「美味っ!? なんであんだけの食材でここまで美味くなるんだ?」
掃除が終わり、囲炉裏の周りを囲んで夕飯の中、おれはあまりの美味さに声を大にして感嘆していた。
「うむっ、これは大和の国の中でも屈指の料理の腕を有している程だ」
「もっと誉めなさい。なにも出ませんがもっと私を称賛の言葉を浴びせなさい」
翠が夕飯を担当したのだが、まさかの女子力を見せつけてくる。
囲炉裏の火に炙られ、表面は顔をぼんやりと映すほど艶があり、香ばしい塩が焼けた匂いが食欲をそそる。表面のパリッとした食感とは相反するふんわりとした身が舌に絡み、口いっぱいに洗練された旨みが広がっていく。
これほど食事で至福を感じたことはない。
どうしてだ。どうしてただの小魚がこんな高級料亭のような出来になるんだ。
見た限りでそんな特別なことはしていなかったというのに……
「ほら、粟も沢山ありますからどんどん食べちゃってください。」
そう言って粟をよそう翠。
翠の料理スキルははっきといって異常だ。これからはこいうに料理させよう。おれを利用しようとしてるんだからそれを盾にすれば流石の翠も首を縦に振りざるを得ないだろう。
「そういえば今の今まで御主らの名を聞いていなかったな。教えてくれないか? 私は道義だ」
道義か。確かに一緒に掃除したりして結構時間が経ってるのに一度も自己紹介なんてしてなかった。
この飯が終わったら色々と聞きたいことがあるし親睦を深める意味でも教えた方がいいよな。
「それもそうだな。おれは熊口生斗、永遠の十八歳であり純粋無垢を貫いてる者だ」
「翠です。あとそこの人本当は結構なおじさんですよ道義さん」
ーーー
夕飯で汚した皿を洗い、随分と暗くなった部屋の中を照らす囲炉裏を三人で囲んで寛いでいたときのこと。
「ふぅ、漸く一息つけたような気がするな」
「そういえばそうだな。この国に来て散々な目にしかあってなかったし」
来て早々早恵ちゃんとのデスマッチに発展してたからな。気が休まるわけがない。
「なあ生斗、少し気になってたんだが御主は怪我人だったのか?」
「ん? ああ、諏訪子の言ってたこと気にしてたのか」
確かに道義の前でおれの身体のこと大丈夫か聞いていたな。
「熊口さんは三日前から今朝まで意識不明でこの世とあの世の境をさ迷ってました」
「それは誠か!? まさか先の戦で……それにしては元気に見えるが」
「はは、まずは森のことから話さないとな」
眠気はまだないし、暇潰し程度に話してやるか。
それに此方が情報を提供すれば、彼方の情報を引き出しやすくなる。
それからおれは道義にこれまでの経緯を話した。
おれが余所者であること、大妖怪の幽香と遭遇し戦闘になったこと、あと早恵ちゃんは本当は優しい子だということ。最後に関してはほぼ翠が力説してくれたおかげでおれの言う手間が省けた。
「ふむ……生斗、御主よく大妖怪相手に生きられたな。あの荒れ果てた森からしてとても人間が生きられるような所には到底見えなかったが」
「うん、全部大妖怪が荒らしたんだよ。おれはただ避けてただけ」
「森の途中で大きな穴ありましたよね。あれ熊口さんのせいです」
おい翠、さっきからお前おれの隠したいことことごとく言ってやがるな。
おそらく全部おれの中にいたときに拾った情報だろう、それ以外に考えられない。これだから心読む奴は……
「なんと、生斗がやったと言うのか!? いかほどに、いかほどにあのような力を手にすることが出来るのだ!」
身を乗り出して顔を近づけてくる道義。眼前をイケメンの顔に覆われ、荒い鼻息が頬に当たり背筋が震え上がる。顔が目の前に来たこともそうだが、何より野郎の鼻息を間近で感じるのが不快でならないんですよね。
これが美少女ならばっちこいなのに……
「落ち着け」
「ぐふっ」
とりあえず荒い鼻息から解放するべく、道義の顔を鷲掴みにして後ろに押して距離をとらせる。
「す、すまない。つい興奮してしまった」
「何処に興奮する要素があるだよ」
「それはするに決まっている。あんな戦争跡地のような光景を人間である生斗が作り出したのだろう。まだまだ我々人間でも強くなれると言うことだ。これで興奮しないなんてそれこそ人間ではない」
つまりは自分の思っていた人の限界がまだ先にあることに喜んでいるって事なのか。
生憎おれは特殊なケースだと思うんだけど。
「翠、お前はどう思う」
「さあ? 元人間である私は特に興奮はしませんが」
翠は違うとなると……ただ道義が変態なだけか?
