テイルズ オブ ヴェスペリア ~始祖の隷長の傭兵~   作:バルト・イーヴィル

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市民街にてリュネという身なりの良い女性の行いを偽善と称して力を示して見せたカムイ。

そのデモンストレーションに釣られてやってきたのは予定外の客人、カタハだった。

けれど、カタハを2人がかりであっさりと倒すと、それを見た本命がバルト達に依頼を持ちかける。

暗闇の灯籠と思われる、腕に青い炎の灯った蝋燭の刺青をした者がマンタイクまでの護衛をしないかとバルトとカムイに提案。

悪名の広がっていたバルトとカムイだからこそ近付いて来たのだろう。

この依頼の先に聖核を狙う組織の根源が有る筈だ。

そして、預かっているソードピストルをユーリという人物に渡すことも、同じ敵を求めている限りはいつか叶うだろう。


第13話【帝都ザーフィアス・下町】

第1章『晴れる疑い』

バルトから事情を聞いたカタハは信じるものかと言うので、いっそのこと全てを知る相手であり、カタハが疑うことの出来ない立場の人間に引き合わせる事にした。

 

城まで連れていくのも面倒だと思ったのか、カムイが路地から出ると、少ししてからフレンがこちらに歩いてきた。

 

「やあ、カムイからここに来るように言われたんだ。

 

君とカムイの無実の証明をしてほしいってね。

 

僕が認めるよ。

 

それでも不満かい?」

 

フレンに言われ、ポカンと口を開けるカタハ。

 

「彼らはエステリーゼ様、また、ヨーデル皇帝陛下、リタ、エルリック隊長、そして、この僕フレン・シーフォが無罪を認めるよ。

 

名だたるザーフィアスの要人の証言でもまだ不服かい?」

 

バルトが歩み寄り、フレンへと声をかける。

 

「おいこら、カムーー。」

 

「うん?

 

バルト、君は少しは落ち着いたらどうだい?」

 

絶対にカムイだ。

 

そう思ったバルトは脱力するのだが、カタハは逆に緊張で顔が強張っていた。

 

絶対にフレンだと思ったのだろう。

 

「まあ、と言うわけだ。

 

彼等が何かすることが有ればそれは、エステリーゼ様からのご依頼によるものということになる。

 

つまり、正義を豪語していた君よりもよっぽど正義だったんだよ彼らはね。」

 

冷や汗をじんわりと浮かべて苦悶の表情のカタハが気の毒になってきた。

 

そろそろやめてやれよと思うのだが、カムイは楽しくなってきたのか、口の端を吊り上げていた。

 

「さて、その正義の邪魔をした君には罰を与えなくてはならない。

 

けれど、カムイからのお願いでね?

 

彼等の旅に協力し、同行するというのなら見なかったことにしてあげてもいい。」

 

きっと、町のフレンの知り合いは脅迫するこの姿を見たら幻滅することだろう。

 

「も、もちろんでござる。」

 

汗が地面にじんわりと染み込んでいる。

 

カタハは生命与奪を目前にしている気分なのだろう。

 

実際は全然そんな事はないのだが……。

 

「では、彼等に誓うと良い。

 

君は彼等のなんだい?」

 

「私は彼等の協力者です!」

 

「聞こえないよ。」

 

「私は彼等の協力者です!」

 

「本当にやる気はあるのかい?」

 

「私は彼等の協力者です!」

 

「おい、可哀想だろ。

 

そろそろやめてやれよ。」

 

バルトがフレンの肩を叩くと、フレンが肩を竦めて呟く。

 

「これからが楽しいところでしたのに、バルト兄さんはいけずですねぇ?」

 

やっぱりカムイだった。

 

カタハの縄をほどいてやる前にカムイが路地を出ていき、元の姿になって戻ってきた。

 

「おや?

 

僕たちの邪魔をしたカタハさんではありませんか?」

 

カムイの言葉にバルトはいよいよクラウソラスを抜く。

 

「冗談ですよバルト兄さん。」

 

バルトはカタハの縄をほどく。

 

すると、汗で縄がなかなかほどけなくなっていた。

 

「カムイ……切るしかねえな。」

 

その言葉にカタハはバルトを見て懇願する。

 

「そ、某を切るのでござるか!?

