テイルズ オブ ヴェスペリア ~始祖の隷長の傭兵~   作:バルト・イーヴィル

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カタハに詰め寄られ、袴ごとロープを切るバルト。

まさに鬼畜の所業!!

「わざとじゃねーよ、やめろ人聞きの悪い」

フレンに変装し、カタハに無実を主張し同行を促すカムイ。

これぞ鬼畜の所業!!

「騙される方が悪いんです」

青い炎の灯った蝋燭の刺青の人物にマンタイクまでの護衛を依頼され、バルト、カムイ、ビッグボス、カタハに加え、パルチが同行する運びとなり、いよいよ武醒魔導器《ボーディブラスティア》の謎に探りを入れる事になった。

しかし、暗闇の灯籠《カオスキャンドル》のしていることは武醒魔導器《ボーディブラスティア》の密売。

故に通れる所は公のルートではなく、ゾフェル氷刃海かクオイの森の二択。

どちらにもギガントモンスターが居り、気乗りしないバルトだった。

しかし、いざとなったときパルチの発案でエッグベアーを利用しようという安易な策で、クオイの森に行くことに決まった。





第14話【クオイの森の殺戮虫・前編】

第1章『非正規ルート』

 

デイドン砦には騎士が居なかったが、エルリックが同行していて、それを報告していない筈がない。

 

つまり、何らかの改善はされていると見て良いだろう。

 

そうなったときのルートとして俺達が出せるのはゾフェル氷刃海だった。

 

しかし、それにパルチとカタハが首を振る。

 

「あの寒さはこんな貧弱な装備じゃ凍え死ぬわよ。

 

それに、魔物が強いんだから、護衛しながら戦うなんてまっぴら御免よ。

 

だから、クオイの森に行きましょ。」

 

パルチが立案すると、カタハが首を振る。

 

「あの呪いの森を進むと言うので御座るか!?」

 

呪いの森と聞いてカムイもピンと来たようで、カムイは思案顔で頷く。

 

「あそこはカロル君いわく、キマイラバタフライなるギガントモンスターが居た筈では?」

 

その言葉にバルトは息を飲む。

 

ブルータルの時でさえ皆が一丸となってようやく倒せたのだ。

 

情報の無いキマイラバタフライと戦うなんて馬鹿馬鹿しい。

 

「ギガントモンスターと戦うなんて俺は真っ平ごめんだぜ?」

 

バルトの言葉にパルチは指を立てて舌を鳴らす。

 

「チッチッチッ、甘いぜ坊や。」

 

確かに坊やと言われて遜色ないが、見た目だけならパルチよりかはバルトの方が年上に見える。

 

「エッグベアって知ってる?」

 

エッグベアと言えば、パナシーアボトルの材料となる爪を所持しているのは有名だ。

 

「ああ、そいつがどうかしたか?」

 

エッグベアと言えばパナシーアボトルを作るのに見会わないくらい強かった気がするが……。

 

「そのエッグベアはニアの実で釣れるのよ。

 

それで、キマイラバタフライにそのやってきたエッグベアを対峙させて、その隙にってのはどう?」

 

言われて考えるが、エッグベアがギガントモンスターに勝てるわけがない。

 

エッグベアとて、敵前逃亡待ったなしだろう。

 

「エッグベアだって馬鹿じゃねえだろ?」

 

そのバルトの言葉にパルチはため息を吐き出す。

 

「なら、ゾフェル氷刃海とデイドン砦とクオイの森に代わるルートでも有るの?」

 

そう言われるとバルトも黙るしかない。

 

「それに、ゾフェル氷刃海だって、フェンリルっていうギガントモンスターが出るんだからね!?」

 

そう言われるとまだ対抗手段の出せるクオイの森で決まりそうな雰囲気となる。

 

カタハは目をつむり、ニバンボシを抜いた。

 

「いざとなれば、そのキマイラバタフライとやらを倒してしまえば良いのでござろう?」

 

スッと見開かれる殺意の籠ったカタハの目。

 

バルトはブルータルの時の悲惨な映像が脳裏にフラッシュバックする。

 

「では、クオイの森を進もう。」

 

と、クライアントがそうと決めてしまえばバルト達は従うしかない。

 

バルトは不安を胸にクオイへと向かう事となった。

 

クオイの森に入るや否や、バルト達の前に倒れた魔導機械が有った。

 

クオイの森にこんな物が有るなど聞いたことはないが、これをカタハが興味深そうに見ていた。

 

「こんなところになぜ?」

 

カムイはそんな事よりも、近付いてくる気配に警戒していた。

 

パルチも目を細めてストライクイーグルを構えていた。

 

アックスビークが来ていた。

 

だが、こちらに近付くよりも早くパルチが矢を放つ。

 

それは放物線を描き、アックスビークの首を貫いた。

 

呻き声を1つあげて倒れるアックスビーク。

 

「この程度の魔物なら、余裕余裕。」

 

パルチの手際にバルトとカムイは息を飲む。

 

「けど、私のメインがストライクイーグルだけに、矢が尽きたらバトルナイフだけになっちゃうから、なるべく私抜きで戦うのが好ましいかな?」

 

と、催促するようにバルトとカムイを見る。

 

バルトとカムイは互いの顔を見て頷く。

 

「まあ、そうなるわな。」

 

「ですね。」

 

戦いの後には毎度の様に軽食を食べる。

 

理由は体力の回復と、極度の緊張感から来る疲労の回復などと様々だが、大概の理由としては料理には様々な力があるからだ。

 

実際、サンドイッチでもおにぎりでも食べておけば次の戦いで有利となる事がある。

 

だが、このクオイの森では道が獣道であり、そこには獣が居る事が大前提だ。

 

故に何度も戦闘をする事となり、仲間達は疲弊を重ねる。

 

