妹ルートは… 作:サプリボンド
「はぁーー、疲れたぁ」
午前中の授業が終わり昼休み。
今日が金曜日ということもあるが、それ以上に疲れを感じていた俺は溶けるように机に突っ伏す。
「だ、大丈夫?珠己くんもの凄く疲れてるみたいだけど…」
隣の儘田さんが心配して声をかけてくれる。
この目線からだと丁度パイオツが目の前に来るようだ、ご馳走さまです。
「このままじゃ死んじゃうかもー、儘田さんが…スしてくれないとー」
「ふぇっ!?なな何をすればいいいのかなっ!?」
うへへへへっ、どうしたどうした?何をそんなに慌てている、何を想像しているんだ~?
清純な女の子だと思っていたが実はスケベなのか?ムッツリスケベなのか~?
やはり、このタイプの女の子は押しに弱い。
ちょっと強引でも素直に受け入れてしまう受け身な性格で、調教しようによってはどんなタイプにでも進化出来る可能性を秘めた素晴らしい存在だ!
まずはそのスケベで厭らしいからだを俺好みに調教してくれるわーー!!
あひゃひゃひゃひゃひゃっ――
「うぐっ…」
「お兄ちゃん、お昼ごはんだよっ♪(殺しますよ?)」
慌てふためく儘田さんを見て愉しむ俺の背に覆い被さり、さりげなく首をギリギリと絞めてくる妹参上。
「ぐるじっ、じぬ…」
完全にキマっているので自らに迫る死を訴えてみるが、満面の笑み(見えないが絶対にそうだ)で首を絞め続ける馬鹿力な我が妹。
「胸ですか?あのデカ乳がそんなにも良いのですか?あんなのただの脂肪の塊ですよ?」
俺にしか聞こえないような小声で胸に対するコンプレックスを囁いてくる貧乳シスター。
「…お兄様は本当に死にたいのですか?」
アァーーッ!!
死ぬ死ぬ死ぬ、本当に死んじゃうーっ!!
徐々に強まる力、これは俺に対する最後通告。
ここで選択をミスったら俺の人生ゲームセットッ!!
全力チョークスリーパーが発動する前にコイツのハートを鷲掴みにする胸キュンワードを搾り出せ、行くぜ俺の恋愛頭脳よ!
「おでは、おばえのその可愛い胸が…《一番好きだぜ!》」
…やったか?腕の力が抜けて…
「はぁぁぁ~~んんっ❤」
妹が俺の胸キュンワードにキュンキュンしてやがるぜ、作戦成功だ!
って、何で自分の妹をトキメかせてんだよ俺!
今日は儘田さんとラブラブお昼ごはんルートだったはずだろうが!
「はぁーっ」
深いため息とともに儘田さんルートに上手く入れない原因を探るが、一重にこの愚妹のせいだと一瞬で思い至る。
そう、コイツはことごとく俺の邪魔をしてくるのだ。
今日だって一日の半分も経ってないのに何度コイツに邪魔されたことか―――。
まずは朝。
本来ならば気持ちよく目覚めて儘田さんとの会話シミュレーションをしながら過ごすのだが、目が覚めた時点で間違いが起きている。
妹が俺の腕に抱きついて寝ているのだ。
昨日の俺の反応に味を占めたのか、今朝はノーブラで密着してきやがった。
(正直スゲームラムラするから)いい加減やめろと言うと『この家にベッドが一つしかないのが悪いのです』と反論された。
確かにそうなのだが、ここは元々俺が一人暮らしをするために用意された部屋だ。
後から勝手に来た新入りはリビングのソファで寝なさい!と言ってやったが即却下。
加えて『正直、お兄様も喜んでおられるのでは?』と俺の股間を見ながら言われ何も言い返せなかった。
違うんだからねっ!別に興奮してるわけじゃ――
それは置いといて、朝ごはんを作ってくれるのはありがたい。味も美味しいし。
けれど、食べるときにベタベタくっついてきたり、無理矢理あーんしてくるのはやめて欲しい。
時間かかるし食いづらくてイライラするから。
そういうのはぺぽちゃん人形相手にやってくれ。
