やっぱりアニメの最終回というのはちょっぴり寂しい気持ちになりますね。
それではどうぞ。
亜人である自分たちは普通の人とは異なる身体的特徴や能力がある。
そのことで発生する悩みや問題をお互い話し合って解決策を練っていこう。
「___要約するとこういうことか?」
「うん。たぶんそう!」
「俺の努力を返してくれ…」
たぶんって何?
言い出したの君だよね?
小鳥遊の要領を得ない説明を上手くまとめた俺がバカみたいじゃねえか。
歯切れの悪い返事を朗らかに浮かべる小鳥遊を余所に、町は小鳥遊の提案に感嘆したように頷いていた。
首がないから雰囲気だけどね。
「うん、私それ凄くいいと思う」
「でしょでしょ!これを機にあることないこと全部ぶちまけちゃおうよ!」
「いや、ないことぶちまけたらダメだろ」
それただの茶番だから。
「じゃあ、言い出しっぺの私からね。何を隠そう私の悩みは___太陽がホント無理!!」
「「それはどうしようもないだろ(ね)」」
「言い切った!!?」
「ちなみに俺も太陽は嫌いだ。太陽が好き=リア充みたいで」
「それはちょっと共感できないけど…ヒッキー君も太陽苦手なんだ。全然意外じゃないから逆にびっくり!!」
「…えーと…日影って涼しいよね」
いや、無理にフォローしなくていいから。
一時期、存在が影過ぎて幻の六人目目指したらそのまま幻で終わったの思い出すから辞めてね。
その時の決め台詞がコレだ。
『俺は_(謎の溜め)_影だ』
…消え去りたい…。
文字通り影の差した心を、妥協という名のオブラートで優しく包み込んで俺は軽口を叩く。
「太陽好きなのは植物と日焼けサロンの常連客くらいだろ?つまり、望んで日向ぼっこするのはリア充と年寄りだけで充分だ」
「それ、日焼けしてる人と年配の人に怒られないかな…?」
「大丈夫だ。日焼けサロンに通ってる年寄りなんていないから。それに、どうせ人間はみんな最期に火焼けサロンに行くはめになるんだからな」
「それ火葬だよね?どんな前衛的な日焼けサロン?どことなく比企谷くんから犯罪の匂いがするんだけど…」
「人を犯罪者予備軍みたいに言うな。まあ、俺なら某探偵にもバレないトリックを披露できるだろうがな」
「どんなトリック?」
「行方を晦ます」
「影の薄さ任せなんだね…」
世間一般の欠点がその個人にとっては大きな武器になる。
それが俺にも当てはまらない気がしないでもない。
「つまり__西の高校生探偵を全否定してる男子生徒ヒッキー君!だね!」
小鳥遊の謎発言。
いやマジで謎過ぎる。
ぼっちの俺が言えることじゃないがこいつに友達がいるのか心配になる。
俺はこいつの母ちゃんか?
「妙な肩書きをつけるな。それと服部平〇は元から肌黒い設定だからね?」
「せやかて工藤」
「誰が工藤だ」
「この事件…何か裏があるで…!」
「迷宮入りしてしまえそんな事件」
「まあ、日傘させば解決するんだけどね」
「マジで俺らの時間を返してくれ頼むから…!…町は何か困ってることはあるか?」
このままだとヴァンパイアの話だけで終わりかねないので町に話を振る。
「うーん…私は見ての通り頭と体が離れてるから、その…知らない人から見られるのがちょっと嫌かなって…」
「無遠慮な視線が我慢ならないってことか?」
「どうしても人と違うと目立っちゃうから仕方がないとは思ってるんだけどね」
「マッチー可哀そう…。ねえヒッキー君」
「何でを俺をそんな先駆者を観るような眼差しで見る?」
「ヒッキー君、経験者っぽいから」
微妙に当たってるから質が悪い。
中二病に対する風当たりは強いのだ。
元中二病はそう語る。
「それはそうと…これは相当厄介な悩みだぞ」
「だよね~。接着剤で頭と体をくっつけるわけにもいかないし…」
「…お前の発想力も大概厄介だよな…」
「バカと天才は首の皮一枚だからね」
「紙一重な?混ざってるから。…そもそも、頭を首の部分に乗せても大丈夫なのか?なんか火が出てるけど…」
ツッコむべきか分からなかったから敢えて言わなかったけど、町の首からは炎が出てる。緑がかった綺麗な炎だ。
青だったら確実に青〇祓魔師を連想してたな。
つーか、天井に火災報知器あるけど大丈夫なのか?
