妹ルートは…   作:サプリボンド

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3話

「くっ、うぅ……」

 

 

何故だか頭がズキズキする。

そうだ、妹にいきなり投げられたんだっけか…。

まだ体に力が入らないみたいだな…、なんつー勢いで投げてんだよ。

受身とらしてくれないとお兄ちゃん死んじゃうよ。

 

 

「ふぅ…」

 

 

そんな悪態をつきながら目を開けるとそこには

 

「んーー♪」

 

 

キス顔で迫るマイシスターが…

 

「って、おいっ!!」

 

「むぎゅ」

 

頬っぺた柔らかっ!じゃなくて、

 

 

「何してんだよ」

 

「きしゅれすけろ?」

 

 

何か問題でも?みたいな顔はやめなさい。

こういうのは兄妹ですることじゃないんですよ。

 

 

「取り敢えず退いてくれないか?」

 

仰向けの俺の上に馬乗りになってドヤ顔の妹よ。

 

 

「イヤですっ♪」

 

 

おいおい、何時からこんなにお兄ちゃんの事好きになったのかな?

好きならいきなり投げ飛ばすなんて乱暴はやめて大事に扱ってね。

 

 

 

「私は怒っているのです。再会の喜びを共に分かち合おうとしたところで、お兄様が逃げてしまわれたのですから」

 

 

貴女がいきなり飛び掛かってくるからですよ。

避けなければやられていた。

それはさておき、今一番大切なことを聞く。

 

 

 

「取り敢えず、どうしてお前が此処に居るのか説明してくれ」

 

 

「もぅ、仕方がありませんね」

 

そう言うと俺の上から降り、俺の寝ているベッドに腰掛けながら語り始めた―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然の出来事でした。

 

将来、何があっても一緒に暮らしていこうと約束をしていたお兄様が東京へ行くと言い出したのです。

その時の私は訳もわからず、ただ黙って見送ることしか出来ませんでした。

どうして私に何も言ってくれなかったのか、どうしてわざわざ東京の高校に行くのか、当時のアホな私には理解できませんでした。

 

それから数日後、お兄様のお部屋を物色…お掃除していたら大量の参考書や問題集とア○ゾンの納品書が出てきたのです。

それらを見て、お兄様が夜な夜なパソコンを見てニヤニヤしていたのを思い出しました。これらを注文していたのですね。

確か、夏休みの終わり頃からこのような現象が起き始めていたはず…。

その時期に、特に変わったことは……ありました。

 

 

お兄様は母と電話で何かを話していました。

 

母は日本には居らず、電話で連絡を取り合うことがほとんどでしたし、此方から電話を掛けても繋がらず、あちらからも大事な用がある時にしか掛かって来ないはず。

ということは大切なお話をしていた。

私は、お兄様の事を知りたい一心で、一か八か母に電話をしてみました。

 

すると、母は私からの電話を待っていたかのように掛けた瞬間電話に出ました。

私が知りたいお兄様の事を聞くと、答えが全て返ってきました。

お兄様を東京の高校へ行かせた理由を聞くと『農業はそんなに甘くないわよ、あんた達に出来るんだったらお母さんもやってるわよ。今の世の中、頭が悪いと生きていけないのよ。だから、いい高校に行きなさい』とのこと。

何故私には内緒にしていたのかと聞くと『あんた珠己の邪魔するじゃない』と。

 

全てその通りだと思いましたけど、ならどうしてもっと前から進学を勧めなかったのでしょうか…。

これは未だに分かりません。

 

その次に母から『あんたも適当な高校に行っときなさいね』と。

私の事はどうでもいいんですか、そうですか。

それなら私はお兄様と同じ高校に行きますと母に宣言すると、母は『好きにしなさい』と鼻で笑いながら電話を切りました。

私の事馬鹿にしすぎです、後悔させてやります!

 

 

そこで私の覚悟は決まり、お兄様の通う高校を受験することに決めたのです。

 

それからの約一年は、お兄様とのラブラブ学園生活を想いながら、お兄様の匂いが染み付いた参考書と問題集で勉強をし、お兄様の使っていたお布団で寝るというような毎日の繰り返しでした。

 

そして見事合格し、入学式でお兄様との再会を果たしたというわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――なんというか……重い…愛が重いよマイシスター…。

 

 

所々間違ってる事があるけど気にしない…。

 

 

てかお前、俺がまだ祖父母の家にいた頃はそんなことしない子だったよな?

