翌日から、俺と穂乃果はそれぞれトレーニングの量を増やし、互いに励まし合いながら何とか週末を迎えた。
彼女の家まで行くと、既に家の前でスタンバイしていた。
「あっ、八幡君おはよう!じゃ、さっそく走ろっか♪」
「待て。せめて着替えさせろ。てかどんだけ気合い入ってんだよ」
「当ったり前じゃん!だって八幡君が一緒に走ってくれるんだもん!気合い十分だよ!」
「お、おう……」
こっちは特別気合いが入ってるわけではないのだが、まあ本人がやる気ならそれでいいや。
「じゃあ、とりあえず着替えたいんだけど……」
「うんっ、私の部屋使っていいよ!あっ、変な所触っちゃダメだからね!」
「変な所ってなんだよ……」
どうやら俺の彼女の部屋には変な所があるらしい……いや、どういう意味かは何となくわかってるんだけどね?
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急いで着替えて外に出ると、穂乃果はその場で足踏みしていた。
「八幡君、遅い~」
「いや、結構早かったろ。てかどの辺走るんだ?」
「ふっふっふ~、安心していいよ。昨日お風呂でしっかり考えてきたからね!」
「そ、そうか……」
せめて自分の足で確認して欲しかったのだが、まあいい。別に迷子になるわけでもないし。多少距離が長いのも臨むところだ。
「よしっ、八幡君。ファイトだよ!」
「……ああ」
穂乃果に気合いを入れられ、俺はいつもより気持ち強めに足を踏み出した。
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「はぁ……はぁ……八幡君、ここ、どこ?」
「……はぁ……はぁ……わからん」
かなり遠くまで来たことはわかる。てか、どこだこの公園?広さはこの前二人で行った公園と同じくらいか……。
「は、八幡君、そろそろ、休まない?」
「あ、ああ……」
ここがどこかわからなくとも、帰るなら来た道を戻ればいいだけなので、一旦休むとしよう。
近くにあるベンチに並んで腰を下ろすと、だいぶ汗をかいてるのに気がついた。これは休日の発汗量の最高記録じゃなかろうか。
「はい、これ!」
「おう……ありがとう」
気づかぬ内に飲み物を買いに行っていたらしい。俺は礼を言いながらスポーツドリンクの蓋を開け、冷え冷えの液体を口に含む。
心地よい感触に心身休まっていると、穂乃果が俺の前に立ち、自分の体をぺたぺた触り始めた。
「むむっ、ちょっと痩せたかも」
「はえぇよ。あめぇよ。気のせいだろ」
どんだけ自分の脂肪燃焼率に自信あるんだ、こいつは。そんなんならダイエットなぞ必要なかろうに。まあ、このプラス思考はこいつの良い所だろうけど。
「ねえ、八幡君」
「どした?」
急に声のトーンを落とした彼女は、不安そうにこちらを向き、手をもじもじさせた。
「私、そんなに太った?」
「…………」
ああ。そういうことか。
正直、俺からすれば特に変わったようには見えない。とはいえ、それを言ったところで気休めにしかならないのだろうが。何と言うべきか……とりあえず今度は胸元や腰回りを……「八幡君のエッチ!」「お、おう……」決していやらしい意図はなかった。ハチマン、ウソ、ツカナイ。
帰り道、何故か穂乃果から少し距離を取られた。