着替えや歯磨きは食器を洗っている時にするから問題ないのだが、チラチラ見てくるのだけはやめてね。
次に学校に行く時。
とにかく俺と儘田さんに会話をさせないように邪魔してくる。
おはようの挨拶をしようとすると天気の話。
昨日のテレビの話をしようとすると気温の話。
今日の授業の話をしようとすると風の話。
何を話そうとしても途中でぶった切ってくるので自然と無言になってしまう。
この会話のインターセプトちゃんが誕生した理由は儘田さんが隣に住んでいることが発覚したためだ。
今朝ゴミ捨てに行く時に儘田さんを見かけたらしく、彼女がどこに住んでいるのか確認するため尾行を開始、住みかを突き止めるもまさかのお隣。
何時から?どうして?諸々の理由を俺が説明すると『お兄様のストーカーですか…排除します』と恐ろしいことを口走り妨害が激化した。
通学路を歩くときも俺の腕をガッチリホールドして道の端に寄せる。
俺と儘田さんを隣同士にしたくないからだろうが、儘田さんに車道側を歩かせるなよ。
それと、妹はとにかく目立つ。
中身は別として、見た目は身内贔屓を抜きにして見てもかなりの美少女だ。
入学式の時点でその名前と顔は校内に知れ渡っている程の有名人。
そんな美少女沙羅ちゃんが男とイチャつきながら登校してるとなれば男の方にも注目が集まるわけで、その正体が実の兄とくれば妙な噂が流れる。
幸いまだ入学してから日も浅いので変な噂は流れていないようだが、このままではマズイ。
妹の度を越えた兄への愛をなんとなく感じ取った者たちからクラスへ、次に学年、最後には学校全体へと誤解は広まっていき間違った認識をされてしまうだろう。
そうなったら俺の青春は終わりだ。
一生妹大好きシスコンお兄様キャラとして弄ばれるだろう。
それに、違うと否定したところでツンデレ乙とからかわれるだけだ。
やれ報われない恋だ、禁断の関係だと歓喜するアブノーマルな人種もいるだろうが、ノーマルな儘田さんには確実に引かれてしまうだろう。
そうなる前に儘田さんを攻略しようと必死に頑張っているのだが、奴の手は俺のオアシスにまで伸びてくる。
そう、学校内でさえ自由は保証されていない。
朝のホームルーム前の僅かな時間や休み時間に傍にいるのは当たり前。
酷いときは授業中にさえ現れる。
数学の授業中、問題を解き終わり儘田さんの方を向いたら不意に目が合って、恥ずかしそうに微笑む儘田さん可愛い~なんてニヤニヤしてたら急に頭に激痛が。
窓の外を見るとジト目の沙羅ちゃんがいた。
どうやら体育でボール投げをやっていたらしく、間違ってこっちに投げちゃったみたいだね、あはは。
お兄ちゃん優しいから三階から全力で投げ返してあげたんだけど軽くキャッチされて今度は顔面に当てられちった。
コントロールと肩の強さが武器なんだね、よーくわかったよ。
…もう嫌だ、これから毎日こんな生活を送るなんて耐えられるわけがない。
こうなりゃもうやけくそだ、多少強引にでも儘田さんを攻略するしかない!
俺に彼女さえ出来てしまえば妙な噂が流れても嘘だと証明できるし、妹も兄と彼女の仲を引き裂くような真似はしないだろう。
兄の幸せを願ってくれているのならな!
よし、まずは戦況を分析しよう。
俺と儘田さんは最近になってからだが、一緒に登下校をする仲になった。
一日一回は会話するし、今日はわざわざ俺にお弁当を作ってきてくれているのだ、多少は好意があるはず…あると信じたい。
そして彼女の男性経験は皆無(多分)、男性から言い寄られたときの対処法は心得ていないはず。
このタイプの子には最初からストレートに好きだと伝えるのではなく、徐々にこちらが好意を抱いていることを匂わせ、自覚させる。
相手が好意に気付き、動揺しているところで伝家の宝刀《壁ドン》を繰り出し一気に決める!
