東方生還記録   作:エゾ末

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13話 残念なネーミングセンス

 

 

 この世界に来てから2年が経つ。

 ゴリゴリゴリラ(綿月隊長)に一撃で負けたおれは、この1年の間にまた力をつけた。その代表的なのが霊力操作による強化だ。

 

 1つは霊力の消費を極限まで抑えて操作することに成功した。

 例えば霊力剣について言おう。霊力剣は手放すと操作するときにどんどん霊力が消えていくが、その消費を極限まで抑えることにより、長時間手を離して霊力の供給を断っても、霊力をあまり消費させないので霊力剣の質を落とさずに操作できる。

 と言っても、折れたり1時間ぐらい操作し続けると消滅する。

 質が落ちないのは大体30分ぐらいだろう。

 

 

 それに霊力操作は身体強化なども含まれる。

 2つ目は部位強化の速度を上げたことだ。

 部位強化とはその名の通り、一部分に霊力を集中して強化することだ。

 以前、あのゴリラに蹴られたとき咄嗟に脇腹に霊力を集中したが十分に集中させきれなかった。

 それに習っておれはいろんな部位に霊力を十分に集中させられるように普段はしないような努力をし、ついに防御しようとした時にはそこに100%の霊力で防御できるようになった。

 ……まあ、フェイントで他を攻撃されたり、他の部位の同時攻撃されたら、100%では防御できないが。

 

 

 後は霊力剣を生成する要領で霊力障壁を作ることが出来るようになったぐらいか。

 

 まあ、今のところはこんな感じに己を鍛えていっている。

 もっと強くならないとな。

 

 何故おれが力をつけようとしているのには理由がある。

 それは力がなければ平穏な暮らしなんか出来ないからだ。前世の世界でいうなら頭がよくないといけない。頭が良くなければ良い会社につけないしそうなれば生活も苦しくなってゆっくり暮らせなくなる。この世界……というよりここの士官学校では力が強い者ほど高い位の地位につける。

 

 だからおれは力をつけようとする。平穏な生活を送るためにな!

 

 

「ということで自主練しよう」

 

「「ええ?!」」

 

 

 小野塚とトオルに未知の生物を発見したみたいな顔された。

 な、何故にこのお二さん方はそんな顔をおれに見せつけてきたのかな?

 

 

「おい、今のは幻聴か? このサボりの常習犯から自主練しようなんて聞こえたんだが……」

 

「た、たぶん幻聴だよ! 自習レンタカーしようぜっていったんじゃない?」

 

「うおい、二人とも何いってんだ! 確かに訓練の日によく寝坊してるけどサボってはないぞ!

 あとトオル、お前に至っては何いってるのかわからん」

 

 

 なんだよ! こっちがやる気になったってのにその反応は!

 やる気なくすぞ? 折角やる気になった生斗さんがやる気なくしちゃうぞ?

 

 

「えーと、俺らは構わんが本当にするのか? 生斗お前すぐ弱音吐くだろ」

 

「いつお前がいつもやってるトレーニングするって言ったよ。霊力操作だよ霊力操作!!」

 

「え? でも生斗君、それは君が一番上手いじゃないか。教官ももう教えることはなにもないって言ってたし」

 

「そうなんだが……おれは長所をとことん伸ばしたい質なんでな」

 

 

 出来ないことを無理にやろうとせず、まずは自分が得意とするものを伸ばせってよく聞くことだろ? おれはそういうのを実践していくスタイルだ。……いや、別に苦手分野が面倒で楽なのにいこうとしているわけではないよ?

 

 

「ほうほう、しかしそれだとアドバイスできることがかなり少なくなってくるな……ていうかどんな特訓をするんだ?」

 

「ああ、この前霊弾を打つ訓練をやっただろ? あれを短時間で大量に生成することと、霊弾の種類を増やそうかと」

 

「霊弾を一気に放出する? そんなことしたら直ぐに霊力がつきるぞ。結局は俺がやってるトレーニングと同じぐらいかそれ以上にキツいぞ?」

 

「まあ、別に楽して強くなろうなんて甘えた考えはしてないさ。

 あと霊弾の種類に関してはなんとも……取り敢えず霊弾作るときに練り方変えたりしてみる」

 

「成る程な……まあ、ともかくホールを借りて自主練するか!」

 

 

 そう小野塚の掛け声をいったあとおれらはホールに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~男子寮地下ホール~

 

 

「じゃあまず霊力を大量に出す練習からだな。最初に5個ずつ霊弾をあの的にだして20セット、つまり100個出すことにしよう」

 

「わかった」「うん」

 

 

 100個か……おれ的には一気に50個ずつだしていきたいんだけど小野塚はたぶんおれらの霊力量を考えて言ったんだろう。

 それなら従わない理由なんてない。

 

 

 

 

 

 ~5分後~

 

 

 き、キツい! なのにあと半分もあるだと?! 霊力はまだあるけど出すときに体力がこんなに要るとは……正直なめてた!くそう!

