テイルズ オブ ヴェスペリア ~始祖の隷長の傭兵~   作:バルト・イーヴィル

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カプワノールへ無事に到着したバルト。

護衛の依頼を終えて、やっと一息つけると思った矢先、幸福の市場のカウフマンが引き渡す予定の騎士団がギガントモンスターの一角であるブルータルに壊滅させられたと言う。

ブルータルとは戦いたくないバルトは嫌がったのだが、ゾフェル氷刃海からならギガントモンスターに遭遇せずに行けるとのカロルの発言と、カムイの邪な助言の後押しで受けることを決意。

しかし、賞金稼ぎの手に指名手配書が渡っていたらしく、町中で攻撃を受けた。

賞金稼ぎから逃げるように宿屋に戻ったバルトだったが、カタハに事情を聞かれて答えを返せなかった。

翌朝、カタハと賞金稼ぎが共に居るのを目撃したバルト。

どうやら、賞金稼ぎはカタハと手を組んだらしい。

バルトは先回りしてカムイを起こすと、カプワノールを脱出した。

カプワノールを出た直後、賞金稼ぎが手を回していたのか、4名の騎士に遭遇した。

ルブラン隊長、アシェット副隊長、アデコール小隊長、ボッコス小隊長である。

カロルの話に出てきたユーリという名前を出したら、アシェットはバルトを庇って時間稼ぎをしてくれた。

お言葉に甘えて逃げるバルトに賞金稼ぎの声がしたが、そこでカロルが間に割り込む。

カムイに逃げるように促され、バルトは必死でエフミドの丘へと走ったのだった。

唯一、気掛かりなのは、カロルはめちゃくちゃ強いことである。

カタハは大丈夫だろうか?


第7話【ハルルの町の殺戮猪・前編】

第1章『うさんくさいおっさん』

 

エフミドの丘を抜けて、ハルルへ向かうバルト。

 

その道中は、ビッグボスとカムイが前後で警戒をしながらの慎重な行進となった。

 

カムイが飄々としているのは、近辺に危険が無い証である。

 

ハルルまでは距離が有るため、テントで一夜を明かす。

 

朝になると、同じ進行方法でバルトも細心の注意を払ってビッグボスの後を追う。

 

ビッグボスは地面の匂いを嗅いで、安全なルートを教えてくれた。

 

だが、ハルルへと後少しとなったとき、問題のブルータルが物凄い勢いでこちらに……。

 

否、ハルルへと向かっていた。

 

ハルルの町の周辺には、ダングレストと同じように木のバリケードが張り巡らされていたが、それが一撃で弾け飛ぶ。

 

次は無い。

 

そんな無慈悲をハルルに絶望の形で届ける。

 

ブルータルは助走をつけるために、後退していく。

 

バルトは直ぐ様詠唱を始める。

 

「悪い、カムイ!

 

見捨てらんねえ!」

 

バルトのその言葉に答えるように、カムイとビッグボスがバルトの援護をするようにブルータルへ向かって走っていく。

 

「 揺らめく焔、突っ込め!

 

ファイアボール!!」

 

バルトのうろ覚えの詠唱で発動した不安定なファイアボールは、横から不意打ちの形でブルータルに当たる事となり、ブルータルも術技を受けるのは久しいのか、驚いて逃げていった。

 

カムイとビッグボスは戦わずに済んだことにホッとしており、かくいうバルトもブルータルとこのまま戦ったところで勝ち目は薄いだろうと考えていた。

 

それでも、目の前でブルータルに町が壊されて、人が死んでいくというのは見過ごせなかった。

 

バリケードの向こう側から、普段ならばみっともないと言われかねない大人までもが大泣きしていた。

 

よほど怖かったのだろう。

 

武醒魔導器(ボーディブラスティア)の事は聞かずに暖かく迎え入れてくれた。

 

ハルルは昔は村だった。

 

いつから町という規模になったかというと、アスピオが崩壊したことにより、アスピオから避難民としてハルルに人が雪崩れ込んだ事が原因だ。

 

アスピオは騎士団お抱えの、魔導器(ブラスティア)の研究員が住んでいた。

 

今ではまともに動く魔導器(ブラスティア)も存在しない。

 

故に、アスピオ出身者の大半はザーフィアスで別の研究に力を注いでいる者と、ハルルでの生活水準を上げるための手助けをしている者に別れる。

 

そういえば、とバルトは思い出す。

 

「シルトのやつ元気だろうか?」

 

バルトがそう呟くとカムイが反応した。

 

「姉さんの事ですか?」

 

カムイが反応したのは仕方がない話だ。

 

なぜならば、カムイ・シルト。

 

