テイルズ オブ ヴェスペリア ~始祖の隷長の傭兵~   作:バルト・イーヴィル

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カルボクラムで魔狩りの剣のナンと共闘をしたバルト達は、その足でヘリオードへと向かった。

幸い道中は何も無く、魔物にも遭遇することなくヘリオードへと到着することが出来た。

ナンとパティの会話でカロルという人物がパティと何らかの関係が有ると分かった。

引き続きダーリンの捜索に加え、カロルという人物にも着目することになった。

カルボクラムでリーフバットと戦ったことにより、バルトが武醒魔導器を所持していることがカムイとナンにバレた。

ナンもカムイも何も聞いては来なかったが、果たしてこのまま何も無く事が進むのだろうか?


第4話【ヘリオードの騎士団】

第1章『双子の騎士』

 

ヘリオードの町に到着すると、まず最初に宿を取るため移動する。

 

すると、ヘリオードの駐屯騎士団が丁度見回りをしていたらしく、新顔であるバルトとカムイへと声をかけてきた。

 

「君達はこの辺では見ないけど、どういった経緯でここに?」

 

「俺が紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)のバルト、んで、こいつはカムイだ。

 

このパティって女の子の護衛をしてる。」

 

そう答えると、騎士は納得したように頷く。

 

「時間を取らせてすまないな。

 

近頃この近辺で怪しい動きをする者が現れていてな。」

 

そう言う彼の元へ、赤い髪の女騎士が駆けてきた。

 

「ユルギス隊長!エルヴィン副隊長がお呼びです!」

 

ユルギスと呼ばれた男は女騎士へと頷くと、バルト達を見た。

 

「シャスティル、彼らは紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)のバルト君とカムイ君と言うらしい。

 

疑っているようで悪いのだが、一応これも決まりでな。

 

シャスティル、彼らを案内してやれ。」

 

と、バルトの肩を叩くユルギス。

 

つまりは、このシャスティルという女騎士はバルト達の見張りということらしい。

 

「いや、事が起きてからじゃ遅いし、その判断は間違いじゃねえよ。」

 

バルトがそう言って答えると、ユルギスは安心したように笑い、離れていく。

 

それと立ち代わるようにシャスティルが前に出た。

 

「私はシャスティル・アイヒープよ。

 

どこに連れていってほしい?」

 

シャスティルが訪ねてくるので、バルトが答える。

 

「宿を取ろうと思ってたんだ。

 

宿屋まで案内してくれるか?」

 

シャスティルは頷くと、前を歩く。

 

付いてこいということだろう。

 

シャスティルにそのまま付いていくと、大きな宿屋へ付いた。

 

「ここがヘリオードの自慢の宿、ペテルギウスよ。

 

スイートルームは残念だけど、今は騎士団が使ってるわ。

 

けど、普通の部屋なら空いてるわよ。」

 

「いや、スイートルームなんざ取る金はねえよ。」

 

スイートルームなんて泊まる金が有ったら間違いなく武器や防具を買い揃える。

 

「他にはどこに案内しよっか?」

 

シャスティルが首を傾げている。

 

「うーん、と……。

 

騎士団が取ってるなら、スイートルームを覗いてみても良いか?」

 

そう言うと、シャスティルが首を振った。

 

「それはやめといた方が良いかな。

 

今、あの部屋は評議会の人が使ってるから、関わると面倒かもよ?」

 

シャスティルの言葉にカムイが反応する。

 

「評議会と言いますと、ザーフィアスのあの評議会ですか?」

 

ザーフィアスの評議会はなにかと胡散臭い噂が絶えない。

 

今でこそ皇帝がヨーデルに定まったが、評議会はエステリーゼとかいう世間知らずな姫を皇帝に置いて傀儡政治を行おうとした等と聞く。

 

まあ、それを知った経緯はうちのバルボスが評議会のラゴウ執政官と繋がりが有ったからなのだが……。

 