 

某はもう協力者でござろう!?」

 

「勘違いすんな、縄を切るんだよ。」

 

バルトが縄にクラウソラスの刃を突き立てる。

 

カタハを切らないように慎重にだ。

 

カタハは涙目でバルトを見上げている。

 

「さすが、直ぐに切らずに焦らして弄ぶ人間のクズですね!」

 

「人聞きの悪いこと言うんじゃねえよ!」

 

慎重に切っていき、ようやく縄が切れた。

 

「はぁ、動けるか?」

 

バルトが訪ねると、カタハが立ち上がり、袴が落ちた。

 

「へぇ……。

 

さすが、ですね。

 

縄どころか袴の紐までもなんとなしに切っておく変態のクズですね!」

 

「だから、人聞きの悪いこと言うんじゃねえよ!

 

わざとじゃねえよ!」

 

本当にわざとじゃないので、カムイの言い分には反論せざるをえなかった。

 

「しかし、どうするのです?

 

カタハさんは代えの履き物は有るのですか?」

 

カタハは落ちた袴を見てボーゼンとしていた。

 

バルトがカムイを見る。

 

「お前なら持ってるだろ。」

 

「いえ、あれはボディペイントですよ。」

 

「……あー、カタハ。

 

……。

 

その袴を手で押さえて歩くしか無さそうだ。」

 

カタハを晒し者にして歩く事数分でカンディライトの家に到着する。

 

そこで、爺やと呼ばれていたお爺さんにカタハを任せ、バルト達は割り振られた部屋へとお邪魔する。

 

「いやはや、カタハさんに出会ったということで、あの金髪の女性も居るのかと思いましたが、流石に指名手配が解除された今、敵対する意味も無いということでしょうね。」

 

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第2章『異端者達の警護』

 

翌朝、帝都の下町へと訪れたバルト。

 

その後ろにはカムイとカタハ、ビッグボスが控えていた。

 

下町は一種のスラム街となっていた。

 

金と学の無い老若男女が最低限の人間らし生活をしている。

 

表向きは助け合っているように見えるが、それは一部だけだ。

 

カムイが路地の奥を指差すと、迷路のようになっており、そこの曲がり角には最低限の生活すらままならない子供達が居た。

 

結界魔導器(シルトブラスティア)の無き帝都の人間は、騎士に守られている反面、将来は騎士以外の選択をするのが難しい。

 

ダングレストであれば、自分の好みに合わせてギルドを選ぶ自由が有るのだが……。

 

噂ではフレンの影響か、出生を気にせずに騎士になれるようだが、この路地に居る子供にはそのような未来すらも危ぶまれる。

 

なにせ、その目に映る全てにへりくだり、正しさという学もなく、生きるために牙をむくのだから。

 

子供達がバルトに向かって歩いていく。

 

それを見て、カムイとバルトは互いに武器を手にした。

 

世の中は綺麗なようでいて、とても汚い。

 

良い面しか見ない人間は実に愚かだ。

 

綺麗な事が行われる半面、不正を行った不正の概念すら知らない純粋な子供達がこうして切り捨てられるのだから。

 

血を払い、件の護衛の相手を探す。

 

殺人は勿論罪とされるが、それは目撃者が居る場合だ。

 

それに、この場合は正当防衛となる。

 

カタハも目をつむっており、やるせないように下唇を噛んでいた。

 

「我々のこの行いは彼らへの救いとなるでしょう。

 

まともにすら生きられなかった苦しみから解放してさしあげたのです。」

 

すると、カムイの言葉の後に、カタハが続いた。

 

「無知故に悪を知らずして行った者は果たして地獄か、天の国かどちらにむかうのでござろうな?」

 

その問いかけのような言葉にバルトは長く息を吐いて答える。

 

「死後に、もしも世界が有るってんなら、生きてるやつらは死ぬのを嫌がったりしねえだろうよ。」

 

そんなことを話していると、シーブズマントを着用した男達が腕捲りをした。

 

