捻くれた少年と純粋な少女   作:ローリング・ビートル

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第94話

 翌日から、俺と穂乃果はそれぞれトレーニングの量を増やし、互いに励まし合いながら何とか週末を迎えた。

 彼女の家まで行くと、既に家の前でスタンバイしていた。

 

「あっ、八幡君おはよう!じゃ、さっそく走ろっか♪」

「待て。せめて着替えさせろ。てかどんだけ気合い入ってんだよ」

「当ったり前じゃん!だって八幡君が一緒に走ってくれるんだもん!気合い十分だよ!」

「お、おう……」

 

 こっちは特別気合いが入ってるわけではないのだが、まあ本人がやる気ならそれでいいや。

 

「じゃあ、とりあえず着替えたいんだけど……」

「うんっ、私の部屋使っていいよ!あっ、変な所触っちゃダメだからね!」

「変な所ってなんだよ……」

 

 どうやら俺の彼女の部屋には変な所があるらしい……いや、どういう意味かは何となくわかってるんだけどね?

 

 *******

 

 急いで着替えて外に出ると、穂乃果はその場で足踏みしていた。

 

「八幡君、遅い~」

「いや、結構早かったろ。てかどの辺走るんだ?」

「ふっふっふ~、安心していいよ。昨日お風呂でしっかり考えてきたからね!」

「そ、そうか……」

 

 せめて自分の足で確認して欲しかったのだが、まあいい。別に迷子になるわけでもないし。多少距離が長いのも臨むところだ。

 

「よしっ、八幡君。ファイトだよ!」

「……ああ」

 

 穂乃果に気合いを入れられ、俺はいつもより気持ち強めに足を踏み出した。

 

 *******

 

「はぁ……はぁ……八幡君、ここ、どこ?」

「……はぁ……はぁ……わからん」

 

 かなり遠くまで来たことはわかる。てか、どこだこの公園?広さはこの前二人で行った公園と同じくらいか……。

 

「は、八幡君、そろそろ、休まない?」

「あ、ああ……」

 

 ここがどこかわからなくとも、帰るなら来た道を戻ればいいだけなので、一旦休むとしよう。

 近くにあるベンチに並んで腰を下ろすと、だいぶ汗をかいてるのに気がついた。これは休日の発汗量の最高記録じゃなかろうか。

 

「はい、これ!」

「おう……ありがとう」

 

 気づかぬ内に飲み物を買いに行っていたらしい。俺は礼を言いながらスポーツドリンクの蓋を開け、冷え冷えの液体を口に含む。

 心地よい感触に心身休まっていると、穂乃果が俺の前に立ち、自分の体をぺたぺた触り始めた。

 

「むむっ、ちょっと痩せたかも」

「はえぇよ。あめぇよ。気のせいだろ」

 

 どんだけ自分の脂肪燃焼率に自信あるんだ、こいつは。そんなんならダイエットなぞ必要なかろうに。まあ、このプラス思考はこいつの良い所だろうけど。

 

「ねえ、八幡君」

「どした?」

 

 急に声のトーンを落とした彼女は、不安そうにこちらを向き、手をもじもじさせた。

 

「私、そんなに太った?」

「…………」

 

 ああ。そういうことか。

 正直、俺からすれば特に変わったようには見えない。とはいえ、それを言ったところで気休めにしかならないのだろうが。何と言うべきか……とりあえず今度は胸元や腰回りを……「八幡君のエッチ!」「お、おう……」決していやらしい意図はなかった。ハチマン、ウソ、ツカナイ。

 帰り道、何故か穂乃果から少し距離を取られた。 


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