身内の恥とも言えるのだが、バルボスはあれでも頭の回る男で有る。

 

何か考えが有ったのだろうが、動かされるだけの駒だった俺たちには分かろう筈がない。

 

というか、自分が護衛の依頼で離れている間に一部始終が終わっていたので、人伝てに、主にシムカから聞いたことしか入ってない。

 

「そ、だから、やめといた方が良いよ。」

 

シャスティルはそう言うと、天井を見上げた。

 

上からは何やら重そうな物を引き摺るような音がする。

 

「悪いことは言わないからさ?」

 

シャスティルの言葉に頷き、一先ずは部屋に荷物を置いてくる事にした。

 

流石にシャスティルも部屋の中まで入ってくる事は無いようで、そこからはカムイとパティとこれからの事について話をすることとなった。

 

「出発はいつにしましょうか?」

 

カムイの言葉に、バルトは首を傾げる。

 

「一先ずは、ここでこの先の情報について調べたいところだな。

 

最近起きた事件てのも気になる。」

 

ユルギスは事件の内容については話さなかった。

 

それについては話してはならない内容であるということだ。

 

「そうですね。

 

知らないうちに巻き込まれていましたでは洒落になりませんからね。」

 

それにはカムイも頷きを返す。

 

「それに、評議会が居るってのも気になる。

 

事件が起きたなら、御偉方は逃がすものじゃないか?」

 

その言葉にカムイは顎に手を当てて考え込む。

 

「何か逃がせない理由が有る。

 

もしくは、評議会の連中が動くのを拒んでいる。

 

どうだろうか?」

 

バルトの推測をカムイは頷きで返す。

 

「充分に有り得るでしょう。

 

ですが、評議会が事件に関与している事が前提となっています。

 

僕は、別の視点からも探るべきかと思いますよ。」

 

そう言うと、カムイは服を着替えて、化粧を始めた。

 

カムイの得技の1つの諜報。

 

そのための技能である変装である。

 

カムイはこうして女装し、シャスティルと瓜二つとなった。

 

「では、騎士団の服を拝借して来ましょうかね。」

 

カムイはそう言うと、窓から外に出る。

 

カムイが外に消えてから、しばらくすると、カムイが扉から戻ってきた。

 

「分かったことが……。

 

いらっしゃるのは、ラオウ執政官というラゴウ元執政官の遠縁の親戚らしいです。」

 

ラオウ執政官ねぇ。

 

蛙の子が蛙では無いことを祈るばかりである。

 

「ラオウ執政官はラゴウ元執政官の不可解な死を悔やんでいるようで、生前の彼の事を丁寧に語ってくれました。

 

そのことから、ラゴウ元執政官を支持していたものと思われます。

 

恐らく彼の思想もラゴウ元執政官に近いものが有るのではないかというのが僕の見方です。」

 

カムイは女性騎士の制服を窓から外に投げ捨てる。

 

「さて、事件に関してですが、どうやら、このヘリオードを使って密売が行われているようです。

 

密売されていたのは魔導機(ブラスティア)のコアです。

 

調べていて正解というやつですね。」

 

と、カムイはバルトを見た。

 

カムイにはバルトが武醒魔導器(ボーディブラスティア)を所持していることがバレている。

 

それゆえの危惧だろう。

 

「要らぬ疑いをかけられるのは嫌ですし、僕にもそろそろ話を聞かせてはもらえませんか?」

 

カムイの視線はパティへと向いた。

 

パティは頷くと、バルトにした話と同じ話をした。

 

遺跡の門(ルーインズゲート)のラーギィさんからの依頼でしたか。

 

彼なら、信用出来そうですね。

 

まあ、信用出来そうな名前を偽って語っている線も拭えませんが、少なくともパティちゃんがそう言う嘘をつかない子だと信じておきますよ。」

 

カムイはバルトへと目を向ける。

 

「ヘリオードでは、なるべくそれは使わない方が良いでしょうね。

 

使えば間違いなく、有らぬ疑いを向けられる事でしょう。」

 

武醒魔導器(ボーディブラスティア)を持っていることを隠さなくてはならないのは元より承知の上だ。

 

ヘリオードに居る最中であれば、面倒事は騎士が片付けてくれるだろうし、自分が戦ったりする必要はないだろう。

 

「ないないないない!なーい!

