チョウワン伝説   作:塔の跡
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今回はサリエル神属感応種、ニュクス・アルヴァを喰らいます。
あいつ銃しか効かないし回復させるし、苦手な部類です。

今回はちょっと日にちをとばしてます。


君に捧げるのは

 アギト生活10日目。鉄塔の森からおはよう。あれ以来本当にまいってます。だってゴッドイーターがこぞって俺を血眼になって捜してるんですよ?怖くないですか?そのせいでステルスを解除するのにいちいちびくびくしてます。正直、つらいです。
《はぁ~・・・まったく、俺は神仏の類いじゃないから御利益なんてないっての。ちょっと油断して、いるのバレたときは本当に焦ったわ・・・》
 全力で拝み倒しからの突撃なんて正気の沙汰じゃねーよ。なにあれマジで怖い。そのときは慌てて姿消したけど、そこにいるのはバレてるから攻撃は当然されますわよ。まあ、俺のオタクル細胞はとても優秀で、攻撃すり抜けたけどな!
《それもこれも全部サカキのおっちゃんが悪いんだ!あることないこと吹聴するんだもの!こっちゃあひっそりのんびりのほほんと暮らしたいだけなのに!》
 縁側で茶を飲む感覚ですごしたいのに、そんなことこの世界は許してはくれなかった。まあ、喰うか喰われるかというシビアな世界で、ひっそりのんびりのほほんとすごせる方が異常なんだけどさ。それにしたって酷すぎる。
《あんたら人間の敵だぞこっちは!人間は食物の範疇(はんちゅう)に入ってないが、腹へったら喰うかもしれんのだぞ!?わかってんのか!》
 なんて言ったところで、誰も聞いていない。聞いていたとしてもギャンギャン吠えているようにしか見えないしな・・・。
《ぬあー!余計なことしくさりおって!誰だよ『幸せ運んでくる』だの『希望与えてくれる』だのって考えに至ったのは!サカキか!?やっぱりサカキなのか!?》
 俺がもしヒト型のアラガミならば、頭を抱えて悶絶してるところだ。
〔クルルルル・・・〕
 んむ?サリエル?いや、サリエルより声が高い。それにどことなく高貴な感じがする。ということは・・・。
〔クルルルル・・・〕
 そこには、マリア像のような黄色いサリエルがいた。ニュクス・アルヴァ・・・銃による攻撃しか受け付けないだけならまだしも、HPが少ない他のアラガミを回復させたりする厄介な感応種だ。まあ、その回復弾はこっちが横取りすることも可能だがな。
《ほお~・・・実際に見ると確かに聖母に見えなくもないな》
 そんなことを考えていると、ニュクスがこちらを見てなぜか回復弾を射ってきた。
《へ?》
 呆気にとられていると、回復弾が俺に命中した。別に瀕死(ひんし)でもなんでもなかったのだが、どうしてだろう?なんか怒っているようにも見える。
『急に出てこないで!間違って射っちゃったじゃない!』
とでも言いたげだ。いやいや、勝手に勘違いしといてそりゃないぜ。
「アギト!?」
《ぬおわっ!?》
 いきなり名前を呼ばれてビックリした。慌ててモノアイを後頭部に移動させると、そこにはシグレ君の姿が。
《一番面倒なのに見つかった!》
 シグレ君は珍しく焦っている。普段ならニュクスほったらかしで目をキラキラさせているところだ。銃でニュクスを射ちながら俺に向かって叫んできた。
「早くここから逃げろ!」
《はあ?それってどういう・・・》
 直後、乱入してきたやつがいた。エテ公である。しかもたくさん。
「ちっ!もう来たのか!」
 怒りがありありと顔に出ている。そういえば、なぜシグレ君は一人でニュクスだのあの大量のエテ公だのを相手にしているのだろうか。
「みんなはリンクエイドしたけど、とても戦える状態じゃねえ・・・このままじゃ、お前まで巻きこんじまう・・・早く逃げろ」
 この子は・・・いや、この男は何を考えているんだ。俺は君たちの敵だ。なのに逃げろと言う。俺をあの大量のエテ公から庇おうとしている。
《・・・・・・引き下がれないぜ、同じ男・・・いや、(おとこ)として!》
 自分で言うなって話だが、そんなことはどうでもいいだろ。
〔クルルルル・・・〕
 ニュクスはエテ公軍団の方に向かっている。多勢に無勢。2対多数。俺がもし人間の思考を持っただけのチョウワンだったら、仲良くこの世にさようならしていただろう。だが、俺は!
《アギトだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!》
 咆哮と共に、ミサイルとホーミングレーザー、ホーミングビームが発射される。
[ビーッ!ズビャーッ!ドドドドドドドドドドド!]
 もうもうと砂埃が立ち込める。それが晴れたときにはもうそこには自然が広がっていた。そして、ニュクスのコアが転がっている。
 俺は無言でニュクスのコアを喰らった。
[バキッ・・・ゴリゴリゴリ・・・]
 口の中に甘いハチミツの味が広がっていく。感応種だろうが、サリエル種はハチミツの味がするようだ。変態オッサンは知らんが。
 シグレ君改めシグレのもとに向かってみると、安心したのかそれとも俺のフルバーストで腰が抜けたのか、へなへなと座り込んでいた。
《うっわ、よく見りゃボロボロじゃんよ》
「助かったぁ~・・・ありがとな、アギト」
 さっきまでの威勢はどこへやら。情けない声を出しながらへらっと笑った。実に清々しくどこか爽やかな笑顔だ。
《いいってことよ。気にすんな》
 まだ俺にも人間としての心が残っていたと知れたのだから、感謝しなくてはならないのはむしろこっちの方だ。
「お前、いいやつだな。アラガミとは思えないよ」
 まあ、元人間ですしね。
「みんなは無事かな・・・」
《せめてそのボロボロの格好なんとかしてからにしろよ》
 そう言いながら、頭を刷り寄せた。なんとなく、そうしてやりたかったから。すると・・・。
[パァァァァ・・・]
 淡い黄緑の光が、俺とシグレを包む。嫌な感じはまったくしない。むしろ癒される。
 光が収まったとき、目の前にはぽかーんと間抜け面をしたシグレがいた。
「怪我が・・・治ってる・・・」
《え?あ・・・ほんとだ》
 服こそボロボロのままだし、泥だらけだが、傷ひとつ見当たらない。血の臭いも全然しなかった。
(まさか・・・ニュクスの回復行動・・・?)
 1日経たないと取り込めないはずじゃなかったのか?
(オタクル細胞・・・恐るべし)
「ほんとスゲーなお前!」
 まあ、シグレが喜んでるからいいや。
《早く仲間んとこ行けよ》
「マジでありがとな、相棒!じゃあ、またな!」
 そう言いながら走っていく背中を見送る。
《勝手に相棒にしないでくれよ。てか『またな』って・・・いつ会えるかわからんのに言うかね》
 まあ、お前に幸運が訪れることくらいは祈っておいてやるよ。正真正銘の『神様』にな。



今回はあれもこれもと詰めしっこんで長くなりました。
でも書いてて楽しかったです。