青い火の灯った蝋燭。

 

「マンタイクへの警護だが、商品と我々の護衛ということとなる。」

 

その傍らには金髪の女性が居た。

 

というか、カプワ・ノールで襲ってきた賞金稼ぎがそこに居た。

 

カタハが咄嗟に反応する。

 

「パルチ、お主もこの仕事を請け負うのか?」

 

パルチと呼ばれて女性は頷く。

 

「まあね。

 

めぼしい賞金首もこんな場所には居ないだろうし、仕事を探してたんだよね。

 

まあ、そんなとき、ノコノコ路地に入っていくあんたたちを見て、美味しい話を聞いちゃったのよね。」

 

口に手を当てて嫌らしく笑う彼女にカタハは手を差し出す。

 

「この度もよろしく頼むぞパルチ・レジス。」

 

「ええ、よろしくね。

 

カタハ。

 

それに、バルトとカムイとワンちゃんもね。」

 

と、カタハの手を取り、ウインクするパルチ。

 

黒のローブを目深に被った者は5名居る。

 

そんな怪しい者達が下町の外へと向かっていると、やはり人目を集めるのか、また、バルトとカムイの格好も相まって良い意味での目立ち方ではなかった。

 

けれど、誰も声をかけ無かったのだが、一人の年老いた男がバルトを見て指を指した。

 

「なっ!?

 

なぜ、あんたがここに!?」

 

バルトは自分を指差すとその年配の男が頷く。

 

「すまんが、あんたが忘れていった剣はユーリに……。」

 

そこまで話して、バルトのクラウソラスを見て目を見開く。

 

「なんじゃ、お前さんもうユーリに会っておったんか。

 

お前さんが忘れていった剣を勝手に譲ってしまって悪かったわい。

 

しかし、お前さん若いまんまじゃのう?

 

かれこれ20年は経つというのに……。」

 

その爺さんはバルトを知っていると言うが、バルトは生まれて3年目である。

 

他人のそら似と割りきっても良かったが、気にならないでもない。

 

「どうされましたバルト兄さん。」

 

カムイの言葉にその爺さんはバルトの肩を叩く。

 

「ワシも年を取ったから分からんかもしれんが、ほれ、ハンクスじゃ。

 

わからんかのう?」

 

言われて顎に手を当てるが、ハンクスという雇用主は今まで居なかった。

 

「悪いな爺さん。」

 

そう言ってバルトは肩の手を剥がすと、手を振って別れるのだった。




『バルト・イーヴィル』
【種族】始祖の隷長
【所属】紅の絆傭兵団
【通り名】《頼りの絆:ラストリゾート》
【装備品】
クラウソラス
コンパクトソード+1
ソードピストル・試作黒匣
フィートシンボル
武醒魔導器
【通常技】
飛行
エアル吸引
分身
【術技】
蒼破刃
ファーストエイド
ファイアボール
リカバー
シャープネス


『カムイ・シルト』
【種族】人間
【所属】紅の絆傭兵団
【装備品】
オウカ+1
ナイトソード
ブーツ
【通常技】
挑発
察知
変装
【術技】
ローバーアイテム

『カタハルト・シホルディア』
【種族】クリティア族
【所属】暁の雲
【装備品】
ニバンボシ
【技】
不明

『ビッグボス』
【種族】プチウルフ
【所属】バルト
【装備品】
魚人の得物
マント
【通常技】
追跡
マーキング
【術技】
不明

『パルチ・レジス』
【種族】人間
【所属】なし
【装備品】
ストライクイーグル
バトルナイフ
【通常技】

人質
【術技】
不明

『レシピ』
サンドイッチ
おにぎり
サラダ
野菜炒め
海鮮丼
超絶・海鮮丼☆


『共有戦利品』
亀の甲羅×2
海苔×1
グミの元×1
サーモン×2
オレンジグミ×1
大きなハサミ×5
トルビフィッシュ×2
蟹の甲羅×3
口ばしラッパ×1
チキン×1

『貴重品』
ソードピストル・試作黒匣×2
武醒魔導器×1

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