「うん、熱くないから触っても大丈夫だよ?ほら」
そんな俺の素朴な疑問を知ってか知らずか、町が近くに寄ってくる。
普段の俺ならこれだけでキョドること間違いなしだが、この時だけは未知に対する好奇心の方が上回っていた。
やべえ…めっちゃいい香りが…。
ダメだ、全然上回ってない。
煩悩のメーターが振り切れてる
健全な男子高校生なんです許してくださいすみません。
極力、町の方を見ないようにして炎に触れる。
俺って器用。
「…おお、マジで熱くない…」
「………」
なんか小鳥遊が無言の圧を掛けてきているようだが無視だ。
「変な感覚だな…水の中じゃないのに何かの流れを感じるような…」
「……………」
なんか小鳥遊が呪術的な圧を掛けてきているようだが無視だ。
「うーん…」
「…………………………(#^ω^)」
なんか小鳥遊が怖いからそろそろ離れよう。
手を引いて膝の上に置くと手に冷や汗かいてて焦った。
ジワリと湿った手のひらをさり気なくズボンに拭いながら話を再開する。
「…取り敢えずこの火みたいなので火傷とかの心配がないのは分かったが、町はどうもないのか?首に触れられてるような感覚があるとか、息がし辛いとか」
元の席に腰を下ろした町は少し疲れたような声音で話始める。
「うん。ちょっとだけ神経が圧迫されるみたいな感覚があるんだよね。でも、そこまで苦しくなるわけじゃないし全然大丈夫だよ」
「マジか…すまん。無遠慮に触ってしまって…」
「そうだよ。ヒッキー君最低」
「ちょっ、ひかり」
「本当に申し訳ない」
「いいだろう、許す」
「お前何様だよ…」
ノリが完全に男子だよ。
…友達いないから同世代のノリなんぞ知らんけど。
「でもマッチ―、ご飯食べるときはなんか着けてるよね?こういう、赤ちゃんを抱っこする時に使うみたいなの」
「ベビーリュックのことか?あんなのに頭入れてたら飯なんて食えないだろ?」
「私が使ってるのは一応、自助具に含まれるのかな。リュックやヘルメット、サポーターの要素を組み合わせて作られてるものなの。二人目のデュラハンの人が製作したものを医療用に改良したものだって病院の先生は言ってたよ」
「へー、じゃあそれって結構レアなものなの?」
「うん、たぶんそうだと思う。私たちじゃないと使えないだろうし」
「それ全部実費なのか?」
「ううん。保険で国から支給されてるよ。メンテナンスも病院の先生が定期的にやってくれるし、それで新しい自助具もできたって職員さんも嬉しそうにしてた」
「亜人保険様様だな」
車いすでも地下鉄が使えるよう駅にエレベーターが設置されたのも然り、目の見えない人
でも横断歩道を渡れるよう音響式信号機が採用されたのも然り、世の中は障害から生み出されたもので溢れているというのは,中々実感しにくいことだがこういう話を聞いていると少しだけ分かったような気になる。
因みに信号機で鳴ってるあの音。
東西方向が『カッコー・カッコー』で、南北方向が『ピュウ・ピュウ』らしい。
聞いて無ければ知ることのない話だった。
「小鳥遊は国から何か支給されてるものとかあるのか?」
「私?私は__」
そこで、言葉を詰まらせる小鳥遊。
「まあ、私のことはいいからヒッキー君はどうなの?」
強引に俺が回答者になるよう誘導したことを少し疑問に思ったが藪を突いて蛇を出す必要も無いのでスルーした。
「俺は特に何も…、保険も普通のものだけだし」
「そういえば比企谷くんって何の亜人なの?聞きそびれちゃってたから」
町がごもっともな疑問を口にする。
それを聞いた小鳥遊がナイスタイミングと言わんばかりに、誇らしげに答える。
「何とここにいるヒッキー君は___チキンク〇スプの亜人なのです!」
誰がハンバーガーの亜人だ。
単価百円の亜人なんて嫌すぎる。
間髪入れずに俺は小鳥遊の暴走を止める。
「ウィル・オー・ザ・ウィスプだよ」
「そうそう、パンプキンスープだよ!」
「お前耳腐ってんの?それとも腐ってんのは性根のほうか?」
「ウィル・オー・ザ・ウィスプってちょっと噛みそうじゃん?それならウィル・オー・ザ・ウィスプよりもパンプキンスープの方が言いやすいかなって思って。ああ、でもウィル・オー・ザ・ウィスプって名前がダメなわけじゃないから。ウィル・オー・ザ・ウィスプはウィル・オー・ザ・ウィスプなりのウィル・オー・ザ・ウィスプがあるわけで__」
「うるせえよ。何回ウィル・オー・ザ・ウィスプ言うんだ」
つーか、全然噛んでないじゃん。
アナウンサー顔負けの早口だぞ。
どうすんだよ、黙ってないと可愛くないのに。
宝の持ち腐れどころか宝を腐海に放り投げてるよ。
ワン〇ースも真っ青だよ。
「じゃあ間を取って『カボチャの妖精さん』にしようよ比企谷くん」
「どこら辺が間とってんだ?始点と終点絶対間違ってるだろそれ」
とんでもないところからとんでもないキラーパス飛んできた。
高1の男子高校生が自らを『カボチャの妖精さん』と名乗る。
うん、首吊り一直線です。
文字通りのキラーパスに俺のMP(精神的な体力値)はほぼゼロに近い。
「他の言い方だとジャック・オー・ランタンとかだな」
「おお、そっちの方がカッコいいじゃん!ねえ、マッチ―?」
「うん、私もいいと思う」
「…じゃあ、ジャック・オー・ランタンで話進めるぞ。つっても俺別に困ってることとかないしな…」
「友達いないじゃん」
「ちょっと変わってるよね」
キラーパスなんて生温かった。
ただのビーンボールだった。
おとさーーん!!
