テイルズ オブ ヴェスペリア ~始祖の隷長の傭兵~   作:バルト・イーヴィル

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ヘリオードから逃げたバルトはカプワトリムに向かう最中、ゴーシュとドロワットという女性達が子供を守るように戦っているのを見つけた。

バルトとカムイはパティと共に加勢し、魔物を打ち破り、共にカプワトリムへと入る。

ゴーシュとドロワットとはそこで別れ、カムイは宿を取りに、バルトはパティの親とダーリン探しに別れた。

その最中、幸福の市場のカウフマンに出会う。

そして、カウフマンにより明らかにされるパティの家。

パティとはカプワトリムでお別れとなり、カウフマンから新たに仕事を受けることとなる。

しかし、仕事をするにはバルトとカムイの2人では心もとない。

そう思った2人はスカウトに出かけ、暁の雲のカタハルトというクリティア族の女性と凛々の明星のカロルという少年を仲間に加えた。

その後、バルトになついたビッグボスというプチウルフを加え、4人と1匹でカウフマンの依頼を受けた。

カプワノールまでの海域で船を襲ってきたプレデント。

辛くもそれを打ち倒したバルト達はカプワノールへとたどり着いたのだった。


第6話【カプワノールの賞金稼ぎ】

第1章『全国指名手配』

カプワノールの港に到着したカウフマンの幸福の市場(ギルド・ド・マルシェ)の船から船着き場へと降りる。

 

カウフマンからここまでの護衛の報酬として30万ガルドが渡された。

 

ここまで大きな報酬も珍しいと思われるかもしれないが、この御時世に5大ギルドの1つである紅の傭兵団(ブラッドアライアンス)に依頼した事となるので妥当ではある。

 

また、今後の期待と縁にと気持ちを包まれたという感じだ。

 

とはいえ、報酬をカタハとカムイとカロルとバルトで4分割しするので、手元に入るのは7万5千ガルドと少なく感じる。

 

カウフマンと荷物の警護をしながら歩いていると、船着き場から少し離れた所に有る掲示板に人だかりが出来ていた。

 

カムイが素早く割って入っていき、戻ってくる。

 

『全国指名手配バルト・イーヴィル』

『全国指名手配カムイ・シルト』

『全国指名手配パティ・フルール』

 

「へぇ、パティってフルネームこうなってんのな。

 

じゃなくて!

 

指名手配!?」

 

大きな声を出すバルトの口を咄嗟にカムイが手で覆う。

 

「気を付けてください。」

 

指名手配に書かれた顔が凄く下手くそなのが本当に救いだ。

 

「ひとまずは、宿屋に行って次の目的地を決めようぜ。」

 

沈む気をまぎらわせようと、カプワノールの宿屋であるポルックス・Nで休もうと思った矢先、カウフマンが驚きの声を上げた。

 

「はあ!?

 

ザーフィアスまでの荷物護送の騎士団がブルータルにやられた!?

 

っんとにもう!」

 

カウフマンは頭をガシガシと掻いている。

 

そして、こちらに目を向けた。

 

「ねぇ、ちょーっとビジネスの話が……。」

 

バカを言ってはいけない。

 

ブルータルと言えば、ギガントモンスターの1体だ。

 

相手にしなければならないかもしれないのに、護送なんて出来るか!

 

聞こえないふりをして、離れようとするバルトの肩をカウフマンが掴んだ。

 

「ブルータルなんざ相手に出来るわけねえだろ!?」

 

バルトのその言葉にカウフマンは首を振る。

 

「あー、違う違う。

 

ブルータルを相手にしなくても良いルートが有るのよ。」

 

カウフマンはそう言うと地図を取り出した。

 

「クオイの森って言ってね?