「こうなっては身体を動かさなければ気が済まない! 少し外に出てくる!」
「あっ、ちょっと待って!?」
「どうした。私は今すぐ素振りを始めたいのだが」
隣に置いていた青銅の剣を取り、外へと向かっていく道義を何とか止める。今外に出られては情報収集がしづらくなる。
せめて情報を引き出してから出ていってもらいたい。
「なあ、お前の言ってた神奈子様って誰なんだ?」
「なんと?! 神奈子様を知らないのか!?」
神奈子を知らないことに驚愕する道義だが、他国の人間でも知っているぐらいの有名人なのだろうか。
「神奈子様は大和の神の一柱、ですよね」
神奈子の言及をしたのは意外にも翠だった。
やはりおれが知らないだけで有名人なのか……ん?
「ちょっと待てよ。道義、お前昼に神奈子様のこと尖兵って呼んでなかったか?」
尖兵は確か隊の中でも先だって偵察や警戒をする部隊だったはず。神である神奈子が何故自らを危険に晒すような事を。
「それは……」
「国譲りに反抗して返り討ちにあったからでしょう」
「……」
「えへっ?」
翠が又もや言及をしたが、あまりの衝撃な一言におれは思わずしゃくりの上げたような声が出る。
「結構有名ですよ。国譲りの際、悪神と勘違いして天照大神の子孫に楯突き、返り討ちにあったというのは」
「……」
……えっと、ちょっと話が見えてこない。
「……神奈子様はこの地を護りたかっただけなのだ」
青銅の剣を強く握りしめ、みしみしと音を立てさせながら道義は話し出す。
「敗れた相手国の傘下に入り、贖罪のために身を削って国攻めを行っている。神奈子様は戦いが好きだからと、己は軍神だから大丈夫と言っていたが、戦ごとに身が傷付いていっているのを私は知っている」
だから尖兵についていると……それに軍神か、確かにそれなら戦で力になるだろうな。
「だから洩矢の神が潔く国を譲ってくれると言われたときは誠に嬉しかったのだ。この国譲りを一柱で為したとなれば神奈子様もきっと赦される筈だからな。
私はこれ以上、あの方が傷付いていくのを見たくはない」
道義も道義で信仰している神がいるということか。
こいつが強くなろうとしてるのもきっと神奈子を護りたいが為だろう。
確かに同情は出来る。勘違いとはいえ、神奈子はただ国を護りたいがために戦っただけだし、ちゃんと償いもしている。
このままおれが引き下がれば、道義の言うとおり神奈子も戦わずに済むかもしれない。
だが、おれにだってこのまま引き下がるわけにはいかない。
友人の危機をその場の流れで取り逃せば、絶対に後悔する。
「なあ、道義。さっきさ、お前に諏訪子が神奈子様に対しての書状を渡してたよな?」
「ああ、これのことか?」
懐から諏訪子の書いた書状を取り出す道義。
おい、まさかそれを懐に入れたまま素振りするつもりだったのか。
「実はおれに渡させるように諏訪子から頼まれてたんだ。使者に渡させるのもなんだからって言ってよ」
「ふむ、それなら何故私にその事を言わなかったのか。別に隠すような事ではあるまい」
「お前の事を安じたんだよ。もしその書状をお前が所有していた事がこの国の誰かに知られ、それを阻止しようとする輩が現れたら諏訪子としてはたまったもんじゃない。お前に言わなかったのも周りにミシャグジ達がいたからだ」
「ミシャグジ様……ああ、祟り神のことか。何故……」
「諏訪子がミシャグジ達を統括しているとはいえ、今回の決定に不満を持つものがいるかもしれない。その不穏分子を炙り出す意味でおれが密かに持っていくことになった。お前に報せなかった、いや、報せられなかったのも彼処でお前と諏訪子がこそこそ話していたらかんづかれる可能性があったからだ」
「なるほど、確かに私が不意に襲われでもしたら話が拗れる。密かに生斗が持っていくのも、不穏分子を炙り出すため。筋が通っているな」
