テイルズ オブ ヴェスペリア ~始祖の隷長の傭兵~   作:バルト・イーヴィル

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パティを助けたことにより、カプワノールとカプワトリムを目指す事となったバルト。

まずは一番近い町であるヘリオードを目指す事とした。

ダングレストを出る直前でシムカの弟のカムイが仲間に加わり、共にダーリンを探す事になる。

途中、トータス2体に襲われる不運も有ったが、片方をバルトが、もう片方を謎の少女パティがフェイタルストライクで倒してしまった。

バルトとカムイはパティと自分達との実力の差をこれで理解した。

ただ者ではないと理解したバルトは武醒魔導器を見せ、パティから経緯を訪ねた。

すると、遺跡の門のラーギィという人物がダーリンへと依頼して、手がかりとして入手したものだと分かった。

ダーリンならば詳しく分かるというので、一先ずはダーリンを探すという目的は変わらぬままヘリオードへと向かう。

そこからはパティの力も借りながら戦う。

順調に進んでいると思われた矢先、カムイがカルボクラムから流れてくる血の匂いを察知した。

カルボクラムは今は人の居ない滅びた町である。

そんなところから匂う血の匂い。

怪しいと感じたバルトは、始祖の隷長としてそれに首を突っ込みたくなったのを、カムイがお人好しと解釈してくれた。

パティも何やら大義な信条を語り、付いてきてくれると言う。

目的地ヘリオードから変更ーー

バルト達はカルボクラムへと向かう。


第3話【カルボクラムの吸血鬼】

第1章『手負いの少女』

 

カルボクラムへと到着したバルトは、カムイに目配せする。

 

「付いてきてください。」

 

カムイの嗅覚を頼りに草木の生い茂る町の中を進む。

 

町の中には移動するための大掛かりな仕掛けが有るのだが、ソーサラーリングの小さなコアですら精霊となっている現代に動かす術は無い。

 

カムイが段差を軽々と飛び越え、下にロープを垂らす。

 

バルトとパティはそれに掴まり、上によじ登る。

 

カムイが目を開き、建物の1つへと目を向けた。

 

「アレのようです。」

 

建物の周りには屈強な男達が血まみれで倒れていた。

 

装いから、騎士では無いことが分かる。

 

「どうしますか?」

 

カムイが訪ねてくるが、あの男達はどう見ても手遅れというやつだ。

 

「家の中を覗いてみて、何も無ければ引き返えそう。」

 

バルトが前を行き、扉を開くと、中には扉をキッと睨む10代くらいの女の子が血まみれで壁にもたれかかっていた。

 

バルトは直ぐに駆け寄り、アップルグミを取り出し、トルビー水でタオルを濡らして血を拭き取る。

 

「何が有った……。」

 

出口を見張るカムイが、咄嗟に扉を閉めた。

 

「やられました。

 

罠のようです。」

 

そう言うカムイは扉を強く押さえながらバルトとパティ、そして少女へと無情な事実を告げる。

 

「その少女を餌に人を誘き寄せて閉じ込めるのが目的だったようです。

 

なかなか賢い魔物のようですね。」

 

カムイの言葉に少女は悔しそうにギリリと歯を噛み締める。

 

「私は魔狩りの剣に所属してるの……。

 

ボスと師匠とはぐれてしまって、あのーーリーフバットの大群に襲われたの。」

 

リーフバットと言えば、その名前の通り、草木の葉っぱに擬態して襲ってくる魔物である。

 

「俺は紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)のバルト。

 

こっちは仲間のカムイとパティだ。」

 

パティの名前を聞いて少女の顔が上がる。

 

「パティってあなた……。

 

ここに、カロルが来てるの?」

 

パティは首を振って否定する。

 

「ウチとバルトとカムイだけじゃ。」

 

少しだけ安心したように見せる少女。

 

「私はナン。

 

どう?