 

そこを通れば、ブルータルを相手にしなくても……。」

 

カウフマンが発言をしきる前にカロルが首を振る。

 

「ダメだよ。

 

あそこにもキマイラバタフライっていうギガントモンスターが居るからね。

 

カウフマンさん、安全に運ぶなら遠回りしてもオルニオン側の砂浜に船を付けて行くべきだと思うよ。」

 

カウフマンはため息を吐き出す。

 

「けど、急ぎの品なのよ。

 

エステリーゼ姫殿下が直々に取り寄せた物らしくて、出来れば急いで届けたいわけ。

 

騎士団が護送を引き受けてたのもエステリーゼ姫殿下が絡んでたからなのよ。」

 

カウフマンの言葉にカロルは顎に手を当てて深く息を吐き出す。

 

「そっか、エステルが……。

 

だったら本当に急いで届けないといけないかもね。

 

ゾフェル氷刃海からなら行けるかも……。

 

氷の状態が分からないから、運が良ければだけどね。」

 

カロルがそう言うと、カウフマンも頷いた。

 

「そうね、あそこからなら、あるいわ……。

 

けど、良いの?

 

あの辺の魔物は近場では比べ物にならないくらいに強いわよ?」

 

カロルが頷く。

 

「うん。

 

けど、キマイラバタフライやブルータルを相手にするよりかはマシだよ。

 

けど、受けるかどうかはバルト次第かな。」

 

カロルがバルトを見上げる。

 

「どうしますかバルト兄さん?」

 

横合いからカムイが訪ねてくる。

 

「そうだな……。

 

カタハはどうなんだ?」

 

バルトが訪ねると、カタハはニバンボシを叩く。

 

「某の手が必要ということで違いないでござるな?

 

ならば、是非もないでござるよ。」

 

カタハはやる気のようだ。

 

「カムイは?」

 

「僕はこれを絶好のチャンスではと考えてます。」

 

カムイがバルトの耳元に顔を近付ける。

 

「エステリーゼ姫でしたら、お近づきになれば、もしかしたら僕らの指名手配を取り消してくださるかもしれません。

 

なにせ、世間知らずとの事ですので……。」

 

カムイが邪な微笑を浮かべる。

 

「ふむ、確かに利用できるかもな。」

 

バルトも釣られて邪悪な笑みを浮かべた。

 

「よし、やろう。」

 

バルトがそう返事をすると、カウフマンがバルトの手を取って喜んだ。

 

「そうと決まれば、荷物を持ってくるわ!

 

少し待ってなさい!」

 

カウフマンが護送してきた荷物の中から1つ大きな箱を取り出した。

 

「コレよコレ!

 

さ、コレをザーフィアスのエステリーゼ姫の所にお願いね!」

 

ドサッとバルトに渡される。

 

ずっしりとした重みだ。

 

「なかなか重たいな。

 

何が入ってるんだ?」

 

箱を開けようとしたバルトの手をカウフマンが取って止める。

 

「見たらダメよ。」

 

カウフマンから冷たい声が発せられた。

 

「姫よ?

 

ザーフィアスの姫。

 

中身を傷物にしてご覧なさい?」

 

世間知らずが故に簡単に死刑とか言いそうだな。

 

「わ、分かった。」

 

それでは罪状を重ねるだけだ。

 

ここは大人しく引き下がろう。

 

宿屋に到着すると、今後のために素材を買う。

 

その最中、カタハが閃いた。

 

「サンドイッチとサラダだけというのはいささか……。」

 

カタハでも呆れるくらいだ。

 

バルトとカムイは既に飽きも来ていた。

 

流石にメニューを増やさなければ限界だ。

 

そう思ったバルトに天恵のように降り注ぐアイデア。

 

「おにぎり……。」

 

カムイから肩を叩かれた。

 

「手頃ならなんでも良い訳じゃないんですよ?」

 

そんなカムイにもアイデアが降り注ぐ。

 

「野菜炒め……。」

 

バルトがカムイの横腹を小突く。

 

「手頃ならなんでも良い訳じゃねえってのは誰の言葉だったか?」

 

バルトとカムイが睨み合いになっていると、オズオズとカロルが手を挙げた。

 

「実は新しいレシピに宛が有るんだけど……。」

 

カロルは宿屋から出るようにバルトを手招きする。

 

バルトがカロルに付いていくと、カロルはおばさんの前で立ち止まった。

 

「こんにちは!