「なんか道義を囮に使っているようですまないな」
「いや、いい。確かに今回の決定に不満を持つものは少なからずいるだろう。それで反乱でも起こされたら私達にも被害が出る。それを事前に排除するのは此方としてもありがたいことだ。
いやはや、洩矢の神は凄いな。あんな少し間にここまで考えておられたとは」
そう言って何度も頷く道義。その仕草からわざとやってる感じは一切なく、心底感心しているようだ。
我ながら凄いな。ここまでも饒舌に嘘を吐けるなんて。
そう、今言ったことはすべて嘘だ。諏訪子はおれに書状を持っていけなんて一言も言ってない。
適当にパッと頭に浮かんだ事を口に出しただけ。道義を納得させられたのも偶然の産物に過ぎない。
よく考えれば穴がちらほら見える言い分だが、道義を論すことができたのでよしとしよう。
「よし、この書状は生斗に預ける。大和の国への道筋がわからないのなら少し離れてついてくるといい」
「ああ、流石に一緒に歩いてたらバレバレだもんな」
取り敢えずミシャグジには不穏分子扱いして悪いが、書状を手にすることが出来た。
道義のサラッと溢した発言をもっと詳しく掘り下げる必要があるが、それはまた明日でも出来る事だ。
ということは後は
それが一番の難関なんだろうけど。
「よし、それでは気を取り直して私は剣を振ってくる。御主らは先に寝ておいても良いぞ」
「ああ、わかった。布と水の入った樽は玄関前に置いてあるから、適当に使ってくれ」
「かたじけない」
道義が家を出て程なくして玄関先から風を切る音が聞こえてくる。
あの風の切る音は、まだ雑さが残っているがとても力強い。並の剣士では道義には勝つことはできないだろう。
ま、おれなら余裕ですけどね?
「熊口さん、気持ち悪い顔しないでください」
「至って無表情なんだけど」
「だからそれが気持ち悪いって言ってるんです」
拳骨食らわしてやりたい気持ちを必死で抑え、おれは早速外に出る準備をする。
「行くんですか」
「ああ、ちょっと夜の散歩行ってくる」
何かを悟ったように翠は縁側の先、つまり庭の方を見つめる。
「夜は妖怪、或いは幽霊の時間です。私も行きます」
「なんだ逢引きか?」
「殴りますよ」
「上等だ。倍にして返してやる」
これまでの罵倒の数だけ威力倍増だ。つまり全力でぶん殴る。
会ってもう数え切れないほど罵詈雑言を聞かされたんだから当然だ。逆にこれまで手を出さなかったおれは相当気が長いはずだ。
「あの方を説得するには貴方だけでは無理だからです」
「あの方って誰だよ」
しらばっくれるようにおれは疑問符を浮かべるが、翠は構わず___________
「実は熊口さんに言いたいことがあるんです」
「……なんだよ」
「熊口さん、いきすぎた善意はただのありがた迷惑っていうんですよ。諏訪子様も含めて」
ありがた迷惑、か。確かに適切かもしれない。
実際おれはこの問題に首を突っ込んで良いことなんて壊滅的にない。
ハイリスクハイパーローリターン。触らぬ神に祟りなし。
そんなおれにとってほぼ無意味な行為をするのは、諏訪子のあのときの言動が起因していた。
『私はあんたを信じるよ』
おれを力強い眼差しで見つめて放ったその言葉には、真意が込められていた。
ああいう諏訪子の性格の奴は人を信じることが難しい。
何からも疑いから入り常に最悪な状況を考えて行動をする、いわゆる探偵気質。
そんな彼女があって何日かのおれを、しかも超次元的な話を信じてくれた。
これまでの証拠があったからかもしれないが、それをお構い無しに信じようとする気持ちが、諏訪子の目からは感じ取れた。
そのときにおれは思ってしまったんだよ。
__こいつはおれにとって大切な“友人“なんだなって。
「ありがた迷惑で結構。迷惑だろうがなんだろうがやってやる」
