ぼっちは語れない   作:苺ノ恵

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お昼は暑くて朝晩は寒い…

日本らしさが十二分に顕れてますね…(八分目くらいでいいんだけど…)

それではどうぞ


第九話:深淵より

 

 

 

 

 

 ___池袋について語ろうと思う。

 

 いや、これは決して俺の頭がトチ狂ったわけでも、あの某有名作のことを言おうとしているわけでもない。

 

 道路標識が引き抜かれたり、百合の双子がいたり、首なしライダーの脚は最高だとかそういう話がしたいわけでは断じてないのである。

 

 ただ、全く以って違うのかと問われれば、それもまた違うと言う他にないこともまた事実な訳だが…。

 

 どういうわけか俺がこの回りくどい言い回しを選んだことにも、何かしらの理由があるように思えてならない。

 

 ふと想う。

 

 物語の主人公、少し捩ると物語シリーズの主人公はどのように物語を語り始めていただろうか?

 

 空白を文字で埋める作業に喜びを感じるドMはほぼいないだろうが、文字で埋まった原稿用紙に絶望を覚える人間もまたいる筈はないだろう。

 

 これは恐らく、書き手が読み手に対して、何らかの共感を得る狙いで文を展開している。

 

 ここまでの流れで漸く気付いた。

 

 きっと、これではだめなのだ。

 

 始まりを考えて、終わりに繋げる。

 

 それは『物語』ではない。

 

 それでは、ただの『作文』だ。

 

 きっと物語というのは、始まりも終わりもないもの。

 

 時間に付属した空間を切り取るのではなく、ただ悠然とそこに在ったかのような。

 

 答えを探すのではなく、自然と生み出されていくような。

 

 まるで理解できなくとも、どこか心を揺らす…そんな意味の分からない酷くあやふやな力が創り出す、もっと別の何か。

 

 そう思えば、俺のこの痛々しい独白も少しはマシなもののように感じられてきた。

 

 そうだ、始まりにも終わりにも何かしらの意味はあって、でも必ずそうである必要は無いんだ。

 

 理屈も根拠も無い。

 

 酷く短絡的でガキみたいな感情任せの支離滅裂な自論。

 

 でも、俺にとってそれは、案外悪くないもののように感じられた。

 

 だからこそ、俺はこの話の冒頭の言葉をヤケクソ気味に胸を張って紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___池袋について語ろうと思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 Нет шеи

 

 لا الرقبة   

 

 Aucun cou

 

 Keinen Hals

 

 이 없다

 

 没有头

 

 There are no necks.

 

 

 

 同じ意味でも言語が違うだけで、人はこうも戸惑ってしまうものなんだなと素直に思う。

 

 もともと、この道は人通りの多い道だ。

 

 人がゴミみたいな…間違えた、こんな人混みの凄まじいところを俺は普段好んで歩かない。

 

 ただ、この時間帯なら帰宅ラッシュの時間も過ぎ去り、食材の調達もそこまで苦にはならないなと判断してこの道を選んだわけなのだが…。

 

「デュラハン…か…」

 

 俺はこの道を選んだことに対する後悔を唾棄するかのように、小さくこの言葉を吐き捨てた。

 

 道に散乱する落とし物を目の前の少女は一人で拾っていた。

 

__サラリーマンらしき男が少女のすぐ隣を素通りしていく

 

 落としたものを拾うのは当然だ。

 

__買い物を終えた帰りらしい親子が少女を見た途端、急に横の道に逸れていく

 

 落とした本人が拾っている…普通のことだ。

 

__部活帰りの中坊がこちらを戸惑いの目で見つめながらもすぐに目を逸らして去っていく

 

 別に手伝ってくれと言われているわけでもない。

 

 それぞれ予定があって急いでいただけなのかもしれない。

 

 単にこちらに気付いていなかっただけのことかもしれない。

 

 

 【首が無い】

 

 

 同じ人間でも構造が違うだけで、人はこうも戸惑ってしまうものなんだなと素直に思う。

 

「………あの…?」

 

 俺と同じくらいの身長の少女は、俺を見上げて問いかける。

 

 胸元の高さ、両腕で支えられた頭部は少し戸惑いを込めた瞳で、じっと俺を見つめている。

 

 無意識に強く握り絞めていた缶詰は、冷ややかなアルミの温度を以ってひたすらに何かを訴えかけているように感じた。

 

 俺は真っすぐに視線を逸らした。

 

 本来、顔のある場所を見つめるように。

 

 それに何かの意味を見出すかのように。

 

 俺は___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  _____彼女の瞳から逃げた

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 私の名前は町京子。

 

 御覧の通り私は亜人です。

 

 世界に3人しかいないとされる【デュラハン】の一人。

 

 大きな特徴としては、やっぱりこの首ですね。

 

 頭と胴体が離れてしまっているので初めて私を見た方は絶対にびっくりされますね。

 

 …その表情を見るのが案外好きだったりします!

 

 あっ…このことは内緒にしておいて下さいね?

 

 約束ですよ?