 

 

 ~さらに5分後~

 

 

「はあ、はぁ、ぜぇぇ……」

 

「はあ、はぁ、やっと終わったね……」

 

「お、お前ら……あと5分休んだら、またこれを、やる、ぞ」

 

 ええええ??小野塚さん。スパルタ過ぎるよ……

 

 

 

 

 結局このあと4回もやった。霊力はまだギリギリ残ってるけど体力がもう底を突き抜けて地獄まで到達していた。

 いやだってさ、1回目で肩で息していたのに、2回目以降なんて何度妥協しそうになったことか……

 もうこれぐらいやったんだからもうやめてもいいんじゃないか? とか。

 

 

「これは、俺がいつも、やって、るトレーニングよりも、キツいな」

 

「僕もう霊力が無くなったよ……一歩も動けない」

 

「ま、まあ、次は技術、練習だし、大丈夫、か……」

 

 

 疲れているのはおれだけでは無いようだ。トオルに至っては仰向けの状態で倒れながら、滝のように汗をかいてる。

 

 

 

 取り敢えず20分ほど休憩することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~20分後~

 

 

「もうここを使用できる時間が少なくなってきたしさっさと始めようか」

 

「そうだな」

 

「僕も参加したいけど霊力がもうないから見とくよ」

 

 

 よし、風呂の時間まで残り1時間。この間に新しい霊弾を作ってやる!!

 

 

「……まずはいつも霊力を練っている方向と逆にやってみるか」

 

 

 

 

 

 

 ~30分後~

 

 

「うん、全然見つからないな」

 

「俺もだ」

 

 くぅ、どうしようか。

 全然良い考えが思い浮かばない。

 

 今回の発見と言えば霊弾を伸ばすとレーザーみたいになるということだけだ。

 でもこんなの誰だって出来るしな……

 

 

「う~む、なにかないのだろうか……水、無理。火、無理。土、無理。雷、無理。そもそも形質変化はともかく性質変化はもう能力の域だし無理か…………」

 

 

 霊弾の性質はなんだろうか。 

 霊力の塊を飛ばして相手にダメージを与える。

 このとき、霊力を練ると攻撃力が上がる。練るときは霊力を小さな粒子だと考えて練るのがコツとか。

 

 

 うーん……いっそのこと霊力を大量の粒子に変化させて撃ってみるか?

 

 やってみる価値はあるな。

 

 

「よし……」

 

「ん、生斗。なにか分かったのか?」

 

「いや、試してみたい事が出来てな」

 

 

 まずは粒子のイメージをして大量に小さな玉を作り出す。

 

「うわ、なんかうじゃうじゃしてるぞ?」

 

「よし、これに膜を張って」

 

 

 この大量の粒子を閉じ込めるための膜を優しく包むように張る。もし膜より硬くすると威力が落ちるかもしれないからな。

 

 そして膜で包んだ粒子弾を先にある的に向かって撃つ。

 

 その弾が的に着弾すると____

 

 

    パサアアアァァ……

 

 

 膜が割れ、粒子が霧散した。

 

 

 …………ん?

 

 

「うーん、なんかユニークだが威力がないな」

 

「ちょっと待てよ……」

 

 

 今の霧散、見覚えがある。

 

 ____そうだ、爆発の時、あんな感じに散っていた。少し散るのが遅かったが、あんな感じに爆発していた。

 

 

 活路が開けた気がする!

 

 

「ん?、またやんのか?」

 

「小野塚、少し黙っててくれ」

 

「お、おう」

 

 

 もう1度粒子を作る。先程より少なめだ。

 それをさっきより少し硬めに作った膜で囲み、粒子を暴れるように動き回らせる。

 粒子を中で暴れさせ、膜に当たるごとに乱反射するように……

 

 

「うおお、なんだその霊弾、なんかめっちゃぼこぼこしてるぞ?!」

 

「……できた」

 

 

 小野塚がぼこぼこしていると言っているのは、恐らく、粒子が膜にぶつかっているからだろう。

 

 よし、これを的に向かって撃ってみるか。もしこれで霊弾より威力が高ければ、まあ()()成功と言ったところか。

 

 そんな呑気な事を考えつつおれはぼこぼこ弾を的に向かって撃つ。

 

 そしてそれが的に着弾すると____

 

 

     ドガアアアァァァァァァン!!!

 

 

 

 大爆発が起こり、的は跡形もなく消し飛んだ。

 

 

「……あれ?」

 

 

 ____なにこの威力?

 なんで的が消し飛んでんだ? あれ、鉄製だぞ。これまで幾度となく霊弾を耐えてきた的がなんで鉄屑になってんだよ……

 

 それほどまでにこのぼこぼこ弾の威力は高いというのか?

 

 

「すごい……」

 

「な、なんだこれは?!」

 

「お、おれもこんなにすごいとは思わなかった……」

 

 

 どういう理屈であんな爆発が起きたのかは知らないが、これは嬉しい誤算だ。

 これは必殺技レベルの技だ!

 

 

「こりゃ必殺技になるな! やったじゃねーか!! お前の必殺技ができたんだぜ!」

 

「そうだね! これは必殺技に名前をつけないとね! なんて名前にするの?」

 

 

 あら2人とも、自分のことのように喜んでくれてるじゃない。

 ありがたい限りだ。

 仕方ない。二人の要望に答えて、おれがナイスな名前をつけてやろう!

 

 

「そうだなぁ……ダイナマイトアルティメットボンバーストライクインパクト。ていうのは?」

 

「「却下」」

 

「ええ?!」

 

「ほんと……生斗君のネーミングセンスを疑うよ」

 

「確かに」

 

「酷い!?」

 

 

 なんか全面否定されたんだが……

 

 ま、まあこれでおれにも必殺技ができたわけだ。これで能力を持ってる奴に少なからず対抗ができるぞ!

 

 

 

 因みに技名は『爆散霊弾』になった。……そのまんまじゃねーか。


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