「害悪じゃないで___」
「それとな翠。友人の危機を救える可能性があるのに、それを放棄するなんて、友人失格なんじゃないのか」
「!!」
おれの発言に驚愕の表情を見せる翠。
しかしその表情はゆっくりと下に向けられ、垂れた前髪によって隠れる。
「……」
「おい、どうした?」
何故俯いたのか。翠の事だから何かしら突っ込んで来ると思ってたんだが。
「諏訪子様のことを友人だなんて馴れ馴れしいことこの上ない。とてつもなく不愉快です」
そんなことを考えていると、翠は俯きながら1,2メートル先のおれにギリギリ聞き取れるぐらいの声音でぼそぼそと呟きだした。
「そもそも私達が崇拝する神に敬語を使わない貴方に苛つきもありました。身の程を弁えないその姿勢が腹立たし過ぎる」
「うっ」
「周りを見れば全員敬語を使っていたでしょうに。あの使者ですら使ってましたよ。礼儀がなってない」
「お、おい、ちょっと」
なんか目の前でいきなり悪口言われまくってんだけど!?
「熊口さんの心を読んで思いましたよ。あ、この人馬鹿だって。人に心読まれてるのに邪なことを平気で考えるし、頭の中は夢までお花畑でしたし」
急にどうしたんだ。俯いたまま人を馬鹿にしまくるなんて。
どこか声が震えてるようだし……もしかしてこれまでの鬱憤を晴らしてるのか。それはしたいのはむしろこっちだろ。おれの方が絶対溜まってる。五日間悪口を言っても足りないぐらいだ。
くそっ、こうなったら此方も対抗して悪口言いまくってやる。
「翠のあほ___
「それで今、つくづく思いました。貴方は馬鹿は馬鹿でもどうしようもない、お人好しな大馬鹿だって」
___なっ!?」
顔を上げた翠の目からは、幾つかの滴が頬を伝っていた。
今言いかけた悪口を寸でのところで飲み込む(ちょっと遅れた)。
なんで翠は泣いてるんだ。泣く要素なんて一つとして無かっただろ。えっ、なにおれが悪いの? ちょっとかっこつけて恥ずかしいこと言っちゃっただけなのに。
えっ、えっ、どうしよう。こんな状況慣れてないからどうすれば良いかわからない。
「ななな泣きゅ崩しか?」
「……」
舌を噛み、顔を赤くして横を向いてしまうおれ。動揺を全く隠せてない。
いかんいかん、女の涙程度で動揺隠せないなんてお爺ちゃん並みに生きているおれとしては中々の醜態だ。
格好の良い大人のように何事にも動じないようにせねば……っておれ大人じゃん。身体の成長は17歳から止まってるけど。
「お、お前、諏訪子のことちゃんと信仰してたんだな」
自分の失態を隠すように話題を変える。先程、翠の発言の半分以上は諏訪子を軽んじていたおれに対しての怒りだった。つまりは翠も、早恵ちゃんと同じく諏訪子を信仰している一人だということ。
そんな浅はかな考えのもと切り出した話を、いつもの翠ならここで無理矢理戻しておれの失態を嘲笑いに来るはずだが、
「……ちゃんとって何ですか。それに今熊口さん私に大馬鹿って言われましたよ。反撃しないんですか?」
まさかのスルー。思わずほっと口から息が漏れる。
「そんなにおれが暴力的な奴に見えるか?」
「いえ、全然」
「そ、そうか」
な、なんなんだろうか。いつもとなにか違う空気がこの家の中を覆っている。
え~と、なんでこんな状況になったんだっけ。元々今から”あいつ”のとこに行こうって話になってたはずなのに……
そのように考えている間にも、なにか気まずい時間が流れる。
おれはどう話を切り出せば良いかわからず、胡座をかいたまま固まってしまっていた。
「諏訪子様は私の心の拠り所であり、母親のようでありました」
「……えっ」
長いようで短い沈黙を破ったのは翠だった。
頬に張り付いた滴を袖で拭いながら、翠は話を続ける。