 

 現在私は買い物の帰り途中、買い物袋を誤って落としてしまい、その中身の回収をしてるところです。

 

 どうやら街路樹から伸びた枝に袋が引っ掛かってしまったようでして…いつも買い物はお母さんと一緒なので気付かなかったんですが、牛乳や缶詰って結構重たいんですね。

 

 私の場合、どうしても片手は頭を支えることに使わなければいけないので今回の持ち方は失敗です…。

 

 今度からは店員さんに頼んでリュックサックに詰めてもらおうと思います!

 

 実は明日、両親の結婚記念日で二人は今、富士山を観ながら温泉で羽をのばしている頃だと思います。

 

 二人とも私のことを凄く心配してくれて新婚旅行はおろか、今まで二人きりで遠出すらしたことがありませんでした。

 

 中学生の頃、その事実をおばあちゃんから聞いて、流石の私も中学生にもなってそのことについて何も思うことがない程、薄情なわけではありませんでした。

 

 ただ、なんとなく悔しいような…ズルいと思うような…そんな感覚を覚えました。

 

 だから私はその日をきっかけに、この時期が近づくと決まって父と喧嘩するようになりました。

 

 どんな内容なのかは皆様のご想像にお任せしますが、毎回父が泣き出して話は有耶無耶にされてきました。

 

 しかし、苦節3年、半ば高圧的に父を説得した今回、晴れて二人で旅行に行くことを確約させました。

 

 その日の夜は気持ちよく眠れました。

 

 二人が出かけた朝スマホをみたら父からのメールが迷惑メール並みに届いていたので着信拒否にしましたがそんなのはどうでもいいことですね。

 

 二人とも楽しめてるといいなぁ。

 

 そんなわけで、私は二人のためにサプライズでケーキを作りたいと思ってるんです。

 

 今まで、危ないからと渡しを調理場に近づけてくれなかった(邪魔な存在)がいない今しかチャンスがありませんから!!

 

 そう思って一人で買い物に来たのですが…人生思うようにはいきませんね…。

 

 こういった時の対応の仕方を私は知りません。

 

 今までこんなこと無かったので。

 

 …というよりも、こういう可能性のあることを私はさせてもらえなかったので。

 

 このことを、いつも文字通り親身になって私の面倒をみてくれる両親のおかげとみるか、過保護な両親のせいだとみるか…ちょっとだけ悩ましいところです…。

 

 そんなことを考えながらトッピングのチョコレートを拾っていると__

 

「…あのー…コレ、落としましたよ?」

 

 急に後ろから誰かに話しかけられました。

 

 割と本気でびっくりしました。

 

 何の気配も無かったので!

 

 私は驚いて頭を落としそうになりながらも、なんとか立ち上がり後ろを振り返ると、斜に構えて目を逸らした男の子が缶詰を持った手をこちらに突き出してました。

 

(…あれ?この人…どこかで見たような…?)

 

 私が彼を観察していると、彼は居心地が悪そうに視線を足元に落としながら私に缶詰を渡そうとする。

 

 私が受け取るのを彼が待ってくれていることに気づいたら、何だか急に恥ずかしくなってきました。

 

「あ…す、すみません。わざわざ拾って下さって」

 

 返事は、こんな感じでいいのかな?

 

 失礼だったかな?

 

 もしかして怒ってないよね?

 

 恐る恐る缶に手を伸ばすと___

 

 

「______か_?」

 

 何かを言われたように感じた。

 

 私は身を強張らせて缶を受け取る手に力を込めました。

 

 ですが彼は缶を離してくれません。

 

 意地悪されているのかな…と思ったけど、少し様子がおかしいです。

 

「………あの…?」

 

 私は恐る恐る彼の顔を窺うと、不思議な感覚を覚えました。

 

 彼はいつの間にか真っすぐにこちらを見つめていました。

 

 でも、私を見てはいませんでした。

 

 それは好奇の視線でも嫌悪の表情でも憐みの言葉でもない。

 

 まるで、何かを後悔しているような、深淵を覗き込んだような瞳でした。

 

 その時私は初めて、【息を吞む】という言葉の本当の意味を知ったように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、ガルパにはまってて☆4の亡者と化している九条明日香です。

最近どうにも疲労が抜けません…。

食欲があまりないからでしょうか?

今週の日曜日はお休みですと言われて喜んでいる私は異常なのでしょうか?ちょっと不安になってます…。

さて、第九話は八話に引き続き、町さん回です!

アニメでは高橋先生loveな町さんですが、この作品ではどうなることやら…
(現状、町さんの八幡に対する好感度は-【マイナス】寄りです。ひかりちゃんは…どうなんでしょうか?生憎と彼女のような特殊な経験が私には無いので何とも言えませんね(笑))

私はこの作品を書くとき、八幡が亜人ちゃん達との交流の中でどんなことを感じているのかに焦点をあてているのでラブコメ展開には成り辛いと思います。
(しょうもない文しか書けないので涙)

ハラハラドキドキというよりも、温かい笑みがこぼれるような…そんなお話になってほしいなと個人的に思ってます。

今回も読んでくれてありがとう。

感想待ってます。

それではまたの機会に



よし!ここで単発ガチャだ!!モカちゃん来て!!お願い!!

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