額の慰謝料を払うことになった。
目撃情報によると浮気を知っても奥さんとの関係を何とかしようと頑張っていた椎名父であったが、ある日京と一緒に家に来たという黒髪の美少年と話をした所。
何故か、椎名父の考えが変わり、離婚届をどこからか調達して来た娘と共に椎名母と離婚。
不貞を働いた事に関する慰謝料を父と子で強く請求した。
しかし……。
「ふざけないで!つまらない貴方が悪いんでしょ!!」
と、慰謝料の支払いを拒否。
そして、浮気相手のチャラ男も……。
「払うわけねーだろ。旦那であるアンタが毎日ヤラないから悪いんだろ?」
このような感じで支払いを拒否。
支払いを拒否された場合のプランを考えていた娘は裁判を起こすことを父に提案した。
頼る専門の弁護士から裁判費用まで詳細に語る娘は、まるで誰かと相談し、どこまで慰謝料を搾り取るかを考える詐欺師のようだった。
母親とはいえ、虐められる原因を作った娘の恨みはとても深い。
それから程なくして、裁判が始まった。
椎名父と娘の精神的苦痛を含めた慰謝料は高額だ。
チャラ男は社会を舐めた若者らしく、裁判を舐め腐っており、最後まで欠席した。
最後まで欠席したチャラ男に強制執行事件として家財と全ての財産を差し押さえられる事が決定した。
そこでチャラ男はようやく事態の深刻さを理解したらしく、銀行からすべての現金を引き落とし逃亡を図るも、謎の人物が裁判所に細かく通報した事により一時身柄を拘束。
強制執行が行われ、彼は慰謝料を払いきれず見事に破産した。
今は新しい住所である橋の下で、手作り感溢れる段ボールで出来たマイホームで日々を過ごしているらしい。
チャラ男の末路を知った椎名母は、旦那が悪い、私は悪くない、と言う主張からチャラ男に脅されていた。
私は今でも椎名父を愛していると、言い始めた。
これには平等で有名な裁判長も呆れていた。
そんな椎名母に呆れる空気の中、弁護士が提出した匿名希望の人から送られたと言う一本のテープとチャラ男と椎名母がイチャつく大量の写真。
椎名父が裁判長の許可を取ってラジカセで再生する。
『貴方との浮気について、クソ旦那が裁判を起こしたわ』
『ああ…マジでめんどくせぇ』
『でも大丈夫。あの旦那は私に未練たらたらだったのよ?愛している。ごめんなさいとか適当に言えば裁判をやめるわ』
『さすが、マコちゃん愛してるー!』
『私も愛してるわ。テッちゃん』
そこから始まる子供には聞かせられない、とてもながーいラブシーン。
卑猥な単語にはピー音が入っているがとても生々しい物だった。
証拠が決めてとなり、裁判は終了。
椎名父と娘は見事に大勝利した。
判決が下った後、双方の弁護士と裁判長が鼻血を流しながら前かがみになっていたのが印象的だった。
こうして椎名母もチャラ男と同様に破産。
実家に帰ったらしいが、離婚の詳細を知らされた両親に勘当されて、キャバクラで働き一人暮らしをしている。
ちなみに音声テープは人妻のビッチ臭が謎の人物の趣味ではなかったので、海外サイトを経由してエロサイトに投稿された後に破棄された。
そして音声テープはエロサイトのランキング一位を飾り、二人の若者に奇跡を起こした。
絵は上手いが、シナリオが下手なニートとシナリオは凄いが、絵が下手くそのニートがタッグを組んだ時。
この音声データを聞いた時のインスピレーションと激しいリビドーにより、生まれた作品『真剣でみだらな人妻さん』が大人に大ヒット。
成年誌界に旋風を巻き起こし、数年後にはアニメ・エロゲと手広く活躍し、将来はエロの巨匠と呼ばれ、生きる伝説となった。
☆☆☆
「それにしても、京の父親と小雪の母親が知り合って数日で再婚ってすごいよな。
サスケ…お前、なんかやったか?」
「いや…俺はただ、二人を紹介しただけで何もしていない」
学校から三人で川神院に向かう道中、百代が椎名父と小雪母の再婚についての疑問を口に出し、それに正直に答える俺
そう、丁度一月前に俺は裁判で勝利したものの、どこか寂しい雰囲気を漂わせる椎名父に小雪母を紹介したのだが、驚くべき事に二人はたった数日で再婚したのである。
そのまま、籍を入れ一週間前には親族だけの結婚式が行われた。
二人の間に何があったんだろうか?