失ってから初めて気が付く的なアレなの?

元々素質があってそれが開花しちゃったとか?

てか、凄い原動力だな俺。

 

いや、まさか一年でここまで色々成長?するとはな…。

正直お兄ちゃん引いてるぞ、ドン引きですよ。

俺と同じ高校に行きたいがためだけに勉強して、他の生徒を上回って頂点に辿り着くとは。

素晴らしきかな、ブラコンパワー。

 

 

「どうでした?」

 

「いや、何が?」

 

「遠く離れて暮らす兄を想い、健気に努力をしてきた可愛い可愛い妹ですよ?好きになっちゃいますよね?」

 

「ならないだろ、普通」

 

 

「えぇーー!!そんなぁ…」

 

 

あー、もう無視無視。

面倒くさい奴だよコイツ。

昔はもっと素直でいい子だったのにな…。

それに、凄く気になる点が一つある。

 

 

「沙羅お前さ、そんな話し方してたか?お兄様なんて一回も呼ばれたこと無いぞ?」

 

確かに昔は《お兄ちゃん》と呼んでいたはずだ。

 

 

「あー、ある作品に出てくるキャラクターに影響を受けまして……変ですか?」

 

 

そう言えば、そういう事するの好きだったっけ。

何かの真似とか、中二っぽい事をしてたわ。

そのせいでキャラの大渋滞が頻発してたけど。

 

 

「うーん、変…変だな」

 

「ガーンッ!!ショックです。折角練習したのに…」

 

 

いや、だって貴族とかでもないのにお兄様なんて使う人現実に居るのか?

それに、学校で妹から《お兄様》なんて呼ばれたら俺の趣味が疑われるわ。

 

 

「まぁ、学校ではお兄ちゃんと呼んでくれ」

 

「うぅ…善処します」

 

まぁ、学校でお前と会うことは無いだろうがな。

 

 

「ところでお前ここに住むの?」

 

「勿論です!」

 

うへぇ、女の子呼べないじゃん。

男の一人暮らし最大の醍醐味なのに。

一回も呼んだこと無いけど。

 

 

「まぁ、いいけど…あんまり部屋の中いじるなよ」

 

「フリですねっ!」

 

違うわ、もう付き合ってらんね。

 

 

「はぁ…、もうなんでもいい。取り敢えず俺は風呂に入って寝る」

 

「お背中「しなくていい」ご飯は「いらん」…はい」

 

 

しょんぼりとしている妹は放っといて風呂に入る。

少し強めに言ったので無いとは思うが、念のため内側からロックをしておく。

 

頭と体をしっかりと洗い、ゆっくり湯船に浸かる。

あー、極楽極楽。

嫌なことはお風呂に入って忘れるのが一番だよね。

 

 

「ふぅー」

 

一息ついて今日の出来事を振り返る。

 

なんだか物凄く濃い一日だったな…。

妹が突然現れたり、妹がいきなり飛び掛かってきたり、妹にぶん投げられたり、妹にキスされそうになったり――

 

 

 

「おーにぃー…あ、あれ、開かないっ…」

 

 

妹に風呂を覗かれそうになったり……。

沙羅ちゃん…お兄ちゃん、君のこと嫌いになりそうです…。

好意は嬉しいんだよ、だけどね度が過ぎるんだよね。

女の子ならもう少し奥ゆかしさをだね――

 

 

 

「はっ!お兄様の脱ぎたてのパ、パンツが」

 

「なにしとんじゃーーっ!!この変態がぁーーっ!!」

 

 

風呂を飛び出し全力ラリアットを変態にぶちかます、変態は必ず死ぬ。

 

「ガハァッ」

 

 

死んだであろう変態を放置しパジャマに着替えてさっさと寝る。

これで明日からは隣の儘田さんとのラブラブ青春物語が始まることだろう。

おやすみなさい。

 

 

「…お兄様は…こういうプレイが…お好き……クッ…」

 

 

こうして超絶怒濤の一日は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 


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