Fate/Line Frontier   作:ジル青髭

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プロローグ2

世界各地には知られているようで知られていない神秘が山ほどある。

それらはオカルト雑誌や番組などで紹介されるがどれもが娯楽としての域を出たものはない。

今後もそうだろう。

 

魔の三角海域、バミューダトライアングルと言うものをご存知だろうか。

オカルトに少しでも興味のある人なら知っていよう。

フロリダ半島、プエルトリコ自治連邦区、バミューダ諸島を結ぶ三角の領域をバミューダトライアングルと言う。

 

その中では船や飛行機又はその乗員乗客が消滅するという現象が起こっている。

それだけではなく、時代錯誤の飛行機がその中から現れたなどと言う証言もある。

それが人工衛星による撮影に写ってしまっているのだから否定のしようがない。

 

これらは全て現代科学では到底成し得ないものであり一個人でそれをするのは最早魔法使いの域である。

ではこのバミューダトライアングルとは何か。

それは龍脈である。

地球上でも数箇所しかない超巨大な龍脈である。

他の龍脈が束になってもそれらには及ばないだろう。

その海域一帯を潤すだけでなく超常の理までもを現象という形で引き起こすその龍脈はこんな時代になった現在でもその息吹を止める事はないのだろう。

きっと、地球(ほし)の命が途絶えるその時まで。

 

今回、聖杯戦争の舞台として選ばれたのはその魔の三角海域だった。

ただそれはバミューダトライアングルではなく。

日本近海、北太平洋に位置するドラゴントライアングルだ。

こちらも前述した海域同様のものである。

 

昔からその海域には龍が住むと言われ恐れられてきた。

そんな信仰と相まってこの海域には未だ枯れぬ龍脈が残っていた。

 

しかしそこは何度も言っているように海域である。

人が立って歩くようは道は勿論大陸もない。

そんな場所でどうやって聖杯戦争をするというのか。

答えは意外で大規模だった。

地球の存亡がかかっているだけあってやることは大掛かりだということだ。

 

人工島、それが答えだ。

一応言っておくがドラゴントライアングルの周囲には様々な島が点在している。

しかし龍脈の確保という必須事項をクリアするために人工島は必要不可欠だった。

 

青ヶ島、観光名所の一つでもあるこの島から道路を付かず離れずの距離で敷き、新宿ほどの大きさの円型人工島を作ったのだ。

名目としては観光の活性化である。

この人口島にはテーマパークやショッピングモール、住宅街、オフィス街といったビル群がある。

前述した施設はわかるが住宅街等の建物があるのが疑問に思うだろう。

 

理由は簡単だ、ここは聖杯戦争の為に用意された島であって観光など端から眼中にない。

そもそも建設途中でスポンサーが突然降りるとか不慮の事故が続いたなどと嘘の理由をついて無人にする算段なのだから。

 

結果は良好、莫大な資金による建設も時間も目的の為なら惜しみなく出せた。

既に聖遺物も七つ用意できている。

彼のアーサー・ペンドラゴンが生前失くしたとされる剣の鞘、ルーンの刻まれた耳飾り、崩れてはいるものの多少原型を留めている世界最古の蛇の脱殻の化石、赤いマントの切れ端、コルキスに保管されていた書物、世界最古に書かれた毒の調合レシピ、石斧の破片である。

 

志を同じくする魔術協会の同志も自分を含めて七人集まった。

聖堂教会にも基盤となる大聖杯と小聖杯、それらを管理監督する神父も手配済みだ。

 

準備は整った、後は島の七方向に設置したマスター用の民間の屋敷に扮した施設でサーヴァントの召喚と自害をさせるだけだった。

 

どこで道を間違えたのだろうか。

それはもう過ぎてしまった事だ、仕方がない。

仕方がないのだが、一人のマスターが裏切ったことで他のマスターも一人また一人と私利私欲に走ったのがだいぶ悲しかった。

曲がりなりにも長年共に歩んだ友たちだ、それはもう盛大に叫んだ。

 

「ざけんなよ!」

 

と。

その声もトイレと一緒に流した。

ならば一人になっても目的を遂行するまでだ。

手元に残った聖遺物、アーサー王の鞘は既に売り飛ばした。

良い金額でコレクターに渡ったよ。

 

何故そんな最上級の媒体を売ったのかと呆れる者もいるだろう。

こればかりは仕方がない。

如何せん召喚前の打ち合わせ、自身が用意した聖遺物を渡すときに召喚されるであろう英霊のリストを全員で閲覧しているのだ。

 

故に裏切った六人も既に渡した聖遺物を売り渡し新たな聖遺物を手にしたと魔術協会の協力者から報告が上がっている。

 

そして先程こちらにも聖遺物が届いた。

とある書物の切れ端である。

書かれている言語はフランス語、書かれている記述は恐怖が来るや世界が支配されるといった内容だ。

 

自分はこれに全てを賭けている。

これで召喚されるサーヴァントは間違いなく彼のアーサー王以上の働きをしてくれることだろう。

そう思い、願いながら私は召喚陣と祭壇の設置された地下室へと足を踏み入れた。


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