「ん~~なんか、外でお酒を飲んでいるうちに意気投合したみたいだよ」
「小雪の言う通り。お父さんが小雪のお母さんと外で飲んで、朝に帰って来たと思ったら。
『京、この人が新しいお母さんだ』って紹介された」
「僕もだよ。一体何があったんだろうね」
二人の言葉で察した俺は、話題を変更させることにした。
この話はまだ、少女たちには早すぎる。
もうちょっと色々と育ってからにじっくりとする事にしよう。
「それよりも、依頼だが……暴れる事が出来る物がなかったらどうする?
ネコ探しか?」
「私はネコ探しには飽きたな。パックンが有能過ぎて、すぐに終わってしまう」
「僕はいいと思うよ?終わった後にパックンを抱っこしたい」
「私はサスケを抱っこしたい。むしろ抱っこされたい」
「許せ京。大きくなったらな」
「……無念」
見事に話題を変更出来た俺は、京のおねだりを額を小突いて、イタチプレイしながら断腸の思いで断る。
ロリは守り、愛でる者!色々な部分が大きくなって俺の事が好きなら幾らでもしてあげるよ!!
「おー。姉が振られてしまった。
代わりに僕が抱っこしてあげよう」
そういって、振られた京に抱き着く椎名小雪。
彼女は7月生まれで、4月生まれである京の妹となったようだ。
ついでに俺もお兄ちゃんと呼んでくれないか?
そんなこんなで道中仲良くしながら、目的地へと辿り着いた俺達は門に設置されている態々鉄で作って頂いた依頼箱と書かれたミニポスト。
ポストの側面の鍵穴にカギを差し込んで中身を見る。
この中にご近所さん達の依頼内容と報酬が書かれた依頼書が入っている。
始めた頃は悪戯もあったが、住所と電話番号の記入欄を増やして受ける際は事前に連絡をすることにしたので嘘の依頼や悪戯は無くなったので安心して依頼を完遂している。
ちなみに、依頼中に依頼内容に嘘があったと発覚した場合は即座に依頼を中断。
報酬金額の倍である違約金を百代の物理攻撃による請求が待っている。
あと、子供が働いたら不味いと思っている諸君は安心してほしい。
報酬は子供のお小遣いレベルの金額とお菓子だ。
しかも、川神院のトップが認めている…故に何も問題はないのだ。
「そこそこ入っているな。
何々……駄菓子屋の店番をしてほしい。
サスケちゃんにマッサージをしてほしい。
庭の掃除をしてほしい。
サスケに宿題を手伝ってほしい
参加人数が少ないので一週間後に商店街で開催されるカラオケ大会に出てほしい……か」
「駄菓子屋とマッサージと庭掃除はいつもの人たちだから、サスケの影分身で十分だな」
「…宿題の依頼主が小雪になっている」
依頼書を取り出し、みんなに見えるようにして読み上げるが一枚だけ公私混同している依頼書があった。
えへへと笑う小雪はかわいらしいが、本人の為にならないので当然……。
「この依頼は却下だな」
「えー」
小雪の抗議の声をスルーして、依頼書を近くのごみ箱に捨てた。
「分からないところは、お姉ちゃんが教えてあげるから我慢しなさい。」
「わーい」
不満顔の小雪を甘やかす京。
お姉さんぶりたい年頃なのだろう。
とても微笑ましく思います。
「いいなー私も妹か弟が欲しいなー。
父さん達が修行から帰ってきたらお願いするかな」
二人の姉妹関係が良好なのが羨ましかったようで、一人っ子の百代は父と母に家に帰ってきたら兄弟を所望する事を決めたようだ。
「そんな事よりも、最後の依頼だがどうする?カラオケ大会の出場願いだが?」
「私は賛成。サスケへの愛を歌いきる」
「僕もいいよー」
「…まあ、たまにはいいか。
こき使ってくる兄弟子達への不満を歌って解消する」
満場一致で本日すべての依頼を引き受ける事にした俺達は、電話で依頼者の本人確認を済ませ、簡単な依頼には影分身を向かわせた。
しかし、カラオケ大会に出場する形式が俺達の想像していたものとは違った。
なんと、依頼者は俺達四人のグループでの出場ではなく一人一人の個人での出場を希望していたのだ。
「相談して決めると保留にしたがどうする?」
「別にいいよー」
「私もいい」
「私も不満の捌け口になれば別にいいぞ」
と、言うわけで、俺達暁はカラオケ大会で個人出場することになった。
それから一週間はポストに臨時休業の張り紙を張り、それぞれが歌とパフォーマンスの練習でカラオケ屋に通い詰める事となった。
パフォーマンスで忍術が使えない百代は俺の影分身をレンタルして出場する事になった。
大丈夫かな……俺の影分身。
正直ストレス発散の為に使われていないか心配である。
☆一週間後☆
川神の師範代ルーが司会を務めるカラオケ大会が商店街にて開催された。
『では!エントリーナンバー1!!小雪軍団だッ!!