返り血と泥だらけの手で食事に有りつくのだが、その時だけは事が違った。

 

「なんですかこれは?」

 

犬用の器に盛り付けられた雑多な食材達。

 

カムイの引くつく眉が不快に歪む。

 

「これは人の食い物じゃねえな」

 

料理は交代で作っていた。

 

バルト、カムイ、カタハと来て、次はパルチだったはずだ。

 

彼女は口笛を吹いて誤魔化そうとしている。

 

「おい」

 

両手を鳴らすとパルチも冷や汗を垂らして愛想笑いを浮かべる。

 

「ワンちゃんが私の料理を興味深げに見てたから〜」

 

「ビッグボスが?」

 

「ワン!」

 

鳴き声の後に一匹美味そうにいぬごはんを貪るマジモンの犬。

 

「……次は無いですよ?」

 

満足そうなビッグボスに呆気に取られたのか、カムイは肩を透かしていぬごはんをつまむ。

 

「うわぁ……」

 

嫌だと顔に書かれているカムイも中々に珍しい。

 

バルトは人ではない。

 

だが、だからといって犬のご飯を食べた事があるわけではない。

 

一口食べた後に、人との味覚のズレを感じて、味わうものではないと直感で理解し、味を感じる前にかきこみ全て飲み込んだ。

 

本当に微々たる回復をした気がする。

 

不快感には抗えなかったらしく、ビッグボス以外の人間はカムイ同様に嫌そうに食べきった。

 

クオイの森を進んで1つ分かったことがある。

 

どうやら、この森はどこかで道が塞がれたようである。

 

そもそもこの森が通れるという事を知っているのはそんなに多くない。

 

塞がれてしばらく経過している様子であり、一見すると一体どこから塞がれているのか分からない。

 

すると、ビッグボスが地面を嗅ぎ始め、ひと鳴きした。

 

茂みに鼻先を近づけ、前足でここだと言わんばかりに彫り始めた。

 

「どれどれ?」

 

すると、確かに人為的に塞いだと思われる折れた枝が混ざっていた。

 

「お手柄だぞビッグボス!」

 

頭をワシャワシャと撫でてやる。

 

「グルルルル」

 

なぜか低く威嚇するかのように唸られている。

 

そこで返り血と泥だらけの手だということを思い出した。

 

「あ、わり」

 

手を退けて茂みに突っ込むと、そこには隠された道があった。

 

「誰がこんな事を?」

 

なんにせよ、これで進む事が出来る。

 

そう思っていると、今度は自然に生えてきたと思われる茂みがあった。

 

これは術技でも使えなければ通れないだろう。

 

「バルト兄さんの出番ですね」

 

「……冗談だろ?」

 

だが、術技を大勢の目の前で使う訳にもいかない。

 

ましてや、『暗闇の灯籠《カオスキャンドル》』の目の前では。

 

故に、取れる選択はあまりにも少なく、クラウソラスで地道に刈り取るのも難しい程に幹が太い。

 

「ソーサラーリングさえありゃな」

 

そうバルトが溢した時だった。

 

障害物の先に何か大きな姿が過ぎった。

 

あれは一体?

 

それが何かを理解するよりも本能的に姿勢を低くして姿を隠す。

 

それはバルトだけでなく、護衛で同行していたカムイ、カタハ、パルチまでもがである。

 

しかし、ここには戦闘の素人が混ざっていた。

 

その野生とも言える空気感を知らぬ者が居る。

 

護衛対象である青い炎の灯った蝋燭の刺青を持つ者だ。

 

冷や汗が溢れる。

 

気が付かないでくれと切に願う。

 

同時に空気を読めとも護衛対象に思った。

 

アレは生きた殺意。

 

歩く恐怖。

 

その凄みは、強さの差。

 

奴とは敵対してはいけない。

 

誰よりも先にビッグボスとカムイが咳払いした。

 

もういいぞ……ということだろう。

 

「はぁ……はぁ……」

 

どっぷりと汗を流し、茂みの向こうを見やる。

 

「さっきのが?」

 

「ええ、恐らくは……この森のギガントモンスター」

 

「キマイラバタフライでござるな」

 

 




『バルト・イーヴィル』
【種族】始祖の隷長
【所属】紅の絆傭兵団
【通り名】《頼りの絆:ラストリゾート》
【装備品】
クラウソラス
コンパクトソード+1
ソードピストル・試作黒匣
フィートシンボル
武醒魔導器
【通常技】
飛行
エアル吸引
分身
【術技】
蒼破刃
ファーストエイド
ファイアボール
リカバー
シャープネス


『カムイ・シルト』
【種族】人間
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
オウカ+1
ナイトソード
ブーツ
【通常技】
挑発
察知
変装
【術技】
ローバーアイテム

『カタハルト・シホルディア』
【種族】クリティア族
【所属】暁の雲
【装備品】
ニバンボシ
【技】
不明

『ビッグボス』
【種族】プチウルフ
【所属】バルト
【装備品】
魚人の得物
マント
【通常技】
追跡
マーキング
【術技】
不明

『パルチ・レジス』
【種族】人間
【所属】なし
【装備品】
ストライクイーグル
バトルナイフ
【通常技】

人質
【術技】
不明

『レシピ』
サンドイッチ
おにぎり
サラダ
野菜炒め
海鮮丼
超絶・海鮮丼☆


『共有戦利品』
亀の甲羅×2
海苔×1
グミの元×1
サーモン×2
オレンジグミ×1
大きなハサミ×5
トルビフィッシュ×2
蟹の甲羅×3
口ばしラッパ×1
チキン×1

『貴重品』
ソードピストル・試作黒匣×2
武醒魔導器×1

ーーー『令和4年の5年後から、続きを届けに戻ってきました』ーーー

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