 

アシェットの同期のユーリが海鮮丼のレシピ無くしちゃってさあ?

 

良かったらもう一回書いてもらえないかな?」

 

「ああ、それなら構わないよ。」

 

カロルに差し出される海鮮丼のレシピ。

 

「はい、次は無くさないようにって言っとくんだよ?」

 

おばさんに肩を叩かれたカロルは、はにかんで笑う。

 

そして、バルトにレシピを差し出した。

 

「はい、海鮮丼だよ。」

 

カロルに渡されたレシピを眺める。

 

カプワノールは港町だ。

 

魚介類の揃うこの町なら、海鮮丼はポピュラーな食べ物と言える。

 

「サンキュ。」

 

カロルに礼を言ってバックパックへとレシピをしまった。

 

そのとき、バルトの手が唐突に掴まれた。

 

「ん?」

 

振り返ったバルトが見たのは、変装もなにもしていないワンダーシェフだった。

 

無言で差し出されるレシピ。

 

バルトはその圧力に負けて受け取ってしまう。

 

「では、さらばだー!」

 

お決まりの文句を言って消えたワンダーシェフ。

 

バルトは手元のレシピを開く。

 

超絶・海鮮丼☆ーー!

 

開いてまず絶句した。

 

「これ、絶対材料集まらねえやつだろ……。」

 

材料に拘っており、量と種類が豊富に必要だった。

 

まさに超絶と付けるに相応しいのだが、超絶作るのが難しい。

 

「まあ、捨てるわけにもいかねえし、持っとくか。」

 

バルトはバックパックへとレシピをしまった。

 

「んじゃ、僕は休むね。」

 

「おう、俺は材料買ってくらぁ。」

 

カロルと別れ、バルトは海鮮丼のための魚介類を買い漁る。

 

そして、市場を覗いていると、奥でお爺さんがサイコロを転がしていた。

 

バルトは気になり、話しかける。

 

「おい、爺さん何してんだ?」

 

「ワシはサイコロ名人。

 

サイコロでひとつ勝負をしてみんか?」

 

バルトは賭け事等はしたことがない。

 

故に、コレも良い機会だとやってみることにした。

 

「ちっこい?おっきい?

 

ぴったんこ?はんぶんこ?

 

どっちがやりたい?」

 

分かりやすそうなのは上だな。

 

「おっきい?ちっこい?だ。

 

予想するに、ハイ&ロウみたいなもんか?」

 

賭け事はしたことはないが、仲間がやっているのを見たことがある。

 

シムカがこういうのは好きだったからな。

 

「ワシが3つのサイコロを振る。

 

10以下ならちっこい。

 

11以上ならおっきい。

 

ちなみに、ぴったんこ?はんぶんこ?じゃが……。

 

偶数が出るか奇数が出るかじゃ。

 

ぴったんこが偶数。

 

はんぶんこが奇数。

 

お前さん、こういうのは初心者か?

 

名前の響きで、ちっこい?おっきい?を選びおったろう?」

 

この爺さん良く観察してやがる。

 

そう思ったバルトは口の端を吊り上げる。

 

「初心者に負けて吠え面かくなよ?」

 

「ほほう?

 

言いおるな……。」

 

サイコロ名人がサイコロを手に包む。

 

「おっきい。」

 

バルトが宣言した後でサイコロが落とされる。

 

「4・5・3つまり、12じゃな。

 

おっきいじゃ。

 

お主中々の運じゃな?」

 

サイコロ名人がサイコロを拾って手の中で混ぜる。

 

「俺は常におっきいだ。」

 

バルトが宣言すると、サイコロ名人が手を広げた。

 

「6・6・1つまり、13じゃな。

 

おっきいじゃ。

 

ほっほっほ、次が運命の分かれ目じゃぞ?」

 

サイコロ名人がサイコロを手に包み込む。

 

「おっきいの一点張りだ!

 

俺は引かねえ!」

 

サイコロ名人がニヤリと笑う。

 

「その度胸や天晴れ!」

 

落ちるサイコロの目は、6・6・6……。

 

「面白い!