つまりは、姉のシムカ・シルトの事を気にかけていると思ったのだろう。

 

「いや、違う違う。

 

アスピオに1人友達ってか、前に護衛した研究員が居てな……。」

 

「へぇ、僕たちと同じ名前ですか。

 

親近感が湧きますね。」

 

バルトはサクラの花びらを拾い集める女性を指差す。

 

「そうそう、あんな感じの……。」

 

「バルト?」

 

白髪に病的なまでに白い肌、目は青く、あどけなさの残る童顔。

 

細い体躯をパーカーで隠し、ハーフパンツの下に黒のタイツ、スニーカーを履いた少女。

 

彼女こそが……。

 

「シルト?」

 

バルトが訪ねると、拾い集めていた桜の花びらを投げ捨てて、バルトに抱き付いてくる。

 

「お、おい、シルト!?」

 

バルトが焦ってシルトを受け止める。

 

「久し振りの再会。

 

ブルータルのせいで、もう会えないと思ってた。」

 

少しばかり力が強い抱擁に、バルトは顔をしかめる。

 

「そうだ。

 

ブルータルなんだけど、ありゃ、また来るぜ。」

 

バルトがそう言うと、シルトは離れて頷く。

 

「分かってる。

 

だから、精霊の力で撃退する必要が有る。」

 

精霊……。

 

アスピオの天才魔導士リタ・モルディオが、コアや聖核(アパティア)から精霊を生まれ変わらせる術を持っているという。

 

「リタ・モルディオがここに居るのか?」

 

しかし、精霊の力を使うには、引き出すための精霊を使役出来る人物が必要である。

 

今のところ、リタ・モルディオ本人しか、その力を引き出す事が出来ないと聞く。

 

「居ない。

 

私が言ってるのはハルルの木の精霊のこと。

 

花びらを集めていたのは、微量な精霊の力を集約するため。

 

木は結界としての力を失った。

 

その代わり、精霊は居る……らしい。」

 

らしいというのは、きっとシルトは見たことが無いのだろう。

 

「この花びらを使うメカニズムは、ザーフィアスから来たリタの使いのおじさんから聞いた。」

 

「そのおっさんてのは?」

 

「今は町長の家にいると思う。

 

バルト、花びら集め手伝って。」

 

シルトに言われて、バルトとカムイとビッグボスも花びら集めを手伝うことになった。

 

シルトは時代が違えば天才と呼ばれたであろう魔導士である。

 

時代が違えばとは、同じ時期に変態型の天才リタと努力型の天才ウィチルが居たからである。

 

シルト・スタンダードはアスピオではNo.3……。

 

同じ天才では有るのだが、精霊を産んだリタや、フレン騎士団長の付き人のウィチルとは、とてもではないが比べる事が出来ない。

 

「バルト、さっき、ブルータルに飛んで行くファイアボールが見えた。

 

あの不格好なファイアボールはバルトでしょ?

 

どうして使えるの?」

 

シルトが花びらを手に、首を傾げる。

 

「いろいろ有ったんだよ。

 

シルト、花びら集めが終わったら、リタの使いのおっさんの所に案内して貰えるか?

 

シルトも居る事だし……、この武醒魔導器(ボーディブラスティア)が有りゃ、力になれる事も有るかも知れねえ。」

 

ブルータルの事が有ったので、間違いなくバルトが持つ、武醒魔導器(ボーディブラスティア)の存在はハルルの人なら認知したことだろう。

 

シルトも例外ではない筈だ。

 

故に、隠す意味はない。

 

「それが有るだけでかなり違うと思う。

 

私が使えば、遠くから一方的に術技で削る。」

 

シルトの言葉にバルトは苦笑する。

 

「こいつを使うってのを誰かに見られたら、シルトも危険な目に会うかもだぜ?」

 

バルトが警告するが、シルトは首を振る。

 

「大丈夫。

 

その時は一緒に逃げる。」

 

「ったく、分かったよ。

 

なら、そんときになったら渡すから、ひとまずは花びら集めを終わらせようぜ。」

 

ハルルの精霊の微弱な力を集約したとして、精霊の力をどうやって防衛に使うと言うのだろうか?

 

リタの使いというおっさんが気になる所ではあるが、バルトも花びら集めに精を出した。

 

花びら集めは屈みっぱなしのため、腰と首に疲労が蓄積した。

 

「バルト兄さん……。」

 

「言いたいことは分かる。」

 

物凄く辛い作業を終えた頃には辺りは薄暗くなっていた。

 

シルトが同じように辛そうに腰を押さえて立ち上がる。

 

「集まった。

 

これをおじさんの所に持っていく。」

 

シルトと共に町長の家にお邪魔することになる。

 

さて、おっさんはどういった対応をするのだろうか?

