七星は思考が一瞬止まってしまった。
いや、七星だけではない、この場にいる聖杯戦争を知っているものならば誰しもがそうなることだろう。
このサーヴァントはあろう事か己の真名を喋ったのだ。
しかも更に七星たちを驚かせたのが次の行動だ。
アサシンはあろう事かそれだけ言うとその場からいなくなってしまったのだ。
周囲に立ち込めていた雰囲気もいつの間にか消え、七星達も完全にいなくなったのだと確信した。
威燕が念のためとアーチャーを森林区域を中心に索敵と警戒に出した。
その間に七星達は少し場所を変えて身を隠すことになった。
そこは先ほどの民家から数メートルだけ離れた別の民家の地下だった。
六畳ほどしかないが四人が隠れるのであれば十分と言える。
家具類は照明と椅子しか無く正直くつろげるとは思わなかった。
「とりあえず七星さん、残るサーヴァントは四騎で良いかな?」
「私のセイバー、威燕のアーチャー、先程現れた食人鬼のアサシン、大日本帝国のライダー、キャスターは消滅したからまだ現れていないランサーとバーサーカーを含めると四騎だな」
「先程七星さんが言っていた謎のマスターだけど生身でサーヴァント、しかもセイバーの剣を防げるとは到底思えない。何かしら魔術的な強化を受けるにしても限度がある。ライダーを気絶させたこともその後の身体能力の事も含めてサーヴァントが関係しているのは確かだろうね」
「ああ、ランサーかバーサーカーか、どっちかだろう…」
「私はバーサーカーだと思うね」
「そうか?私はランサーだと思うのだが…」
「理由を聞いても?」
「ああ、昔、初期の聖杯戦争が行われた時や何処ぞの機関が行った英霊召喚では魔術を匠に操る槍兵が召喚されたと聞いたものでな」
「成程ね、私の意見としてはバーサーカーと言っても狂化が薄く、理性を保った魔術師が魔力のみ狂化されて召喚されているって感じかな」
「仮にそうだった場合、バーサーカーは動けないでいると見える。現にあの場に他のサーヴァントの気配は無かった。そうだろセイバー?」
突然話を振られたセイバーがこちらを見る。
セイバーはこの部屋に入るなり扉の隣の壁にずっともたれかかっていた。
「いや、気配はあったぞ」
「なに?」
「そこんところ、詳しく聞いても?」
威燕がセイバーに真剣な眼差しで聞く。
「あの時、私の剣を掴んだあの男の周りには確かにサーヴァントの気配があった、いや、この場合は男を包んでいたと言った方が適切だろう」
「霊体化したサーヴァントでは現界したサーヴァントに関与できないだろう」
「その逆もね」
七星と威燕が互いに考察する。
そのまましばらく時間が経った。
「戻ったぞマスター」
その静寂を破ったのは周囲を警戒していたアーチャーだった。
目立った外傷は無く、どうやら無事のようだ。
七星はスマホの時計を確認する。
いつの間にか夜と言ってもいい時間になっていた。
「いやぁ驚いた驚いた、マスター、報告だ。そこの二人も聞いてくれ」
どうやら何か成果を持ってきたようだ。
普段のアーチャーからは想像できない程で、本当に驚いた様子で話しかけてくる。
直ぐにいつもの冷静な様子に戻る。
「先刻、二騎のサーヴァントと戦ってきた」
その言葉を聞いて七星も威燕も目を見開く。
アーチャーが持ってきた情報は多大に重要だ。
しかし七星はそれと他に恐ろしくも想う。
二騎を相手にこのアーチャーは単騎で戦い、こうして無事に帰ってきたことに。
「アーチャー、どうだった?」
「ああ、真に可笑しな気分だった」
「可笑しい?」
「そうともマスター、私は二騎、ランサーと
その証言に、その場が凍りついた。
サーヴァントの真名が判明しました。
真名┓
アレキサンダー・ソーニー・ビーン
属性┓
混沌・悪
ステータス┓
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:E 幸運:A 宝具:A+
クラス別能力┓
気配遮断:A
保有スキル┓
カニバリズム:A
※同族の肉体をどの程度食するかの割合。
このスキルは同族の肉を食べることで魔力を回復することができる。
情報抹消:C
※戦闘離脱時に自身の情報を消すことが出来るスキル。
人体解剖:A+
※人の体を解体する技術。
宝具┓
対人┓
解体一族(ビーンズ・リッパー)A+
※対象を余す所無く解体する宝具。
結界┓
我が家の台所へようこそ!(ウェルカム・ギャロウェイズ・キッチン!)C+
※一定の範囲を狩場とする結界宝具。