 

お前さんこそ、新・サイコロ名人に相応しい!

 

また来い。

 

次はぴったんこ?はんぶんこ?で勝負しようぞ。」

 

バルトに差し出されるサイコロ名人の手。

 

バルトは握手をするのだと思ったが、サイコロ名人の手には何かが乗っていた。

 

「アップルグミ、オレンジグミ、クジグミ?」

 

「マグログミなんてのも有るぞ?」

 

「いや、それは遠慮しておく。

 

てか、良いのか?」

 

受け取りつつも、聞いてみる。

 

「なに、良い暇つぶしになったわい。」

 

正直、ストレート勝ちだから暇つぶしはさほど出来ていないと思うのだが……。

 

「なら、次来るときまでに腕を磨いておくんだな。」

 

バルトがそう軽口を飛ばして、後ろを振り向くと、知らない女性がバルトに向けてストライクイーグルを構えていた。

 

「あんた、この手配書のバルトってのに似てるわね?」

 

女性は短く切り揃えた金の前髪を赤いヘアピンで留めると、金の双眼でバルトを睨む。

 

「答えないってことは黒ってことかしら?

 

んま、捕まえてから話を聞けばいっか。」

 

女性はストライクイーグルに矢を装填する。

 

「あたしの糧になりなさいーー!」

 

放たれる矢ーー!

 

クラウソラスを抜いて咄嗟にガードする。

 

「ヘリオードの騎士が捕まえられない程の手練れみたいだし、初撃は防がれるかもって思ってたわ!」

 

ニ矢、三矢とバルトへと襲ってくる。

 

バルトは後ろに居るサイコロ名人が気掛かりで、ガードを解くことが出来なかった。

 

確実に削られていく体力。

 

体に突き刺さる矢。

 

これに毒が塗られているようで、尚更体力が削られていく。

 

バルトは貰ったばかりのアップルグミを口に含むと、腕に突き刺さった矢を折ってから地面に捨てる。

 

「へぇ、思いの他耐えるわね?」

 

自分でもそれは意外だった。

 

どうやら、ここ数日の冒険で思った以上に成長をしていたらしい。

 

「矢もタダじゃないし、そろそろくたばれ!」

 

バルトに向かってくる矢。

 

バルトはサイコロ名人の前に居るため、避ける事は出来ない。

 

当然のようにバルトに突き刺さる矢をバルトは固い表情で防ぐ。

 

「がはっ……。」

 

腹に突き刺さった矢を引き抜き、地面に捨てる。

 

「ぐっ……。」

 

バルトが膝を折ると、その女性はバルトに向けてトドメとばかりにバトルナイフを抜いて歩み寄る。

 

「さーて、手足を切って、それで騎士団に突き出してア・ゲ・ル!」

 

振りかぶられるバトルナイフ。

 

バルトは口の端を吊り上げる。

 

「ーーオーバーリミッツ!」

 

バルトの至近距離まで近付いていた女性はバルトの解放した気のようなものに後ろに弾き飛ばされる。

 

「おわっ!?」

 

そして、女性の喉元にバルトはクラウソラスの刃を当てる。

 

女性は涙目で両手を挙げていた。

 

「サイコロ名人、あんたは無事か?」

 

バルトが振り返らずに訪ねると、サイコロ名人は頷く。

 

「ああ、お前さんのおかげでな……。

 

お前の方こそ大丈夫なのか?」

 

訪ねられたバルトはクジグミを口に含む。

 

すると、バルトの傷が無かったかのように治って見せた。

 

「運はどうやら俺に味方してるらしいな。」

 

バルトは女性の意識を蹴って奪う。

 

そして、このままにもしておけまいと担いだ。

 

「こいつは、まあ、宿屋にでも連れてって……。

 

いや、それはそれで邪魔くせえな。」

 

バルトが困っていると、サイコロ名人が咳払いをする。

 

「ここに置いておけ、話はワシがしておこう。」

 

サイコロ名人の所へと運ぶ。

 

「そんじゃ、任せるわ。」

 

バルトは宿屋へとそのまま戻る。

 

すると、カタハが恐ろしい形相で駆け寄ってきた。

 

「その血の痕は!?