 

バルトが共に入ると、そこには……レイヴンが居た。

 

バルトの言うレイヴンとは、天を射る矢(アルトスク)のレイヴンの事である。

 

ドン・ホワイトホースが所属していたギルドの一員である。

 

バルトとレイヴンは共に面識が有る。

 

「おっ?

 

あんたは確か、バルボスんところのバルトじゃねえの?」

 

「そういうあんたこそ、ドンの所のレイヴンじゃねえか。」

 

共に5大ギルドの一員であり、ユニオンのメンバーである。

 

天を射る矢(アルトスク)のドンが死んだように、紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)のバルボスも死んだ。

 

そのため、部下の頭角を表すと言うと語弊が有るが、有名なメンバーは互いに顔と名前を認識していた。

 

レイヴンはダングレストに居る事が少なく、バルトもいわくつきの依頼を受ける事が主なために、会うのは久し振りだった。

 

「あんたがリタ・モルディオの使いって事で良いんだよな?」

 

バルトが言うと、レイヴンはなぜかその場でバク転し、親指を立てた。

 

「そ!

 

俺様がリタっちの使いで間違いねえよ。」

 

リタっちという愛称で言えるような間柄のようだ。

 

アスピオの天才魔導士とどういった関係なのだろうか?

 

「ハルルの花びらは集まったみたいじゃない?

 

ご苦労さん!」

 

と、軽い感じでシルトの肩を叩くレイヴン。

 

こんなに軽い反応が故にうさんくさく感じてしまう。

 

「で、本当にこれで大丈夫なのか?」

 

バルトが訪ねると、レイヴンが手招きして、バルトだけを呼ぶ。

 

「なんだよ?」

 

バルトが歩み寄ると、レイヴンはバルトの肩に腕を回してコソコソと話し出す。

 

「ぶっちゃけるけど、リタっちの使いっての嘘なんだわ。

 

ハルルの花びら集めはこの町の奴等の心を折らせないためのもんで……。

 

ようは、まじないというか、気休めというか……。」

 

「マジかよ……。」

 

花びら集めは徒労だったと聞いて、無駄に疲れたと落胆する。

 

「ものは相談なんだが……。

 

おまえさんが武醒魔導器(ボーディブラスティア)持ってるって噂を聞いたんだけど、それをブルータル討伐のために使ってくんないかねえ?」

 

隠す意味は無いと、リストバンドをズラす。

 

「……。

 

どって、あんちゃんがそれ持ってんの!?」

 

持ってる噂を聞いてるには大袈裟過ぎるリアクションだ。

 

「何を驚いてんだよ。

 

持ってるの知ってて話に出した癖によ……。」

 

「え、あぁ、いや、まぁいっか。

 

っかしいな……。

 

確かあれは青年が持ってたハズ……。」

 

最後のは聞き取れなかったが、納得した様子のレイヴンがバルトの両肩に手を置いて揺さぶる。

 

「まあ、紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)頼りの絆(ラストリゾート)さんが手を貸してくれるってことで良いなら、俺様も手を貸すけど?」

 

天を射る矢(アルトスク)のレイヴンが手を貸すというのはとても有り難い事だ。

 

「構わねえよ。

 

断ったらハルルが壊滅しちまうだろうしな。」

 

しかし、頼りの絆(ラストリゾート)とは、言ってくれるものだ。

 

本来なら誰も受けないようないわくつきの仕事を一手に引き受けていたせいで、そんな通り名も付いてしまった。

 

目的は依頼ではなく、寄ってくる『いわく』の方であるので、そう呼ばれるのは不本意である。

 

なので、ここは仕返しとばかりにバルトはレイヴンに言う。

 

「シュバーンが手を貸してくれって言ってくれてるんだから、光栄だよな?」

 

レイヴンは顔をしかめる。

 

してやったりとニヤっと笑うバルト。

 

「俺様はレイヴン以外の何者でもねえよ。」

 

「俺もただのバルトっつうことさ。」

 

ブルータルが次にいつ来るかは分からないが、その時に倒すか深手を負わせなければハルルという町は無かったことになるだろう。

 

「んで、これは俺様とあんちゃんの秘密ってことで……。」

 

花びらを指差してレイヴンが言っている。

 

まあ、きっとカムイには聞こえてるだろうが、言わなくてもいいか。

 

カムイが面白そうに笑ってるので、これは隠しても無駄というやつだろう。

 

「しかし、集めた花びらを何かしらの形にしねえと納得されねえよなぁ。」

 

