七星たちが案内されたのは住宅街にある一つの家だった。
住宅街と言っても誰かが住んでいるわけではないが。
威燕はリビング入る。
赤い絨毯に背の低い長テーブルとそれを挟むように革のソファが二つ。
それとキッチンが奥にあった。
威燕は壁際のソファに腰を下ろすと反対側に座るように七星を促す。
「アーチャー、お客さんにお茶出して」
「私がか?生憎と弓以外はお世辞にも上手いとは言えないのだぞ?」
「いいからいいから」
現界したアーチャーをキッチンに向かわせる威燕。
七星もソファに座る。
それを見た威燕がその隣で立っているセイバーに顔を向ける。
「君も座ったら?」
「私はここで良い」
「そうなの?まあいいか」
威燕は七星に向き直ると同盟について話し始める。
「まず同盟の有効期限だけどこれは他のサーヴァントととマスターが敗れた時で大丈夫?」
無論である。
そこに付け加える条件も、異論を唱えることも無い。
七星は頷く。
「じゃあ次ね、同盟中は互に協力し合う。効率重視で行こう」
「と、言うと?」
「常にお互いが近くに居るってことさ、戦う時も生活する時もね。これなら奇襲されても対処できるし場合によっては有利に運べる」
七星は思考する。
確かにその言葉に偽りはなく理にかなっている。
サーヴァント戦でも一対一ではなく二対一の方が有利である。
注意すべきは敵の宝具が対軍又は対城等の広範囲に効果を及ぼすことだろうか。
「それでいこう」
「お茶が入ったぞ」
そこへアーチャーが湯呑を四つ運んでくる。
漢服に身を包んだ黒髪を後ろで纏めた男。
その凛とした佇まいに女性が見ればそれだけで虜になってしまうだろう。
「ありがとう」
七星は湯呑を受け取って口にする。
…まずい。
が、一応飲めるので我慢する。
「やっぱり不味かったか」
威燕がニヤニヤとしているのが腹立たしい。
「すまない」
「いや、君は悪くない」
「すいませんね、まあ大体はそんな感じで行きましょうか。何となく友好も深まったことだし…」
突然威燕の糸目が開き鋭い目つきに変わる。
七星も急激な悪寒に何が起きたのか察知する。
凄く嫌な感覚が全身を駆け巡る。
まるで体中を舐められているかのようだ。
「これは来てますね」
アーチャーが玄関の方を見て言う。
するとインターホンが鳴った。
そして扉を叩く音。
宅配かと普段なら、普通なら思うだろうがこの人工島には余人はいない。
閑静というか無音の住宅街のこの家をピンポイントで訪れるものなど敵意外ありはしなかった。
しかしどうだろうか、今だにインターホンを鳴らす敵。
こちらが出向かなければ延々としているつもりなのだろうか。
「行ってみましょうか七星さん」
「大丈夫か?」
「二人に任せれば問題はないですよ」
そう言うと立ち上がって玄関に向かう。
玄関に着くとうっすらと扉の前に人影が見える。
敵は一人だ。
威燕はアーチャーに扉を開けるように支持する。
「はいはい今開けますよ」
扉に向かって声を出す威燕。
ドアノブが回される。
セイバーは既に鉄の剣を出していた。
ゆっくりと扉は開いていく。
そして、扉の前にはファーストフード店の従業員のような格好をした男が一人。
しかし男の手には何もない。
男は目を見開き口元を大きく開けて高らかに宣言する。
「
突然の大声に怯んでしまった。
「行け、セイバー!」
七星はセイバーに指示を出すが既にそこには誰も居らず。
セイバーの剣が空を切るだけだった。
敵は去った?
いや、あの気味の悪い感覚はなくなるどころか増している。
警戒は怠れない。
「威燕、今のは宝具だ」
「やっぱりか、七星さんもう自分等は敵の術中ですよ」
「そうみたいだな、この気分が悪くなるのが宝具の効果なのかなんなのか…」
「七星、今のは間違いなくサーヴァントだ」
「しかしもう気配が無い」
セイバーの言葉をアーチャーが続ける。
気配を感じさせないサーヴァントなどひとつだけだ。
名をハサン・サッバーハ、その歴代の誰かが呼ばれると聞く。
その姿は黒衣に身を包み、皆が髑髏の仮面をつけていると。
しかし今の男は黒衣も髑髏の仮面のつけてはいなかった。
「とりあえず外へ出ましょう。そのほうが何かと動きやすですから」
七星たちは外へと出た。
正体不明のアサシンと対決するために。