 

ねえ、シャスティル!私の制服知らない!?」

 

何やら外が騒がしい。

 

バルトは扉を開ける。

 

「どうかしたのか?」

 

すると、そこにはシャスティルが二人いた。

 

「ん……?」

 

目をゴシゴシと擦り、もう一度見る。

 

よーく観察し、分かったことがある。

 

そう言えば、シャスティルは胸が大きい。

 

となれば、片方は別人。

 

恐らくは双子というやつだろう。

 

「シャスティル、お前の双子か?」

 

シャスティルは頷く。

 

「ヒスカよ。

 

それよりもシャスティル!

 

制服貸してくれない!?

 

私、今からラオウ執政官の所の見張りに行かなきゃなのよー!」

 

どうやら、ヒスカの制服が無いとのこと。

 

心当たりは十全に有るのだが。

 

「失礼致します。

 

バルト兄さん、おや?

 

シャスティルさんが二人……。

 

なるほど。」

どうやら、事のあらましをカムイも理解したようだ。

 

「貸してさしあげたらどうです?」

 

シャスティルは困ったようにカムイを見上げる。

 

「いや、その、ヒスカは……。

 

スリムだから私とサイズが合わないんだよね。」

 

カムイはその言葉に失笑した。

 

「ぷっ!あはははは!

 

いやはや、失礼。

 

スリムだからですか。

 

確かに、僕もピッタリで驚きましたからね。」

 

カムイがヒスカの胸元をまじまじと見ると、ヒスカとシャスティルも察したようで、胸元を手で隠してカムイから距離を取った。

 

「カムイ、セクハラで弟が捕まったってシムカに伝えなきゃならねえこっちの身にもなれ。」

 

「おや?

 

なんのことです?」

 

カムイはバルトへ視線を戻す。

 

「ずっと部屋にいた僕たちには関係ないことですし、僕たちはゆっくりと休みましょうか。」

 

と、カムイがバルトを後ろ手に引いて扉を閉めた。

 

自分がやったとは打ち明けることなく、それでいて、微塵も罪悪感を感じていないように思える。

 

カムイは今度はユルギスへと変装をして窓から飛び出す。

 

また、扉の前から声がした。

 

「ゲッ!ユルギス隊長!?」

 

「ヒスカ、探したぞ!

 

ラオウ執政官がお待ちだ、急ぎ向かうようにとのことだ。

 

なんでも、ラゴウさんの事をもっと詳しく教えてあげるとの事だ。」

 

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!

 

シャスティルー!」

 

「まったく、もう一回探してみたら?

 

私も探すの手伝うから……。」

 

シャスティルが扉を開ける。

 

「ごめんけど、バルト、ちょっと大人しく待っててくれる?」

 

「おー。」

 

バルトが返事を返すと、足音が離れていく。

 

そして、堂々と扉からカムイが戻ってきて変装を解いた。

 

「何してきたんだ?」

 

「いえ、単純にもとの場所に戻してきてあげたのですよ。」

 

それを知らないヒスカは今ごろ大騒ぎなんだろうなぁ。

 

バルトはヒスカを不憫に感じ、そんなことを思うのだった。

 

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第2章『空白の時間』

 

昨日は騒ぎの事もあり、1日大人しくしていた。

 

朝になり、軽く食事を済ませると勢い良く扉が開いた。

 

そこにはシャスティルとヒスカが騎士の制服の姿で立っており、何やら紙を持って中に入ってきた。

 

「昨日、また事件が起きたわ!

