妹ルートは…   作:サプリボンド

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2話

「ふぅ、逃げ切ったか」

 

 

つい先程、妹との予期せぬ再会を果たした俺だが、妹の様子が明らかにおかしかったのと、身の危険を感じたため保健室から逃げ出して来たのだ。

途中で職員室に寄ったのだが、入学式の後の予定は片付けとホームルームのみでそれも俺が寝ている間に終わり、もう放課後なので帰っていいとのこと。

で、今は教室にある鞄を回収し、駐輪場へ向かっているところだ。

 

 

「あっ、珠己くーん、大丈夫?」

 

 

前方から、ゆっさ、ゆっさと大きく揺れる二つの果実の接近を確認。ロックオーンッ!!

 

「ありがとう、儘田さん。大丈夫、ただの貧血だから」

 

爽やかな笑顔でお礼を言いつつ彼女のたわわな膨らみをガン見する。

彼女こと儘田 夏奈子さんは俺のクラスメイトで、茶髪ボブの巨乳美少女。

小柄でとてもシャイ、人の目を見ないで喋るためガン見してもバレる心配はないのだ。最高かよ!

 

 

「えっと、その、今から帰るとこだよね?その…えーと…」

 

おっと、そうだった。このまま此処に居るのも危険なので彼女が言いたいであろう言葉を此方から。

 

 

「一緒に帰る?」

 

「あぅ、うんっ!!」

 

いい揺r…返事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、珠己くんって一人暮らしなんだよね?」

 

自転車を押しながら、隣を歩く儘田さんの質問に答える。

 

「うん」

 

「そっかぁ、料理とか大変じゃない?」

 

「毎日冷食かコンビニ弁当だから関係無いかな~」

 

「えっ、栄養バランスとか大丈夫なの?」

 

「そんなの気にしないよー、まだ若いんだし」

 

「あはは…そうなんだ…」

 

 

ここまで当たり前のように会話をしているが、俺が彼女をハッキリと認識したのはつい先日のことで、高二になり同じクラスになってからだ。

 

 

 

 

高校二年の最初の登校日。

 

その日は、始業式と入学式のために掃除や飾り付け等を二年生だけで行うという意味不明な日で来ない奴もいる。そんなのは大人達の仕事だろうと。

 

だが、俺のモチベーションは高く、誰よりも早く登校し、新しい我がクラスにダッシュで向かい一番乗りで到着、後から来るまだ見ぬ女子達との会話シミュレーションをしようと何もない教室の床に座る。と同時、隣から美少女に『また同じクラスだね、一年間よろしくね!』と、いきなり声をかけられビックリして訳がわからなくなり、放心したまま取り敢えず適当な返事をして会話は終了した…と思う。

 

彼女は一体何処から…瞬間移動か?

 

 

 

その後、家に帰り彼女の『また同じクラスだね』発言を思いだし、高一の頃のクラス写真を見てみたのだが、その中から彼女を見つけ出すことは出来なかった。

彼女は《儘田さん》と誰かに呼ばれていたような…と思った瞬間、《儘田》の名が刻まれた体操着を着ている女子を発見し、ぼんやりとだが思い出した。

その女子とは高一の時、席が一年間ずっと隣だった気がする。

確か、見た目は悪い訳でも良い訳でもなく、とにかく普通だったような…何時も同じ髪型をしていたような…声は…どうだったか………。

一年間同じクラスだったのに失礼だと思うが、その頃の俺は鬼のように勉学に励む超エリート高校生だったので勉強以外の記憶はほとんど無い。

しかし、そんな俺でもクラスメイトの顔と名前くらいは覚えているはずなのだが、そこまで印象に残らない生徒だったのか。

そんな写真の儘田さんと今朝の美少女が同一人物とは、到底思えなかった。

 

次の日、確認のため儘田さんに写真を見せたらあっさり本人だと認めた…。

 

春休みに何かあったのだろうか―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在。

めでたく美少女に生まれ変わった儘田さんと仲良く下校中。

 

 

「それじゃあ珠己くん、家こっちだから。また明日~」

 

 

へー、意外と学校から近いんだな。

まぁ、徒歩通学だし当たり前か……ってあれ?

 

 

「俺の家もここのマンションなんだけど…」

 

「へ、へぇ~そーなんだ~」

 

凄い偶然だなぁおい!!めちゃめちゃラッキーじゃん俺!!

 

「こ、こここんなことってあるんだねぇ~」

 

「そうだね、取り敢えず入ろうか?」

 

「う、うん」

 

 

頭の中でこれからの登下校の事とか料理作ってくれちゃうんじゃないかとか、その他諸々考えつつ、エレベーターを使い俺の部屋の前に来たのだが……。

 

「お隣…さん?」

 

「あはは…そうだね…」

 

 

あれ?何だコレ?素直に喜んでいいのか分からなくなってきたぞ。

だって色々おかしくないか?何で隣に住んでいたのに今まで気が付かなかった?存在感の問題…いや流石にそれは無いだろう。それに、隣には別の人が住んでい―――

 

「た、珠己くん!また明日っ!!」

 

バタンッと大きな音と謎を残して彼女は去っていった。

 

「…」

 

まっ、いっか。

取り敢えず風呂に浸かりながらゆっくり考えますか。

 

「ただいまーっと」

 

「お帰りなさいませ、お兄様っ♪」

 

 

開けたドアをそっ閉じ。

心を落ち着けてもう一度開ける。

 

「お帰りなさいませ、お兄様っ♪」

 

 

「…ま、まぼろし~」

 

「背負い投げ~♪」

 

 

音もなく宙へ投げ出された俺は現実に絶望し意識を失った。

 

 

 


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