レイヴンは顎に手を当てて、考えると、閃いたとばかりに手を叩いた。

 

「俺様の矢にくっ付けて飛ばすか!」

 

「いや、あの枚数の矢を準備出来るのか?」

 

「1本に全ての力を集約したとかで、とどめに使えば良いんじゃねえの?」

 

軽い感じで言われるが、ブルータルにとどめを刺すということは、そこまで自分達で弱らせる必要が有るということである。

 

「マジかよ……。」

 

バルトは目の前のブルータルという巨大な壁に、頭を抱えるのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第2章『一矢報いるために』

 

ハルルの宿屋に泊まる事にし、部屋を借りたのだが、シルトも同じ部屋が良いと言う。

 

カムイが構わないというので、バルトも気にしないようにするのだが、カムイと泊まるつもりで部屋を取ったので、ベッドが2つしかない。

 

カムイと一緒に寝るのはゴメンだが、シルトと共に寝るのも色々と不味い。

 

そう考えたバルトはビッグボスを枕にして床で眠るのだった。

 

朝、目覚めたバルトは顔を洗い、宿屋の調理場を借りて、カプワノールで貰った海鮮丼のレシピを参考に料理をする。

 

と言っても、魚介類を切り分けて、炊きたてのご飯に乗せるだけなのだが……。

 

出来上がった物をお盆に乗せて、部屋に戻ると、シルトとカムイも起きていた。

 

部屋のテーブルにお盆を置いて、イスを引く。

 

そこに腰かけて背もたれに体重をかけると、足を組んでお椀を手に持つ。

 

レンゲで海鮮丼を程よくかき混ぜる。

 

シルトも寝惚けた状態で向かいの席に座り、お椀を手にする。

 

レンゲでひと掬いし、口に運ばれた海鮮丼。

 

「ふぉふぃふぃ……。」

 

「そうか、飲んでから喋れ。」

 

美味しそうに食べるシルトにバルトの頬が緩む。

 

カムイも海鮮丼を食べて微笑んだ。

 

「醤油とわさびはお好みでかけろよ。」

 

バルトはレンゲに醤油を入れ、わさびを投入すると、箸でかき混ぜる。

 

そして、わさび醤油となったものを海鮮丼へとかけた。

 

「あー、うめえな。」

 

ワンダーシェフのレシピではないが、ちゃんと受け継がれてきた技というか、伝統というか、そういう味だ。

 

ビッグボスには魚の切り身を皿に乗せてやる。

 

「ほら、たんと食え。」

 

ガツガツと食べるビッグボス。

 

犬の感情も言葉も分からないが、美味そうに食べていた。

 

「ところでバルト兄さん。

 

今日はどうしましょうか?」

 

カムイが空のお椀を置いてバルトを見る。

 

「レイヴンの話をお前は聞いてたよな?」

 

「ええ、頼りの絆(ラストリゾート)のバルト兄さんの話ですよね?」

 

クスクスと笑っているカムイのおでこに醤油の付いたレンゲでグリグリする。

 

「その呼び名は不本意だ。」

 

「良いではありませんか。

 

指名手配よりかはずっと。」

 

それはそうだが、頼りの絆(ラストリゾート)など、自分には過ぎた呼び名だと思っている。

 

「おや、不服ですか?

 

うさんくさい依頼が故に誰も受けてくれない仕事……。

 

バルト兄さん宛に、バルト兄さん頼りに、バルト兄さんが最後の希望とまで言われてますが?

 

シムカ姉さんはバルト兄さん宛ての依頼を結構な頻度で貰ってるそうですよ。

 

うさんくさい依頼者の間では、バルト兄さんは英雄扱いです。」

 

うさんくさい依頼者など言っているが、ほとんどが依頼内容がちょっと長かったりする普通の人たちである。

 

依頼の勝手の分からない依頼を出す初心者が主なのだ。

 

うさんくさい等と呼んでは可哀想ではないか。

 

「誰でも初心者の時期ってのは有るだろうが?

 

うさんくさいとか言ってやるなよ。」

 

バルトがため息を吐き出すと、カムイは肩をすくめる。

 

「うさんくさいものはうさんくさいですよ。

 

で?

 

話は聞いていましたよ。

 

はい、聞こえてましたよ。

 

正直言いましょう。

 

勝てませんよ?」

 

カムイが捲し立てるように言うが、これはカムイが正論だ。

 

ギガントモンスターは相手にしてはならない。

 

これは今の時代の常識である。

 

「けど、やらねえと、ハルルは壊滅しちまうだろうよ。」

 

リストバンドをズラしたバルト。

 

それを見たカムイは苦笑する。

 

「それがありきの時代でも敬遠されていたのがギガントモンスターですよ?