この前読んだ恋愛本が本当ならば、これで見事ゴールイン、薔薇色の青春ライフの幕開けだぜ!
そうと決まれば昼休みに作戦決行だっ!!
―――そして、さっきの首絞め事件へと至る。
作戦を実行する隙さえ与えてくれないなんて鬼か?鬼畜系女子なのか?
だが、俺の計画はまだ終わらん!
頭がイッちゃってる妹は放っておいて儘田さんと屋上で床ドン作戦に切り替える!
「儘田さん!こっち!」
「ふぇ!?ちょっ、えぇー!?」
まだ動揺している儘田さんの手を引いて屋上への階段を駆け上がり、扉を勢いよく開く。
「あ!お兄ちゃん遅かったね」
――コイツからは逃れられないのか。
「いやー、今日は暖かくて気持ちがいいねー!お外で食べるのには丁度いいよー」
呑気なことを言いつつ弁当を広げ始める俺のストーカー。
メチャクチャ豪華な弁当だなおい。
つーか、お前とは一緒に食べる約束してねーから。
「お兄ちゃん、早く食べよ?」
「え、ああ…」
「あ、あはは…」
怖っ!そんな殺気のこもった目で見られたら断れるわけがないじゃないか!
儘田さんも怯えているからやめなさい!
「ま、儘田さんもお弁当作ってきてくれたんだよね?た、食べたいなー」
よく言った俺!
妹の乱入は予想外だが、儘田さんのお弁当を食べるという目的は達成出来るはず!
作戦は全て潰されたが、今は強引にでも儘田さんルートへシフトするんだ!
「うん、沙羅ちゃんみたいに豪華じゃないけど…」
オイーッ!儘田さん若干へこんでんじゃねーかっ!!
いや別に豪華さじゃない、見た目じゃないんですよ!お弁当は味…いや心だよ!そう、真心が一番大事なのです!
だから自信を持って!
「お弁当は見た目が全てじゃないよ。それに俺は儘田さんのお弁当好きだな!昨日食べたのも凄く美味しかったし」
そうです、事実貴女に作ってもらったお弁当は俺にとってどんな豪華で高級な料理にも勝るのです!
「じ、じゃあ、どうぞ」
少し照れている様子の儘田さんからお弁当を受け取ろうとしたその時――
「うわっと!」
いきなり転けた妹に思いっきり背中を押され、お弁当はひっくり返りそのまま地面へ落下。中身が全てこぼれてしまった。
「あっ…ごめ―」
「――っ」
儘田さんに謝ろうとした瞬間に彼女は走り去ってしまった。
「……わざとか?」
「もちろん、わざとですよ♪」
「……最低だな…お前」
♦
「担任の先生には一応連絡したけど…大丈夫?」
「…はい」
「そう、落ち着くまではゆっくり休んでていいからね」
「…はい」
そう言い残し保健室の先生は出ていった。
「はぁ…」
ため息をつきながらベッドに横になり布団を頭まで被る。
私は何をやっているんだろう。
つい感情的になって逃げて来ちゃったけど冷静に考えたら恥ずかしいよぉ…。
お弁当が駄目になっちゃったくらいで泣いて、その後の授業も保健室でサボっちゃうなんて…。
もう高校生なのになんだか小さい子供みたいなことを…引かれちゃったかなぁ…。
「嫌だなぁ…」
珠己くんに嫌われるのも、幼稚な自分も嫌になった私は現実逃避をするように瞼を閉じ意識を手放した――。
『――中出身、御子柴 珠己。趣味は特にありません。』
高校一年生、一番初めのホームルーム。
そこで私は珠己くんと出会い、恋をした。
私は今まで恋愛をしたこともないし、誰かを好きになったこともなかった。
それどころか異性にもまるで興味のなかった私が一目惚れをした。
確かに珠己くんは凄くかっこよくて周りの女の子たちも見惚れていたけど、私は見た目とかじゃなくて、言葉では説明できない何か直感的なものを珠己くんから感じていた。
