ぼっちは語れない   作:苺ノ恵

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ペプシのコーラが美味しい!!

一緒に食べてるハンバーガーも美味しい!!

やばい!!太る!!?

…それではどうぞ


第十話:誤解了解

 

 

 

「………」

 

 居心地の悪い沈黙がこの場を満たす。

 

 一つ、また一つ、視界の端に影が伸びては消えていく。

 

 コツコツとリズムを刻む足音はメトロノームのように無感情で。

 

 橙色に照らされたアスファルトは何事も無かったかのように平坦さを貫き。

 

 道に散らばった落下物は申し訳なさそうに肩身を狭くする。

 

 その姿は、まるで日常という風景に混じる異物を晒し者にして、無関係という安寧を得ている【人間】のようだった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「………チッ…」

 

 舌打ち

 

 俺はあまりこの行為が好きではない。

 

 なぜなら誰も得をしないからだ。

 

 苛立ちがもたらした身体の反射だとしても、その不快さは鋭い音に反してドロドロとした傷口を双方に生み出す。

 

 まさに悪手以外の何物でもない。

 

 精々、舌打ちを得するものにできるのはビートボクサーくらいのものだろう。

 

 舌のスタッカート…このように表現すれば要らぬ語弊も減るだろうか?

 

 要するにHI〇AKI〇さんは偉大だということだ。

 

 …にも関わらず、ビートボックスもできない俺は舌打ちという悪手を実行した。

 

 理由は分からない。

 

 ただ、自分が苛立っていることはよく分かった。

 

 それ故に、彼女に不快な思いをさせたことを何よりも後悔した。

 

 自分がされて不快な行為を相手が許容するなんてありえない。

 

 そういう類の感情は決して頭から離れることはない。

 

 それでも、受けた本人は笑顔でこう言うんだ。

 

 

『大丈夫。気にしてないよ』

 

 

 気にしてない…それは、その行為についてか?それともこちらの存在についてか?

 

 俺はそんな笑顔を直視することなんてできない。

 

 俺にはそんな恐ろしい表情を前に平静を保つことなんてできやしないのだから。

 

 俺は彼女に、握り絞めていた缶を渡すと、そのまま横を通り過ぎる。

 

 数歩だけ足を進め、立ち止まり膝を折る。

 

 そこからの行動は想像に任せる。

 

 ただ、それは親切心とか贖罪とかそんな大層な理由でやったわけではない。

 

 すべて自分の為だ。

 

 自分の為に俺はそうしたんだ。

 

 そう在ることを選んだんだ。

 

 だから俺は、後ろでこちらを見つめている彼女にこう願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____気にしないでくれ

 

 

 

 

 ただ、切にそう願った

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「__チ___ッチ__?マッチー聞いてる?」

 

「え?…あ、ごめんひかり、何だっけ?」

 

 昼休憩の時間。

 

 私とひかりは二人で昼食を摂り終わり、おしゃべりをしていました。

 

 でもいつの間にか、ボ~…としてしまったらしいです。

 

「マッチー大丈夫?寝不足?…熱とか?」

 

 ひかりはそう言うと、私の頭を持ち上げておでこをくっつけてきました。

 

 いくら女の子同士でもここまで近いと、ちょっと恥ずかしい…。

 

 私は手をバタつかせて元気なことをアピールする。

 

「大丈夫!大丈夫だから心配しないで」

 

「ホントに?何か落ち込んでる感じだったよ?こんな風にシュン…って感じ」

 

「え…えーと…………実はね……」

 

 ひかりは意外とこういうことに聡い。

 

 明るくて自由奔放なイメージだけどホントは周りのことをよく見てて、小さな変化にもすぐに気付いてしまう。

 

 …下着のサイズをこっそり変えたことについては気づかないで…というよりも触れないで欲しかったなあ…。

 

 それも教室のど真ん中で…。

 

 …………………。

 

 そ、その件は置いておいて、確かに私はちょっと悩んでることがあります。

 

 それは比企谷八幡くんのことについてです。

 

 あの日、比企谷くんは私の代わりに落ちた物を拾ってくれました。

 