「諏訪子様から聞いてるんですよね。私の死んだ理由」
「あ、ああ」
「親が妖怪によって奪われたことも」
「……ああ」
その事は幽香に出くわす前の屋敷で諏訪子に聞かされた。
正直痛ましかった。親を殺され、その仇敵の妖怪によって命を奪われる。
耐え難い屈辱と恨みを持っているだろう。だからこいつは今ここに存在する。
同情はする。同情はするがおれはそれを態度で見せることはしなかった。心を読まれていてもそれだけは絶対に。下手な同情はかえって翠を苦しめることになる。
「私が小さな時から諏訪子様は私達を見守ってくれました」
「……」
「湖で溺れたときも助けてくれたし、私の親が亡くなったときも一緒に泣いてくれたし、私の下らない話を笑って来てくれました」
また一粒、翠の目からは涙が溢れる。
「私だけではありません。早恵ちゃんも、他の子供達も、大人の人達でさえ、諏訪子様から見守られながら生きている。
諏訪子様はこの国の母なんです」
「母……」
「簡単に無くなっていい存在ではない。もし国譲りをしても諏訪子様の存在が無くならなかったとして、確実に今より信仰は減ります。信仰の薄い神は常人の目には映らなくなるんです。ミシャグジ様から聞きました」
その事は知っている。おれもツクヨミ様から同じようなことを聞かされた。
別に見えていないわけではない。信仰が減り、存在が否定されれば人の目に映っていたとしてもその場に落ちている石ころのように自然と同化して見えると。
「つまりあれか? 諏訪子を救うためにもおれに協力するっていいたいのか?」
「余所者である貴方に頼むのはとてつもなく癪ですが、そうするしかありません。危ない橋をこの国の方々には渡らせられません」
「おれなら渡っても構わないってか」
「自分から渡ろうとしてるじゃないですか」
そうなんだろうけどさ。実際は自分がどれだけぼろぼろな橋を渡ろうとしているのかわからない。
だが、底が抜けようが崖下まで落ちて
何生か捨てる気持ちでいこう。
「まあ、もし熊口さんが危なくなったら力ぐらいは貸してあげますよ。それぐらいは礼儀です」
「お前に借りるぐらいなら自害する」
「言いましたね。その時はちゃんと潔く死んでくださいよ。男に二言はないですからね」
「おれは二言のある男だから」
なんですかそれ、と微笑む翠を見て少しドキッとしたのは隠しておこう。
さっさと意識の外に追いやらないと後で大変な目にあう。
「さ、無駄話もこのぐらいにしてそろそろ行かないと」
「無駄話、だったのか……?」
涙を拭い、勢いよく翠は立ち上がる。
その顔からは何かが吹っ切れたかのように清々しく、晴れやかな感じが伝わってきた。
「諏訪子様を護りましょう。熊口さんは友人のため、私は私達の神のために」
「ああ、そうだな」
もう引き下がれない。下がる気も毛頭ない。
やるからには最善の限りをつくそう。
そんな心がけを胸に、おれと翠は縁側から外へと踏み出した。
「あっ、そういえばおれ、橋から落ちて呆気なく死んだ事あるな」
「不吉なこと言わないでくださいよ!?」
生還記録の中で一番立っているキャラ
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熊口生斗
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ツクヨミ
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副総監
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翠
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天魔