Fate/Line Frontier   作:ジル青髭

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漆黒のランサー

金色のアーチャーは意外にも剣で攻撃をしてきたのだ。

二振りの金色の剣を持ち斬りかかる。

当然翡翠のアーチャーは避けて矢を放つ。

 

しかしそれだけで殺られるという事はなく素早く動いて追撃する。

それに合わせるかのように漆黒のランサーもその手に持った黒槍を振るう。

黒槍は上に躱す翡翠のアーチャーには当たらずに空を切る。

しかしそこへ金色のアーチャーが双剣にて斬りつける。

流石にダメージは免れないと誰しもが思ったが翡翠のアーチャーはその右手に付けられた弓懸を防具として使い剣を防いだ。

 

「傷物にしてくれるなよ!」

 

「承諾しかねませんね!」

 

翡翠のアーチャーは剣の勢いを使ってそのまま後方に飛ぶ。

一気に距離が開くが漆黒のランサーが追いかけてくる。

 

「止まれ、ランサー!」

 

が、金色のアーチャーの一言によって漆黒のランサーの動きがピタリと止まる。

訝しむ漆黒のランサーは金色のアーチャーを見据える。

 

「なぜ止める?」

 

「見て分からぬか」

 

「なに?」

 

漆黒のランサーは翡翠のアーチャーを見る。

そこで言っていることがわかった。

魔力が上がっている。

少しずつ、少しずつ、分からないように。

 

「おや、バレてしまいましたか」

 

細心の注意を払って見ればその魔力が上がっているのがわかるのだが戦闘中ともなるとそれも鈍くなってしまう。

 

「何時からだ?」

 

「最初からですよ」

 

漆黒のランサーの問いにさも当然のように答えるアーチャー。

 

「見た目に騙されてはならんぞランサー、奴は善人振ってはいるが別段善人というわけではない、言われたことを言われたままやるただの掃除屋だ。心して掛かれ」

 

忠告を聞き、漆黒のランサーも先程以上に気を引き締めたようだ。

 

「来い、なんなら宝具を使え、一度矛先を向けた以上俺は引くことはねぇ」

 

「そうですか、では」

 

翡翠のアーチャーは何かを呟いた。

恐らく宝具の真名を口にしたのだろう。

ここからではその名は聞き取れないが呟いた途端右手を覆う翡翠の弓懸が急激に魔力量を膨張させた。

 

「美しい、その輝き正に神造!」

 

翡翠のアーチャーが弓の弦に矢をかける。

弦は音を立てて後方に引かれていく。

弓は大きくしなりその力の出撃を今か今かと待っている。

 

「それではお二方、これに耐えたらまた逢いましょう」

 

そう言うと翡翠のアーチャーは手を離した。

一度解放された矢は二人に目掛けて飛んでいく。

漆黒のランサーもその黒槍に魔力を込めて真名を叫んだ。

両者の技がぶつかり辺りに衝撃が走っていく。

 

「逃げたか」

 

漆黒のランサーは眼前から消えてしまった翡翠のアーチャーが既に気配すら無いことを確認する。

現在漆黒のランサーを中心に大きなクレーターが出来ていた。

それを見て金色のアーチャーは笑みを浮かべる。

 

「存外貴様もしぶといのだな漆黒のランサー、今のは威力としては中の上だが貴様を屠るのには十分だったはずだ」

 

「手を抜かれたって言いたいのか?」

 

「そうではない、これは出自…出典の問題だ。大層な偉業でも示さない限りお前のような近代よりのサーヴァントは神代(かみよ)のサーヴァントにはどうしても出力の面で劣る。現にボロボロであろう貴様」

 

確かに漆黒のランサーの鎧は所々に綻びや亀裂が入っている。

宝具で相殺してもこれなのだ。

敵の凄さが見て取れよう。

 

「でも、こうして生きてんだ、次はそうはいかないさ」

 

「期待など余りせんが失望はさせるなよ」

 

そう言うと二人は霊体化して消える。

 

七星は自身が考えている以上にまずいことが起こっているのではないのかと思い始めたのだった。


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