 

ここから出るために一旦手を組まない?」

 

ナンと名乗る少女はバルトを見据える。

 

「まあ、それは魅力的な提案だが、一先ずは手当てしてやっから、こっちに来い。」

 

バックパックから包帯を取り出してナンの負傷が目立つ頭、手、足に順番に巻いていく。

 

「あ、ありがとう……。」

 

どこか照れた様子のナンから、離れるとカムイへと目を向ける。

 

「さて、出るために手を組むわけだが、何か手は有るか?」

 

バルトの言葉にカムイは苦笑する。

 

「あの大群にまともに勝てるとは思いません。

 

ですので、確実な方法は、無いと思われます。」

 

カムイの言葉にナンの表情が曇る。

 

「勘違いしないで頂きたい。

 

確実でさえなければ手はいくつか有ります。」

 

カムイが扉を開けると、そこへ待っていたとばかり、大群が押し寄せる。

 

カムイは何体か見過ごしてから思い切り扉を閉めた。

 

「さて、6体ですか……。

 

こうやって倒せる数に分断して殲滅するというものです。

 

誰かが扉を押さえてないといけないので、この役目は僕がやらせて頂きます。」

 

リーフバットが部屋の中を飛び回り、血の匂いを嗅ぎ付けてナンへと集まる。

 

「なるほどね!」

 

ナンが机を蹴りあげて、リーフバットの1体を落とす。

 

それにすかさずパティが切りかかった。

 

バルトはカムイへと意識が向かないように自らの腕を空気に晒してクラウソラスで薄く切る。

 

流れる血の匂いを感じて、ナンとバルトへ別れたリーフバットを後ろからパティが殲滅した。

 

「カムイ、こういうのは説明してからやるもんだろ?」

 

バルトがそう言うと、カムイは口を緩める。

 

「いえ、実際に確実性に関しては、やってみた方が分かりやすいでしょう?」

 

ナンは息絶え絶えといった感じで膝を折る。

 

「おや、思ったよりも素早い身のこなしだと思ったのですが、割りと体力は無いのですね。」

 

カムイの軽口にナンは汗を拭う。

 

「私は怪我してるんだから少しくらい多目に見なさいよね……。」

 

バルトはナンへとアップルグミを投げる。

 

「食っておけ。

 

しかし、さっきはたまたま上手くいったが、あと何回これを繰り返しゃ良いんだ?」

 

率直な疑問を投げ掛けるとカムイは指折り数え始める。

 

「僕の見た限りでは約50体は居ると考えた方が良いでしょう。

 

つまり、あと44体は確実に居ます。」

 

カムイの言葉にバルトも乾いた笑いが漏れる。

 

「では、第2ラウンドと行きましょうか!」

 

カムイが同じような動作で扉を開くと、また大群が押し寄せる。

 

6体を視認するとカムイが扉を閉めようとしたが、閉まらない。

 

どうやら、リーフバットが挟まったようだ。

 

急いでバルトが駆け寄り、リーフバットを蹴り飛ばす。

 

緩んだ途端に扉が締まり、カムイとバルトがホッと一息付くが、中にはその間に入ってきたと思われるリーフバット合計10体。

 

「多いなーー!!」

 

バルトは血を振り撒き、リーフバットを引き付ける。

 

ナンも同じようにリーフバットを引き付けていたが、数に圧倒され、先回りされてしまった。

 

「大丈夫かーー!!」

 

バルトの心配をよそに、ナンは背中から飛来刃と呼ばれる武器を掴むと、それをぶん投げた。

 

「飛来刃・強襲!!」

 

ナンを囲っていたリーフバットが次々と落ちていく。

 

あの技、技術だけでやっている。

 

魔狩りの剣はその名前の通り、魔物を狩るのが生業のギルドだ。

 

体に技術が染み込む程に彼女は戦ってきたのだろう。

 

5体のリーフバットが落ちる。

 

バルトは残りの5体を引き付けていたのだが、それはパティが全て落とすことが出来た。

 

「ナン、お前、凄い強いんだな。」

 

バルトの率直な感想にナンは呆れたように腕を組む。

 

「あなたは弱いのね。」

 

「うぐっ……。」

 

そう言われると返す言葉もない。

 

次の戦いに備えて、バルトはパティとナンを見る。

 

二人とも大丈夫そうに見える。

 

カムイに目配せした。

 

開く扉と、それに、タイミングを見計らったかのように、リーフバットが扉いっぱいに雪崩れ込んできた。

 

「いやはや、これは流石に計算外です。

 

彼ら、学んでますね。」

 

カムイの苦笑にバルトは舌打ちする。

 

「呑気に言ってる場合か!