 

それに、破れた服はどういうことでござるか!?」

 

それを説明すると、たぶん自分が指名手配を受けていることがバレてしまうかもしれない。

 

町中で突然襲われた等と言う話を誰がまともに聞くと言うのか?

 

故に、返せるのは沈黙だけだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第2章『広がる悪名』

 

朝、バルトは出かける仕度をする。

 

カタハには上手い言い訳が見付からず、沈黙を貫いた。

 

カタハはハッキリしないバルトに何も言わずに出ていったが、それから戻ってこなかった。

 

宿屋から出て、武器屋に顔を出したそのとき、昨日の賞金稼ぎと共に歩くカタハを見付けた。

 

バルトは咄嗟に狭い横道に隠れて様子を見る。

 

「つまり、バルト・イーヴィルってやつは、いたいけな私を蹴って気絶させたのよ。

 

無抵抗な私にきっと乱暴したに違いないわ!」

 

カタハがニバンボシに手をかけて目を細めて宿屋を睨んでいた。

 

「あい分かった。

 

では、某と貴方で悪党バルトを討つということで良いな?」

 

「ええ、あなたならそう言ってくれるって信じてたわ!」

 

宿屋へ向かって歩いていくカタハと賞金稼ぎにバルトは慌てて横道から出ると、追いかける。

 

カムイに知らせないと……。

 

だが、正面から入ろうとしているようだったので、バルトは横の扉から入店し、部屋に先回りする。

 

「カムイ!賞金稼ぎだ!

 

逃げるぞ!」

 

カウフマンから託された荷物を抱えて、カムイと共に宿屋を出る。

 

すると、ビッグボスも付いてきていた。

 

カロルはまだ眠りこけていたが、この際やむを得ない。

 

カロルを置いて、カプワノールを逃げるように後にする。

 

「カムイ!

 

ゾフェル氷刃海に行くことはカロルとカタハにはバレてる!

 

ここは、一度エフミドの丘を経由して、ハルルの町でほとぼりが冷めるのを待とう!」

 

「良いんですか?

 

ブルータルが居るという話ですが!」

 

カムイが話ながら横を走る。

 

「俺にはカムイとビッグボスが居るからな!

 

ビッグボス!

 

ヤバイ匂いが近付いてたりしたら教えてくれ!

 

カムイ!

 

お前の察知が有れば、最悪の事態は免れるだろうぜ!」

 

完全に仲間に頼りきりだが、この際だ。

 

やむを得ない。

 

プレデントを輪切りにして見せたカタハと、あの正確無比な矢のコントロールを見せた賞金稼ぎが、前後のペアとなったとしたら?

 

これ、勝てないやつだ。

 

いや、勝てる方法が有るとすればきっとそれは……。

 

と、そんなことを考えていると、カムイが立ち止まった。

 

「バルト・イーヴィル!

 

お縄につくのでアール!」

 

カムイの視線の先には騎士が4人居た。

 

「バッカモーン!

 

声が小さい!」

 

「ルブラン隊長は相変わらず声がデカいのだ。」

 

ひょろ長い背丈の有るチョビヒゲの騎士と、横に幅の有る代わりに背の低い騎士、仮面をしたまま何も言わない騎士と、ルブランと呼ばれた声のデカい騎士がナイトソードを構えていた。

 

「そこを通して貰えねえかヒョロデブコンビ?」

 

バルトはクラウソラスを構える。

 

「んな!!

 

我輩はアデコール小隊長でアール!

 

ヒョロいというのは訂正するのでアール!」

 

「いや!!

 

そこのヒョロいのはどうでもよいのだ!

 

私はボッコス小隊長なのだ!

 

デブというのを訂正するのだ!」

 

「先に我輩なのでアール!」

 

「いや、私なのだ!」

 

「バッカモーン!!」

 

彼らが訂正を求めて言い争っている間に逃げようとしていると、それに気がついたルブランが大声をあげた。

 

「何やってるんだあんたら!?

