垂直の尾翼に白い稲妻が描かれ、機体の横に小さな黒星が三十ほどずらりと描かれた戦闘機に搭乗していたライダーはその美しくも雄々しき光の斬撃に見とれてしまった。
そのせいか反応に遅れて回避し損ねる。
咄嗟に避けはしたものの左翼を根元から持って行かれて機体がバランスを崩す。
見る見る内に期待は回転をしながら先程
ライダーは直ぐに機体の窓を引き剥がして外へ脱出する。
ライダーが飛び降りると同時に期待は爆発して消滅した。
煙で汚れたパイロット用のゴーグルを上にずらす。
セイバーは戦闘機から出てきたサーヴァントを見る。
頭には耳まで隠す帽子とゴーグル。
服は大昔、まだ日本が帝国を名乗っていた時に陸軍の航空部隊が使っていたと思われるパイロットスーツという格好だった。
左右の腕には自国を示す日の丸の国旗が貼られている。
間違い用もなく日本の英霊だ。
ライダーがセイバーを視認すると驚いた顔をする。
「先ほどの剣撃はあなたのような麗しい撫子が?」
口説いているわけではない。
ただそう思えただけだ。
今の攻撃が女子のものだったと知れば大抵のものは驚くものだ。
「それにしても緑の髪とは…一体何処の国だ?米か英かはたまた中か?まさか露ではあるまいな?」
下の方は黒くなっているので染めているのかもしれないが顔は日本人とは違うので別におかしくは思わなかった。
「フランスだ」
「仏か、生前も敵対勢力ではあったが今回もとは…」
「一つ訂正しておこう。私はフランスで生まれた別段フランス人というわけでもない。特に気にすることはない」
その言葉にライダーは首をかしげて混乱を示す。
「えーと、要するに?」
セイバーは一度溜息を吐くと剣を構える。
構えた剣は先程の聖剣ではなく最初に出した鉄の剣だった。
「国が違うと何か困ることでもあるのか?」
「ハハッ、違いない」
ライダーも腰にぶら下げた軍刀を引き抜く。
サムライたるものこれがなくては話にならない。
普段搭乗するときは持っていかないがこの体というやつは便利である。
欲しい時に剣が現れるのだから。
「
「よかろう」
両者が構える。
セイバーは足を開き、両手に剣を持ち、剣を右上段に構える。
ライダーは左足を後ろに引き、剣を前に構える。
両者とも間合いは同じ数メートル。
先に動いたのはライダーだ。
一気に走り間合いを詰める。
剣と剣がぶつかって火花が散る。
両者の剣は宝具である。
セイバーの剣は先程光りを放った者と違う故にライダーの取り出した軍刀と力を同じくしていた。
その光景を遠くから見ていた七星はライダーの真名について考察する。
背格好からするに日本の英霊、しかも世界大戦時代だと推測できる。
ただ七星自身そこらへんの事は詳しくないので詳細がわからない。
「他に手がかりになるものは…」
ライダーのマスター、あの老害でも近くにいたのなら攻撃でも何でも仕掛けていたのだがやつの性格上それは限りなく零である。
故に他の手がかりを懸命に探す。
一番の手がかりは先程の戦闘機だろうか。
七星はその形状等を思い出す。
右翼と左翼に赤い日の丸、灰色の機体、尾翼に白い稲妻の描かれていたはずだ。
七星が考察をしている間にもセイバー達は刃を交え続けていた。
汗一つ、顔色一つ変えないセイバーと苦戦を強いられているライダーとでは次第にその状況も変わりつつあった。