「前言撤回だ。どうやったらお前たちに復讐できるか方法が思いつかなくて困ってる」
「ヒッキー君じゃ無理だよ」
「比企谷くん優しいからね。なんだかんだ言っても最後は言うこと聞いてくれそうな気がするし」
「まあ、パシられるのは得意だからな」
「そういう意味じゃないんだけどなあ…」
自信満々に俺の特技を話したら変な空気になった。
これはアレだな。
ATフィールドというやつだ。
アンチフィールド…またしても俺は世界に敵を生み出してしまったようだ。
俺の思考が明後日の方向に行きかけたのを小鳥遊が引き戻すように問いかけてくる。
「ホントに困ってること無いの?ハロウィンには仮装せずにはいられなくなるとか、カボチャの中身をくりぬいてカボチャのオバケを作らないと死んじゃうとか…」
「どんな呪いだそれ…まあ、困ってるってほどじゃないが不便だなって思うことはある」
俺は肘を曲げ胸の前に掲げた手のひらに意識を集中させる。
すると、青い火が灯った。
「それって__」
小鳥遊が手を伸ばし火に近づこうとしてくる。
「………」
俺は特に何も言わず成り行きを見守る。
「?熱くない?というか冷たい?」
「だろうな。じゃあ少し上げるぞ」
「え?あげるって、熱っ!!?」
小鳥遊が反射的に手を引っ込めたのを見て俺は直ぐに火を消した。
「まあ、こんな感じで火が出る」
「熱いよ!!!」
ポカリと肩を殴られるが力が弱すぎて全く痛くない。
寧ろ、殴った手の方がいたそうだった。
「火に触れたら熱いのは常識だぞ?」
「そうだけど!マッチ―の話の後だとヒッキー君もそうなのかなって思っちゃうじゃん!!」
「私もそう思った…」
「じゃあ、町も触ってみるか?」
「いや、私は遠慮します…」
「賢明な判断だな。…まあ、今のは熱いで済んだからいいが加減を誤るとガスバーナーくらいの火力が出るからな。地味に危ない」
「そうだよね。寝てるときは大丈夫なの?」
「ああ、それは大丈夫だ。これは意識がある時に集中してやらないと火が出ることはない。俺も寝たら焼死体になってるなんて御免だしな」
「じゃあ、それがヒッキー君の困ってることなの?」
「いや、違う。問題はその後だ」
「?どういうこと?」
「小鳥遊。お前最初この火を『冷たい』って言ったよな?」
「うん、冷たかったから」
「考えてみろ。火が冷たいなんてことあるか?」
「…ないけど、それが?だってマッチ―の炎だって熱くないし」
「でも、その炎は冷たくはないだろ?要するにこれは本来の火とは違うものなんだ」
「………ごめん、比企谷くん、間違ってたら言ってね。私、前に本で読んだんだけどジャック・オー・ランタンって確か…霊を引き寄せるって…」
「マ、マッチ―?何言ってるの?幽霊?そんなのいるわけ__」
何も言わない俺。
「………嘘だよね?ねえ?ヒッキー君!??」
「…今日はやけに多いな」
「多い…?…多いって何?ダメ!!やっぱり言わないで!!!あーあー何も聞こえませーん!!」
耳を両手で塞いでしゃがみ込む小鳥遊。
顔が引きつってる町。
俺は虚空を見つめてため息を吐くように呟いた。
「…ほら、そこにいるだろ?お前たちの___後ろに」
ガララララッ!
「「きゃあああああああああああああああああああああっっっ!!!!」」
木霊した悲鳴が照明を揺らした。
どうも、最近MHWにハマっている九条明日香です。
未だ下位クエストに苦戦中(笑)
さて、第十九話の亜人会議(中)、いかがでしょうか?
本来は上下構成でいこうと思ったのですが、三人があまりにも話しまくるため中をはさみました。
私はテーマパークで絶叫マシーンなどは大好きですが、お化け屋敷だけはどうしてもダメです。
八幡も言ってました。
『お化けなんて怖くないだろ。一番怖いのは人間だ…つまり人が脅かすタイプのお化け屋敷が一番怖い』
八幡の兄貴ィ…私一生ついていきます!!
因みにテーマパークみたいに人が多いところはお化け屋敷以上に苦手です(涙)
いつか亜人ちゃんたちが遊園地に行く話を書いてみたいですね!
今回も読んでくれてありがとう。
意見・感想・評価をお待ちしております。
それではまたの機会に
(そろそろ他の作品にも手を伸ばすかな…時間が欲しい…)