それが《運命》と呼ばれるモノなのかは分からないけど、とにかくビビっと来たんだ。
だけど恋愛経験がゼロの私には、どうすれば珠己くんとお付き合いが出来るのかが全く分からなかった。
それでも運命が味方してくれたのか、私は珠己くんの隣の席を奇跡的にキープし続けた。
他の子たちよりも大きなアドバンテージを得た私は、私なりにアプローチを頑張ったんだけど…
結局、珠己くんと仲良くなることは出来ずに一年が終わってしまった。
初めの頃は、珠己くんと仲良くなろうとする子たちが周りに大勢いて奥手な私は近づくことさえ出来ず遠くから見守るだけ。
それから暫くして人だかりも落ち着いてきた頃に、話しかけてみようと勇気を出すも珠己くんは何時も寝ていて声をかけられず。
その後もタイミングを見計らって話しかけようとしたけど、何度やってもことごとく失敗。
私、嫌われてるのかな…。
一年間同じクラス、しかもずっと隣の席にいて話しかけることすら出来ないのに付き合うなんて無理なのかなぁと諦めかけていた私はお母さんに相談してみた。
そしたらお母さんは急に笑い出して『やっと恋の相談が来たと思ったら、こんなっ…ぷぷっ』と私を馬鹿にしてきた。
笑い事じゃなくてこっちは本気で相談してるんだけど…と泣きそうになりながら言うと『奥手すぎるわよ、もっと強引にでも話しかけなきゃ何も始まらないし伝わらないわよ!それに夏奈子は素材はいいんだからもっと自分磨きをすれば彼もきっと振り向いてくれるわ』と真剣な顔で言ってくれた。
それから私は春休みを利用して、料理もファッションも女の子らしい仕草も何もかもお母さんから教えてもらい生まれ変わった。
全ては珠己くんと結ばれるために。
女の子は恋をすると綺麗になるって聞いたことあるけど本当なのかも。
今の私は昔の私じゃないみたい。
そんな自信に満ち溢れた私にお母さんから最後にプレゼントがあった。
なんと珠己くんの住んでいるマンションの部屋の隣の部屋を借りてきちゃったみたい。
最初は凄くビックリしたけどお母さんが折角用意してくれたチャンスだし頑張らなきゃ!
そう思って私は今までよりももっと積極的にアプローチをした。
春休みに頑張った甲斐があったのか、珠己くんは私に振り向いてくれて、それからは一緒に帰ったり、お喋りしたり凄く順調だったのに…。
『あっ…ごめ―』
あんな些細なことで――
『儘田さん』
珠己くんの声だ。
最近は毎日のようにこの声が私を呼んでくれる。
少し前までは考えられなかった日常に私はいるんだ。
そう考えれば物凄い進歩だなぁ…。
ここまで何もかも順調過ぎて気が付かなかったけど、私は天狗になっていたのかも。
だからあんな些細なことでここまで落ち込んじゃったのかもしれない。
『儘田さんちょっと…』
気が付けて良かった。
このまま勘違いして告白して振られて色々終わっちゃうところだったよ。
これからは焦らずじっくりと珠己くんと仲良くなって、それから…あんなことや…こんな――
「そろそろ起きたかしらー?って、みこしばーっ!!あんたなにしてんだーっ!!」
「ひぃ、ち、ちがうっ!きいて――」
「問答無用ッ!!」
「おぶっ」
あれ?珠己くんが誰かに殴られて…
「珠己くんっ!?」
「起きるの…おそい…」
ドサッと床に倒れ込む珠己くん。
何がどうしてこうなったの?
「儘田さん!大丈夫だった!?」
「ぁえ、えっと…何がですか?」
保健室の先生が倒れた珠己くんを踏みつけながら聞いてくる。
私の心配よりも珠己くんのほうが…
「この変態が貴女の胸を触っていたのよっ!!」
「ふぇ!?うそっ!?」
う、うそーっ!?さっきのは夢じゃなくて現実!?