 最初は危ない人なのかなと思ったけど、とっても親切な人でした。

 

 でも、あまりお話するのを好んでいないように思ったので私はなるべく口を閉じるようにしました。

 

 この時、右足につけられているギプスと猫背気味の背中を見て、比企谷くんを表彰式のときに見たことを思い出しました。

 

 同じ学校の同級生だと分かって私は安心しました。

 

 そうして、比企谷くんが拾い終えた袋を渡してくるとき__

 

 

「…うまくいくといいな」

 

 

 __急にそう言われて咄嗟に後ずさってしまいました。

 

 どうして私が両親の為にケーキを作ろうとしていることをこの人は知っているんだろう…。

 

 そもそも、どうして彼がこんなところにいるんだろう…。

 

 そう思ったら、何だかどうしようもなく怖くなりました…。

 

 私は頭を下げて(正確には腰を折って)その場を後にしました。

 

 家について、予定通りケーキを焼いて結婚記念日のサプライズは無事成功に終わりました。

 

 でも、私は何かが胸の奥に引っかかってるような感覚を覚えました。

 

 それが何なのか分からなくてついつい考えてしまうんです。

 

「…っていうことがあったんだけど…ひかりはどう思う?」

 

 私は悩みをひかりに打ち明けて返事を待ちました。

 

 すると、何故かひかりは顔を真っ赤にして唸り出しました。

 

 …何だろう。

 

 私は何かとんでもないことをしてしまったような気がします。

 

 ついに、ひかりは顔を覆い隠してしゃがみ込んでしまいました。

 

「ひ、ひかり?どうかしt__」

 

 私が心配してひかりの肩に手を置こうとした瞬間、ひかりは急に立ち上がって叫びました。

 

「あのゾンビッ!!!私だけじゃ飽き足らずマッチーまで!!!!?………私のを見て、私にあ、あんなの見せといてっっ………ぐぬぬぬぬぬぬぬ…!?」

 

 叫び終わったらまたしゃがみ込んで何かを言いながら唸ってます。

 

 私は思いました。

 

 すごく嫌な予感がする…。

 

 私は自分の直観に従い、チョコレートのお菓子を取り出して話題の転換を謀りました。

 

 …じゃなくて図りました!!

 

「そうだ!ひかり、お菓子食べない?これ先週言ってたのなんだけど__」

 

「__マッチ―__」

 私の計略は今まで聞いたことのないような恐ろしい声色で遮られました。

 

 熱くないのに汗が出てきます。

 

 これが冷や汗というものなのでしょうか…?

 

「なに…?」

 

 私は恐る恐る問いかけます。

 

「いくよ」

 

「…どこに?」

 

 ひかりはゆっくりと顔をあげます。

 

 そして、感情の消え去った能面のような顔で彼女は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾンビのとこ」

 

 

 

 

 

 …私は静かに、口に運びかけていたお菓子をそっと箱に戻した。

 

 昼休みのチャイムがなるのはまだ当分先のようだ…

 

 

 

 

 

 

 




どうも、体重計に乗るのがスカイダイビングよりも怖い九条明日香です。

一週間なんてあっという間ですね。

この話を先週の日曜日から編集していて気がついたら本日です。

この調子で週に一回は更新していけたらいいですね。
(GWに書き溜めてたストックが遂に切れてしまったなんて口が裂けても言えない…!!)

さて、第十話は場面が変わって学校です。

ホントは八幡が町さんの落とし物を拾った後、自分の買ったものを忘れて帰りそうになり町さんに呼び止められ、何故かベンチで話すことに!?_という展開を考えていたのですが口角がピクリとも上がらなかったのでこのような構成になりました。

この話を見るに、ひかりさんの中で八幡はもうストーカーのような扱いなのでしょうね。

私が創り出した流れですがせめて…「お願い八幡、死なないで!」っとエールを送ります。

次回【第十一話:八幡死す】  にご期待下さい。

今回も読んでくれてありがとう。

感想待ってます。

それではデュエルスタート!!__じゃなくて!

それではまたの機会に

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