 

バルト、及びカムイには、魔導機(ブラスティア)密売の疑いがかかっているわ。

 

ごめんけど、無罪の証明のために部屋と体を確認させてもらいます。」

 

パティは寝惚けた状態で荷物を探られる。

 

「おいおい、昨日俺達が大人しくしていたのはそっちも分かっててこれか?」

 

その言葉にヒスカは申し訳なさそうに目を伏せる。

 

「その、私が制服を無くしたと勘違いしちゃったから、シャスティルが一緒に探してくれて、それで……。」

 

つまりは、シャスティルが居ない間の俺達の行動に太鼓判を押せなくなっていると?

 

「カムイ……。」

 

「いやはや……。」

 

バルトの手首のリストバンドがズラされ、ヒスカの手がピタリと止まる。

 

「嘘……。」

 

「逃げるぞ!!」

 

「それに限りますよね!!」

 

バルトはパティを抱えて窓から飛び降りる。

 

バルトに続いてカムイも軽々と着地して見せた。

 

ヘリオードの町から逃げるために、昇降機と南への出口と選べるのだが、昇降機には騎士が見張りに立っていた。

 

「とま、止まりなさい!」

 

シャスティルとヒスカも宿屋から出て来て追いかけてきていた。

 

「指名手配されちまうんだろうな……。」

 

「ははは、まあ、なんとかなりますよ。」

 

カムイがバックパックから何かを取り出して地面に向けて投げた。

 

「ちなみに聞くが……。」

 

「ガマの油です。」

 

「きゃあ!」

 

「ちょっと大丈夫シャスティル!?」

 

後ろで滑って少し大変な事になっているようだ。

 

「けど、ガマの油なんて……」

 

そこで、ここに来る前にゲコゲコを倒していることが思い浮かぶ。

 

「いえ、売り物にはならないレベルに体液で汚れてましたが、使い物にはなりそうでしたので……。

 

現にほら?」

 

と、振り返るカムイに釣られて振り返ると、顔を真っ赤にさせて怒るシャスティルとヒスカの顔が見えた。

 

「捕まって話を聞いた方が良かっただろうか?」

 

バルトのその言葉にカムイは首を振る。

 

「僕は今も昔もザーフィアスの統治や法律には従わないギルドの者です。

 

バルトさんは違いますか?」

 

カムイの言葉にバルトは大きくため息をついた。

 

「願わくば、指名手配書の顔が俺達に似ないことだな。」

 

そんな淡い期待を胸に、出口まであと少しとなったところで、ユルギスがナイトソードを抜いて立っていた。

 

「さて、話は動けなくしてから聞くとさせてもらおうか!」

 

こちらとこのまま話をするつもりは無いようで、いきなり斬りかかってきた。

 

バルトは咄嗟にクラウソラスでガードする。

 

その合間にカムイがバルトの武醒魔導器(ボーディブラスティア)をすり取り、ユルギスの脇からぶつかっていく。

 

「ローバーアイテムーー!」

 

ユルギスの持つナイトソードがカムイに奪われた。

 

カムイはユルギスの喉元にナイトソードを付け、バルトがユルギスを殴って気絶させる。

 

「行くぞ!カムイ!」

 

カムイと共にバルトはヘリオードを後にするのだった。




『バルト・イーヴィル』
【種族】始祖の隷長
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
クラウソラス
コンパクトソード+1
フィートシンボル
武醒魔導器
【技】
蒼破刃
ファーストエイド

『カムイ・シルト』
【種族】人間
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
オウカ+1
ナイトソード
ブーツ
【技】
挑発
察知
変装
ローバーアイテム

『パティ』
【種族】人間
【所属】ダーリン
【装備品】
クルビス
【技】
不明



『レシピ』
サンドイッチ
サラダ


『共有戦利品』
トルビー水×1
亀の甲羅×2
海苔×1
グミの元×1
サーモン×1
オレンジグミ×1

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