プロローグ
西暦2XXX年、遂に神秘は枯渇した。
いや、正確に言うのならまだ完全には枯渇はしていない。
しかし、既に魔術師の質は魔術使いが魔術師と名乗る程にまで落ちている。
枯渇による地球の衰退は目に見えて進行し、あと数百年もすれば地球は砂漠の星になるだろう。
それから地球が回復するまでに人類が生き残っている確率は限りなく少ない。
当然それらの事を人類が黙っているわけではない。
自然環境保護団体やそれに類似した団体が躍起になって活動している。
大昔からそういった活動はあったが今更手遅れである。
今や地球はその心臓を緩やかに止めているのだから。
魔術師達はそのことを知っている。
相次ぐ龍脈の衰退と枯渇、マナの供給されなくなった土地の荒野化。
それを防ぐべくして魔術師たちは重たい腰を上げた。
具体的には動きの鈍い地球の心臓に衝撃を与えて活性化させようというものである。
だからといって原爆や大量の爆弾を地球の中心に叩き込むのではない。
そんなことをしようものなら西欧財閥は勿論この地球に生きとし生ける物が黙ってはいない。
無論魔術師達もそんなことはする気はない。
現実問題そんなことをしたら地球は時期を待たずして終わる。
太陽系から消えてしまうだろう。
ではどうするのか?
答えは簡単だ、大量の魔力、それも一個人が一生持て余すような、それこそ根源にでも到達しゆる程の大魔力を地球のコアに叩き込むのだ。
極東の島国、日本。
そんな果の国で大昔に執り行われた大儀式がある。
世界に名を刻んだ者達を英霊として使い魔とし、戦わせるというものだ。
マスターとサーヴァントで二人一組として、それが七組。
無論ただ戦わせる訳じゃない。
その大儀式には報酬がある。
最後の一人にはどんな願いでも叶えられるのだ。
それを成し得るのが英霊だ。
英霊とは大魔力の塊である。
大儀式にはそれら敗れた英霊たちを焼べる為の盃がある。
聖杯、天の杯であるそれは敗れた英霊を純粋な魔力として貯蓄する。
本来であれば六騎を倒して又は七騎共聖杯へ焼べてする聖杯戦争を地球復活の為に使うのだ。
召喚したサーヴァントは直ちに七騎共に自害をさせる。
そうして満たされた聖杯を地球の核へと送る。
そうして地球の息を吹き返させる算段だった。
そう、だったのだ。
裏切り者の御登場である。
そいつは聖杯を私利私欲の為に求めたのだ。
結局、この崇高なる救済の大儀式は従来の聖杯戦争へと成り下がって行ったのだった。
男は言う。
「さあ、聖杯戦争の時間だ」