歌うのは夢想〇!!』
『おー』
カラオケ大会の為に作られた特別ステージに上る影分身とオリジナルで構成された小雪軍団。
彼女たちの子供らしい体全体を使った動きと子供らしい歌声で会場は和やかな空気に包まれ、数人の大人たちはロリに目覚めた。
『素晴らしい歌声だーー!!会場の客も審査員も顔が綻んでいるぞーーーー!!』
「バッキャロー。かわいらしい歌声だったぜ!演出と合わせて80点だ」
『おおっと!いきなりの高得点!!これを抜ける者は現れるのかぁーー!?』
分身を消してステージを降りてきた小雪は、80点の高得点をたたき出した。
さすがロリ。
会場のおっさんたちをメロメロにしてしまったようだ。
『続きまして!!ナンバー2!アイ・ラブ・サスケ!!
歌うのは最強の〇〇計画!!どんな歌声を披露するのかァーーー!!』
司会の紹介でステージに上がったのは京と影分身の二人。
聞いたことがない曲だが一体どんな歌とパフォーマンスを披露するのだろうか?
「変化」
『おおぉーーっと!ここで少女の一人が少年に化けたーー!?』
京が変化したところで冒頭のイントロが流れ始める。
『今宵…私は…サスケと……添い遂げ~たいのです~~♪』
『へ?』
小雪の残したほんわかした空気が一瞬で霧散した。
曲が始まってから歌う京の後ろで曲に合わせて手を繋いだり抱き合ったりとあらゆるシュチュエーションでイチャつく京の分身たち。
テンションの高かった司会も完全停止している。
やべぇよ、なんだよこれ……一体どんな羞恥プレイだよ!!
心の中で悶絶していると曲も終盤に差し掛かった。
早く!!早く終わってくれ!!
『サスーケだーけーにー…さーさーげーまーすーーー……。
み・や・こ・と・サスッケ!!』
『ハイ!』
辞めろ!止めてくれ!!俺をそんな目で見ないでくれ!!
周りの同情する視線が俺の心の傷を抉った。
見事に歌いきった京のバックに居た分身たちはタイタニックのポーズを決めて終了した。
『え~…。サスケへの愛情がすっごく詰まった表現が…何とも言えない!!』
それはそうだろうよ。
愛が重くて何も言えないよ。
「ま、まぁ。愛することはいいことだが……60点。
歌は上手いのにもったいないぜバッキャロー」
『さ、さぁ!続きましてはエントリーナンバー3!!ピーチファイターズ!!
歌うのは、アイアムショック!!』
「ピーチファイターズ!!押してまいる!!」
『おおーっと!!百代と共に現れたのは肩パットを付けた謎のスキンヘッドとモヒカンの集団だぁぁあああ!!
一体どこで知り合ったんだぁー百代!!?』
百代と登場した筋肉ムキムキの強面の男達。
恐らく俺が貸した分身たちだろう。
どうやら百代の奴は北都の拳OPであるアイアムショックを最大に活かす作戦の様だ。
『アイアムショーック!!』
『ひでぶっ!?』
『殴った―――――!?ショックと歌うたびにモヒカンたちが殴られて消滅していくぅううう!!?』
曲と同時に百代とモヒカン軍団の戦闘が始まりOPで主人公が雑魚を倒すシーンの再現の様だが…これはひどい。
最後まで歌いきり、分身たちを全滅させた百代だったが……うん。
ただ、戦闘を楽しんだだけだった。
『お前はもう…死んでいる』
『審査員の本屋の店長さんに聞いたところ!アニメのOPを見事に再現したようです!!
ただ、ここはカラオケ大会の会場なので!!暴力的な表現は今後は禁止とさせてもらいます!!』
それはそうだろう。
歌声を聞きに来たのに少女がモヒカンたちを殴るシーンを見なくてはならない。
「迫力ある戦闘シーンだったぜバッキャロー!ただ、肝心の歌がパフォーマンスに夢中でイマイチだ。
50点!!」
今大会の最低記録を出したのにも関わらず、百代はスッキリとした表情でステージを去っていった。
ああ……もう満足なんですね?