 

こうなったら、外に出て、閉じ込めるぞ!」

 

バルトがそう叫ぶと、カムイにパティとナンが続くように外に出る。

 

バルトも外へ逃れると、外には自分達を囲むようにリーフバットが20体は見えた。

 

バルトの背中に嫌な汗が流れる。

 

ナンもこれには余裕が無いのか、動揺が顔に出ていた。

 

パティはキョロキョロと、見回して、それから、バルトを見上げる。

 

いや、バルトの持っている武醒魔導器(ボーディブラスティア)を見ていた。

 

「使えってことか?」

 

パティはコクンと頷く。

 

確かに、使わなければここを乗り切るのは難しいだろう。

 

「チッーーうろ覚えだけど、しゃーねえか!」

 

バルトは詠唱を始める。

 

「ちょっと、バルト兄さん!?」

 

驚いたように振り返るカムイ。

 

「聖なる活力、集えーーファーストエイド!」

 

ナンを包み込む光。

 

ナンの傷が癒えていく。

 

「傷は俺が治してやる!

 

滅茶苦茶に暴れろ!」

 

ナンはバルトが叫ぶ前に動いていた。

 

「飛来刃・円輪ーー!」

 

真っ直ぐと飛んでいった飛来刃がリーフバットを2体落とした。

 

パティもそれを合図に動き始めており、既にナンと同じように2体仕留めていた。

 

カムイはバルトへとリーフバットが近付かないように、リーフバットへと執拗な嫌がらせを行う。

 

バルトは、バックパックから網を取り出すと、それをリーフバットへ向けて投げる。

 

網が絡まって身動きの取れないリーフバットをパティが止めを刺す。

 

立ち込める血の匂い。

 

けれど、それは人の血ばかりではない。

 

最後の1体のリーフバットへと飛来刃を構えてナンが飛びかかった。

 

「烈震斬ーー!!」

 

絶命を確認し、ナンは大きく息を吐き出した。

 

「どうしますか?

 

あなたのお仲間はどうやらこの辺りは全滅しているようです。

 

ボスと師匠とはぐれてしまったとの事ですが、行き先に心当たりは有りますか?」

 

カムイが訪ねるとナンは首を横に振った。

 

「無いわ。

 

けど、魔物を追って行った筈だから、この近くに居ると思う。」

 

ナンはそう言うと、スタスタと歩き始める。

 

「じゃあね。」

 

そう言って片手を挙げるナンへバルトが駆け寄った。

 

「これ、持っていけ。」

 

ベルトポーチからアップルグミとライフボトルを半分分けてやる。

 

「私がこんなに使うほどへまをすると思ってるの?」

 

バルトは横に首を振る。

 

「いや、けど、何も言わずに行くってことは、見なかったことにするんだろ?

 

なら、口止め料ってやつさ。」

 

ナンは息を吐き出すと、それを受け取った。

 

「じゃあ、今度こそじゃあね。」

 

ナンがカルボクラムの奥へと姿を消す。

 

バルトはそれを黙って見送った。

 

「さて、ヘリオードへと向かいましょう。

 

彼女は我々の助けがなくても良さそうですしね。」

 

「ああ。」

 

カムイに答え、パティと共にカルボクラムを後にする。

 

ヘリオードはカルボクラムから南西に有る。

 

バルトはその道中、カムイへと視線を向けた。

 

どうやら、カムイも何も聞かないらしい。

 

俺たちはその足でヘリオードへと向かった。




『バルト・イーヴィル』
【種族】始祖の隷長
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
クラウソラス
コンパクトソード+1
フィートシンボル
武醒魔導器
【技】
蒼破刃
ファーストエイド

『カムイ・シルト』
【種族】人間
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
オウカ+1
ブーツ
【技】
挑発
察知

『パティ』
【種族】人間
【所属】ダーリン
【装備品】
クルビス
【技】
不明

『ナン』
【種族】人間
【所属】魔狩りの剣
【装備品】
飛来刃
レジストリング
【技】
飛来刃・強襲
飛来刃・円輪
烈震斬



『レシピ』
サンドイッチ
サラダ


『共有戦利品』
トルビー水×2
亀の甲羅×2
海苔×1
グミの元×1
サーモン×1
オレンジグミ×1

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