 

一人がそれを使えたとして、戦況に微々たる変化が有るだけでしょうね。」

 

それを聞いてシルトが首を振る。

 

「大丈夫。

 

ハルルの花びらは集めた。

 

あのおじさんがなんとかしてくれる。」

 

事情を知らないシルトはのんきに言ってくれるが、花びらには効果はない事はレイヴン直々に聞かされている。

 

だが、内密にということなので、わざわざ広める必要もない話である。

 

「まあ……。」

 

バルトが言葉に困っていると、カムイが立ち上がった。

 

「では、戦いに備えて、戦力の確認をして来ます。

 

ハルルの残存兵力がどれだけなのか……。

 

期待はしない方が良さそうですけどね。」

 

カムイが部屋から出ると、カムイに付いていくビッグボス。

 

部屋にはバルトとシルトだけが残された。

 

バルトは武醒魔導器(ボーディブラスティア)を外してシルトに差し出す。

 

「お前の術技が頼りだ。」

 

シルトは受けとると、頷いて返す。

 

「うん。」

 

バルトは席を立ち上がり、お盆に空のお椀を乗せていく。

 

「バルト。

 

教えてあげたシャープネスやリカバーはまだ使える?」

 

「あぁ、お前が使えない癖に、俺になんとなくで教えたら出来たやつだろ?

 

まあ、うろ覚えで良いなら出来るけどよ……。」

 

以前、護衛したときに、暇つぶしがてら教えて貰ったのだ。

 

「私の集中力も無限じゃない。

 

だから、バルトにこれを返すことになると思う。

 

その時は私も前に出て戦うから、シャープネスをかけてほしい。」

 

シルトが前に出て戦う?

 

魔導士タイプのシルトが前に出る?

 

バルトはシルトのおでこを指で弾く。

 

「そうならねえためのハルルの花びらだろうが!」

 

痛そうにおでこをさするシルト。

 

「それに、俺とカムイ、ビッグボスとレイヴンまで居るんだ……。

 

お前が前に出なきゃなんねえなんてことにしてやるもんかよ。」

 

部屋を出ようとするバルトの袖をシルトが掴んだ。

 

「不安か?」

 

バルトが訪ねると、シルトが頷く。

 

「まあ、そうだろうな。

 

確か、前に護衛したときにもおんなじような事言ったよな?」

 

確か、あれはシャイコス遺跡での護衛の時だったか?

 

ソーサラーリングを使ったギミックにより、ゴーレムに囲まれた時だった筈だ。

 

「不安な時は自分を信じろ。

 

けど、それでも不安な時は俺を信じろ。ってな?」

 

あのときは、本気で死ぬかと思った。

 

しかし、エアルが暴走気味だったがために、体の修復に時間はあまりかからなかった。

 

「俺が大層な器じゃねえのは理解してる。

 

上手くいかなかったときはお前の全不満を俺にぶつけていいから、全てが失敗するその時まで俺を信じろ。

 

失敗したら、全部俺のせいにしちまえ。

 

死んでから愚痴を1000回聞いてやらぁ。」

 

それだけ言うと、バルトは部屋を出た。

 

「このバルトの名が全部の悪も善も背負ってやらぁ。」

 

 




『バルト・イーヴィル』
【種族】始祖の隷長
【所属】紅の絆傭兵団
【通り名】《頼りの絆:ラストリゾート》
【装備品】
クラウソラス
コンパクトソード+1
フィートシンボル
武醒魔導器
【通常技】
飛行
エアル吸引
【術技】
蒼破刃
ファーストエイド
ファイアボール
リカバー
シャープネス


『カムイ・シルト』
【種族】人間
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
オウカ+1
ナイトソード
ブーツ
【通常技】
挑発
察知
変装
【術技】
ローバーアイテム

『シルト・スタンダード』
【種族】人間
【所属】アスピオ研究員
【装備品】
スターロッド
ネコガード
ミスティマーク
【通常技】
不明
【術技】
ファイアボール
ストーンブラスト
シャンパーニュ
スプレッドゼロ

『ビッグボス』
【種族】プチウルフ
【所属】バルト
【装備品】
魚人の得物
マント
【通常技】
追跡
【術技】
不明


『レシピ』
サンドイッチ
おにぎり
サラダ
野菜炒め
海鮮丼
超絶・海鮮丼☆


『共有戦利品』
亀の甲羅×2
海苔×1
グミの元×1
サーモン×2
オレンジグミ×1
大きなハサミ×5
トルビフィッシュ×2
蟹の甲羅×3
口ばしラッパ×1
チキン×1

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