【実験】主人公補正を奪われた主人公はどうなるのか【観察】   作:Pyromane

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この出来である(自虐


第19話 コカビエル墜つ(下)

 

「それじゃあ君にも退場してもらおうかな」

 

「ふん、できるものならやってみるがいい。見えないだけで勝てるなどと思わないことだな」

 

 

 

コカビエルには絶対的な自信があった。聖書に載るほどの大戦にて、敵を殺し、傷を負いながら生き残っていたのだ。殺意を向けられればその時点で敵がどこにいるかを知ることができる。その特技によって自信を暗殺しに来た敵を逆に殺したことも何度もある。また、それくらいできなければ生き残ることなどできなかった。

 

 

 

「ふーん、すごい自信だね。まぁ、君の自信がそこの子たちの自信とも傲慢とも取れないものよりは実力に基づいたものであるのはわかるけどね」

 

「それだけわかっていて俺に挑むか。愚か、とは言わん。むしろ好感が持てる。俺を楽しませてくれよ?」

 

「君を楽しませたいわけじゃないんだよね。むしろ実験の邪魔さえしないでくれるならどこで何をしててもいいくらいだ」

 

 

 

謎の声の実験という言葉に疑問を浮かべる面々であったが、そのようなことを指摘できる状況でなく、実験が何であれ、自分たちに害がないのであればそこまで興味がないという理由なのだが。

 

 

(本当に、いい加減にしてほしいところだね、僕・の実験の邪魔をするなんて。せっかく面白そうな世界で新しい実験が始められると思ったのにね)

 

 

謎の声は、別の世界から来た上で、すでに実験を行っているという。そう、安心院さんである。口調がころころ変わっているのは、自分を知っている者が1人しかいない世界で自身のことを悟らせない、そして覚えられないようにするためだ。内心ではいつも同じ口調なのだが、口に出すときには意外と気を付けている。

 

 

「来るならいつでも来い、先手は譲ってやるぞ?」

 

「殺意や敵意を感じて僕の大まかな位置を探ろうってことかな?無駄な努力だと言っておくよ」

 

「(口調が変わった?まあいい。どうでもいいことだ)」

 

 

姿が見えず、また口調が変わり、声もわからない。そのような相手が気配すら漏らしていない。敵意や殺意があればわかるとはいえ、一切の感情がないのではないのかと思うほど何も感じ取ることができない。そのような状態から本当に敵意を見せるのか?そういう疑問がコカビエルを苛んでいく。言うなれば道行く人すべてが敵に見えるようなものなのだ。殺し屋に狙われている、遠距離狙撃、近距離で気付かれずに殺す、そういうのが得意な者に狙われることもあった。それでも生き残ってきたのはふとした瞬間に見せるほんのちょっぴりの殺意に気づいたからだ。

 

 

「(どこだ・・・やつはどこから俺に攻撃してくる?)」

 

「ざんねーん、あたしの攻撃を感じ取ろうなんて不可能よ。だって、あなたたちは感じ取ることができないもの」

 

「ガッ?!ゴフッ・・・(どこだ、本当に・・・何も感じ・・・・取れ・・なかったぞ・・・・・?!)」

 

 

敵の思考を読み取ることができるものがいれば変わったのかもしれない。彼女がほとんどのものに興味を持ってなく、彼自身が興味の対象になっていないこと、そのせいで一切感情の発露を読み取ることができないこと。何より、本当に全てを平等に見ていることに気づけていただろう。まあ、気づけたからと言って何か変わるわけでもないのだが。

 

 

 

「これから始まるのはただの虐殺です。まあ、君に敬意を表して私の能力を100ほど使ってあげるさ」

 

 

 

 

それからしばらく、いっそひと思いに殺した方が楽なのではないかというほどの苛烈な攻撃を行っていた。否、行われているようだった、だ。傍目には何が行われているかもわからず、コカビエル自身も当たって自身が負った傷でどのような攻撃を食らったのかを予測する程度のことしかできなかった。むしろそのような状況ですら死なないのは、コカビエルの力が安心院さんの想定以上だったからなのか、安心院さんが手を抜いているのかわからない。

 

コカビエル自身に興味がないだけで主人公には興味があるため、イッセーに対する嫌がらせという実験をしている。天に愚行権を渡したのもそのためだ。自分が予想もできないようなことが起きればよし、予想通りだとしても過程を見て愉しむことができる。まさに一石二鳥だった。

 

 

 

「さあ、もう僕がこれ以上何もしなくても時間の問題だろう、帰らせてもらうよ。バイバーイ」

 

 

 

 

それから先、何も感じることができなかった強大な力の持ち主は本当にいなくなったようで、その場の誰もが安堵した。いや、コカビエルだけは腸が煮えくり返っていた。何も見えなかった、何も感じることができなかったというだけで、ここまで無様を晒させられた。必ず殺さなかったことを後悔させてやると誓い、意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからはすぐに終わった。コカビエルと戦うことができると楽しみにしていた白龍皇が、神器の覚醒すらさせられてないライバルに少々の失望を示し、コカビエルと戦えなかったことで、来る必要がなかったと落胆した。だが、コカビエルについていた2人のエクソシストも捕まえなければならず、力を使いすぐに捕まえ、帰って行った。

 

 

 

「みんな、大丈夫ね?」

 

「あ、あらあらうふふ。まさかこんなことになるとは思ってなかったわ」

 

「・・・大丈夫です」

 

「俺も大丈夫っす。でも・・・」

 

 

 

 

イッセーが何を言おうとしてるかをわからないリアスではなかった。さすがにあのような話があり、それを聞いて絶望交じりの表情をしたのだ。そのことについての話だろうと思った。

 

 

 

「でも・・・俺は部長のこと信じます。死にたくないという願いもかなえてくれましたし、何よりこんな俺にも優しくしてくれますし」

 

「イッセー・・・あなたって子は、ありがとう。それとごめんなさい、あなたがそんなふうに思ってくれてるのに私はあなたが離れていくんじゃないかと不安になっていたわ」

 

「そんなことしませんよ!部長こそ俺を見捨てないでくださいね!?」

 

「わかってるわ、あなたは私の家族も同然なんだから」

 

 

 

 

眷属とリアスの絆の強さを見せつけるような一幕であったが、それでもかけたピースがあることに変わりはなかった。グレモリー眷属の騎士である木場がいなかったのだから。

 




謎の声の正体は安心院さんでした。まあ、実験に必要なことであれば何もしなかっただろうけど実験対象(主人公のイッセー)が消えてなくなりかねなければ何もしなかっただろうね。ちなみに実験内容は、『いてもいなくても物語に変化のない人物が強力な力を手に入れたらどうなるか』というものと、『主人公が補正を失ったらどうなってしまうのか』という2つです

補正を失う=愚行権の使用は、めだかちゃんだけではサンプルケースとして足りていないため、実験を行っています

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