だったら私、珠己くんにあ、あんなことや…こんな――
「ちっがぁーうっっ!!」
「ごめんね珠己くん、早とちりしちゃって」
「…まぁ、はい」
まだ少し怒っている珠己くん、本当にごめんね!
「でも、あの人も悪い人だよな」
「確かに…」
あの人、保健室の先生のことだ。
あの先生のせいで凄く恥ずかしい思いをした。
元々珠己くんは、放課後になっても教室に戻ってこない私を心配して保健室に来てくれたんだけど…まだ私は爆睡中。
起こすのも悪いと思った珠己くんは椅子に座って待つことに。
暫くして急に私が珠己くんの手を掴んで抱きしめだして、その力が結構強くて振りほどけず困っているところに先生が来て珠己くんが殴られたと…。
でも先生は最初から見てて分かってたのに敢えて演技をしたんだとか。
私たちの反応を楽しむためだけに…本当に悪い人。
でも、先生のおかげでまたこうして珠己くんと一緒に帰ることが出来ているのには感謝してます。
「あのさ、お弁当…ごめんね」
凄く申し訳なさそうに謝ってくる珠己くん。
「私こそごめんね、ちょっとオーバー過ぎる反応しちゃって…」
改めて思い出すとやっぱり凄く恥ずかしい、間違いなく黒歴史だよぉ…。
「いやいや、お弁当をぶちまけた時のショックは俺も知ってるけど相当なもんだよ。俺も泣いちゃうかも」
「あーっ!馬鹿にしてるでしょ!」
「あはは、ごめんごめん」
「ふふっ、いいよー許してあげる♪」
やっぱり珠己くんとお話しするのは楽しいしとっても幸せな気持ちになれる。
いつかこの人と――
「あっ」
「どうしたの?」
もう少しでマンションに着くというところで珠己くんが急に立ち止まった。
私は不思議に思って珠己くんの視線の先を見ると…
「お、おかえりな…さい」
沙羅ちゃんがエントランス前で待っていた。
「…」
えっ、あっと、珠己くんは沙羅ちゃんを無視して通り過ぎようとしてるけど、どうすればいいんだろう…あの後、私のせいで喧嘩しちゃったのかもしれないし…。
「ま、儘田ーっ…せんぱい…ごめんなさいっ!!」
「えっと、大丈夫…だよ、それにわざとじゃ――」
「ありがとうございます、それじゃっ!お兄様ーっ、謝りましたよぉー!」
「おい!ちょおま、ぐふぉ…」
「……えぇー…」
沙羅ちゃんはいきなり謝ったと思ったら私の返事を聞く前に珠己くんを引きずって行ってしまった…。
なんていうか…うん…凄いハートの持ち主なんだね…。
残された私は暫く呆気に取られていたけど、ずっとここにいて不審者扱いされるのも困るので、仕方無く一人で自分の部屋に帰る。
「ただいまー」
誰もいない部屋に響く声。
さっきまで騒がしかった分、余計に一人が寂しく感じる。
そんなときは早くお風呂に入って、さっさと寝るのが一番だよね。
「んはぁーっ♪」
やっぱりお風呂は気持ちいい!
あったかくてすごく落ち着くなぁ~♪
でも、一つだけ気になることが…
『お兄様、無事ですか?…息が…ない!?気道確保!人工呼吸開始ーっ』
『息してるからーっ!!』
『あぁーん、待ってくださいよぉー♪』
防音対策バッチリな筈なのに聞こえちゃうんだよね…。
沙羅ちゃん、恐ろしい子。
今日もだったけど、これから珠己くんと仲良くなるためには沙羅ちゃんの信頼も勝ち取らなきゃ駄目そうなんだよね。
はぁ、昨年より厳しい状況かも…。
でも頑張ろう、珠己くんは私の運命の人だから!なーんてねっ。
『今日こそはお背中『少しは反省しろっ!』あぅ…』
……私もいつかお背中…きゃっ!
妹の暴走と乙女の妄想は朝まで続く。