 

奴等が逃げようとしてるぞ!」

 

と、仮面の騎士が足止めするように前に立つ。

 

「おお!でかしたのでアール!

 

アシェット副隊長!」

 

アシェットと呼ばれた仮面の騎士。

 

バルトは聞き覚えが有った。

 

「アシェット……?

 

おい、ユーリって名前に聞き覚えはねえか?」

 

バルトが訪ねると、アシェットは頷いた。

 

「んお!?

 

ユーリは俺の同期だが……まさか、お前さんその口かい?」

 

アシェットは考えるように腕を組む。

 

「アデコール小隊長!

 

ボッコス小隊長!

 

ルブラン隊長!

 

こいつ、バルトではないようです!」

 

アシェットの言葉にバルトとカムイは驚いた。

 

「手配書を良く見てください。

 

ね?

 

全然違うでしょう?」

 

「た、確かに……。」

 

アシェットがバルトの脇を小突いた。

 

「ほら、今のうちだぜ。」

 

「恩に着る。」

 

バルトとカムイはアシェットに任せてエフミドの丘へ向けて走る。

 

その後ろでは、アシェットが手配書でアデコールとボッコス、ルブランを足止めしていた。

 

そして、再びバルトを止める声がした。

 

「あぁあーー!!

 

逃げられてるじゃない!!

 

この使えないヘンテコ騎士!」

 

賞金稼ぎとカタハがバルトとカムイを睨んでいた。

 

マズイ……。

 

そう思った矢先、間にカロルが転がり込んだ。

 

「懐かしいな……。

 

ユーリとも最初はこんなんだったな……。

 

バルト!

 

ここは僕に任せて!」

 

バルトの腕をカムイが引く。

 

「彼らの善意を無駄にしてはいけません。」

 

背を向けて走る。

 

ゾフェル氷刃海に向かうように見せかけて、エフミドの丘へとバルトは無事に到着することが出来た。

 

「大丈夫だろうか?」

 

バルトがボソリと呟くと、カムイは微笑を浮かべる。

 

「カロル君とアシェットさんでしょうか?」

 

バルトは首を振る。

 

「カロル、めちゃくちゃ強いぜ?

 

カタハと賞金稼ぎ……大丈夫だろうか?」

 

カムイは真顔になる。

 

「そう……でしたね。」

 

エフミドの丘は少し前に結界魔導機(シルトブラスティア)が壊れたことで、よもやなんの変鉄もない道でしかない。

 

ここを越えるといよいよ見えてくるのが、アスピオ跡地とハルルの町だ。

 

と言っても、見えるだけでかなり距離が有る。

 

「きっとカロル君は手加減する余裕も有りますよ。」

 

「カタハ、結構強かったよな?」

 

カムイは口を閉ざして、ハルルの町に指を指す。

 

「行きましょう。」

 

「まあ、そういう心配は後回しだわなぁ。」

 

バルトとカムイは歩き進める。

 

目指すはハルルの町。




『バルト・イーヴィル』
【種族】始祖の隷長
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
クラウソラス
コンパクトソード+1
フィートシンボル
武醒魔導器
【技】
蒼破刃
ファーストエイド

『カムイ・シルト』
【種族】人間
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
オウカ+1
ナイトソード
ブーツ
【技】
挑発
察知
変装
ローバーアイテム

『カロル・カペル』
【種族】人間
【所属】凛々の明星
【装備品】
ガーディアンスタンプ
【技】
不明

『カタハルト・シホルディア』
【種族】クリティア族
【所属】暁の雲
【装備品】
ニバンボシ
【技】
不明

『ビッグボス』
【種族】プチウルフ
【所属】バルトのペット
【装備品】
魚人の得物
マント
【技】
不明


『レシピ』
サンドイッチ
おにぎり
サラダ
野菜炒め
海鮮丼
超絶・海鮮丼☆


『共有戦利品』
亀の甲羅×2
海苔×1
グミの元×1
サーモン×2
オレンジグミ×1
大きなハサミ×5
トルビフィッシュ×2
蟹の甲羅×3
口ばしラッパ×1
チキン×1

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