ってそろそろ俺の番だな。
影分身を出してステージの裏でスタンバイする。
『さあ!続いてはエントリーナンバー4!鷹!!
選曲はR★O★C★〇★S!!おおぉーっと!!何もないステージから突然現れたぞぉ!!
これは中々に面白い演出だぁあああ!!』
司会の紹介と共に飛雷身の術でステージ中央にポーズを決めて現れた俺に沸く会場。
掴みは上々のようだ。
『…いくぞ』
『アラーー!?すごいキレッキレのダンスだぁあああああ!!
この動き…だだ者ではないぞぉおおおお!!』
曲が始まると同時にダンスをする俺と影分身たち。
そして、俺と影分身たちの動きの完成度に驚く客たち。
それはそうだろう。
この動きはダンスの世界において優秀と言われる人々をトレースして組み合わせた物。
そんじゃそこらのアマチュアには負けはしない。
優勝商品である商品券は俺の物だ!!
曲も終わりポーズを決めたところで会場は拍手喝采で大盛り上がり。
本屋の親父も……。
「中々にロックだったぜバッキャロー。90点だ」
『本大会の最高記録だぁあああああ!!!』
その後は風間ファミリーが登場し、甲冑姿と見事な演出により俺と同じ90点をたたき出した。
今大会の最高得点を持つ俺と風間ファミリー。
もし、俺達以上の得点が出なかった場合は商品券を折半か観客投票になるのだが…。
「折半で」
「いや、観客投票だろ?」
「どうみてもサスケの勝ち。会場を見たら一目でわかる」
「僕もサスケの勝ちだと思うよ」
百代と直江がお互いの意見を譲らず、話が平行線となっていた。
個人的に物欲の少ないおれは半分でも構わないのだ。
寧ろ岡本一子ちゃんの雄姿を見れたので満足です、はい。
そう思って折半に同意しようとしたのだが、百代と京・小雪が乱入して現在に至る
これは熱くなっているな…。
ここは冷静な俺が紳士的に止めてやるか……。
『さあ!ラストナンバーはこの人!!AKD48!!
選曲は真剣で私に恋しなさい!』
一人の女性にざわつく会場。
そして俺達は見た。
世界に通用するであろう本物のダンス。
そして切なくなる歌声。
そして…何よりも俺達に衝撃を与えたのは……。
「ああ…A・秋元(あきもと)K・香苗(かなえ)D・独身48歳か……」
「また、見合いに失敗したんだろ?未来で出会うかもしれない男に印象を与える為に大会に出るなんて…切なすぎるぜ」
「完全に失敗だろ…なんで有名なアイドルグループの制服を着ているんだ?」
「だから結婚できないんだろ」
「あのダンスと歌……友人たちの結婚式で身に着けたらしいわ」
観客たちの悲しい声を聴き、俺達は醜い争いをやめた。
俺達の争いなんて……ステージで孤独に歌う彼女と比べたら…なんて小さいんだ。
「もし、仮に彼女が低い点数だったら…折半でいいな。」
おれの提案に全員が頷いた。
そして彼女は見事に100点をたたき出して優勝した。
彼女の事をよく知る本屋の店長は涙を流していた。
商品券なんて要らない。
どうか彼女に出会いを与えてください。
司会と審査員…そして、会場の人々心は彼女の決死の挑戦によって、一つとなった。
これを機に少しだが風間ファミリーとは話すようになった。
京は一子ちゃんと風間以外をガン無視しているが……。
虐めの恨みは深いようだ。
そして、この大会の後。
本屋に客として現れた謎の人物が本屋の店長に店員として彼女を紹介。
真面目で頑固な店長と真面目だが空回りする彼女。
空回りする彼女のフォローをするうちにほっとけなくなったらしく、店長は彼女とゴールイン。
おじさんとおばさんのカップルだが、そんじょそこらの若者カップルではかなわない本物の絆が二人にはあった。
心配になってちょくちょく二人の様子を見ていた謎の人物は、結婚を承諾して店長を抱きしめる女性と不器用で照れながらも抱き返そうかどうしようか迷う店長を見守り、仮面の下で涙を流した。
恋のキューピット仮面≪マダラ≫は恋する独身アラフォー・アラフィフ女子の伝説となった。